松尾匡「マクロ経済学入門」第２話 財市場均衡と貯蓄・投資バランス

1. マクロ経済学入門
第２話 財市場需給と貯蓄・投資バランス
立命館大学経済学部 松尾匡

2. 政府も貿易も省略した
一番簡単な財市場均衡式は
生産 消費 投資
両辺からＣを引くと

3. Ｙ−Ｃというのは？
所得
所得から消費を引いた残り
すなわち
貯蓄 Saving
の頭文
字
※ 「≡」(三本線の
イコール)は、必ず
成り立つ等号を意
味し、定義や恒等
式で使います。

4. 貯蓄・投資の大小は？
• 財市場の需給関係と同じこと！
貯蓄・投資均衡 同じこと 財市場均衡
貯蓄超過・投資不足 同じこと 財市場供給超過（売れ残り・不況気味)
貯蓄不足・投資過剰 同じこと 財市場需要超過（品不足・加熱気味)

5. 省略のない財市場均衡式では
生産 消費 投資 政府支出
純輸出
(貿易収支)
所得収支(海外からの純所得流入)をxとし、両辺に足すと、
国民所得 経常収支
両辺から租税Ｔを引くと
経常収支可処分所得 財政赤字
両辺から消費Ｃを引くと

6. 経常収支可処分所得 財政赤字
民間貯蓄
さらに両辺からＩを引くと
経常収支民間の貯蓄・
投資バランス
財政赤字
民間人の貯
蓄超過
政府への新た
な純貸し付け
海外への新た
な純貸し付け

7. 経常収支民間の貯蓄・
投資バランス
財政赤字
民間貯
蓄まだ
少
民間投資拡大！
（−） （−）
民間の貯蓄不足
海外からの資金
の純借り入れ
高度成長期前半の日本
資金
（−）財政黒字＝政
府による貸付
資金

8. 経常収支民間の貯蓄・
投資バランス
財政赤字
老後に
備えて
貯蓄大
民間投資落
ち着く
（＋）
（＋）
民間の貯蓄過剰
海外への資金
の純貸付
高齢化に向かう減速期は
（＋）
政府への貸付
金利低迷
自
国
通
貨
安
あるいはＹが減ってＳＰが
抑えられる。(不況) 高度成長終了後の日本が典型
アメリカはこれからこうなる？
資金
資金

9. 経常収支民間の貯蓄・
投資バランス
財政赤字
これまでの蓄えを取り
崩す人が多いので全
体の貯蓄は少
（−）
（−）
民間の貯蓄不足
海外からの資金
の純借り入れ
高齢化してしまった段階は
（＋）
政府への貸付
高金利
自
国
通
貨
高
10年後の日本の姿!?
日米で80年代と立場逆転？
資金
資金

10. 誰かが借りるときは誰かが貸す
• 世の中を「民間」と「政府」にまとめると
（あと「外国」があるが省略）
貯 蓄
投資 (企業設備・住宅)
民間
収 入
支出
政府
民間企業の設備投資が旺盛で民間貯蓄でまかないきれない高度成長期
財政黒字が基調

11. 誰かが借りるときは誰かが貸す
• 世の中を「民間」と「政府」にまとめると
（あと「外国」があるが省略）
貯 蓄
投資 (企業設備・住宅)
民間
収 入
支 出
政府
民間企業の設備投資が落ち着き、高齢化途上で貯蓄が多い成熟期
財政赤字が基調

12. 経済停滞期に財政赤字になるのは必然
笹山茂講義ノート
https://www2.kumagaku.ac.jp/teacher/~sasayama/macroecon/lecture04.html
高度成長期
安定成長期
バブル期
長期停滞期