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What’s X-Phi?
環境情報学部 B3
pepon
本研究の主題
・実験哲学の Survey
・実験哲学の概観を与える
・分析哲学(概念分析)との比較
・岡田研での実験
・実験哲学への批判と回答
・実験哲学の心の哲学への貢献
発表内容
・実験哲学の概観(確認)
・批判と J.Knobe の回答
・認識論への応用事例
実験哲学とは
実験哲学(Experimental Philosophy, X-Phi)
人々の哲学的直観
→基礎となる心理学的過程を実験によって
明らかにしようとするムーブメント
概念の必要十分条件の分析
基盤となる心理的過程の実験的解明
概念の応用に影響する要因の説明
研究事例
“Moral Responsibility and Determinism”
by J.Knobe & S. Nichols
・人々は Incompatibilist, Compatibilist 双方の直観を持つ
・それぞれの心理学過程は異なる
Incompatibilist
Compatibilist
批判とその回答
“Experimental Philosophy” by J.Knobe & S. Nichols
→ 予め想定される批判+回答がまとめられている
1. 哲学における人々の(folk)直観についての批判
2. 哲学者・人々の直観の比較からの批判
3. 「直観が全てではない」批判
4. 実験だけから知見を得ることへの批判
1.直観についての批判
常識的直観に縛られない哲学的概念もある(ex.コネクショニズム)
→ しかし、その他の哲学的(倫理学的)概念は往々にして関係性がある
→ 常識的直観なしではそもそも存在しない哲学的概念
哲学
民俗物理学
民俗哲学
物理学
?
A.
自由意志 自己同一性 知識 道徳性
2.哲学者の直観・人々の直観
哲学者… 普通の人と哲学者の違いを知りたがる
→ 実験をすることでアプローチするのが実験哲学者
実験によって直観に有意差が確認 →
哲学者だけの直観を考慮するだけでは視野が狭い(myopic)
…. Bias となる可能性もある
A.
哲学者 哲学的訓練
注意深い思考
概念の線引き
より純粋な直観
一般大衆の方が劣るとは限らない
哲学的訓練
3.直観が全て?
道徳哲学者を追い出し、実験哲学者のみで研究
直観の真偽を調べるための伝統的手法を廃絶
→ 実験哲学の提案するところではない
従来の直観の真偽を調べる手法の上に
実験哲学というツールを加えるのが目的
A.
哲学
人々の直観に着目人々の思考様式の理解
特定の場合の直観の誤りを指摘・批判に晒す
伝統的手法
4.実験が全て?
実験だけに研究のリソースを全て割くわけではない
どのプロセスが信頼できるか & どの仮説が正しいのか
→ 特定の信念を予め持っている
その信念を実験データによって Update
プロセスに対する評価を前の仮説の評価によって調節していく
心理的過程
p1
p2
直観
i1
i2
どの過程が信頼できるか
その直観は正しいか
更なる実験
A.
認識論への応用
“Normativity and Epistemic Intuitions”
by S. Nichols & Weinberg & Stich (2001)
・Externalism … 信頼できる過程を経て得た真なる信念 = 知識
・Internalism … なぜその信念に至ったかの説明を重視
Externalism
Internalism
認識論
伝統的認識論の批判
・知識の定義、反例
→ 哲学者の直観に適うかどうかが重視
・哲学者たちとは異なる推論をし
異なる信念を形成をする人々の可能性(Stich 1990)
・認識論における直観と反省のみの研究手法を疑問視
文化間で思考様式の差異が示唆される(Nisbett 2001)
文化・社会経済的・哲学の知識・問題の出され方 に着目
実験とその結果
1. S.Nichols らは、被験者(Rutgers大生)を集めて物語を提示
物語の主人公が「本当に知っている」or 「信じているだけ」
のどちらであるかをアンケート調査
→ インド亜大陸出身者と西洋出身者に有意差
2. New Brunswick, New Jersey
の商業地で被験者を集め、同様の実験
高SES, 低SES の間に有意差
Weinberg の考察
→ 哲学者のローカルな条件に依存(文化的条件、経済的条件)
異なる認識論的直観が文化・SESなどにより見受けられる
中間発表でした批判も当てはまる?
→ 論文の中でも実験に対する6つの批判に全て答えている
伝統的認識論
新しいテーゼを作り出す
既存のテーゼの批判のためのツール
?
結びと課題
実験哲学は….
・人々の常識に関わる哲学的概念に有用
・人々の直観と哲学者のそれに優劣はない
・伝統的手法を取り除くものではない
・全ての研究リソースを実験に割くわけではない
倫理学への応用(中間発表)
認識論(心の哲学)への応用の可能性
新しいツールとして、より厳密な議論が必要

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