鈕樹玉『説文解字校録』の附録「刊誤」で列挙される誤りと、平津館本・岩崎本・藤花榭本の当該部分の比較

1. どうでもよい話 2
suzuki toshiya
mpsuzuki@hiroshima-u.ac.jp

2. 前回のまとめ
鈕樹玉『説文解字校録』の附録「刊誤」は
当時通行していた説文の版本と異なるものに
ついて言及している
本文で言及しない誤りを含む
段氏説文訂がカバーしていない情報を含む
汲古閣初印本とも異なる
平津館本との関係が疑われるが、それより早く出
た筈

3. 大西先生からのサジェスチョン
 平津館本の序文に、最初に
校訂に協力したと思しき
人々の名前があるが、その
中に鈕樹玉の名前もある
 平津館本の底本になった
宋本を見た可能性もなくは
ない
 「刊誤」は何かを補正して
いるのではなく作業の記録
かもしれない

4. 刊誤を一つずつ見てみよう
 平津館本、岩崎本、藤花謝本の当該部分を
切り抜き比較
 状況の分類
孫: 平津館本と岩崎本が異なり、平津館本と一致
宋: 平津館本と岩崎本が同じく、両方と一致
他: 平津館本、岩崎本のどちらとも異なる
巻号.葉番号.行番号
平津館
本
岩崎
本
藤花謝
本

5. ここまで累計 孫:2, 宋:2, 他:0

6. ここまで累計 孫:2, 宋:6, 他:0

7. ここまで累計 孫:3, 宋:8, 他:1

8. ここまで累計 孫:5, 宋:10, 他:1

9. ここまで累計 孫:8, 宋:11, 他:1

10. ここまで累計 孫:11, 宋:12, 他:1

11. ここまで累計 孫:14, 宋:12, 他:2

12. ここまで累計 孫:15, 宋:15, 他:2

13. ここまで累計 孫:18, 宋:16, 他:2

14. ここまで累計 孫:21, 宋:17, 他:2

15. ここまで累計 孫:25, 宋:17, 他:2

16. ここまで累計 孫:26, 宋:17, 他:3

17. ひとまずのまとめ 2
 「平津館本の底本」の可能性は無視できない
岩崎本だけで説明できる件数は半分以下
「平津館本の底本」ならほぼ全て説明できる
平津館本と岩崎本の違いは別の宋本に由来するもので、
孫星衍の妄改でないことの傍証になるのでは?
 何を正と考えたかはよくわからない
複数の宋本の多数決ではないようだ
 本文で宋本と言ってるのは何なのか?
本文で言わない差異が「刊誤」にある理由は不明