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NCR2018をめぐる課題
@令和3年度書誌調整連絡会議
2022-03-01
日本女子大学文学部 木村麻衣子
1
おことわり
本日お話する内容は木村個人の考えに基づくものであり,
日本図書館協会目録委員会その他
木村が所属する団体の見解を代表するものではありません。
2
現在地の確認 1/2
• 2018年12月 『日本目録規則2018年版』(以下,NCR2018)刊行
• (慶應義塾大学メディアセンターが2019年4月に和書にもRDAを適用開始)
• 2021年1月 国立国会図書館がJAPAN/MARC MARC21フォーマット(書
誌/典拠)に対してNCR2018を適用開始
• 2021年12月 日本図書館協会目録委員会が「日本目録規則2018年版データ作
成事例」を公開
• 2022年1月 株式会社図書館流通センターがTRC MARC/Tタイプ+典拠
ファイルTに対してNCR2018を適用開始
3
現在地の確認 2/2
• (司書課程等ではまだ1987年版に基づく目録作
成を教えていることも多い)
• 2022年1月 解説書『「日本目録規則
2018年版」入門』刊行
• 2022年度末? 「新NACSIS-
CAT/ILL」がNCR2018に対応予定
4
↑イマココ↑
課題は3階層に分けられる
1. NCR2018自体の課題
a. 旧版RDA由来の課題
b. NCR2018固有の課題
2. NCR2018適用上の課題
a. 典拠コントロール
b. 「適用」の幅が広い
c. 人がいない
3. NCR2018で作成されたデータの活用上の課題
a. 消極的記録
b. 仕様が書けない
1
2
3
5
課題は3階層に分けられる
(が相互に関係している)
1. NCR2018自体の課題
a. 旧版RDA由来の課題
b. NCR2018固有の課題
2. NCR2018適用上の課題
a. 典拠コントロール
b. 「適用」の幅が広い
c. 人がいない
3. NCR2018で作成されたデータの活用上の課題
a. 消極的記録
b. 仕様が書けない
1
2
3
6
【前提】RDA Toolkit Restructure and
Redesign Project (3R Project)
• 2016-2020にかけて行われた,RDAの再構築(大改訂)プロジェクト
• RDAの構成を大きく変更するとともにIFLA LRM準拠となった
7
旧版 新版
画像の出典:https://www.rdatoolkit.org/
1. NCR2018自体の課題
1-a. 旧版RDA由来の課題 1/2
① 難しい・使いづらい・重い・わかりにくい
• FRBR等由来の新概念を多数取り入れたため,どうしようもない面もある
解決策:丁寧な解説に努める
• 紙媒体は重い⇔PDFは細切れになっており使いづらい(大人の事情?)
• RDA Toolkitのようなサイトを構築・維持するには人力不足+高額
解決策:???
• 新版RDAでは,多少整理されている部分もある
解決策:NCR2018の改訂←人力不足のため当面無理
8
1. NCR2018自体の課題
1-a. 旧版RDA由来の課題 2/2
② 目指すべき標準化の程度が超ゆるやか
• RDAは膨大なエレメントを提供することで目録データの国際的な(最低限の)相互
運用性を高めようとするもの
• 国立図書館やコミュニティごとのPolicy Statement(PS)のほか,新RDAでは,ど
のエレメントを用いるかをApplication Profile(AP)によって各機関が定める前提
• 旧RDAの多様な選択肢をNCR2018に持ち込んだため,さまざまな適用パターンが
ありえる⇒国内の目録データの標準化レベルが下がりかねない
解決策1:国レベル,あるいは館種ごとのレベルでPSやAPに相当するものを策定する。
館種を越えて共有できると尚可
解決策2:典拠コントロールをちゃんとやる(北米ではここをしっかりやっているから「最
低限の」相互運用性でもOKだが,日本では・・・)
9
1. NCR2018自体の課題
1-b. NCR2018固有の課題 1/2
① 等価標目方式に由来する課題
• (#22.1.2) アクセス・ポイントがやたら長くなる→視認性が落ちる
• (#22.1.2別法)「最も主要な責任を有する」創作者をどのように決めるの
か,指示がない(RDAではAACR2の規定を暗黙的に流用?)
解決策:???
10
1. NCR2018自体の課題
1-b. NCR2018固有の課題 1/2
② 委員会の体制の問題
• その他の諸々の問題・・・hindsight is 20/20
• RDAの多様な選択肢をそのまま持ち込んで良かったのか
• ローマ字表記法,ワカチガキなどこそ標準化すべきでは
• 和資料に多く見られる関連指示子を用意すべきだったのでは
• 「固有のタイトル」定義しなくて良いのか
• 和古書漢籍関連条項を利用者タスクを検討せずに移入
• そうは言っても目録委員会のボランティアベースではできることに限界がある
解決策:日本の目録規則の策定・改訂を今後どの機関がどのように担うのかという
根本から議論する
cf. 中韓台では
11
2. NCR2018適用上の課題
2-a. 典拠コントロール
• 意義すら伝わっていない,惨憺たるありさま
解決策:典拠形アクセス・ポイントは勿論のこと,データ中に使用する語彙をで
きるだけ標準化する
• 典拠形アクセス・ポイントのための典拠ファイル(個人,団体,著作等)の整備(館種
を越えて共有できると尚可)
• 関連指示子の追加・整備
• 様々なエレメント(ジャンル,職業,利用対象者,etc.)で使用する統制語彙の整備
cf. 国立国会図書館ジャンル・形式用語表(NDLGFT),米国議会図書館人口統計グ
ループ用語(LCDGT)
• NCR2018の守備範囲ではないが,件名の将来についてもきちんと考えたほうがよい(現
状, 付与しない→検索に使えない→付与しない,の悪循環)
12
2. NCR2018適用上の課題
2-b. 「適用」の幅が広い
• どこまでやれば「NCR2018を適用」したことになるのか,基準はない
例1:関連指示子は付録にないから,判断できないから,今使ってるフォー
マットを拡張できないから,どうせ検索できないから,・・・・「記録しない」 ←こ
れでも「適用」
例2:著作の典拠形アクセス・ポイントを記録するのは古典籍と翻訳書だけ
←これでも「適用」
解決策:最終的にどのような検索を提供したいのか具体的なゴールのもとに
適用度を決める
13
2. NCR2018適用上の課題
2-c. 人がいない
• NCR新版予備版(1977)における等価標目方式導入によって目録担当
者から「標目」を選定する専門性が失われた
• コピー・カタロギングの普及で目録が「合理化」,委託化が進んだ
• 目録担当者の多くは自館のフォーマットには詳しいが,目録の理論や原則
を必ずしも理解していない
• 以上より,新しい原則のもとに策定された目録規則を理解し,自館の目
録にどのように適用させるかを考えることのできる人材が不足している
解決策:人を獲得し,育てる
14
3. データの活用上の課題
3-a. 消極的記録
• 記録が難しい,必須ではない,etc. →記録しない→データがあまりない
→検索機能としては存在するが,有益な検索結果にならない→その検
索機能は使わない→検索機能としてもいらない→利用者に提供すべき
検索機能が十分に果たせない
解決策:多くのエレメントを標準的な方法で記録できるよう,関連指示
子などの統制語彙を整備
15
3. データの活用上の課題
3-b. 仕様が書けない
• データがあまりない,こうしたいという人もいない→ベンダーはどのような検索機
能をつければいいのかわからない→素敵な検索機能はつかない→データ蓄積さ
れてきた→検索は不可能→データが無駄,利用者も不便
• 様々なデータを追加しても,それらを検索に活かすことができなければ無意味
• 検索機能の拡張は必須,では誰が仕様を書くのか?
• 目録データを理解しており,「こういう検索がしたい」と言える図書館員
• 解決策①:人を獲得し,育てる
• 解決策②:目録委員会や適用済機関がデータ事例の公開を進める(それを
もとに,各機関の図書館員が,どのような検索機能を提供したいのかベンダー
とともに検討できるようにする)
16
i. 国レベルで館種を越えてPSやAPに相当するものを策定し,共有すべき
• 典拠形アクセス・ポイントの構築に関する詳細なルールもここに書かれるべき
ii. アクセス・ポイントの典拠コントロールを館種を越えてやるべき
iii. 関連指示子その他の統制語彙を拡充し公開すべき
iv. 日本の目録規則の策定・改訂を今後どの機関がどのように担うのかという根
本から議論すべき
• 件名のことも
v. 目録データを作成できる図書館員がOPACの仕様策定に関わるべき(それ
ができる図書館員を養成すべき)
vi. データ事例をたくさん公開するべき
vii. 上質なメタデータを作るためには人が足りないと叫ぶべき
17
まとめ:よりよい「適用」のために
NCR2018は日本の図書館目録は将来こう
あったらよいのでは,という目録委員会からの提
案。一つの理想であり,希望
それにこたえるかどうか(どの程度「適用」するの
か,しないのか)を決めるのは現場
今後数年の適用判断が,図書館目録,ひい
ては図書館の未来を左右する
最後に
18

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  • 3. 現在地の確認 1/2 • 2018年12月 『日本目録規則2018年版』(以下,NCR2018)刊行 • (慶應義塾大学メディアセンターが2019年4月に和書にもRDAを適用開始) • 2021年1月 国立国会図書館がJAPAN/MARC MARC21フォーマット(書 誌/典拠)に対してNCR2018を適用開始 • 2021年12月 日本図書館協会目録委員会が「日本目録規則2018年版データ作 成事例」を公開 • 2022年1月 株式会社図書館流通センターがTRC MARC/Tタイプ+典拠 ファイルTに対してNCR2018を適用開始 3
  • 4. 現在地の確認 2/2 • (司書課程等ではまだ1987年版に基づく目録作 成を教えていることも多い) • 2022年1月 解説書『「日本目録規則 2018年版」入門』刊行 • 2022年度末? 「新NACSIS- CAT/ILL」がNCR2018に対応予定 4 ↑イマココ↑
  • 5. 課題は3階層に分けられる 1. NCR2018自体の課題 a. 旧版RDA由来の課題 b. NCR2018固有の課題 2. NCR2018適用上の課題 a. 典拠コントロール b. 「適用」の幅が広い c. 人がいない 3. NCR2018で作成されたデータの活用上の課題 a. 消極的記録 b. 仕様が書けない 1 2 3 5
  • 6. 課題は3階層に分けられる (が相互に関係している) 1. NCR2018自体の課題 a. 旧版RDA由来の課題 b. NCR2018固有の課題 2. NCR2018適用上の課題 a. 典拠コントロール b. 「適用」の幅が広い c. 人がいない 3. NCR2018で作成されたデータの活用上の課題 a. 消極的記録 b. 仕様が書けない 1 2 3 6
  • 7. 【前提】RDA Toolkit Restructure and Redesign Project (3R Project) • 2016-2020にかけて行われた,RDAの再構築(大改訂)プロジェクト • RDAの構成を大きく変更するとともにIFLA LRM準拠となった 7 旧版 新版 画像の出典:https://www.rdatoolkit.org/
  • 8. 1. NCR2018自体の課題 1-a. 旧版RDA由来の課題 1/2 ① 難しい・使いづらい・重い・わかりにくい • FRBR等由来の新概念を多数取り入れたため,どうしようもない面もある 解決策:丁寧な解説に努める • 紙媒体は重い⇔PDFは細切れになっており使いづらい(大人の事情?) • RDA Toolkitのようなサイトを構築・維持するには人力不足+高額 解決策:??? • 新版RDAでは,多少整理されている部分もある 解決策:NCR2018の改訂←人力不足のため当面無理 8
  • 9. 1. NCR2018自体の課題 1-a. 旧版RDA由来の課題 2/2 ② 目指すべき標準化の程度が超ゆるやか • RDAは膨大なエレメントを提供することで目録データの国際的な(最低限の)相互 運用性を高めようとするもの • 国立図書館やコミュニティごとのPolicy Statement(PS)のほか,新RDAでは,ど のエレメントを用いるかをApplication Profile(AP)によって各機関が定める前提 • 旧RDAの多様な選択肢をNCR2018に持ち込んだため,さまざまな適用パターンが ありえる⇒国内の目録データの標準化レベルが下がりかねない 解決策1:国レベル,あるいは館種ごとのレベルでPSやAPに相当するものを策定する。 館種を越えて共有できると尚可 解決策2:典拠コントロールをちゃんとやる(北米ではここをしっかりやっているから「最 低限の」相互運用性でもOKだが,日本では・・・) 9
  • 10. 1. NCR2018自体の課題 1-b. NCR2018固有の課題 1/2 ① 等価標目方式に由来する課題 • (#22.1.2) アクセス・ポイントがやたら長くなる→視認性が落ちる • (#22.1.2別法)「最も主要な責任を有する」創作者をどのように決めるの か,指示がない(RDAではAACR2の規定を暗黙的に流用?) 解決策:??? 10
  • 11. 1. NCR2018自体の課題 1-b. NCR2018固有の課題 1/2 ② 委員会の体制の問題 • その他の諸々の問題・・・hindsight is 20/20 • RDAの多様な選択肢をそのまま持ち込んで良かったのか • ローマ字表記法,ワカチガキなどこそ標準化すべきでは • 和資料に多く見られる関連指示子を用意すべきだったのでは • 「固有のタイトル」定義しなくて良いのか • 和古書漢籍関連条項を利用者タスクを検討せずに移入 • そうは言っても目録委員会のボランティアベースではできることに限界がある 解決策:日本の目録規則の策定・改訂を今後どの機関がどのように担うのかという 根本から議論する cf. 中韓台では 11
  • 12. 2. NCR2018適用上の課題 2-a. 典拠コントロール • 意義すら伝わっていない,惨憺たるありさま 解決策:典拠形アクセス・ポイントは勿論のこと,データ中に使用する語彙をで きるだけ標準化する • 典拠形アクセス・ポイントのための典拠ファイル(個人,団体,著作等)の整備(館種 を越えて共有できると尚可) • 関連指示子の追加・整備 • 様々なエレメント(ジャンル,職業,利用対象者,etc.)で使用する統制語彙の整備 cf. 国立国会図書館ジャンル・形式用語表(NDLGFT),米国議会図書館人口統計グ ループ用語(LCDGT) • NCR2018の守備範囲ではないが,件名の将来についてもきちんと考えたほうがよい(現 状, 付与しない→検索に使えない→付与しない,の悪循環) 12
  • 13. 2. NCR2018適用上の課題 2-b. 「適用」の幅が広い • どこまでやれば「NCR2018を適用」したことになるのか,基準はない 例1:関連指示子は付録にないから,判断できないから,今使ってるフォー マットを拡張できないから,どうせ検索できないから,・・・・「記録しない」 ←こ れでも「適用」 例2:著作の典拠形アクセス・ポイントを記録するのは古典籍と翻訳書だけ ←これでも「適用」 解決策:最終的にどのような検索を提供したいのか具体的なゴールのもとに 適用度を決める 13
  • 14. 2. NCR2018適用上の課題 2-c. 人がいない • NCR新版予備版(1977)における等価標目方式導入によって目録担当 者から「標目」を選定する専門性が失われた • コピー・カタロギングの普及で目録が「合理化」,委託化が進んだ • 目録担当者の多くは自館のフォーマットには詳しいが,目録の理論や原則 を必ずしも理解していない • 以上より,新しい原則のもとに策定された目録規則を理解し,自館の目 録にどのように適用させるかを考えることのできる人材が不足している 解決策:人を獲得し,育てる 14
  • 15. 3. データの活用上の課題 3-a. 消極的記録 • 記録が難しい,必須ではない,etc. →記録しない→データがあまりない →検索機能としては存在するが,有益な検索結果にならない→その検 索機能は使わない→検索機能としてもいらない→利用者に提供すべき 検索機能が十分に果たせない 解決策:多くのエレメントを標準的な方法で記録できるよう,関連指示 子などの統制語彙を整備 15
  • 16. 3. データの活用上の課題 3-b. 仕様が書けない • データがあまりない,こうしたいという人もいない→ベンダーはどのような検索機 能をつければいいのかわからない→素敵な検索機能はつかない→データ蓄積さ れてきた→検索は不可能→データが無駄,利用者も不便 • 様々なデータを追加しても,それらを検索に活かすことができなければ無意味 • 検索機能の拡張は必須,では誰が仕様を書くのか? • 目録データを理解しており,「こういう検索がしたい」と言える図書館員 • 解決策①:人を獲得し,育てる • 解決策②:目録委員会や適用済機関がデータ事例の公開を進める(それを もとに,各機関の図書館員が,どのような検索機能を提供したいのかベンダー とともに検討できるようにする) 16
  • 17. i. 国レベルで館種を越えてPSやAPに相当するものを策定し,共有すべき • 典拠形アクセス・ポイントの構築に関する詳細なルールもここに書かれるべき ii. アクセス・ポイントの典拠コントロールを館種を越えてやるべき iii. 関連指示子その他の統制語彙を拡充し公開すべき iv. 日本の目録規則の策定・改訂を今後どの機関がどのように担うのかという根 本から議論すべき • 件名のことも v. 目録データを作成できる図書館員がOPACの仕様策定に関わるべき(それ ができる図書館員を養成すべき) vi. データ事例をたくさん公開するべき vii. 上質なメタデータを作るためには人が足りないと叫ぶべき 17 まとめ:よりよい「適用」のために