既存のNFT事例について、勉強会での議論を基にカテゴライズを試みたものです。正確性については保証できませんが、少しでも参考になりましたら幸甚です。

1. Why NFT？
2021/07/30
2021/8/9 For Discussion Purposes Only ⒸDaiMizui 2021 1
• 本PPTの内容は関係当局等の確認を経たものではなく、合理的に考えられる整理を記載したものです。
• 本PPTは、NFTの利用や投資を推奨するものでも、あらゆるNFTの事例を網羅的に検証したものでもありません。
• 本PPTを根拠として、個別のNFT事例の分類や法的性質が決定されず、またその分類等の正確性を保証するものでもありません。
• 対象となるNFTの分類や法的性質を有するかについては、当該NFTの性質・仕組み・用途、当該NFTを利用する事業やサービスの内容等を踏まえ、法令や監督
官庁が公表するガイドライン等に照らして個別具体的にご検討ください。必要に応じて弁護士等の専門家に照会することもご検討ください。

2. Today’s agenda
• 従前のトークン概念やST概念と、NFT
との明確な線引きは何か
• どのようなアセット・権利・機能を
NFT化している事例があるか。
• NFT事例を、どのように類型化するこ
とが適切か（※ゲームNFTはスコープ外）
2021/8/9 For Discussion Purposes Only ⒸDaiMizui 2021 2
Why NFT？
NFT for what?
NFT Category

3. Why NFT？
2021/8/9 For Discussion Purposes Only ⒸDaiMizui 2021 3

4. • 発行者が将来的な事業収益等を
分配する債務を負っているとされ
るもの （投資型）
• 発行者が将来的に物・サービス等
を提供するなど、上記以外の債務
を負っているとされるもの （その
他権利型）
• 発行者が何ら債務を負っていない
とされるもの （無権利型）
アセット・トークン/
ロイヤリティ・トーク
ン
ユーティリティ・トー
クン
Token= ブロックチェーン技術を利用して発行され様々な価値が付与された証票
主な分類＝ 研究会に即すと下記3分類（そのほか、暗号資産（FT/VA）型トークンも）
従来のトークン分類
一部の類型を
STOとして括
りだし
参照：仮想通貨交換業等に関する研究会
報告書 https://www.fsa.go.jp/news/30/singi/20181221-1.pdf
2021/8/9 For Discussion Purposes Only ⒸDaiMizui 2021 4

5. 従来のトークン概念との差異
• ブロックチェーン技術を用いるため、デジタル
データの由来や移転経緯が低コストかつ非中央集
権的・改ざん不可能な形で担保され得る
• 一般にコピー可能で、固有性も希少性もないとさ
れるデジタルデータに、設計次第で、固有性も稀
少性を認めることも可能
• 左記側面の機能では、必ずしも従来の
「トークン化」との差異が説明できない
• 左記の機能のトークンうち、「FT（＝不特
定多数者との決済手段等の経済的機能を持
つ暗号資産）に分類される暗号資産型トー
クン以外のものを、NFTと呼称
• NFT発行者であるアーティスト等へのロイヤリティ
還元
• 一時販売（いわゆるmint/プライマリ）後の二次市
場における売買（いわゆるセカンダリ）時のプログ
ラマビリティの柔軟な設計。金銭の還元を内容とす
る「追求権」のほか、金銭還元以外の何らかの権利
付与を含む。
• 左記側面は従前のトークン化事例で実
装されていなかった
• NFTたる「要件」ではないが、NFT化
の大きな「特徴」
• 従前の「トークン化」とあえて別概念
としてNFTが注目される理由
＝「Why NFT？」
機能①：「本物の証明書」たる機能
機能②： 主に漫画や音楽、アイドルやスポー
ツなど「エンタメ産業」の新たな収入源になる
機能
2021/8/9 For Discussion Purposes Only ⒸDaiMizui 2021 5
NFTの要件
NFTの特徴
（≠要件）

6. NFT for what?
&
NFT Category
2021/8/9 For Discussion Purposes Only ⒸDaiMizui 2021 6

7. 分類 具体例 備考
一点ものNFT
（アートNFT）
• ジャック・ドーシーの最初のツイート
• Beepleによるデジタルアート作品《Everydays - The
First 5000 Days》
• Instagram[投稿作成時にその投稿を購入可能なNFTに
転換]
• NFTに紐づけられたアート現物の権利は取得せず
• URL/IPFSに記録されているアートに係るデータを、
自己が保有できる状態であることが公示される
多枚数発行型NFT
（コレクティブNFT）
• NBA TOP SHOT
• Sushi TOP SHOT
• 「一点ものNFT」と区分し多数枚発行されたもの
• 本分類は他の区分と択一的な関係にない
• 一般論として、より金融規制の該当性（決済手
段等の経済的機能の有無）検証が必要
トレーサビリティ型NFT
（事実・権利証明型）
• 集英社マンガアートヘリテージ、尾田栄一郎作「ONE
PIECE／浜辺にて」作品 [作品のあらゆる履歴と所有
者情報]
• Uniswap V3 Positions [金銭貸出の証書]
• ジョージア政府のワイン [産地などの来歴確認]
• ルイヴィトンのバッグ [原材料、製造工程、製品の真正
確認]
• Pioneering - VR LIVEPAINT NFT CHARITY
AUCTION IN MINAMISOMA [売上を自治体(福島
県南相馬市)に寄付する用途を約束]
• ˈsä-v(ə-)rən-tē [売上を学費に用いる用途を約束]
原材料や製造工程、チャリティー資金の用途といった
「事実」のほか、所有権の有無といった「権利」につき、
NFT保有者が確認できる
・主な機能：公証
・トークン分類：（NFT発行後、発行者が義務を負わない意味で）無権利型
・法的性質：特になし。但し、契約内容に依存し発行者がライセンス利用許諾の義務を負う等はありうる
2021/8/9 For Discussion Purposes Only ⒸDaiMizui 2021 7
a

8. 分類 具体例 備考
商品券NFT
• Dali [購入したNFTを『販売』または『ブランドアイテムと
交換』が可能な中古ブランド品マーケットプレイス]
• Prime Pizza - The Holy Grail [アメリカのピザ屋から
毎月ピザをもらえる]
• アバターイラスト制作権NFT[落札者のイラストをクリエイ
ターに書いてもらえる]
• 前払式支払手段（資金決済法３条１項1号・２号）
• 但し、商品券というより、購入型クラファンの法的構成と類似する
場合もあろう（一回完結で「物」の売買 or 一回完結又は月額
課金等の「役務」提供の契約内容）
利用権等の
会員権NFT
（不動産を
念頭）
• マーケットプレイス「Buynet（バイネット）」におけるフェ
ラーリ・スパイダーのカーシェア会員権
• 基本的な法的な整理は同上
• 広義の不動産NFTとして整理されることもある
• 狭義の不動産NFT（不動産所有権を公示したNFT）は登記に
よるオフライン手続との兼ね合いで現実的でない cf.ウクライナの
キエフにおける収益不動産の所有権移転事例やLIFULL社の権
利移転記録の実証実験
入場券NFT
• シントトロイデン観戦チケット[ZAIKO株式会社が運営す
るNFTマーケットプレイス「Digitama™」]
• Bored Ape Yacht Club[NFT保有者がコミュニティイベ
ントに参加できる]
• 適用除外のある前払式支払手段（資金決済法4条1号）
特典NFT
• 体験ミュージアム「『約束のネバーランド』GFハウス脱獄編」
における限定トレカ付与の権利
• 女優写真カードパック[レアカードを集めると有名女優と旅
行に行ける権利]
• 対価性なく発行されるため前払式支払手段ではない
• 特典が、取引に付随し消費者誘因の手段として、動産・不動産・
金銭・その他有価証券・きょう応・役務を付与すると「景品」に該
当し、景品表示法の適用あり
投票券NFT
• POiNT DAO[NFTの所有者にDAOの投票券が配られ、
投票によりアイドルの次の楽曲の内容を決められる]
• 投票企画等における投票権・参加権でありいわゆるガバナンス・
トークンに類似（基本的に金融規制を受けない）
・主な機能：公証+支払手段、特典等、会員権等の実利用との紐づき
・トークン分類：ユーティリティ型
・法的性質：前払式決済手段（適用除外含む）等の金融規制に服する場合、服さない場合がある
2021/8/9 For Discussion Purposes Only ⒸDaiMizui 2021
8
b
全
部
又
は
一
部
を
指
し
て
「
フ
ァ
ン
ト
ー
ク
ン
」
と
も
呼
称

9. ・機能：公証+投資・運用
・トークン分類：投資型
・法的性質：一項有価証券（帳簿と権利連動なしの場合：二項有価証券）など
分類 具体例 備考
アセット・トークン
（投資型NFT）
？
• 「でんゆう」ではないが「ST」「デジタル証券」「デジタルアセット」と呼
称されているもの
• 本PPTでは一旦「投資型NFT」に区分したが、既に「デジタル～」と
市場で呼称されており馴染みやすい（今後の定着を待ちたい）
2021/8/9 For Discussion Purposes Only ⒸDaiMizui 2021 9
（ST定義とコレクティブNFTとの相対化？ JSTA資料より）
「STO」と概念整理
（「多数枚発行型NFT」といい
うるが、「STO」概念のまま整
理する方が明瞭）
ex.TK出資持分や信託受益権の
トークン化（不動産収益もひっ
くるめ配当の収受が出来る）
このうち投資性を帯びるものを
「投資型NFT」と整理すること
も可能
（なお（投資性のない）本PPT
のa・bの各NFT事例はJSTAによ
る「広義のST」といいうるが、
「NFT」とした方が明瞭）
c
電子記録移転
有価証券表示
権利等
（いわゆる
「でんゆう」
と呼称）
2021//3/29
三井住友信託銀行
らによる受益証券
発行信託のST
2021/4/20
SBI証券らによ
る社債型ST
2021/7/12
三菱UFJ信託銀行
らによる受益証券
発行信託のST
2020/8/21
LIFULLらによ
る不特持分の
ST

10. Appendix- NFTに係る法規制フローチャート
2021/8/9 For Discussion Purposes Only ⒸDaiMizui 2021 10
参照：NFTビジネスに関するガイドライン（https://cryptocurrency-
association.org/nft_guideline/#03-02）
本PPTにおける試行的整理
投資型NFT or ST
ユーティリティ型NFT
ユーティリティ型NFT
FT（ファンジブル・トークン）
≠NFT
（これはNFTではない）
• ガイドラインによれば、「金融規制に服する
NFT」も理論上はあり得る
※金融規制：金融商品取引法、資金決済法、犯収法と整理

11. Appendix-前払式支払手段とは
参照①：https://www.s-kessai.jp/businesses/prepaid_means_overview.html
参照②：https://www.s-kessai.jp/businesses/data/beppyo150402.pdf
2021/8/9 For Discussion Purposes Only ⒸDaiMizui 2021 11

12. Appendix-STOにおけるトークン化（1）
①第二項有価証券（例えば1号：信託
受益権、3号：合同会社等の社員権、
5号：匿名組合契約等に基づく集団投
資スキーム持分等）に係る権利
②「電子情報処理組織を用いて移転
できる財産的価値（電子機器その他
の物に電子的方法により記録されて
いるものに限る）に表示される場
合」
⇒「電子記録移転権利」として第一
項有価証券に分類
（金商法第2条第3項柱書）
トークン化とは
契約上又は実態上、発行者等が管理する権
利者や権利数を電子的に記録した帳簿（当
該帳簿と連動した帳簿を含む。以下２－２
－２において「電子帳簿」という。）の書
換え（財産的価値の移転）と権利の移転が
一連として行われる場合には、基本的に、
電子記録移転権利に該当することに留意す
る。例えば、あるアドレスから他のアドレ
スに移転されたトークン数量が記録されて
いるブロックチェーンを利用する場合には、
この記録されたトークン数量が財産的価値
に該当する。
参照：金融商品取引法等ガイドライン
https://www.fsa.go.jp/news/r1/sonota/20200114/23.pdf
2021/8/9 For Discussion Purposes Only ⒸDaiMizui 2021 12

13. Appendix- STOにおけるトークン化判定（2）
判
定
観点① 観点②
電子帳簿の管
理方法
権利移転承諾
条項
取引当事者又は媒介者によ
る閲覧可能性
〇
ブロックチェーン等
の 分 散 型 台 帳
技術
有
可能
× 無
×
有
不能
〇
発行者のシステ
ムサーバー
可能
必ずしもブロックチェーン等の
分散型台帳技術を用いない場合
であっても、
・発行者のシステムサーバーを
用いて電子帳簿を管理し、権利
移転承諾条項を設けるとともに、
・取引当事者や媒介者に当該電
子帳簿に対する閲覧権限を付与
することによって閲覧可能な状
況に置けば、
トークン化したと評価すること
が可能
2021/8/9 For Discussion Purposes Only ⒸDaiMizui 2021 13