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小児科勉強会(担当:菊池) 2011年9月20日(火)
授乳中の母親に対する服薬相談(基礎編)
はじめに
厚生労働省の平成 17 年度乳幼児栄養調査結果によると、生後 1 か月および 3 か月における栄養方法は、
母乳栄養と混合栄養がそれぞれ1か月で 42.4%と 52.5%、3 か月で 38.0%と 41.0%であり、両者合わせると
生後 1 か月で約 95%、生後 3 か月で約 80%の児が母乳育児されているといえる。
図1 栄養方法の推移 (左:生後1か月、右:生後3か月)
42.4
46.2
49.5
52.5
45.9
41.4
5.1
7.9
9.1
0% 50% 100%
2005年
1995年
1985年
母乳栄養
混合栄養
人工栄養
38
38.1
39.5
41
34.8
32
21
27.1
28.5
0% 50% 100%
2005年
1995年
1985年
母乳栄養
混合栄養
人工栄養
同じ調査の中で母乳育児に関する妊娠中の考えについても質問しており、「母乳がでれば母乳で育てたい」
と「ぜひ母乳で育てたい」とを合計すると 96.0%が母乳で育てたいと考えていることがわかった。
母乳育児には児の感染症予防の効果、糖尿病やアレルギー疾患のリスク低下、認知機能の向上、早産児に
おいては壊死性腸炎や未熟児網膜症のリスク低下など、児にとっての利点が多いことはもちろん、母親にと
っても子宮復古(オキシトシンによる子宮収縮)の促進、ストレスの軽減効果、乳がんや卵巣がん、子宮体が
んのリスク低下など、多くの利点があることが知られている。
授乳中の女性の服薬に対して不安を感じている
前述のように多くの母親が母乳育児を希望しているが、授乳期間中の服薬については不安を感じている。
日本の Baby Friendly Hospital を退院した授乳婦と GCU に入院している児の母親を対象としたアンケート
調査で、母親が授乳中の服薬について「全く不安を感じていない」が 2.8%、「あまり不安を感じたことはな
い」が 19.8%であったのに対し、「少し不安を感じていた」が 40.6%、「強く不安を感じていた」が 31.1%と
約 7 割の母親が不安を感じている実態が示されている。
図2 授乳中の母親における服薬に対する不安意識調査
40.6
31.1
19.8
2.8
全く感じたことはない
あまり感じたことはない
少し感じていた
強く感じていた
2. - 2 -
授乳中の女性の服薬に対してどのような支援が望まれているか
母親が服用を必要とする場合に適切な支援がされない場合として、例えば医師から母乳を中止するように
指導されたり、母親が児への影響を心配して自ら母乳を中断したり、あるいは自分の症状が強くても服用を
我慢するといったケースが考えられる。児にとって母乳育児で得られる恩恵を失うばかりでなく、必要のな
い人工乳補足が行われる可能性もあり、また母親の体調不良や哺乳中止による乳腺炎といった乳房トラブル
のリスク増大などにつながる可能性がある。
アメリカ小児科学会が 2001 年に出した声明(ただし 2010 年に失効)1)において以下のように述べている。
1.その薬剤が本当に必要か、必要なら母親の主治医と小児科医が相談しどの薬剤を使用するか決定するの
が有用である。
2.できるだけ安全な薬剤を使用するべきである。
3.児に対するリスクの可能性がある薬剤なら児の血中濃度測定を考慮する。
4.母親に授乳直後に投薬するか、児がまとまって眠る時間の直前に投薬することで児への薬剤の影響を最
小限にできる。
このようにまず母親へ処方する時点での対応が重要となる。妊婦や授乳婦への安全性に関するデータがあ
る薬剤を選択することが可能であれば、十分なインフォームドコンセントの下で治療薬を変更し、病状や児
への影響を観察する。また変更が困難な場合も病状により投与量の減量や薬剤併用による減量なども選択す
ることがある。どの薬剤でも言えることだが、服薬アドヒアランスを高めるために医師や薬剤師が本人に必
要性や児への影響を十分説明し納得した上で処方することが重要である。
母乳を介した乳児への薬剤移行 2)
・内服薬は消化管から吸収されて、大部分は肝臓を通って血中へ移行する。
・静脈投与された薬剤では血中濃度が一時的に高濃度になるが、一般的に消化管での吸収不良が悪い薬剤が
経静脈投与されており、母乳中へ移行しても乳児の腸管からほとんど吸収されない。
・血漿中の薬剤は主に乳腺上皮細胞を通過して受動拡散により母乳中に移行するが、生後早期は細胞間隙か
らの傍細胞拡散により移行する。しかし早期は母乳分泌量が少なく児への影響はほとんどないと考えられる。
母乳へ移行しやすい薬とは
① 母親の血中濃度が高くなる薬剤
ほぼ例外なく母親の血漿中濃度が上昇すると母乳中の薬物濃度は上昇する。
② イオン化されていない薬剤
薬物の解離係数(pKa):その薬剤のイオン化と非イオン化の割合が等しくなるときの pH
イオン型薬剤は細胞膜を通過できず、非イオン型の弱酸性・弱アルカリ性薬剤と中性薬剤だけが濃度差の拡散
で通過する。弱アルカリ性(pKa>7.4)の薬剤は母体血漿中では荷電しにくく大部分が非イオン型のため、細
胞膜を通過し母乳中へ移行しやすく、弱酸性の母乳中では逆にイオン化が進み濃度勾配でさらに母乳中に移
行する (ion trapping)。反対に弱酸性(pKa<7.4)薬剤ではわずかに移行した非イオン型も母乳中では弱酸性の
ため ion trapping も起こらず移行しにくい。
③ 蛋白結合度が低い薬剤
アルブミンなどの血漿蛋白と薬剤が結合すると乳腺上皮細胞の細胞膜を通過できず、母乳中へ移行しにくい。
蛋白結合度が高いワーファリンや NSAIDs では母乳中の薬物濃度は低くなる。
3. - 3 -
④ 分子量が小さい薬剤(500 以下)
⑤ 脂溶性が高い薬剤
⑥ 中枢神経に作用する薬剤
抗痙攣薬、抗うつ薬、坑精神病薬は概して乳汁中に高濃度に浸透することがわかっている。
母乳への移行と関連する薬剤指標
① M/P 比 (Milk/Plasma ratio)
母乳中濃度/血漿中濃度の比で表され、M/P 比が高い薬剤は母乳中へ移行しやすいことを表す。M/P 比が 1
未満であれば極少量のみが母乳中に移行する。
② 半減期 (T1/2)
半減期が短ければ母乳中へ移行する量も少なく、一般的に半減期の 5 倍の時間を過ぎると体内からほぼ消失
したと考えられる。また小児では薬剤の代謝速度が遅く、半減期は成人の半減期より長くなるため小児にお
ける半減期が極端に長いとわかっている薬剤では注意が必要である。
③ 生体利用率 (Bioavailability)
摂取した薬剤が最終的に血漿中に至る薬剤の割合をいう。
児の薬物摂取量を推定する指標
1. Relative Infant Dose, RID (%) 相対的薬物摂取量 3)
=乳児薬物摂取量(mg/kg/day)/母親薬物摂取量(mg/kg/day)×100
理論的乳児薬物摂取量(Theoretical Infant Dose:TID)=母乳中薬剤濃度×摂取した母乳量
母乳中薬剤濃度=母親の血中濃度×M/P 比
RID が 10%を超える場合は注意が必要。実際には多くの薬剤で RID は 1%未満である。
2. Exposure Index, EI (%) 4)
=平均母乳摂取量(ml/kg/min)×M/P 比/児のクリアランス(ml/kg/min)×100
EI が 10%を超える薬剤ではクリアランスが 5ml/kg/min 以下と低く注意が必要。
4. - 4 -
各論
授乳禁忌の可能性がある薬剤
1. 抗癌剤:薬剤によっては最終投与から最低どれだけ間隔をあければいいかデータがあるものがある。
2. 代謝拮抗剤
3. 診断用放射性同位元素:I131 については乳児の甲状腺に蓄積するため禁忌となる。
半減期の短い診断用放射性同位元素は一時的な授乳の中断で済み、搾乳した母乳も放射線活性がなくな
れば飲ませることができるため、具体的な中断時間に関する指導が必要。
表 乳幼児を母乳育児中の患者に使用される放射性薬剤と母乳中断期間について 5)
(一部抜粋)
放射性薬剤 推奨される母乳中断期間の例
131
I 完全中止
123
I-メタヨードベンジルグアニジン 370MBq(10mCi)につき 24 時間、150MBq(4mCi)につき 12 時間
99m
Tc-MAA 150MBq(4mCi)につき 12.6 時間
99m
Tc-Pertechnetate 1100 MBq(30mCi)につき 24 時間、440 MBq(12mCi)につき 12 時間
99m
Tc-Sulphur Colloid 440 MBq(12mCi)につき 6 時間
99m
Tc 白血球 1100 MBq(30mCi)につき 24 時間、440 MBq(12mCi)につき 12 時間
67
Ga Citrate 150 MBq(4mCi)につき 1 か月間、50 MBq(1.3mCi)につき 2 週間
111
In 白血球 20 MBq(0.5mCi)につき 1 週間
201
Tl-Chloride 110 MBq(3mCi)につき 2 週間
注意が必要とされる薬剤の一例
抗精神病薬・抗不安薬・抗うつ薬に関しては最新の review あり(別項)。他の薬剤についてアメリカ小児科
学会の勧告では以下の薬剤が挙げられている。
表 乳児に顕著な影響を及ぼすことがあるため、授乳中の母親に注意を促すべき薬剤 1)
(一部改変)
薬剤一般名 薬剤商品名 報告されている副作用 RID Hale 分類
アセブトロール アセタノール・セクトラール 低血圧・徐脈・多呼吸 3.6 L3
アミノサリチル酸 ニッパスカルシウム 下痢(1 例) 0.29 L3
アテノロール テノーミン チアノーゼ・徐脈・低体温・低血圧(1 例) 6.61 L3
ブロモクリプチン パーロデル・アップノール B 乳汁分泌抑制 - L5
アスピリン アスピリン・バファリン 代謝性アシドーシス 2.52-9.4 L3
クレマスチン テルギン G・タベジール 傾眠・易刺激性・哺乳不良・項部硬直等 5.24 L4
酒石酸エルゴタミン カフェルゴット・クリアミン A 嘔吐・下痢・痙攣(1 例) - L4
炭酸リチウム リーマス・リチオマール チアノーゼ・T 波異常・筋緊張低下(1 例) <0.4 L3
フェニンジオン ― 抗凝固作用:PT,APTT 延長
フェノバルビタール フェノバール・ワコビタール 鎮静・離脱症候群(痙攣)・MetHb 血症 23.97 L3
プリミドン プリミドン 鎮静・哺乳障害 5 L3
スルファサラジン サラゾビリン・アザルフィジン 血性下痢 0.35 L3
5. - 5 -
母乳育児中は使用しないことが推奨されるハーブ 6)
母乳分泌を低下させる可能性があるもの 母親や乳児に有害な影響が考えられるもの
ブラックウォルナット Black Walnut ブラダーラック Bladderwrack
ハコベ,ミミナグサ Chickweed セイヨウクロウメモドキ Buckthorn
ヒメフウロ Herb Robert (Geranium robertianum) チャパラル(クレオソ-トブッシュ)Chaparral
レモンバーム Lemon Balm フキタンポポ Coltsfoot (Farfarae folium)
オレガノ Oregano (Origanum vulgare) 当帰 Dong Quai (Angelica acutiloba)
イタリアンパセリ Parsley (Petroselinum crispum) エレキャンペーン Elecampane (Inura heleniumu)
ペパーミント Peppermint (Mentha piperita)/メンソール Menthol エフェドラ Ephedra / Ephedra sinica / Ma Huang
ヒメツルニチニチソウ Periwinkle Herb (Vinca minor) オタネニンジン(人參)Ginseng (Panax ginseng)
セージ Sage (Salvia officinalis) インド蛇木 Indian Snakeroot
ソレル Sorrel (Rumex acetosa) カバカバ Kava-kava (piper methysticum)
スペアミント Spearmint フキの根 Petasites root
タイム Thyme ダイオウ Rhubarb
セイヨウノコギリソウ Yarrow 大茴香(スターアニス)Star anise
チラトリコル Tiratricol
ウワウルシ Uva Ursi
ニガヨモギ Wormwood
6. - 6 -
授乳中の患者に対する向精神薬の使用について
目的 母乳育児中における種々の向精神薬の使用に関する文献をレビューし、母乳栄養されている乳児にお
ける薬剤暴露の程度と報告されている副作用について情報提供できるようにする。
方法 Medline (1967-2008/7), Embase (1975-2008/7), PsyclINFO(1967-2008/7)のデータベースから母乳
栄養と向精神薬について計 96 種類の薬剤について文献検索を実施した。収集文献の参考文献や書籍、関連
するウェブサイトを確認し、製薬会社に対し未発表の情報がないか連絡をとった。原著論文や文献レビュー
のうち母乳中への薬物移行に関する薬物動態のデータや乳児の安全性に関するデータがあるものを考察し、
各薬剤における母乳育児の「適合レベル」を推察した。
結果 全部で 183 の原著論文が分析に適合し、62 の薬剤(65%)に関して文献が収集できた。根拠に基づけ
ば全体で 19 の薬剤(31%)は母乳育児の間も使用できるが、28 の薬剤では収集されたデータでは母乳育児中
における薬剤の安全性評価を容認できず、さらに 15 の薬剤では児が暴露される投与量と観察された副作用
から安全ではないと結論づけられた。
結論 多くの薬剤は母乳育児中でも安全と考えられたが、全ての薬剤で母乳育児の適合性が確立していない。
母乳育児期間中も合理的に向精神薬使用が保証できるように、さらなる研究と経験の蓄積が必要である。
9. 薬剤(化学名) 薬剤(商品名)
投与量
(mg/day)
組数
(親-子)
M/P比 % Dose
母乳育児
適合性
ハロペリドール Haloperidol セレネース,ネオペリドール,ハロステン,スイロリン 3-30 11 0.6-8.1 0.2-9.6 Yes
クロルプロマジン Chlorpromazine ベゲタミン,コントミン,ウインタミン 40-120 3 0.4-0.9 0.1-0.2 Yes
クロザピン Clozapine クロザリル 50-100 2 2.8-4.3 1.0-1.1 No
リチウム Lithium リーマス*1,リチオマール 600-1500 30 0.2-1.3 3.5-69.0 No
オランザピン Olanzapine ジプレキサ 2.5-20.0 14 0.1-0.8 <0.1-4.0 Yes
ペルフェナジン Perphenazine ピーゼットシー,トリラホン 16-24 2 0.7-1.1 0.1-0.2 Caution
クエチアピン Quetiapine セロクエル 25-400 8 0.3 0.1-0.5 Caution
リスペリドン Risperidone リスパダール 1.5-4.0 3 0.1-0.5 2.8-4.7 Caution
スルピリド Sulpiride アビリット*2,クールスパン,ケイチール 100 65 - 2.3-17.7 No
ズクロペンチキソール Zuclopenthixol (Cisordinol, Clopixol, Acuphase) 4-50 7 0.1-0.7 <0.1-0.5 Caution
アリピプラゾール Aripiprazole エビリファイ 15 1 0.9 0.8 Caution
アルプラゾラム Alprazolam ソラナックス,コンスタン,カームダン,アゾリタン,メデポリン 0.5 8 0.2-0.5 ≦1.3 Caution
クロバザム Clobazam マイスタン 30 12 0.1-0.4 7.5-9.9 No
クロラゼプ酸二カリウム Clorazepate dipotassium メンドン 20 筋肉内 7 0.1-0.4 0.3-0.7 Caution
ジアゼパム Diazepam
セルシン,ホリゾン,セレナミン,エリスパン,パールキット,
リリーゼン,セエルカム,ジアパックス,リリバー
1-30 8 0.1-7.7 3.2-12.0 No
ロラゼパム Lorazepam ワイパックス,アズロゲン,ユーパン 3.5-5.0 5 0.1-0.3 0.4-5.3 Caution
オキサゼパム Oxazepam
(Alepam, Medopam, Murelax, Noripam, Ox-Pam,
Purata, Serax, Serepax)
30 3 0.1-0.3 0.4-1.0 Caution
ピナゼパム Pinazepam (Domar, Duna) 5-10 13 0.1-0.3 0.1-1.2 Caution
プラゼパム Prazepam レスタス,セダプランコーワ 60 5 0.1 1.5 Caution
フルニトラゼパム Flunitrazepam ロヒプノール,フルトラース,ビビットエース,サイレース 2 5 0.7 0.2 Caution
ロルメタゼパム Lormetazepam ロラメット,エバミール 20 5 <0.1 0.3 Caution
ミダゾラム Midazolam ドルミカム 15 2 0.2 0.2 Caution
ニトラゼパム Nitrazepam サイレース,ベンザリン,ネルボン,ネルロレン,ノイクロニック 5 14 0.3-0.5 3.6 Caution
テマゼパム Temazepam (Restoril) 10-20 10 <0.1-0.6 1.3 Caution
ザレプロン Zaleplon (Sonata, Starnoc) 10 5 0.5 0.3 Yes
ゾルピデム Zolpidem マイスリー 20 5 0.1 <0.1 Yes
ゾピクロン Zopiclone
アモバン,アモバンテス,ゾピクール,スローハイム,
メトローム,ドパリール
7.5 15 0.3-0.6 0.6-1.4 Yes
アミトリプチリン Amitriptyline ノーマルン,トリプタノール,アミプリン 75-175 6 0.5-1.7 0.2-1.9 Yes
クロミプラミン Clomipramine アナフラニール 75-150 3 0.4-3.0 0.4-4.0 Yes
デシプラミン Desipramine (Norpramin, Pertofane) 300 1 1.2 2.0 Caution
ドスレピン Dosulepin プロチアデン 25-500 32 0.8-4.5 <0.1-5.0 Yes
イミプラミン Imipramine トフラニール,イミドール 75-200 5 1.2-2.3 0.1-7.5 Yes
マプロチリン Maprotiline ルジオミール,マプロミール,ノイオミール,クロンモリン 100-150 - 0.2-1.5 <0.1-1.6 Caution
ミアンセリン Mianserin テトラミド 40-60 2 0.8-3.6 0.9-1.4 Caution
ノルトリプチリン Nortriptyline ノリトレン 125 1 0.9-3.7 0.6-3.0 Caution
トラゾドン Trazodone レスリン,デジレル,アンデプレ 50 5 0.1 0.4 Caution
シタロプラム Citalopram (Celexa, Cipramil) 18-60 35 0.9-9.4 1.0-10.9 No
エシタロプラム Escitalopram (Lexapro, Cipralex, Seroplex, Lexamil) 5-20 10 1.7-2.7 2.9-8.3 No
フルオキセチン Fluoxetine (Prozac) 10-80 83 0.1-6.1 0.8-16.3 No
フルボキサミン Fluvoxamine デプロメール,ルボックス 42-200 7 0.3-1.4 0.1-1.6 Yes
パロキセチン Paroxetine パキシル 10-50 68 0.1-3.3 0.1-5.5 Yes
セルトラリン Sertraline ジェイゾロフト 25-200 43 0.1-5.2 <0.1-3.6 Yes
デュロキセチン Duloxetine サインバルタ 80 6 0.3 0.1 Caution
ヒペリカム Hypericum 300-900 6 ≦0.1 0.1-2.5 Yes
ミルタザピン Mirtazapine レメロン,リフレックス 3-120 13 0.7-2.6 0.5-4.4 Yes
レボキセチン Reboxetine (Edronax, Norebox, Prolift, Solvex, Davedax, Vestra) 4-10 4 <0.1 1.4-2.5 Caution
ベンラファキシン Venlafaxine (Effexor, Efexor) 75-450 12 1.6-5.2 3.5-9.2 Yes
バルプロ酸 Valproic acid
セレニカ,デパケン,サノテン,エピレナート,ハイセレニン,
バレリン,バルプラム,セレブ
500-2400 24 <0.1-0.1 0.1-3.9 Yes
カルバマゼピン Carbamazepine テグレトール,テレスミン,レキシン 500-1300 33 0.2-2.6 1.1-7.3 Yes
クロナゼパム Clonazepam ランドセン,リボトリール 4 2 0.3-0.4 1.3-2.4 Caution
エトスクシミド Ethosuximide ザロンチン,エピレオプチマル 250-1420 18 0.7-1.0 31.0-99.0 No
フェニトイン Phenytoin アレビアチン,ヒダントール, 100-600 27 <0.1-0.5 0.5-8.9 Yes
フェノバルビタール Phenobarbital フェノバール,アレビアチン 30-120 34 0.1-0.8 33.6-297.0 No
ガバペンチン Gabapentin ガバペン 600-2400 8 0.7-1.3 1.3-6.5 Caution
ラモトリジン Lamotrigine (Lamictal) 100-800 42 0.1-1.1 1.8-21.1 No
レベチラセタム Levetiracetam (Keppra) 1000-3500 33 0.8-3.1 0.5-16.0 No
オクスカルバゼピン Oxcarbazepine (Trileptal) 600-900 2 0.5-5.0 0.1 Caution
プリミドン Primidone プリミドン 375-1000 23 0.4-2.3 6.9-37.8 No
トピラマート Topiramate トピナ 150-200 3 0.8-1.1 4.0-21.0 No
ビガバトリン Vigabatrin (Sabril) 200 2 0.1-0.4 0.8-4.0 Caution
ゾニサミド Zonisamide エクセグラン,エクセミド,トレリーフ*3 300-400 4 0.4-1.0 22.0-32.0 No
Psychostimulants
メチルフェニデート Methylphenidate コンサータ*4,リタリン*5 15-80 2 1.1-2.7 0.2 Caution
国内承認薬における適応症(訳者註)
抗不安薬 Anxiolytics
統合失調症治療薬 Antipsychotics
*4 小児期における注意欠陥/多動性障害 *5 ナルコレプシー
抗けいれん薬 Antiepileptics
その他の抗うつ薬 Other antidepressants
選択的セロトニン再取り込み阻害薬 SSRIs
三環系抗うつ薬 Tricyclic antidepressants
催眠鎮静薬 Hypnotics and Sedatives
表3 母乳中への薬剤移行
*1 躁病および躁うつ病の躁状態 *2 ①胃・十二指腸潰瘍②統合失調症③うつ病・うつ状態 *3 パーキンソン病
中枢神経興奮薬
11. - 10 -
母乳を中止あるいは一時的に中断する場合の母親のケア
・こころのケア:早期に母乳をやめなくてはならない母親のつらい気持ちに共感する。
・乳房トラブルへの対処法:突然の授乳中止により乳腺炎等のトラブルになりやすいため、説明をして、
必要なら治療を行う。
・授乳再開時期のアドバイス(一時的中断の場合)
また母親によっては急激なホルモンバランスの変化によりうつを発症した報告もあり、母乳を中止あるいは
中断した場合は主治医によるフォローが必要である。
妊婦や授乳婦の薬剤使用についての情報収集
① 正書
・Schaefer C, et al. Drugs During Pregnancy and Lactation 2nd Ed. Academic Press, 2007.
・Briggs GG. Et al. Drugs in Pregnancy and Lactation 8th Ed. Lippcott Williams & Wilkins, 2008.
・Hale TW, Medications and Mother’s Milk 13th Ed. 薬剤と母乳第 13 版, Hale Publishing, 2008.
② インターネット
・国立成育医療センター(妊娠と薬情報センター)
http://www.ncchd.go.jp/kusuri/index.html
・米国 NIH・国立図書館データベース Drugs and Lactation Database (“LactMed”)
http://www.toxnet.nlm.nih.gov/cgi-bin/sis/htmlgen?LACT
・米国 NHS Medicines Information (UKMiCentral) Drugs in Lactation Advisory Service
http://www.ukmicentral.nhs.uk/drugpreg/guide.htm
・Thomas Hale 博士 Breastfeeding Pharmacology
http://neonatal.ttuhsc.edu/lact/
参考文献
1) American Academy of Pediatrics: The Transfer of Drugs and Other Chemicals Into Human Milk: Pediatrics
108(3): 776-789, 2001.
2) Hale and Ilett, Drug Therapy and Breastfeeding: From Theory to Clinical Practice. Parthenon Publishing, 2006.
3) Hale TW: Medications and Mother’s Milk. 13th
Ed. Hale Publishing, 2008.
4) Ito S: Drug therapy for breast-feeding woman. N Eng J Med 343: 118-126, 2000.
5) Hale TW: Breastfeeding Pharmacology: Radioactive Drugs. http://neonatal.ttuhsc.edu/lact/radioactive.pdf
6) Kelly Bonyata: Herbs to avoid while breastfeeding. http://www.kellymom.com/herbal/herbs_to_avoid.html