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コミュニケーションという 
名のもとに 
—これまでされてきたこと, 
これからすべきこと— 
武田美亜(青山学院女子短期大学) 
141118 日本原子力産業協会特別シンポジウム 
「コミュニケーションの重要性—原子力の理解に向けて女性の視点から—」
+ 
武田美亜 
(青山学院女子短期大学/ 
国立科学博物館認定サイエンスコミュニケータ) 
専門:社会心理学 
関心:人々が他者や自己について認識・ 
判断するしくみ 
他者の“立場”に立とうとすること[視点取得] 
(科学技術)コミュニケーション 
これら心理過程に見られるエラーやバイアス 
武田美亜「コミュニケーションという名のもとにーこれまでされてきたこと,これからすべきことー」 
141118 日本原子力産業協会特別シンポジウム「コミュニケーションの重要性—原子力の理解に向けて女性の視点から—」
+ 
本シンポジウムに対する私見 
「女性」と括ってコミュニケーション 
を考えることは,得策ではない 
なぜか? 
では,どうすればよいのか? 
武田美亜「コミュニケーションという名のもとにーこれまでされてきたこと,これからすべきことー」 
141118 日本原子力産業協会特別シンポジウム「コミュニケーションの重要性—原子力の理解に向けて女性の視点から—」
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なぜ, 
「女性」と括ってコミュニケーションを 
考えることが得策でないか 
科学技術コミュニケーションにおいては, 
欠如モデルからの脱却,双方向性が重要 
「女性」と括ることは,コミュニケ—ションの 
相手個人の属性やニーズを覆い隠し, 
双方向的なコミュニケーションを阻害する 
武田美亜「コミュニケーションという名のもとにーこれまでされてきたこと,これからすべきことー」 
141118 日本原子力産業協会特別シンポジウム「コミュニケーションの重要性—原子力の理解に向けて女性の視点から—」
+ 
科学技術コミュニケーション 
Science Communication: SC 
科学技術の専門家が非専門家に対して 
行なうコミュニケーション(文部科学省, 2011) 
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一般市民との双方向性の高い「対話」 
武田美亜「コミュニケーションという名のもとにーこれまでされてきたこと,これからすべきことー」 
141118 日本原子力産業協会特別シンポジウム「コミュニケーションの重要性—原子力の理解に向けて女性の視点から—」
+ 
科学技術基本計画(文部科学省, 2011) 
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双方向的コミュ 
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強調 
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BSE問題 
武田美亜「コミュニケーションという名のもとにーこれまでされてきたこと,これからすべきことー」 
141118 日本原子力産業協会特別シンポジウム「コミュニケーションの重要性—原子力の理解に向けて女性の視点から—」
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欠如モデル 
原発や遺伝子組み換え食品の安全性など, 
専門家による科学的評価を市民が受け入れ 
られないのは,市民の科学知識が欠如して 
いるせいだとする 
知識の欠如している市民に一方的に知識を 
伝える形のコミュニケーションをしようとする 
武田美亜「コミュニケーションという名のもとにーこれまでされてきたこと,これからすべきことー」 
141118 日本原子力産業協会特別シンポジウム「コミュニケーションの重要性—原子力の理解に向けて女性の視点から—」
+ 
欠如モデルに対する批判 
市民が科学技術を受け入れないのは, 
知識が欠如しているからではない 
市民は科学者とは違う知識や判断基準を持つ 
科学技術(を専門的に扱う者)への不信 
市民の属性や立場を理解し,ニーズを掬う 
ことが必要 
武田美亜「コミュニケーションという名のもとにーこれまでされてきたこと,これからすべきことー」 
141118 日本原子力産業協会特別シンポジウム「コミュニケーションの重要性—原子力の理解に向けて女性の視点から—」
+ 
「女性」と括ること: 
カテゴリ化,ステレオタイプ化 
人は,性別,年齢や人種などの目立った 
特徴で人を分類しがち[カテゴリ化] 
カテゴリには,過度に一般化された認知 
[ステレオタイプ]がある 
人は,あるカテゴリに入る個人に対して, 
勝手にステレオタイプを当てはめてしまう 
[ステレオタイプ化] 
武田美亜「コミュニケーションという名のもとにーこれまでされてきたこと,これからすべきことー」 
141118 日本原子力産業協会特別シンポジウム「コミュニケーションの重要性—原子力の理解に向けて女性の視点から—」
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「女性」と括ること: 
カテゴリ化,ステレオタイプ化 
「女性」と括る(カテゴリ化する)と, 
「女性だから●●」と十把一絡げな認知を 
してしまい,個人の属性を見なくなる 
また,ステレオタイプに一致する属性や 
ふるまいに注目しやすくなる 
こうなると,相手の属性や立場を理解し, 
ニーズを掬うことは難しい 
武田美亜「コミュニケーションという名のもとにーこれまでされてきたこと,これからすべきことー」 
141118 日本原子力産業協会特別シンポジウム「コミュニケーションの重要性—原子力の理解に向けて女性の視点から—」
+ 
男性と女性の差とは何か? 
「異なる」「差がある」といっても,統計上の 
平均値が違うだけで,男女の性質が重複し 
ないわけではない 
例)身長 
例)共感スキル,システム化スキル 
(バロン-コーエン, 2005) 
共感が得意な脳……女性に多い 
システム化が得意な脳…男性に多い 
武田美亜「コミュニケーションという名のもとにーこれまでされてきたこと,これからすべきことー」 
141118 日本原子力産業協会特別シンポジウム「コミュニケーションの重要性—原子力の理解に向けて女性の視点から—」
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共感スキル(Empathizing指数)の男女差 
(若林ら(2006)のデータから作図) 
0.05 
0 
平均値の差はあるが… 
男女の得点の分布は 
かなり重複している 
0 10 20 30 40 50 60 70 80 
Empathizeing得点 
男性女性 
武田美亜「コミュニケーションという名のもとにーこれまでされてきたこと,これからすべきことー」 
141118 日本原子力産業協会特別シンポジウム「コミュニケーションの重要性—原子力の理解に向けて女性の視点から—」
+ 
では,どうすればよいのか? 
原子力に対する共感を得て,女性の理解, 
納得につなげるためには…… 
科学技術政策やリスク・マネジメントに 
おいては,人々の信頼を得ることが重要 
不安や不信を減じて信頼を得るためには 
どうすればよいかを考える 
武田美亜「コミュニケーションという名のもとにーこれまでされてきたこと,これからすべきことー」 
141118 日本原子力産業協会特別シンポジウム「コミュニケーションの重要性—原子力の理解に向けて女性の視点から—」
+ 
「原子力に携わる専門家や原子力 
関係者を信頼できると思うか?」 
(日本原子力文化振興財団(2013)の報告書より抜粋) 
武田美亜「コミュニケーションという名のもとにーこれまでされてきたこと,これからすべきことー」 
141118 日本原子力産業協会特別シンポジウム「コミュニケーションの重要性—原子力の理解に向けて女性の視点から—」
+ 
信頼の規定因 
能力(専門知識,技能など) 
動機づけ(誠実さ,人柄など) 
価値の共有 
(問題を捉える枠組み, 
何を重視するか, 
どのような結果を望むか) 
動機づけ 
認知 
信頼 
能力認知 
価値共有 
認知 
武田美亜「コミュニケーションという名のもとにーこれまでされてきたこと,これからすべきことー」 
141118 日本原子力産業協会特別シンポジウム「コミュニケーションの重要性—原子力の理解に向けて女性の視点から—」
+ 
具体的に,信頼を高めるために… 
自発的な運命共同化(中谷内, 2014) 
信頼される側が不適切な行動をすると, 
本人もその被害を被るような状況に, 
自発的に入ること 
自発的に運命共同化すると,受動的に 
運命共同化した場合や,運命共同化 
しなかった場合に比べて,信頼される側は 
より信頼できると評定された 
武田美亜「コミュニケーションという名のもとにーこれまでされてきたこと,これからすべきことー」 
141118 日本原子力産業協会特別シンポジウム「コミュニケーションの重要性—原子力の理解に向けて女性の視点から—」
+ 
まとめ 
「女性」と括ってコミュニケーションを考える 
ことは,得策ではない 
コミュニケーションの相手に対して,相手を 
カテゴリ化して対処法を考えるのでなく, 
相手の視点を取ることや,相手の視点を 
取っていることを相手に認識してもらう 
方法を考えることが有効であろう 
武田美亜「コミュニケーションという名のもとにーこれまでされてきたこと,これからすべきことー」 
141118 日本原子力産業協会特別シンポジウム「コミュニケーションの重要性—原子力の理解に向けて女性の視点から—」
+ 
参考文献 
藤垣裕子・廣野喜幸(編) (2008). 科学コミュニケーション論東京大学 
出版会 
上瀬由美子(2002). ステレオタイプの社会心理学偏見の解消に向け 
てサイエンス社 
岸田一隆(2011). 科学コミュニケーション理科の〈考え方〉をひらく 
平凡社(平凡社新書) 
中谷内一也(2006). リスクのモノサシ安全・安心生活はありうるか 
日本放送出版協会(NHKブックス) 
中谷内一也(編) (2012). リスクの社会心理学人間の理解と信頼の 
構築に向けて有斐閣 
武田美亜「コミュニケーションという名のもとにーこれまでされてきたこと,これからすべきことー」 
141118 日本原子力産業協会特別シンポジウム「コミュニケーションの重要性—原子力の理解に向けて女性の視点から—」
+ 
引用文献 
バロン-コーエン, S. (著)三宅真砂子(2005). 共感する女脳,システム化する 
男脳日本放送出版協会 
林衛・加藤和人・佐倉統(2005). なぜいま「科学コミュニケーション」なのか? 
遺伝,59, 30-34. 
文部科学省(2011). 平成23年版科学技術白書文部科学省 
中谷内一也(2014). 運命共同化による信頼の改善日本社会心理学会第55 
回大会発表論文集, 120. 
日本原子力文化振興財団(2013). 平成24年度原子力利用に関する世論調 
査の結果について(平成25年2月発行「平成24年原子力利用に関する世 
論調査」報告書より抜粋) 日本原子力文化振興財団 
若林明雄・S. バロン-コーエン・S. ウィールライト(2006). Empathizing- 
Systemizingモデルによる性差の検討—Empathizing指数(EQ)と 
Systemizing指数(SQ)による— 心理学研究, 77, 271-277. 
武田美亜「コミュニケーションという名のもとにーこれまでされてきたこと,これからすべきことー」 
141118 日本原子力産業協会特別シンポジウム「コミュニケーションの重要性—原子力の理解に向けて女性の視点から—」

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  • 1. + コミュニケーションという 名のもとに —これまでされてきたこと, これからすべきこと— 武田美亜(青山学院女子短期大学) 141118 日本原子力産業協会特別シンポジウム 「コミュニケーションの重要性—原子力の理解に向けて女性の視点から—」
  • 2. + 武田美亜 (青山学院女子短期大学/ 国立科学博物館認定サイエンスコミュニケータ) 専門:社会心理学 関心:人々が他者や自己について認識・ 判断するしくみ 他者の“立場”に立とうとすること[視点取得] (科学技術)コミュニケーション これら心理過程に見られるエラーやバイアス 武田美亜「コミュニケーションという名のもとにーこれまでされてきたこと,これからすべきことー」 141118 日本原子力産業協会特別シンポジウム「コミュニケーションの重要性—原子力の理解に向けて女性の視点から—」
  • 3. + 本シンポジウムに対する私見 「女性」と括ってコミュニケーション を考えることは,得策ではない なぜか? では,どうすればよいのか? 武田美亜「コミュニケーションという名のもとにーこれまでされてきたこと,これからすべきことー」 141118 日本原子力産業協会特別シンポジウム「コミュニケーションの重要性—原子力の理解に向けて女性の視点から—」
  • 4. + なぜ, 「女性」と括ってコミュニケーションを 考えることが得策でないか 科学技術コミュニケーションにおいては, 欠如モデルからの脱却,双方向性が重要 「女性」と括ることは,コミュニケ—ションの 相手個人の属性やニーズを覆い隠し, 双方向的なコミュニケーションを阻害する 武田美亜「コミュニケーションという名のもとにーこれまでされてきたこと,これからすべきことー」 141118 日本原子力産業協会特別シンポジウム「コミュニケーションの重要性—原子力の理解に向けて女性の視点から—」
  • 5. + 科学技術コミュニケーション Science Communication: SC 科学技術の専門家が非専門家に対して 行なうコミュニケーション(文部科学省, 2011) SC(広義)の4本柱(林ら, 2005) 科学教育 (学校教育) 科学コミュ ニケーショ ン(狭義) 科学ジャー ナリズム 試験研究機関 等の広報・ 情報公開など のPR活動 科学館や研究施設の科学コミュニケータや研究者自身による, 一般市民との双方向性の高い「対話」 武田美亜「コミュニケーションという名のもとにーこれまでされてきたこと,これからすべきことー」 141118 日本原子力産業協会特別シンポジウム「コミュニケーションの重要性—原子力の理解に向けて女性の視点から—」
  • 6. + 科学技術基本計画(文部科学省, 2011) 科学技術に 関する 学習の振興 理解の増進 関心の喚起 社会との関連 社会への責任 の強調 双方向的コミュ ニケーションの 強調 2000年頃 BSE問題 武田美亜「コミュニケーションという名のもとにーこれまでされてきたこと,これからすべきことー」 141118 日本原子力産業協会特別シンポジウム「コミュニケーションの重要性—原子力の理解に向けて女性の視点から—」
  • 7. + 欠如モデル 原発や遺伝子組み換え食品の安全性など, 専門家による科学的評価を市民が受け入れ られないのは,市民の科学知識が欠如して いるせいだとする 知識の欠如している市民に一方的に知識を 伝える形のコミュニケーションをしようとする 武田美亜「コミュニケーションという名のもとにーこれまでされてきたこと,これからすべきことー」 141118 日本原子力産業協会特別シンポジウム「コミュニケーションの重要性—原子力の理解に向けて女性の視点から—」
  • 8. + 欠如モデルに対する批判 市民が科学技術を受け入れないのは, 知識が欠如しているからではない 市民は科学者とは違う知識や判断基準を持つ 科学技術(を専門的に扱う者)への不信 市民の属性や立場を理解し,ニーズを掬う ことが必要 武田美亜「コミュニケーションという名のもとにーこれまでされてきたこと,これからすべきことー」 141118 日本原子力産業協会特別シンポジウム「コミュニケーションの重要性—原子力の理解に向けて女性の視点から—」
  • 9. + 「女性」と括ること: カテゴリ化,ステレオタイプ化 人は,性別,年齢や人種などの目立った 特徴で人を分類しがち[カテゴリ化] カテゴリには,過度に一般化された認知 [ステレオタイプ]がある 人は,あるカテゴリに入る個人に対して, 勝手にステレオタイプを当てはめてしまう [ステレオタイプ化] 武田美亜「コミュニケーションという名のもとにーこれまでされてきたこと,これからすべきことー」 141118 日本原子力産業協会特別シンポジウム「コミュニケーションの重要性—原子力の理解に向けて女性の視点から—」
  • 10. + 「女性」と括ること: カテゴリ化,ステレオタイプ化 「女性」と括る(カテゴリ化する)と, 「女性だから●●」と十把一絡げな認知を してしまい,個人の属性を見なくなる また,ステレオタイプに一致する属性や ふるまいに注目しやすくなる こうなると,相手の属性や立場を理解し, ニーズを掬うことは難しい 武田美亜「コミュニケーションという名のもとにーこれまでされてきたこと,これからすべきことー」 141118 日本原子力産業協会特別シンポジウム「コミュニケーションの重要性—原子力の理解に向けて女性の視点から—」
  • 11. + 男性と女性の差とは何か? 「異なる」「差がある」といっても,統計上の 平均値が違うだけで,男女の性質が重複し ないわけではない 例)身長 例)共感スキル,システム化スキル (バロン-コーエン, 2005) 共感が得意な脳……女性に多い システム化が得意な脳…男性に多い 武田美亜「コミュニケーションという名のもとにーこれまでされてきたこと,これからすべきことー」 141118 日本原子力産業協会特別シンポジウム「コミュニケーションの重要性—原子力の理解に向けて女性の視点から—」
  • 12. + 共感スキル(Empathizing指数)の男女差 (若林ら(2006)のデータから作図) 0.05 0 平均値の差はあるが… 男女の得点の分布は かなり重複している 0 10 20 30 40 50 60 70 80 Empathizeing得点 男性女性 武田美亜「コミュニケーションという名のもとにーこれまでされてきたこと,これからすべきことー」 141118 日本原子力産業協会特別シンポジウム「コミュニケーションの重要性—原子力の理解に向けて女性の視点から—」
  • 13. + では,どうすればよいのか? 原子力に対する共感を得て,女性の理解, 納得につなげるためには…… 科学技術政策やリスク・マネジメントに おいては,人々の信頼を得ることが重要 不安や不信を減じて信頼を得るためには どうすればよいかを考える 武田美亜「コミュニケーションという名のもとにーこれまでされてきたこと,これからすべきことー」 141118 日本原子力産業協会特別シンポジウム「コミュニケーションの重要性—原子力の理解に向けて女性の視点から—」
  • 14. + 「原子力に携わる専門家や原子力 関係者を信頼できると思うか?」 (日本原子力文化振興財団(2013)の報告書より抜粋) 武田美亜「コミュニケーションという名のもとにーこれまでされてきたこと,これからすべきことー」 141118 日本原子力産業協会特別シンポジウム「コミュニケーションの重要性—原子力の理解に向けて女性の視点から—」
  • 15. + 信頼の規定因 能力(専門知識,技能など) 動機づけ(誠実さ,人柄など) 価値の共有 (問題を捉える枠組み, 何を重視するか, どのような結果を望むか) 動機づけ 認知 信頼 能力認知 価値共有 認知 武田美亜「コミュニケーションという名のもとにーこれまでされてきたこと,これからすべきことー」 141118 日本原子力産業協会特別シンポジウム「コミュニケーションの重要性—原子力の理解に向けて女性の視点から—」
  • 16. + 具体的に,信頼を高めるために… 自発的な運命共同化(中谷内, 2014) 信頼される側が不適切な行動をすると, 本人もその被害を被るような状況に, 自発的に入ること 自発的に運命共同化すると,受動的に 運命共同化した場合や,運命共同化 しなかった場合に比べて,信頼される側は より信頼できると評定された 武田美亜「コミュニケーションという名のもとにーこれまでされてきたこと,これからすべきことー」 141118 日本原子力産業協会特別シンポジウム「コミュニケーションの重要性—原子力の理解に向けて女性の視点から—」
  • 17. + まとめ 「女性」と括ってコミュニケーションを考える ことは,得策ではない コミュニケーションの相手に対して,相手を カテゴリ化して対処法を考えるのでなく, 相手の視点を取ることや,相手の視点を 取っていることを相手に認識してもらう 方法を考えることが有効であろう 武田美亜「コミュニケーションという名のもとにーこれまでされてきたこと,これからすべきことー」 141118 日本原子力産業協会特別シンポジウム「コミュニケーションの重要性—原子力の理解に向けて女性の視点から—」
  • 18. + 参考文献 藤垣裕子・廣野喜幸(編) (2008). 科学コミュニケーション論東京大学 出版会 上瀬由美子(2002). ステレオタイプの社会心理学偏見の解消に向け てサイエンス社 岸田一隆(2011). 科学コミュニケーション理科の〈考え方〉をひらく 平凡社(平凡社新書) 中谷内一也(2006). リスクのモノサシ安全・安心生活はありうるか 日本放送出版協会(NHKブックス) 中谷内一也(編) (2012). リスクの社会心理学人間の理解と信頼の 構築に向けて有斐閣 武田美亜「コミュニケーションという名のもとにーこれまでされてきたこと,これからすべきことー」 141118 日本原子力産業協会特別シンポジウム「コミュニケーションの重要性—原子力の理解に向けて女性の視点から—」
  • 19. + 引用文献 バロン-コーエン, S. (著)三宅真砂子(2005). 共感する女脳,システム化する 男脳日本放送出版協会 林衛・加藤和人・佐倉統(2005). なぜいま「科学コミュニケーション」なのか? 遺伝,59, 30-34. 文部科学省(2011). 平成23年版科学技術白書文部科学省 中谷内一也(2014). 運命共同化による信頼の改善日本社会心理学会第55 回大会発表論文集, 120. 日本原子力文化振興財団(2013). 平成24年度原子力利用に関する世論調 査の結果について(平成25年2月発行「平成24年原子力利用に関する世 論調査」報告書より抜粋) 日本原子力文化振興財団 若林明雄・S. バロン-コーエン・S. ウィールライト(2006). Empathizing- Systemizingモデルによる性差の検討—Empathizing指数(EQ)と Systemizing指数(SQ)による— 心理学研究, 77, 271-277. 武田美亜「コミュニケーションという名のもとにーこれまでされてきたこと,これからすべきことー」 141118 日本原子力産業協会特別シンポジウム「コミュニケーションの重要性—原子力の理解に向けて女性の視点から—」

Editor's Notes

  1. ・所属する学校名だけでは,専門分野等,私が何者なのかおわかりいただけないと思うので,簡単に自己紹介 ・社会心理学,中でも社会的認知と呼ばれる領域。具体的には,自己,他者や社会的事項についての認知,判断。他者の立場になって考える,という専門的には視点取得と呼ばれる心理過程,それを使って成り立っているコミュニケーション,最近特に科学技術コミュニケーションに関心,特にそういう心理過程に見られるエラーやバイアス,その結果としてのコミュニケーションの失敗などに関心があります。
  2. 僭越ながら,本シンポジウムに対して,そもそも「女性」と括ってコミュニケーションを考えることは得策ではないと申し上げたい。なぜそういえるか,ではどうすればよいのか,ということを簡単にお話しする。
  3. まず,なぜ得策でないか。ここでは2点にまとめた。まず原子力を含むSCにおいて,欠如モデルからの脱却や双方向性が重要だということ,そして,そうだとするならば,女性と括ることはコミュニケーションの相手となる個人の属性やニーズを覆い隠し,一方的にこちらが伝えたい情報を(さもそれが足りないのだろうといわんばかりに)流すだけになってしまい,双方向的なコミュニケーションを阻害する, 以下,この2点についてもう少し詳しく
  4. ここでは大雑把にSCの定義(一義的に決まってはいないが)を紹介する。PR活動や広報はもういろいろとなさっているだろうから,問題となるのは狭義の科学コミュニケーション。 なお,リスクコミュニケーションも含まれる。
  5. 1996年に第1期が策定された。 SCという名で活動が活発に行なわれるようになってきたのは2005年。当初は理科離れ,科学離れが懸念されていたので,関心を持ってもらう,理解してもらうことが主目的であった。しかしBSE問題(日本の場合,農水省の発表に噓(というか間違い)があった)以降,科学への不信が高まった。知らないから怖がるというよりは,得られる情報が信じられないということが問題。そこで一方的に情報を与えるのでなく,情報を信じてもらい,一方的な説得や強制ではなく,納得(理解はもうしているが納得はできないという場合)してもらえるように,相手の出方を見る,双方向性が重視されるようになった。
  6. 女性は感情的,理数系が苦手,甘いものが好き,とか ほかの例をあげるならアフリカ系アメリカ人は音感がいい,とか
  7. ステレオタイプ化するつもりはなく,より性質に応じたコミュニケーションを,ということかもしれないが,そもそも男女とはそんなに違うのか
  8. 差がないとは言わない。が,あくまで平均上の違い。 共感……他者が何を感じ,考えているかを知り,それに対して適切な感情反応を起こす システム化……物事(機械,組織,楽曲など,いろんなもの)のシステムを分析,検討し,システムのパタンを決める規則を探ったり,システムを構築したりする バロンコーエンは,生物学的に違うのだから平均を見れば差はもちろんあるのだが,あくまで平均的な女性と男性を比較した場合の話で,統計上の平均値の話をしているに過ぎず,こうした性差の研究はステレオタイプ化をするためにあるわけではないと強調している。 男女の平均値に差があったとして,今目の前にいる男性ないし女性がどういう特徴を持つかを知ることはできない。
  9. 論文にあった平均値と標準偏差から正規分布を描いたもの(正規分布が仮定できることは論文内で確認されている)
  10. 今回のシンポジウムの案内文にあったフレーズからお借りしました:「広く原子力に対する共感を得て,理解,更には納得につなげるために必要なコミュニケーションのありかた」というのが今回のテーマですが,
  11. 信頼できないといっている人の割合は男性の方がむしろ多い
  12. 信頼を得る,と申しましたが,全く信頼を得ていないわけではないでしょうし,信頼を得るためにいろいろと努力はなさっているに違いないでは,もっと信頼を高めるためにどうすればよいか, ここで,信頼が何からできているか,社会心理学の研究で近年言われていることをご紹介します。 信頼とは,古典的には能力と動機から出来ていました。 が,最近(といっても1990代),新しいモデルができて,信頼する側のが,自分と信頼される側の価値が似ているかどうかも使って,信頼するかどうかを決めているという。