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企業で"も"活躍できる人材像:
企業が院卒者のためにできること、
教育機関としての大学に望むこと
ウェザーニューズ(WNI)
萩行 正嗣
Twitter: @mhangyo
2021/3/19
若手研究者交流のニューノーマルを考える
2
自己紹介
萩行 正嗣 (はんぎょう まさつぐ)
2014年3月: 博士を京大黒橋・河原研で取得(D4)
当時のテーマ: ゼロ照応解析
京都大学ウェブ文書リードコーパス(KWDLC)の構築
2014年4月:ウェザーニューズ(WNI)入社
2014年6月: 航海気象予測チーム配属
2014年11月: AIプロジェクトの立ち上げにともない異動
2018年11月- : SIP「国家レジリエンス(防災・減災)の強化」
防災チャットボットの開発に従事
3
10年前を振り返って
▪ 2011年3月11日
➢ NLP2011-WS「自然言語処理における企業と大学と学生の関係」
➢ 優秀な博士の学生 × 研究力が欲しい企業のマッチングに見えた
➢ 博士課程で苦戦していた自分はどうすればいいか分からなかった
4
博士が100人いる村
(中略)
5
6
今日のテーマ
不幸にならない選択肢を増やしたい
7
何故、企業で働くことを決断したか?
8
何故、博士課程に進学したか?
▪ 親が大学教授だったので研究職に憧れがあった
▪ 修士で就職した場合、
NLPの仕事を続けることは出来ない可能性が高いと思った
▪ M1の5月にNL研の学生奨励賞とって、
自分は研究に向いてるんじゃないかと思った
ぶっちゃけ、そんなに深く考えてなかった
9
博士課程を振り返って
▪ D1: 修士の時のテーマ(語彙知識獲得)を続けるも芽が出ず
▪ D2: ゼロ照応解析にテーマ変更
▪ D3:
➢ 3-5月: 少しだけ就活(2社)してやめる
➢ 11月:PACLIC 26 初めての国際会議
▪ D4:
➢ 1-5月: 就活。複数の会社に落ちた後、現職に内定。
➢ 10月: EMNLP2013
➢ 1月: 「自然言語処理」コーパス特集号採択通知
➢ 4月: 「自然言語処理」採択通知
就活の時の話は、Dの会の招待講
演でやらせてもらいました。
スライド欲しい方はDMください
10
博士課程の間に分かったこと
▪ 研究は好きだけど、「論文を書くための研究」は苦手
▪ 英語が苦手なことは誤魔化しが効かない
➢ それなのに英語学習から逃げ続けていた
▪ 有期職を渡り歩く生活は厳しそう
自分が研究職に向いてないと理解できた
11
NLP業界を去る気満々のツイート群
12
研究職を選ばない
&
専門性を活かさない
博士課程の生き方をどう考えるか
13
専門性を活かさない?
▪ NLPの知見は活かさないの?
➢ ブームがいつまで続くのか分からない
➢ 言語学系の人もいる
➢ 個人の想いとしては、博士課程全体のテーマとしたい
➢ 現状では強みになるのは事実
▪ エンジニアは?
➢ 就活において強みになるレベルのコーディングは厳しい
➢ 世の中とNLPの技術スタックに差がある時期は逆風が吹き荒れる
➢ エンジニアリングは研究にも役立つのも事実
14
博士のイメージを変える
○ 優秀だから博士に進学している
給料を高くしないといけない
○ 研究の仕事をすべき
○ 専門性を活かす = 専門職に付くべき
× コミュニケーションが苦手そう
× 仕事を選り好みしそう
× 年をとっていて面倒そう
× 社会人スキルなさそう
○ 優秀じゃない人もいる
厚遇しなくてもいい
○ 研究以外の仕事をしたい人もいる
○ 専門性は以外な場面で活きてくる
× コミュニケーションは人に依る
「ウェーイ!」って感じだけがコミュ
ニケーションじゃない
× 仕事を選り好みする余裕ない人もい
る
× そもそも年齢関係ないのでは?
× Officeの扱いとかプレゼンとかテク
ニカルライティングとか強い
15
学生自身
▪ 就活をするなら真面目にやる
➢ 馬鹿馬鹿しい就活マナーもちょっとは知っとく
➢ 就活マナーに価値があるわけではなく、世の中に合わせられるとい
うアピール
➢ 大学のキャリアセンターなども活用
▪ 博士号を取得することをゴールにしない
➢ 論文を書くこと以外に様々なスキルをしっかり身に付ける
- IT開発力
- プレゼン力
- ディスカッション力
- 教育力
- 幅広い学術知識
”The illustrated guide to a Ph.D.”
Ph.D
こういう形にしない
16
大学(研究室)
▪ 幅広い知識を身に付ける講義(学部、修士)
▪ 研究室内での活発な研究交流
➢ 質疑応答スキルは質問する側、される側ともに重要
▪ テクニカルライティング、プレゼン力の徹底的な赤入れ
➢ 日本の教育では、研究室で磨くしかない
= 博士課程の学生の社会人としての武器となる
17
企業
▪ 年功序列、学歴、資格で固定的に評価しない、
仕事を決めつけない
▪ 自社の評価軸で育った、同年齢の社員と比較しない
▪ 博士課程は3年でとれる保障はないことを理解する
➢ 面談時に「博士取れるか分からない」って言われてもひかない
➢ 内定時には3年でとれなかった場合について学生と相談
- 取らずに就職できるか?待遇は?
18
先に社会に潜り込んだ我々
▪ 「博士の人を採用したい!」って企業が思うように頑張る
▪ 自分の「しあわせ」のためにも、
与えられた場所で咲くように割り切る
▪ でも、チャンスがあれば専門性を発揮して会社に貢献
➢ お金をつけた共同研究できるとなおよい
19
さいごに
▪ きたるべき冬の時代に備えて
➢ 博士課程の学生の数を保つことは分野にとって重要
- 進学リスクを減らす
➢ 分野に依存しない博士課程のキャリア形成
- 他の分野の博士の学生にも優しい手を
➢ 「学会運営支援」「秘書」みたいなアカデミック知ってるからでき
る職を増やす?
20
NLP2021 ws4 hangyo

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