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インターネット選挙運動解禁
    ―その現状と課題についての整理



       シンポジウム
       「インターネットが変えていく選挙と政治」(2013/03/12)

       報告者:谷本晴樹((一財)尾崎行雄記念財団 主任研究員)
2013/03/12                                           2



Ⅰ.これまでの経緯
   1.「公職選挙法」におけるインターネット利用の制限
     公職選挙法は「選挙期間中(※1)」に限り、下記の方法による一部の「選挙運動(※2)」のみ許可。

      「言論による選挙運動」
       …街頭演説、演説会、選挙運動用自動車の利用、連呼行為等
      「文書図画による選挙運動」
       …ポスター等の掲示、葉書、ビラ、パンフレット等の一部の頒布



     インターネットは文書図画??
        ↓
     1996年 自治省の回答「インターネットは公職選挙法で認められていない文書図画」




※1 選挙期間…公示日(地方選挙の場合、告示日)から投票日の前日まで。
    衆議院議員(12日間)、参議院議員・都道府県知事(17日間)、政令指定都市以外の市および東京都特別区の首長・議
    会議員選挙(7日間)などと決まっている。
※2 選挙運動…特定の候補者の当選を目的として、投票を得又は得さしめないために、直接又は間接に働きかける必要
        かつ有利な行為をすること
2013/03/12                                    3


   2.ネット選挙運動解禁のための公職選挙法改正案の歴史

     • 民主党…2001年から4度、改正案提出。
                                      すべて審議未了・廃案
     • 自民党…2010年に改正案提出(2012年まで継続審議)
     • みんなの党…2012年に、2度改正案提出


     • 2010年、改正案について与野党合意。鳩山首相の辞任によりとん挫。


     • 2012年12月26日 安倍首相の就任後初の記者会見。来年の参院選までの解禁に意欲。



     • 2013年3月1日 民主党・みんなの党が法案提出


     • 2013年3月13日(?) 自民党・公明党が法案提出

                 都議会議員選挙(6月23日)



        参議院選挙(7月) ネット選挙運動解禁??
2013/03/12                               4



Ⅱ.ネット選挙運動解禁法案のポイント
  1. 何人もウェブサイト等を利用する方法(メールを除く)により、選挙運動用文書を
      頒布することができる。

  2. メールについては自公案は送信主体を候補者、政党に限定。みんな・民主党案
      は第三者にも解禁。

             ウェブサイト(SNSを含   電子メールを利用する
             む)を利用する方法      方法
                                         自公案
   候補者・政党         2010年の
                  与野党合意


                                             み民案
   第三者
2013/03/12                                      5



  3. 有料広告の解禁
      選挙運動用ウェブサイト等に直接リンクした有料インターネット広告(バナー広
      告等)を掲載させることができる。
       ・自公案: 政党のみ。 ・み民案: 政党・候補者のみ

  4. インターネット等を利用した選挙期日後の挨拶行為の解禁。
  5. 誹謗中傷・成りすまし対策
     ① 連絡先(電子メール等)の表示義務(ウェブ・メール)
             ウェブ(落選運動含む)…罰則なし
             メール(落選運動含む)…禁錮1年・罰金30万円以下、禁錮の場合に公民権停止あり

     ② 成りすまし対策
             現行の虚偽表示罪に、真実に反する氏名・名称又は身分の表示をしてインターネット
             等を利用する方法による通信をした者を追加。(罰則)禁錮2年・罰金30万円以下、公
             民権停止あり。

     ③ 迅速な削除の可能性拡大(プロバイダ責任制限法の特例)
             選挙運動期間中にネットで頒布された文書図画のうち、自己の名誉を侵害されたとす
             る候補者等から、プロバイダ等に情報削除の申出があった場合、削除同意照会期間
             (この間に情報発信者から削除に同意しない旨の申出がなければ、プロバイダが当該
             情報を削除しても民事上の賠償責任を負わない)を、「7日」から「2日」に短縮。
2013/03/12                            6



Ⅲ.ネット選挙運動解禁で何ができるようになる?
 有権者
  • ネット、ソーシャルメディアなどを通じて、候補者あるいは政党を、公然と応援し、
    他人に勧めることができる。
  • 選挙期間中でも、候補者・政党の見解を直に知ることができる。


候補者・政党
  • マスメディアよる誤報、あるいはネットに書き込まれた誹謗中傷などに対してネット
      を通じて反論することができるようになる。
  •   選挙期間中であっても、ネットを通じて自分の政治信条や政策について有権者に
      訴えることができる。
  •   選挙期間中に起こった出来事あるいは発表された政府の政策に対して、ネットを
      通じて自分の立場を有権者に訴えることができる。
  •   「成りすまし」に対し、法的な対応ができるようになる(虚偽表示罪)
  •   ネット上に書き込まれた、誹謗中傷に対しこれまでより迅速に削除できる可能性
      が高まる。(プロバイダー責任法改正による事業者の免責期間の短縮)
2013/03/12                                         7


 事業者・NPO
  ・様々な候補者支援サービスが出てくる?
     候補者のネット選挙支援
       例:オバマ大統領は、2012年選挙で集めた、6億9000万ドルの献金のほとんどがメール経由。




                              Obama For America
                              オバマ候補者当選を目的とした専用SNS。自分が集めた
                              支持者を一覧表示したり、グループの作成から、日程の管
                              理、メールの送信まで様々なことができる。




     誹謗中傷対策
         • GMOグローバルサイン(株)…(2/27)
           ネット選挙に向け政党や候補者の認証サービスを提供
         • (株)ガイアックス…誹謗中傷等の投稿監視

    ・有権者と政治を繋げる新しい試みが出てくる?
         •   LINEみんなの総選挙
         •   Change.org
2013/03/12                                     8



  ・様々な監視メディアが出てくる?
     ①Who Bought Your Politician?
      大統領候補と議員候補それぞれの、資金提供者トップ10と寄付額が詳細にわかるウェ
      ブウィジェット。WIREDとMaplightが制作。ウェブウィジェットなので、自分のブログなど
      に埋め込んで誰でも公開で使うことができる。




     ②FactCheck.org
       候補者の発言が正確か、事実であるか
       を調べ、ソーシャルメディアなどで公開
       するサイト。
2013/03/12                                             9



Ⅳ.今後の課題
1.法案の「なぜ?」に対する説明を
①   なぜ有権者のメールはダメなのか(自公案)?
     SNSのDMとの違いは何か?ウィルスはDMでもあるのでは?


②   なぜ政党のバナー広告だけ可なのか?また、なぜ「バナー広告」なのか。
     アメリカの多くの州は、「paid political advertisement(有料政治広告)」という表示義務。中
     には広告金額・支出先まで公表する義務を課しているところもある。バナーなどという表面
     の形式に注目した規制は世界的に珍しい。


③   罰則が厳しすぎないか?
     • 有権者が選挙運動メールを送る…公民権停止を含む罰則あり。
     • 有権者がウェブで落選運動をする。表示義務違反の罰則なし。
2013/03/12                                          10



2.陥りがちな違反をどう防ぐか?
  ①     未成年が「ネット選挙運動」をしてしまう。
        未成年が、twitterなどで「A候補に投票して!」と呟くと、未成年者の選挙運動の禁止(公職選挙法 第
        138条の3)違反に問われる可能性。

  ②     「ニコニコアンケート」など、動画中に人気投票などをしてしまう
      人気投票の禁止(公職選挙法 138条の3)違反に問われる可能性。

  ③     政見放送をyoutubeにアップロードし、自分のWebページに貼り付ける。
      選挙運動放送の制限(公職選挙法 第151条の5)違反に問われる可能性。

  ④     「まぐまぐ」等、配信サービスを通して、選挙運動用メールを送ってしまう
      選挙運動用メールを送る場合、メールアドレスを「送信者」に対し通知した者に送ることが要求されてい
      る(自公案:第142条の4)。まぐまぐなどの配信サービスは、送信者本人に申し込むわけでなく、配信業
      者に申込んで、機械的に送っているだけなので「送信者に通知したことにはならない。

  ⑤ ネット選挙運動に報酬を支払ってしまう。
    候補者個人は一般の選挙運動員には報酬を支払うことができない。したがって、SNSで呟いてくれた
    人に、報酬を支払うことは買収(221条)に問われる可能性。ただし候補者の具体的な指示に従って機
    械的に情報発信するものは「選挙運動のために使用する労務者」であって、買収にはならない。また、
    政党が行うネット選挙運動に報酬の制限はない。

  ⑥ メールやSNSの運用を外注委託してしまう。
    選挙運動の企画立案まで業者が行ったことになり、運動員買収となりうる。
2013/03/12                                   11



3.有権者の懸念にどう答えるか?
    ・迷惑メールが大量に届くのではないか?
       …アメリカ、韓国では選挙になると、人によってはメールが大量に届く

    ・広告が活発になると、ネットが世論誘導のためのツールと化してしまわないか
       「ワグマン事件」… 2009年11月、フロリダ州のある市長選において、ワグマン候補が、
       Google AdWardsを利用し、対立候補の名前で検索すると、ワグマン候補の選挙運動
       サイトへのリンクが表示されるようにしたことが問題となった。

4.実効的な誹謗中傷対策をどう構築するか
     韓国では「インターネット選挙報道審議委員会」が設置されている。その下に「サイバー選
     挙不正監視団」が設置され書込みの監視を行なっている。(前回大統領選挙における監視
     団は230人態勢) 。

5.ハッキング、サーバー攻撃対策は?
     不正アクセス罪(不正アクセス禁止法)、選挙の自由妨害罪(公職選挙法)、電子計算機損
     壊等業務妨害罪(刑法)などの現行法だけで十分か?

6.公職選挙法全体の見直しは?

7. 「インターネットを利用する投票方法」の検討は?
2013/03/12                               12




ご清聴ありがとうございました。

  • ご質問、ご要望などございましたら、谷本
    (h.tanimoto07@gmail.com)までご連絡ください。

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  • 1. インターネット選挙運動解禁 ―その現状と課題についての整理 シンポジウム 「インターネットが変えていく選挙と政治」(2013/03/12) 報告者:谷本晴樹((一財)尾崎行雄記念財団 主任研究員)
  • 2. 2013/03/12 2 Ⅰ.これまでの経緯 1.「公職選挙法」におけるインターネット利用の制限 公職選挙法は「選挙期間中(※1)」に限り、下記の方法による一部の「選挙運動(※2)」のみ許可。  「言論による選挙運動」 …街頭演説、演説会、選挙運動用自動車の利用、連呼行為等  「文書図画による選挙運動」 …ポスター等の掲示、葉書、ビラ、パンフレット等の一部の頒布 インターネットは文書図画?? ↓ 1996年 自治省の回答「インターネットは公職選挙法で認められていない文書図画」 ※1 選挙期間…公示日(地方選挙の場合、告示日)から投票日の前日まで。 衆議院議員(12日間)、参議院議員・都道府県知事(17日間)、政令指定都市以外の市および東京都特別区の首長・議 会議員選挙(7日間)などと決まっている。 ※2 選挙運動…特定の候補者の当選を目的として、投票を得又は得さしめないために、直接又は間接に働きかける必要 かつ有利な行為をすること
  • 3. 2013/03/12 3 2.ネット選挙運動解禁のための公職選挙法改正案の歴史 • 民主党…2001年から4度、改正案提出。 すべて審議未了・廃案 • 自民党…2010年に改正案提出(2012年まで継続審議) • みんなの党…2012年に、2度改正案提出 • 2010年、改正案について与野党合意。鳩山首相の辞任によりとん挫。 • 2012年12月26日 安倍首相の就任後初の記者会見。来年の参院選までの解禁に意欲。 • 2013年3月1日 民主党・みんなの党が法案提出 • 2013年3月13日(?) 自民党・公明党が法案提出 都議会議員選挙(6月23日) 参議院選挙(7月) ネット選挙運動解禁??
  • 4. 2013/03/12 4 Ⅱ.ネット選挙運動解禁法案のポイント 1. 何人もウェブサイト等を利用する方法(メールを除く)により、選挙運動用文書を 頒布することができる。 2. メールについては自公案は送信主体を候補者、政党に限定。みんな・民主党案 は第三者にも解禁。 ウェブサイト(SNSを含 電子メールを利用する む)を利用する方法 方法 自公案 候補者・政党 2010年の 与野党合意 み民案 第三者
  • 5. 2013/03/12 5 3. 有料広告の解禁 選挙運動用ウェブサイト等に直接リンクした有料インターネット広告(バナー広 告等)を掲載させることができる。 ・自公案: 政党のみ。 ・み民案: 政党・候補者のみ 4. インターネット等を利用した選挙期日後の挨拶行為の解禁。 5. 誹謗中傷・成りすまし対策 ① 連絡先(電子メール等)の表示義務(ウェブ・メール) ウェブ(落選運動含む)…罰則なし メール(落選運動含む)…禁錮1年・罰金30万円以下、禁錮の場合に公民権停止あり ② 成りすまし対策 現行の虚偽表示罪に、真実に反する氏名・名称又は身分の表示をしてインターネット 等を利用する方法による通信をした者を追加。(罰則)禁錮2年・罰金30万円以下、公 民権停止あり。 ③ 迅速な削除の可能性拡大(プロバイダ責任制限法の特例) 選挙運動期間中にネットで頒布された文書図画のうち、自己の名誉を侵害されたとす る候補者等から、プロバイダ等に情報削除の申出があった場合、削除同意照会期間 (この間に情報発信者から削除に同意しない旨の申出がなければ、プロバイダが当該 情報を削除しても民事上の賠償責任を負わない)を、「7日」から「2日」に短縮。
  • 6. 2013/03/12 6 Ⅲ.ネット選挙運動解禁で何ができるようになる? 有権者 • ネット、ソーシャルメディアなどを通じて、候補者あるいは政党を、公然と応援し、 他人に勧めることができる。 • 選挙期間中でも、候補者・政党の見解を直に知ることができる。 候補者・政党 • マスメディアよる誤報、あるいはネットに書き込まれた誹謗中傷などに対してネット を通じて反論することができるようになる。 • 選挙期間中であっても、ネットを通じて自分の政治信条や政策について有権者に 訴えることができる。 • 選挙期間中に起こった出来事あるいは発表された政府の政策に対して、ネットを 通じて自分の立場を有権者に訴えることができる。 • 「成りすまし」に対し、法的な対応ができるようになる(虚偽表示罪) • ネット上に書き込まれた、誹謗中傷に対しこれまでより迅速に削除できる可能性 が高まる。(プロバイダー責任法改正による事業者の免責期間の短縮)
  • 7. 2013/03/12 7 事業者・NPO ・様々な候補者支援サービスが出てくる? 候補者のネット選挙支援 例:オバマ大統領は、2012年選挙で集めた、6億9000万ドルの献金のほとんどがメール経由。 Obama For America オバマ候補者当選を目的とした専用SNS。自分が集めた 支持者を一覧表示したり、グループの作成から、日程の管 理、メールの送信まで様々なことができる。 誹謗中傷対策 • GMOグローバルサイン(株)…(2/27) ネット選挙に向け政党や候補者の認証サービスを提供 • (株)ガイアックス…誹謗中傷等の投稿監視 ・有権者と政治を繋げる新しい試みが出てくる? • LINEみんなの総選挙 • Change.org
  • 8. 2013/03/12 8 ・様々な監視メディアが出てくる? ①Who Bought Your Politician? 大統領候補と議員候補それぞれの、資金提供者トップ10と寄付額が詳細にわかるウェ ブウィジェット。WIREDとMaplightが制作。ウェブウィジェットなので、自分のブログなど に埋め込んで誰でも公開で使うことができる。 ②FactCheck.org 候補者の発言が正確か、事実であるか を調べ、ソーシャルメディアなどで公開 するサイト。
  • 9. 2013/03/12 9 Ⅳ.今後の課題 1.法案の「なぜ?」に対する説明を ① なぜ有権者のメールはダメなのか(自公案)? SNSのDMとの違いは何か?ウィルスはDMでもあるのでは? ② なぜ政党のバナー広告だけ可なのか?また、なぜ「バナー広告」なのか。 アメリカの多くの州は、「paid political advertisement(有料政治広告)」という表示義務。中 には広告金額・支出先まで公表する義務を課しているところもある。バナーなどという表面 の形式に注目した規制は世界的に珍しい。 ③ 罰則が厳しすぎないか? • 有権者が選挙運動メールを送る…公民権停止を含む罰則あり。 • 有権者がウェブで落選運動をする。表示義務違反の罰則なし。
  • 10. 2013/03/12 10 2.陥りがちな違反をどう防ぐか? ① 未成年が「ネット選挙運動」をしてしまう。 未成年が、twitterなどで「A候補に投票して!」と呟くと、未成年者の選挙運動の禁止(公職選挙法 第 138条の3)違反に問われる可能性。 ② 「ニコニコアンケート」など、動画中に人気投票などをしてしまう 人気投票の禁止(公職選挙法 138条の3)違反に問われる可能性。 ③ 政見放送をyoutubeにアップロードし、自分のWebページに貼り付ける。 選挙運動放送の制限(公職選挙法 第151条の5)違反に問われる可能性。 ④ 「まぐまぐ」等、配信サービスを通して、選挙運動用メールを送ってしまう 選挙運動用メールを送る場合、メールアドレスを「送信者」に対し通知した者に送ることが要求されてい る(自公案:第142条の4)。まぐまぐなどの配信サービスは、送信者本人に申し込むわけでなく、配信業 者に申込んで、機械的に送っているだけなので「送信者に通知したことにはならない。 ⑤ ネット選挙運動に報酬を支払ってしまう。 候補者個人は一般の選挙運動員には報酬を支払うことができない。したがって、SNSで呟いてくれた 人に、報酬を支払うことは買収(221条)に問われる可能性。ただし候補者の具体的な指示に従って機 械的に情報発信するものは「選挙運動のために使用する労務者」であって、買収にはならない。また、 政党が行うネット選挙運動に報酬の制限はない。 ⑥ メールやSNSの運用を外注委託してしまう。 選挙運動の企画立案まで業者が行ったことになり、運動員買収となりうる。
  • 11. 2013/03/12 11 3.有権者の懸念にどう答えるか? ・迷惑メールが大量に届くのではないか? …アメリカ、韓国では選挙になると、人によってはメールが大量に届く ・広告が活発になると、ネットが世論誘導のためのツールと化してしまわないか 「ワグマン事件」… 2009年11月、フロリダ州のある市長選において、ワグマン候補が、 Google AdWardsを利用し、対立候補の名前で検索すると、ワグマン候補の選挙運動 サイトへのリンクが表示されるようにしたことが問題となった。 4.実効的な誹謗中傷対策をどう構築するか 韓国では「インターネット選挙報道審議委員会」が設置されている。その下に「サイバー選 挙不正監視団」が設置され書込みの監視を行なっている。(前回大統領選挙における監視 団は230人態勢) 。 5.ハッキング、サーバー攻撃対策は? 不正アクセス罪(不正アクセス禁止法)、選挙の自由妨害罪(公職選挙法)、電子計算機損 壊等業務妨害罪(刑法)などの現行法だけで十分か? 6.公職選挙法全体の見直しは? 7. 「インターネットを利用する投票方法」の検討は?
  • 12. 2013/03/12 12 ご清聴ありがとうございました。 • ご質問、ご要望などございましたら、谷本 (h.tanimoto07@gmail.com)までご連絡ください。