5分で
わかった気にさせるない
Microsoft Quantum
JAZUG Night
Microsoft MVP, Ph.D. @tanaka_733
Goal
◦ Igniteでの発表や関連記事をもとに、
現在のMicrosoftの量子コンピューターへの取り組みを
Q&A形式でまとめてみました
◦ 前提知識は特にないですが、
時間の関係上詳細な説明は省いています
◦ 私自身、勉強中なので、間違いがあればご指摘を
◦ 超低温(10μK)における3次元MRIの実現と
固体ヘリウム3の磁気一次相転移の研究をしてました
Igniteで何を
発表したのか
MR, AIと並んで量子コンピューターに注力
https://youtu.be/d7f_GZsQMpA?t=56m31s
https://youtu.be/d7f_GZsQMpA?t=56m31s
https://youtu.be/d7f_GZsQMpA?t=1h4m14s
Igniteで何を発表したのか
◦ Dr. Michael Freedman: 数学者
◦ トポロジー(位相幾何学)関連でフィールズ賞受賞
◦ Dr. Charlie Marcus: 物理学者
◦ 凝縮系物理、実験系
◦ Dr. Leo Kouwenhoven: 物理学者
◦ 量子デバイスの開発
◦ Dr. Krysta Svore: コンピューター科学者
◦ 量子コンピューティングを行うためのツールセットの開発
Igniteで何を発表したのか
◦ 量子コンピューター向けプログラミング言語のプレビューを
年内に公開
◦ F#に似ているという話もあるものの詳細は不明(日本MS CTOの発言を編集者が正確に記事にしていない気がする…)
◦ Visual Studioに統合 MSお得意のパターン
◦ シミュレーターにより通常のマシンでも実行可能
◦ 量子コンピューターをAzureにも搭載予定
◦ AI関連で力を発揮できそうという見込み
量子コンピューターとは?
◦ 既存のコンピューターは情報をビット(bit)で扱う
◦ 0か1
◦ 量子コンピューターは量子ビット(Qubit)で扱う
◦ 0と1の重ね合わせの状態
◦ 重ね合わせた状態に対し演算操作を行えるため、
n Qubitあると 2n の状態を同時に計算できる
量子コンピューターは万能?
◦ いまのところ、いいえ。
◦ 理論的には完全上位互換とも言われているが
それを実現できるデバイスが開発されていない
◦ デバイスの方式として大きく2種類
◦ 汎用的な量子ゲート方式
◦ 量子アニーリングなどの特化型(特に組み合わせ最適化問題)
◦ 汎用型で力を発揮できるアルゴリズムはいくつか見つかっている
◦ ショアのアルゴリズム(素因数分解)
◦ 素因数分解を多項式時間で解ける
◦ グローバーのアルゴリズム(データ検索)
◦ n個のデータの中からある特定のデータを√nステップで検索できる
◦ ドイッチュ・ジョサのアルゴリズム
研究しているのはMSだけ?
◦ いいえ。IBMやGoogle、MITなどもしています
◦ IBMはすでに一般の人が利用可能な
量子コンピューターをリリースしています
◦ http://www-03.ibm.com/press/us/en/pressrelease/49661.wss
◦ https://www.ibm.com/developerworks/jp/cloud/library/cl-quantum-
computing/index.html
◦ GoogleもMITと共同で9Qubitまで実験に成功したとか
◦ トポロジカル量子コンピューターがMSの特徴
◦ 東大などのグループも研究 (2016年1月)
トポロジカル絶縁体による4π周期の超伝導状態を世界で初めて観測
なぜ、
トポロジカル量子コンピューターなの?
◦ 一般利用に耐えうる大規模演算に向いているとMicrosoftは
考えているから(だと思う)
◦ 従来の手法の量子コンピューターだと、
外界とのやりとりにおける
演算エラーが無視できないほど大きくなる
◦ トポロジカル量子コンピューターだと
エラーを無視できる程度に小さくできそう
トポロジカル量子コンピューターは
なぜエラーが小さくなるの?
◦ トポロジカルを両端を結んだひもの輪と表現している
◦ ひもの輪はいったんひもを切らないと別の輪の状態にならない
◦ 「マヨラナ粒子」がこのようなふるまいをすると言っている
◦ ディラック方程式に従うフェルミ粒子の中でも
粒子と反粒子が同一になるような、電気的に中性な粒子
◦ 目に見えるひもがあるわけでも、物理的な粒子があるわけでもない
系をそのように記述するとうまく理論が説明できる
◦ この状態は通常の量子ビットより安定している
◦ そのため大規模にしてもエラーが小さくなると期待できる
◦ トポロジカル絶縁体と超伝導体の接合で実現している模様
◦ 物質内部は絶縁体だけどエッジにのみ金属状態が生じているようなもの
Igniteで展示されていたこれは何?
Igniteで展示されていたこれは何?
◦ 希釈冷凍機+量子デバイスを制御・測定する装置
◦ 希釈冷凍機は10~100mK程度の低温を連続的に実現できます
◦ デバイスを制御、測定するために多数のリードがあります
◦ 電流による磁場の影響とか、熱流入とかを防ぐために
おそらくあんな格好になっている
◦ 人類が到達可能な最低温度ではありません
◦ 核断熱消磁などの方法でさらに1桁以上小さい温度が実現できます
◦ Microsoftの近年の論文を見る限り、
冷凍機関連で特殊なことはしていない模様
どうやって冷やすの(1)?
希釈冷凍機温度への到達
77K: 液体窒素。ミネラルウォーターぐらいのお値段
4K: 液体ヘリウム。液体窒素の10~100倍くらいの値段。
病院のMRIなど研究施設以外でも見られる
1K: 液体ヘリウムを減圧冷却。
通常、希釈冷凍機の一部
1~100mK: 希釈冷凍機
300K: 約27℃ 常温。
10μ~100μK: 断熱消磁
(3K: 宇宙の温度。宇宙背景放射)
熱力学第二法則により絶対零度に限りなく近づけるけど到達できないのです
温度が下がるほど
より温度を下げるのが
困難に
どうやって冷やすの(2)?
希釈冷凍機の原理
希釈冷凍機はヘリウム4(声を高くするあのガス)
とその同位体ヘリウム3の混合溶液を利用します
超低温下で二相に分離し、
◦ ヘリウム3希薄相側は絶対零度でも6.6%溶け残ること
◦ ヘリウム3の蒸気圧は有限に保たれること
◦ 両相のエントロピー差が冷却能力となること
などを利用して冷却します
◦ 理系学部生程度の知識で導出できるよ!
まとめ
◦ 使いたい人は、年内のプレビューを待とう
◦ まずはシミュレーターなので普通のPCで動くはず
◦ 詳しく知りたい人は…?
◦ 特有のアルゴリズムを知りたいならいわゆる情報系の数学
◦ トポロジー量子コンピューターそのもののはトポロジー(位相幾何)
◦ どうやって実現させているかは凝縮系物理
◦ 量子力学とか量子統計とか相対論的量子力学とか
電磁気とか流体力学とかその辺

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