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「オープンサイエンス時代の
学術情報リテラシー教育」
梅澤貴典
1
学術情報の流れ
新しい発見や技術
新聞・ネット
のニュース
学術雑誌(冊子&
電子)に論文が載る
論文執筆
査読
世界中で
情報共有
START!
基礎・概論
が本になる
大学で学習・研究
3
ノーベル賞研究者が無料専門誌を創刊
出典:「The Guardian」
2013年12月10日号
4
ノーベル賞研究者が無料専門誌を創刊
出典:国立国会図書館
「カレントアウェアネス・ポータル」
http://current.ndl.go.jp/node/25176
5
ノーベル賞研究者が無料専門誌を創刊
出典:http://elifesciences.org/about
情報の評価基準の重要性
書籍・学術雑誌・事典
新聞
一般雑誌
大衆雑誌
公的DB・
機関
リポジトリ
企業リリース情報
フリーペーパー
フリー百科事典
個人のブログ等
信
頼
性
低
い
高
い
有料 無料
(NEW)
オープンアクセス
学術雑誌・DB
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1.初年次や大学院進学時のリテラシー教育を軽視すると、
学生や院生は 「Web of Science」のような「大学にいるから使える」
ツールと「Google Scholar」などの無料ツールを同じようなものとして
捉えてしまう(付加価値が分からなくなる)。
2.情報を論文の参考にする際に「出典が辿れるか否か」だけではなく
「どのようなレベルの情報か?」という価値基準を持たないと
知らず知らずの内に知的生産活動のレベルが低下する。
3.書籍と雑誌(特に査読誌)の役割の違いなどの基礎知識なく
ディスカバリーサービスのようにサーチエンジン感覚で手軽に
さまざまな学術情報を列挙され入手することに慣れると
ますます無料のWeb情報との境目が曖昧になっていく。
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著作権と引用ルール…
大学図書館のオンラインデータベース集
World Catによる…
聞蔵(朝日新聞)
ヨミダス歴史館
東洋経済デジタル…
法規情報(D1-law)
国立国会図書館サーチ
電子政府の総合窓口(e-gov:イーガブ)
統計情報(国立国会…
統計情報(e-stat)
JAIRO(機関リポジトリ)
CiNiiによる論文検索
WebCatPlusによる…
NDCの成り立ち
OPACの著者名リンク等…
OPACの使用法
良く使う
たまに使う
知っていた
こういうツールがある
だろうとは思っていた
全く知らなかった
大学1年生向け講習の受講者アンケート分析
2014年度・都留文科大学「アカデミック・スキルズF」(発表者による)
「各ツールの認知度」
(受講者にはどのような知識が身に付いており、
どのような知識が不足しているか?)
2:「知っていた」(「良く使う」・「たまに使う」を含む)
1:「このようなツールがあるだろうとは思っていた」
0:「全く知らなかった」
の3段階に分類した。
社会人大学院生向け講習の受講者アンケート分析
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受講者が、何を知っていて
何を知らないかを把握する!
結果と考察 (3)「認知度」のグループ別比較
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大学職員向けの大学院
(高等教育政策・大学経営)
国内社会人ビジネススクール
(MBA・経営管理)
公的統計データベースの例「E-stat」(総務省統計局)
家計消費指数
誰でも無料
図書館を使わずとも
1本の論文が書けてしまう
事実を自覚する!
【参考】大学図書館が『重要』と考える課題の推移
出典:文部科学省 学術情報基盤実態調査「大学図書館編」(作図は発表者)
※「学生の自学自習」「研究活動」「大学の国際化」は2011年から調査項目に加わった。
2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年
利用者サービスの向上 42.0% 43.5% 70.5% 76.4% 80.2% 84.5% 83.8% 83.6%
学生の自学自習のための支援(ラーニング・コモンズ
などの整備・レファレンス)
64.8% 68.8% 76.3%
電子情報の提供・保存環境の整備 12.5% 11.6% 40.4% 48.4% 56.4% 59.7% 60.8% 67.1%
情報リテラシー教育の充実 9.7% 10.3% 42.4% 53.6% 64.0% 64.2% 66.3% 66.5%
研究活動のための支援 38.8% 42.7% 47.7%
社会・地域との連携の強化 2.9% 2.8% 28.3% 33.8% 38.0% 38.2% 37.5% 40.7%
大学の国際化への対応 13.3% 16.0% 20.7%
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利用者サービスの向上
学生の自学自習のための支
援(ラーニング・コモンズなどの
整備・レファレンス)
電子情報の提供・保存環境の
整備
情報リテラシー教育の充実
研究活動のための支援
社会・地域との連携の強化
大学の国際化への対応
13
★ 有料購入(契約)した情報だけを守備範囲にしていると、
図書館と司書の存在意義が薄れてしまう。
→「有料/無料」という括りから脱却する。
→「図書館利用教育」から「情報活用教育」へ。
★ 「情報の価値基準」と「評価方法」が必須。
★ レポート・論文の執筆や研究発表などの
アウトプットを目的とした「学習者・研究者」目線が必要。
→司書自身が学び、発信する経験が基礎となる。
これからの学術情報リテラシー教育に向けて
14
★ 商業出版社が知識を独占して来たように、図書館も
「知識の唯一の権利者」だと思い込んではいないか?
→オープンサイエンスは、市場の自由化を生む。
★図書館司書も、存在意義を厳しく問われる。
→「学術情報活用の専門職」に生まれ変わる
千載一遇のチャンス。
「常識の転換期」はチャンスの宝庫。

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