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10年間 高次脳機能障害と歩んでみて
2019年1月20日
当事者の発表
第6回 はちおうじ高次脳機能障害者家族会
「はっちゃん」定例会
全58枚
講演60分
47歳3児の父親です!
長男(高1)
長女(中3)
次女(小4) と妻の5人家族。
10年前に急性心筋梗塞で心肺停止となり、
高次脳機能障害を受傷しました。
低酸素脳症(蘇生後脳症)による高次脳機能障害
です。
東京在住。薬学修士。趣味釣り。
元・㈱博報堂ヘルスケアビジネス推進部ディレクター
現在は、小さな広告代理店で働いてます。
はじめまして!
2
毎日こんな感じです。
3
今日お話しすること
1. 受傷~現在までの経緯
2. 苦戦したこと
3. 工夫したこと
4. のぞむこと
4
1. 受傷~現在までの経緯
受傷の原因
2008年8月に突然の心筋梗塞を発症。心肺停止となったが、家族と救急蘇生と緊急手術
で、4日後に意識回復。低酸素(蘇生後)脳症による高次脳機能障害です。
6
復職までの経緯
お試し
勤務 復職・通常勤務
0~6ヶ月
受療
復職
気分
よくわからない
なんでリハ受け
てるの?位の認
識。まったく理
解してない。
回復期
いつ戻る?今で
しょ。
「とにかく早く仕事に
戻せ!!」と豪語。
リハ後半
よくぞ生還!!
よくぞ戻ってき
た。おめでとう。
復職時
急性期
半年間、障害と向き合いリハビリもこなしてきたつもりだったが、正直よく自覚しておらず、
急ぎ足で就労復帰。が、しかーし・・・
入院 通院リハビリ
7~9ヶ月
なんか変だぞ!?
仕事のこと忘れてるし、
思い出しても上手くこ
なせない。
復職後
7
復職後に気づいた「なんか変だぞ!?」
 名前を憶えられない
 新しい業務が覚えられない
 企画がまとめられない
 話がかみ合わない
 金銭処理にミス
 スケジュールにミス
 なんでもミス・・・
通常勤務に戻ってわずか1-2ヶ月。病前あたりまえに出来ていたことができない「なんか
変だぞ!?」の状況が多発。何をやっても上手くいかず、会社に「障害を気付きに行ってい
る状況」となった。
8
あ゛あ゛あ゛あ゛
仕事以外もおかしい。。。
9
先が見えなくなり・・・
■仕事
10
■病気
■家計
■ローン
■老後
■家族
大混乱!
結果、転職を繰り返すことに。
通常 通常 通常 障害者雇用
(一般中小企業)
雇用形態
職務経歴
開示
障害開示
10年
発症
行政支援
介
入
相
談
手
帳
取
得
ストレス
受傷後、2-3年間隔で転職する苦しい状況が続き、現在4社目。受傷前は順調だったが、
受傷を期に大変苦しい状況に陥った。
復職 転職① 転職➁ 転職③
休
職
休
職
休
職
休
職
発
症
11
医療支援
2. 苦戦したこと
私の高次脳機能障害の特性
13
赤枠の事象+過去
数年分の記憶喪失
※東京都の高次脳機能障害リーフレットより引用・改変
注意
(情報を取捨選択する)
注意-記憶-遂行は連動して、人の認知~情報処理を支えている。
ホームページより
認知機能(高次脳機能)とは?
遂行
(指示に基づいて実行する)
記憶
(情報を統合して指示を出す)
14
注意⇒記憶⇒遂行機能は連動していて、人の認知情報処理機能を支える重要な
役割をしています。消費者の心理モデル「AIDMA」に置き換えて考えてます。
※参考:Samuel Roland Hall 消費者心理モデル「AIDMA」,1920年
そのため、コミュニケーションにズレが生じます。
各機能が少しでも障害を受けると、最終的な情報処理に大きな影響が生じ、そこが高次
脳機能障害の社会復帰を難しくしていると実感してます。多大な情報処理能力が求められ
る現代社会において、当事者は大きな制約を受けている。
15
そんなこと言いましたっけ?(覚えてない)
ペプシ500mlって言ってましたよね?(注意+記憶ミス)
おーいお茶買っときました!!!
(注意+記憶+遂行ミス)
コーラ5本用意しといて。
同時多発(注意の分配)になると顕著に。
16
そんなこと言いましたっけ?
ペプシ500mlって言ってましたよね?
おーいお茶買っときました!!!
コーラ5本用意お願い!
そんなこと言いましたっけ?
コーラ10本って言ってましたよね?
コピー用紙買っときました!!!
コピー10部よろしく!
そんなこと言いましたっけ?
コピー10部言ってましたよね?
コピ-10部とっときました!!!
コピー用紙頼んでおいて
そんなこと言いましたっけ?
コーラ3本ですよね!!
コピー用紙買っときました!!!
コーヒー3人分!!
0
5
10
15
20
25
注
意
障
害
近
時
記
憶
障
害
展
望
記
憶
障
害
遂
行
機
能
障
害
コ
ミ
ュ
ニ
ケ
ー
シ
ョ
ン
障
害
視
空
間
操
作
障
害
抑
う
つ
不
安
・
恐
怖
意
欲
低
下
・
ア
パ
シ
ー
衝
動
性
・
興
奮
固
執
性
そ
の
他
ST OT
参考:専門職の認識
17
認知機能・精神症状のうち、就労の妨げになったと思われる症状(3つまで選択)
H28.5 労災疾病臨床研究事業費補助金 分担研究報告書 厚労省委託
高次脳機能障害患者の支援専門職に対する復職支援体制の現状と課題に関する意識調査
,設問E14,熊本大学院,橋本,石川 をもとにグラフをリライト済。
施
設
数
n=熊本県内のST38施設、OT80施設
そもそも、受傷したことを認識・対処しづらい。
18
自分から見えない
病前のイメージで
社会生活をする
高次脳機能を
使う場面が多い
問題が生じる
(認知行動のズレ)
対応できず混乱
覚えない
※あくまでも37歳で受傷した会社員の話です。
2.受入れづ
らさ
1.見えづらさ
3.対処しづらさ
突如、周囲の期待に応えられなくなる苦しさ。
19
受傷する前の自分は、無意識に仕事を通じてこの4つを追い求めていた。
でも、気づいたら、真逆の状況にいることを悟った。
日本理化学工業ホームページより
まとめ:高次脳機能障害特有の3つの「いきづらさ」。
20
社会復帰の過程で生じた、高次脳機能障害特有の
3つの「いきづらさ」に苦戦を強いられた。
生
活
・
就
労
不
安
定
~
究
極
の
幸
せ
の
喪
失
~
突
然
の
脳
損
傷
に
よ
る
認
知
情
報
処
理
機
能
の
低
下
1.見えづらさ
2.受入れづらさ
3.対処しづらさ
3. 工夫したこと
工夫したこと。
22
生
活
・
就
労
の
安
定
~
働
く
喜
び
・
幸
せ
の
再
構
築
~
3つの「いきづらさ」を軽減して、生活・就労安定を目指す。
意識変容と再体験による認識促進
きっかけと振り返りによる受容促進
情報処理の簡素化による共生促進
1.見えづらさ
2.受入れづらさ
3.対処しづらさ
①認識:意識変容を起こさせる
受け身で説明を受けている
障害を説明しても聞く耳を持たない
⇒円滑に情報が取れる環境をつくる。
• 医療者への再確認
• 医学書・専門書の閲読
• 講演会・患者会等への参加
• 再体験を通じての確認
自分で情報を取りにいく
⇒生活の中に気づきのポイントを作る。
• 自宅内に書籍・資料を散りばめる
• 患者会・講演会等の案内
• 高次脳関連番組の録画
• 第三者(少し離れた方)からの指南
23
認識薄い 認識あり
意
識
変
容
1.受傷前の自分を確認
そもそも、受傷前にどんな仕事をして、
どんな事をしていたのかを確認。
※記憶喪失がある方は特に。
①認識:再体験による認識
何が苦手となって何が残されたか?を確認。自分で調べることと、病前にやって
いたことで確認できたことが良かった。
2.受傷後の自分を確認
日常~社会活動の「再体験」で、病
後のできる/できないを確認。気を落
としやすいので、できることづくりを意
識。確認したら記録。
24
➁受容:3つの要因との葛藤
25
見えない
という事実
見たくない
という心理
見えないという事実。働けば働くほど見えてくる現実。傷ついた自分を見たくな
い心理。心の中に葛藤を抱きながら、自分と向き合わなくてはいけない状況に
混乱していた。
見えてくる
という現実
➁受容:向き合うきっかけ造り
26
ひとえに「障害受容」といってもそんな簡単にできるわけではなく、10年の中で、
定期的な振り返りと自問自答の機会を入れ込み、少しづつ「現実逃避はやめて
向き合おう」という意識が芽生えた。
自
分
の
意
識
を
変
え
る
た
め
に
• 他の当事者・支援者の話より、自分
の復帰イメージを持つ。
• リハで定期的な振り返り機会を維持。
• 自身の執筆・講演・ブログ等通じて、
振り返り・自問自答を加速。
• 就労が上手くいかなかった。
• 障害を無かった事にはできなかった。
• 不安定な状況を断ちたかった。
• 毎朝仕事に行く姿を見せたかった。
向き合う
という決意
➁受容: ‟振り返りと言語化“は、受容促進のポイント
27
実践
経験
蓄積
振返り
言語
理論化
①苦戦してるときの状況
ここを行ったり来たりしているだけで、疲
弊蓄積するだけだった。トライ&エラー
の連続。
②振り返りを強化
認知低下=この部分が弱い
ことを意識し強化。
「振り返りと言語化」を意識したことで、自己理解が進んだと感じる。
経験学習サイクル
参考:デービッド・A・コルブ 「経験学習理論」
➁受容:‟言語化“は、なぜ良いのか?
28
■他人に説明することが、一番学習効果が高い。 ■過去数ヶ月、困ったことや、悩んだこと、工夫
したことなど、紙一枚箇条書きにして発表。
事前に自分でまとめる(振り返る⇒言語化)
作業が重要。
■ミニワークショップ ■茶和会
■リハビリ
自由会話訓練
■日記
➂共生:情報処理の簡素化
代替手段の習得と合わせ、周囲の理解も含めた環境整備が必要。
当事者一人での調整は難しいです!!
29
代替手段の習得 環境の整備
■自分が実践すること ■周囲にお願いすること
日常~就労環境を簡素化し、ギャップを軽減する。
➂共生:代替手段の習得
• メモ・ノート必須
• 保存はシンプルに(1冊1ヶ所、深く複雑にしない)
• マーキング(色、マーカーで視覚化)
• 振り返り機会(記憶の定着)
• 複数同時案件を避ける
• 静かな環境
• 定規やポストイットで、注意を制御
• 作業済は取り消し線
• 不意打ち・突発事象を避ける
• 重複させない
• カレンダー(手帳/スマホ)
• タイマー・アラート使用(googleカレンダー)
• TODOを使用(googleカレンダー)
30
• 休憩を多めに(1時間に1回強制)
※熊本県高次脳機能障害支援センターホームページより引用
➂共生:手帳の取得
31
■取得の理由
3社の失敗で自分一人で継続就労ができないことを自覚したから。
■時間がかかった理由
受容に時間がかかったから。できれば持ちたくないという心理もあった。
■取ってどうだったか?
偏見?差別?等を少し心配していたが、今のところ何もありません。
■良かった点
行政の生活・職業支援に、円滑にありつけたこと。それによって、就業先より
合理的配慮を得やすい。
➂共生:行政相談と職業介入のきっかけ
32
3社目休職中に、
「もうむーりー」と思って、
妻と豊田のイオンを散策。
ガラス張りのきれいな建物に、
障害者就労支援事業「くらし
ごと」を発見。覗いてみる。
その場で職業センターへ
連絡。面談・評価・訓練
が始まり、訓練中に復職
が決まったため、そのまま
復職先に支援介入。
③共生:就業環境の調整
行政支援機構のジョブカウンセラー・コーチが職場介入して、下記調整を実施。
当事者、病院ジョブコーチ、主治医診断
書、リハ診断所見による、職場への障害説
明。
⇒効果は限定的。職場への介入が直接で
きないため、その後の調整は当事者が行う
事になる。
そもそも当事者は、調整自体が厳しい・・・
⇒時間経過による規定曖昧化・・・
上長人事異動による環境リセット・・・
今まで
行政支援機構の職場への直接介入によ
る業務内容/環境の調整・再規定。
• 業務内容の分解・切り出し
• できるできないリストの作成
• 上記に基づく業務内容の再規定
• 業務指示の一元化
• 就労時間の調整
• 休憩の徹底
• デスク環境の整備
• 就業先メンバーへの障害特性説明
• 職場での実践・修正・フィードバック
介入後
33
34
Keep
It
Super
Simple
K
I
S
S
情報
収集
課題
抽出
企画
提案
遂行
検証
請求
➂共生:業務の切り出しと事前規定
幸いにも残された「情報収集とPCスキル」を活かし、社内業務を中心に再規定。突発的な
事に弱いため、事前に業務内容を規定して、一方向の業務(情報発信・教育)に特化。
•業界ニュースの発行
•情報収集
•情報ストック
•情報アナウンス
•新入社員教育
•その他、社内向け定型業務
35
■病前:対顧客業務
PCスキル
■現在:社内支援業務
➂共生:業務指示の一元化
36
■全社からコンタクト可能
■調整前
•全社員から相談メール
•ちょっといい?の多さ
•何かとメールcc
■コンタクトパーソンを規定
■調整後
•コンタクトパースン3人
•メインは1人
•余分なcc入れない
業務F
業務E
➂共生:働き方の一元化
1
週
間
業務
B
業務E
業務D
業務F
業務C
昼
休
み
業
務
A
同時に複数の業務を抱えていたが、進
捗等が気になり(注意力)、効率も悪
く、疲労もたまりやすい。
午前 午後
■調整前の働き方
37
業務の計画や進捗等を気にする必要
がなく、疲労もたまりにくい。
業務C
業
務
A
(
在
宅
)
業
務
E
業
務
D
業務B
業
務
F
月
~
木
金
昼
休
み
出
社
休
憩
休
憩
休
憩
午前 午後
■調整後の働き方
➂共生:業務分解と工程の一元化
 複数の新聞・情報誌より、その日の業界ニュースをチェック
 関連ニュースをクリップ
業務内容:社内ニュースの作成
時間帯:8:00-9:30
所用時間:1時間
 Wordにコピー&ペースト
 体裁・見出しを整える
 ファイル名確認
 データベースに保管
 メール文章作成(タイトルと見出し記載)
 見直し・ニュース添付確認
 全社員に送付
業務工程を、分解・一元化・マニュアル化を実施。これを作る時間をもらうよう
調整。
1.ニュースの
選択・抽出
2.ニュース作成
3.情報発信
4.保管
38
➂共生:PC内も一元化
★一箇所に
★階層を深くしない(PC内で迷子になる)
第一階層を多くして、一覧で見えるようにする。
★ナンバリングによる整理
重要案件から1~の番号を振り、ソートできる
ようして、優先度の高さを視認させている。
★わかりやすいフォルダ・ファイル名
フォルダ・ファイル名もわかりやすい名前に。
注意や記憶に障害があると、作業工程が
多くなるほど、途中で目的を忘れる。
目的遂行までの工程を、少しでも減らす。
重要度高
重要度低
39
➂共生:資料の読込みも一元化
40
閉じてある資料は頁をめくるとわからなくなるので、ほぐすor一覧出力で見ながら
対応。一覧で出力したほうが、紙・トナーも節約になる。
➂共生:デスク回りも一元化
41
パーテッション・角席
目前にあることしか判断・作業がしづらいた
め、作業面積を広げることで作業が向上す
る。
マルチモニター 電話NG
ヘッドフォン
カレンダー眼前
デスク周りも、余分な情報流入を防ぎ、一目で情報が入れられるように工夫。
➂共生:気になることも一元化
42
気になることが
複数あると
混乱する。
1.気になることを書き出し・分解
2.一つづつその場で即時解決
3.すぐにメモor忘れる(注意の開放)
気になること・解決できることは、即時処理して注意要素を一つでも減らし、
必要事項はメモして以降忘れてひきづらない。
➂共生: 「脳疲労」への対処について
朝 夕 月 金
日単位 週単位
帰宅後ぐったり、週末もぐったりで、
疲労回復もしないし、家族とのコミュ
ニケーションもおろそかになる。
今まで
■思考リズムの調整
•考える時間
•振り返る時間
•考えない時間
•忘れる時間
を作る。
■日内リズムの調整
•午前勝負
•毎時数分休憩
•午後長め休息
「注意」を要しない時間を、強制的に作る
ことで、脳疲労減少~注意力回復へとつ
ながり、帰宅後・明日・週末の事も考えて
余力を残して一日を終える。
現在
脳
機
能
43
高
低
■脳疲労を何も考えずにやみくもに就業・・・
障害特性上、自分で何ができて何ができないか、就労現場で場当たり・体当
り的に確認していく過程が生じます。定期的に振り返りながら、就業環境を調
整していくことがポイント。
➂共生:雇用先との定期的な振り返りと調整
44
雇用先 当事者
こんな工夫をして、
受傷後の新たな幸せづくりに、歩み始めたところです!!
家庭・父親
就労~日常生活
趣味・余暇 ライフワーク講演活動、情報発信
自
分
基
盤
⇔
生
活
基
盤
新しい歩幅で
歩み始める。
45
4. のぞむこと
10年間、ダメージは相当なものでした。
47
• 収入:受傷時の1/4
• 支出:受傷時の3倍以上
• 住宅ローン
• 復転職4回、キャリア・人間・信頼関係の喪失
• 会社側のジョブコーチ支援拒否
• 「怠け者」「言い訳するな」「バカ丸出しじゃないか」「いつ治るの?」
• 非正規雇用、非昇進、非給与アップ、退職金無
• 妻・支援者・家族の負担
• 育児、教育問題、親の介護問題
• 友人・知人・ご近所づきあい減
• 強いストレス
• 2次障害、原疾患への影響
• 貯蓄/老後の資金0
• 豊かなシニアライフってなんだっけ??
復帰後の支援が重要。
48
出典:H25 高次脳機能障害支援普及事業の現状と展望 国立障害者リハビリテーションセンター中島先生
いかに各々が円滑にスタートラインに立ち、QOLを保つかが重要なのでは?
①いかに円滑にスタートラインに立ち
スタートライン
➁いかにQOL
を保つか?
社会復帰・就労を
目指す当事者↑
高次脳機能障害者を取り巻く課題
49
国の問題
累積赤字1000兆円弱に
診断・治療・
リハの進歩
受け手の問題
• 障害者雇用へのアサイン
• 認知・理解の低さ
• ジョブコーチ介入の拒否
• 産業医の理解度
支え手の問題
• 医療職は職場まで入れず・・・
• 行政支援へのスムーズな連携
• 行政ジョブコーチのキャパシティ
障害者雇用
促進・共生社会
社会の問題
高次脳機能障害が知られていない
当事者からの提言
社会に戻る前の体制作りから、社会に戻った後の体制作りへ。
50
• ①就労~生活定着支援の、早期介入・加速化
• ➁支援者(家族・配偶者)支援の強化
直接的支援
• ③患者・家族・当事者会の促進による、多様な課題への対応強化
間接的支援
• ④高次脳機能障害者への、合理的配慮の促進
• ⑤社会レベルでの、認知・理解促進(現在の話題性は発達障害・認知症の1/20)
社会的支援
通常 通常 通常 障害者雇用
雇用形態
転職経歴
開示
障害開示
復職 転職① 転職➁ 転職③
休
職
休
職
休
職
休
職
休
職
医療支援
①就労~生活定着支援の、早期介入・加速化
行政支援
10年
発症
介
入
相
談
手
帳
取
得
ストレス
51
収 入
25%↓
早期
介入
50%↓
本人の意向にもよりますが、軽度の方であれば復職段階で、積極介入しても良いと感じます。受
入れ先理解向上で、慣れた職場環境・就業内容で就労継続できる可能性が十分にあり、結果的
に、収入・ポジション・キャリアも保たれ、家庭や社会に対してもやさしい、三方良しに繋がります。
• 就労定着、家計維持
• やり慣れた就業環境・キャリア再活用
• 就労意欲の確保
• 2次障害防止
• 支援者の負担減
• 社会的負担減、
• 孤立・ニート・引きこもり・8050問題・・・
0
10
20
30
40
50
60
70
診
療
体
制
本
人
の
身
体
症
状
へ
の
治
療
・
支
援
体
制
本
人
の
身
体
・
認
知
を
含
め
た
リ
ハ
ビ
リ
テ
ー
シ
ョ
ン
の
体
制
本
人
の
精
神
・
行
動
症
状
へ
の
治
療
・
支
援
体
制
家
族
等
へ
の
理
解
・
支
援
受
け
入
れ
企
業
の
理
解
・
支
援
ジ
ョ
ブ
コ
ー
チ
や
ソ
ー
シ
ャ
ル
ワ
ー
カ
ー
な
ど
の
支
援
体
制
・
法
的
制
度
の
充
実
、
情
報
公
開
そ
の
他
ST OT
参考: 専門職の認識
52
リハビリテーションスタッフの多くが、受け入れ企業側の理解・支援体制、JC・SW等の支援体制・
法的制度の充実が急務と感じている。
H28.5 労災疾病臨床研究事業費補助金 分担研究報告書 厚労省委託
高次脳機能障害患者の支援専門職に対する復職支援体制の現状と課題に関する意識調査,
設問X,熊本大学院,橋本,石川 をもとにグラフをリライト済。
n=熊本県内のST38施設、OT80施設
高次脳機能害患者の就労支援に際して、優先的に整備が急がれる領域は次のう
ちどれだと考えますか?3つ以内でお選びください。
➁支援者(家族・配偶者)支援の強化
■インフォーマルケアコストという概念での、支援者支援の充実化
インフォーマルケアコストとは?
家族が行う無償のケアコスト・生産性損失費用
認知症のインフォーマルケアコスト6.2兆円/年(慶応大学試算,2015年)
認知症患者数500万人、医療費1.9兆円、介護費6.4兆円、ケアコスト6.2兆円
高次脳機能障害でのインフォーマルケアコストは?
高次脳機能障害当事者50万人弱なので、単純計算で年間6200億円!?
■支援者・パートナー・家族支援
•ペアレント・パートナー・ファミリーのこころの支援(相応な心的負荷)
•タスクシフティングの促進(就職優先支援・支援者学びなおし・支援者所得税軽減など)
■子育て支援
•幼稚園延長保育の支援
•学童の優先入所など
※単純計算できないのは重々理解してます。
53
③患者会・家族会・当事者会の促進による
多様な課題への対応強化
当事者の課題・求めるものは複雑化しており、患者会-家族会-当事者会ともに拡充することで、
様々なニーズへの支援~自助解決力が向上すると思います。特に、支援者・当事者会等の自助会
は、更なる必要性が増すと感じます。一人で悩ませない!!
患者会
•地域の生活~社会復帰の相談・知恵袋
的存在。先人の尽力で全国レベルに発展。
•当事者の課題の多様化、地域差・世代
差、運営側高齢化の問題が今後の課題。
支援者会(パートナー)
• 支援者でしかわかりえない、当事者の支え
方・支援者自身の生き方の共有の場とし
て重要(支援者の悩み・育児・教育・家
計・就労・行政手続き等)
• 極めて少ない。就労・子育てをしながらの
活動に支援を。
当事者会(ピアカウンセリング)
•同じ境遇を経験した当事者でしかわかりえ
ない事の共有の場として重要。当事者独自
の悩み、就労・就学・結婚・子育て・老後な
ど。エンパワーメントを得る場。
•極めて少ない。ハンデを負ったうえでの活動
に支援を。
54
厚労省19年度概算要
求で、認知症ピアカウンセ
リングに5.6億円計上
(日経10/10)
④高次脳機能障害者への合理的配慮の促進
■意思決定支援の促進
障害特性上、物事を決めたり、複雑な会議・打ち合わせ内容等の理解したり、社内での適正な業務
配分が対応しづらい。意思決定支援の促進、アクセシブルミーティング、産業医への理解促進等が
すすむことにより、より合理的配慮が得やすい環境になる。
聖路加国際大教授 中山和弘
公益財団法人共用品推進機構 「みんなの会議」マニュアル
■みんなの会議(アクセシブルミーティング)
現代人文社
■産業医への啓発・浸透
55
医療法人福慈会HPより
⑤社会レベルでの認知促進
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高次脳機能障害
発達障害
認知症
↑2005年4月
発達障害者支援法
↑2016年8月
改正発達障害者支援法
2015年1月新オレンジプラン↓
2013年1月オレンジプラン↓
↓2004年12月「痴呆」の呼び名が「認知症」に改正
↓2005年度「認知症を知る1年」
Google Trends検索
期間:2004年1月~2018年8月 地域:日本
検索:3つのキーワードで最も話題になった“発達障害2018年6月”を100として算出
ドラマ(グッドドクター)
24時間テレビ関連↓
アーティスト
引退会見↓
2013年12月G8認知症サミットで宣言↓
この状況下で、社会に戻った時に周囲の理解が得られるか?周囲の人が支援イメージを持てるか??
「いつになったら治るの?」「どれだけ休めば良いの?」発言の根幹に、この現状があると思います。
高次脳こんなとこまでいったら、生きやすい社会になる気がしました。
~公的メディアによる、発達障害の啓発+困りごと解決共有プラットフォームの展開~
57
NHKは改正発達障害支援法を受け、2017年5月より1年間かけて「発達障害プ
ロジェクト」を展開。公式ページには、障害の説明ではなく、当事者が障害事象の対
処・解決策を、カテゴリー別に書き込み共有できるプラットフォームを展開。
⇒正直、社会と歩んでいる当事者としては、高次の説明ではなく、トリセツが欲しい。
私とジョブコーチで業務規程した内容も、いわば就労上のトリセツ。
総力戦
~医療・福祉の体制作りから、社会的な解決力を活用するステージへ~
医療や福祉の体制作りは、先人の方々の多大なる尽力で整ってきました。
社会復帰を目指す当事者も増えてきました。
一方で、医療や福祉の枠組みでは解決できないことも生じてきました。
次は社会的な解決力や包括力を活用して、より良い共生を目指すステージに来たと感じます。
今、社会復帰で困っている方、これから社会復帰する方、支える支援者、未来の当事者のため
に、スムーズな社会復帰・共生を目指せるよう、私達がしっかりと課題を受け止め、向き合っていく
ことが重要だと感じます。

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