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ウクライナ国家予算(2023)
にみる財政と金融
−ロシアと比して−
富山大学 桂木 健次
2023年3月23日
於・ポストマルクス研
究会
1
最長35年間無利子で融資し、EUは2033年までウクライナ政府からの支払いを求
めない。
支払利息を補填するための助成金も含まれる。
それは、ウクライナにとってはソフトローン(市場金利を下回る優遇融資)
最大45億ユーロ : ウクライナの第1四半期に2つの小口融資に分割され、
最初の融資は2023年1月に行われる予定である。(来年早々に30億ユーロを受
領する)
欧州連合の180億ユーロのマクロ金融支援プログラム
2
欧州連合の180億ユーロのマクロ金融支援プログラム
本格的な戦争が始まって以来、ウクライナは国際的なパートナーから230
億ドル
の資金援助を受けており、間もなくEUからさらに25億ユーロのトランシェ
230億ドルのうち、48億ドルはEUから、85億ドルは米国からのものである。これ
らの資金は、国家公務員、年金受給者、国内避難民、補助金受給者への支払いなど、
重要な予算支出に使用される。
ウクライナ政府は、11月21日以降の週に欧州連合から次のマクロ金融支援策25億
ユーロを、12月にはさらに5億ユーロを受け取る予定である。
また、カナダ政府はウクライナを支援するため、5億カナダドル相当の5年国債を発
行している。
ウクライナは来2023年380億ドル必要。現在、欧州連合は毎月12億ドル(通年で
180億ドル)、さらに年間120億ドル-を国際通貨基金から、また米国からは毎月
15億ドルの支援を行う。
3
ロシア 2023年には、連邦予算の3分の1を
国防と国土安全保障に計画
2022年6月の時点では、ロシアのエネルギー輸出収入の半分以上をEUが占めていた。そして、
全体として、ロシアのエネルギー輸出は、東側、つまり、より多くのロシアの石油を喜んで買う
ことが判明したインドと中国に向けることに比較的成功している。
その結果、ロシアのエネルギー資源価格の高騰は、クレムリンに予算収入をも
たらし、とりわけ軍事費の増加を可能にした。2023年には、連邦予算の3分の1
を国防と国土安全保障に費やす計画だ(29兆ルーブルのうち9兆4千億ルーブル
を占める)。
政府は2023年のロシアの全支出の4分の1を分類した(記録) 6兆5千億ルーブ
ルが何に使われるかはわからないが、おそらく戦争と併合だろう。
輸出黒字は、制裁による輸入の激減と相まって、2022年のロシアの経常金融収
支を大幅に改善した。2022年1〜9月の貿易黒字は1984億ドルで、2021年の同
時期を約1200億ドルも上回った。
4
ロシア 2022 年の総予算収入は3400億ドル
9カ月間の軍事費は約820億ドル、総予算の4分の1を戦争に費やしている。
支出の多い項目は、軍需品(287億ドル)、失われた装備(208億ドル)、軍人の
給与(156億ドル)であった。
出典 フォーブス
ロシア 2023年には、連邦予算の3分の1を
国防と国土安全保障に計画
5
ロシア 「戦時インフレ」国債大量発戦費調達が破壊
する国民生活 戦争と経済にはどんな関係
加谷 珪一 2022.11.21
戦争は基本的に政府が行うので、戦争が発生すると、GDP項目における政府支出(G)が増える
Y(GDP)=C+I+G
<個人消費(C)、設備投資(I)、政府支出(G)>
6
ロシア 「戦時インフレ」国債大量発戦費調達が破壊
する国民生活 戦争と経済にはどんな関係
加谷 珪一 2022.11.21
Y(GDP)=C+I+G
<個人消費(C)、設備投資(I)、政府支出(G)>
戦争が経済にとってプラスの効果をもたらすが、現実の経済に与える影響はもっと複雑
-政府の借り入れという形で調達され「クラウディングアウト」と呼ばれる現象
-政府による財政出動が行われると、民間の投資を抑制してしまう
-戦争遂行のために国債を大量に発行すると、国債が余りぎみとなり、金利が上昇す
る
-国内の設備投資が抑制され経済成長にはマイナスの影響が出てくる可能性がある
-軍事費の出費によってGDPはかさ上げ分だけ、そのままGDPが増える保証はない
-戦費の調達がすべて増税で行われた場合(増税した分をそのまま軍事費の支出に回
す)でも、経済学の理屈の上ではその分だけGDPが増えるが具体的な支出によって、
最終的な結果は変わってくる。
-中央銀行が国債の消化戦費調達を実施、経済体力を無視すると、インフレの原因。
-多くの国民には日常生活があり、基礎的な消費はGDPの中でもっとも大きな割合
を占める項目、わずかな変化でも景気に影響。消費者心理が悪化しない形で戦争を遂
行しない限り、最終的にはマイナスの影響が出てくる 7
戦時中の経済における国家の役割の変化、
戦後の経済はどうあるべきか。
ダナ・ホルディチュク 2022年11月15日
Y(GDP)=C+I+G
<個人消費(C)、設備投資(I)、政府支出(G)>
-例えば、ナフトガスは資産回収管理局(ARMA)を通じて、ドミトリー・フィルタ
シュの地方ガス会社など26社や、ヴィクトル・メドベチュクに関連するグルスコガ
ソリンスタンドのネットワークも引き継いだ。後者をベースに、国家的大企業は独自
のネットワークU.GOを立ち上げた。
-市場において国家の比重が高まっている最も新しい例は、Motor Sich、
Zaporozhtransformator、AvtoKrAZ、Ukrnafta、Ukrtatnafta(Kremenchuk製
油所)を軍事的必要から国家が外し、少なくとも終戦までは、すべて防衛省が管理す
ることになった。
現在、ウクライナには約3.5千社の国有企業がある。スビリーデンコ氏によると、そのうち約2,000は
働いていないそうだ。さらに、715,000人に雇用を提供しており、この指標では国内最大の雇用主と
なっている。これには、1万3,000台を超えるユーティリティは含まれていない。政府は公務員の大規
模な削減を準備している。
ロシアの資産の国有化は完全には実施されず、企業よりも財産が主な対象であったが、戦中の
9ヵ月間に経済に対する国家の影響力は増し、多くの重要な施設が買収された。
8
戦時中の経済における国家の役割の変化、
戦後の経済はどうあるべきか。
ダナ・ホルディチュク 2022年11月15日
Y(GDP)=C+I+G
<個人消費(C)、設備投資(I)、政府支出(G)>
-国有銀行は金融システムの安定した運営、ウクライナ人の資金へのアクセスや
支援の受け皿となっている。アルファ銀行の国有化という銀行部門に関連する変
化が起こることが予想される。したがって、戦争が終わるころには、2月24日以
前よりもずっと多くの資産を蓄積しているかもしれない。
-ウクライナの国有企業は、他の経済のためのインフラを作る部門や、最も資本
集約的な産業に属している。自然独占の場合もある。
-現在、兵器生産は主に公的部門(「ウクロボロンプロム」)に集中しており、
国家の防衛を確保する企業の民営化は法律で禁止されている。
戦時下において、これらの企業の働きは極めて重要である。
9
戦時中の経済における国家の役割の変化、
戦後の経済はどうあるべきか。
ダナ・ホルディチュク 2022年11月15日
Y(GDP)=C+I+G
<個人消費(C)、設備投資(I)、政府支出(G)>
大企業の民営化については、現在、国家レベルでは議論されていない。国が 「ウクライナ」や
"Ukrenergo "などの一部を売却しなければ、最大の所有者にとどまる。
戦後どうするのか
戦時中、ロシアによって被害を受けた建物やエネルギー網、鉄道などのインフラを迅速に復旧
する必要に迫られた国家。
そのためには、ウクライナは市場経済を持つ本格的なヨーロッパ国家になるべきだとボイツン
氏は言う。これにより、インフラの復旧や産業育成のための投資を呼び込むことができる。
国の役割は、すべてを自分たちでやるのではなく、民間プレイヤーのための条件を整えること
である。国家介入の問題は、市場の状況が歪んでいるときに発生する。戦争はそのような状態
だが、必ず戦争が起きるという観点で経済を構築することはできない。ウクライナは、国家の
役割を強化するのではなく、民間資本と投資を拡大した国として、戦争から立ち上がるべき、
とラシュコバン氏は説明した。
ウクライナ人の政府に対する高い信頼を確保したウクライナは、戦後の国家資本主義を阻止し、
市場が機能するためのあらゆる条件を整えるチャンスである。この道には、時間と政治的な意
志が必要である。 10
戦時中の経済における国家の役割の変化、
戦後の経済はどうあるべきか。
ダナ・ホルディチュク 2022年11月15日
11
ロシアのアンドレイ・ベローゾフ第一副首相は、金融・経済の高官
で唯一、
経済動員について詳しく発言している人物。
「動員経済」という議論が活発になってきた。
「経済動員」のシナリオをマクロ経済予測に
「ソ連の経営手法」で国家統制下に置かれるこ
とを意味するものではない、しかし、動員型経
済では、一般的に国家の役割、特に国家投資が
必然的に増える。民間投資家は不確実性のため
に投資できないので、国家がどのようにその投
資をファイナンスするかが必要とした。
ロシア 2023年には、連邦予算の3分の1を
国防と国土安全保障に計画
12
ロシア連邦統計局(Rosstat)が16日に発表した今年第3四半期(7~9月)の
国内総生産(GDP)成長率(推定値)は、前年同期比マイナス4%だった。2四
半期連続のマイナス成長となり、ロシアは景気後退に入った。
経済縮小幅は、アナリストが予想していたマイナス4.5%を下回った。
第1四半期のGDP成長率は3.5%のプラス成長だったが、2月のウクライナ侵攻
開始を受け、西側諸国から相次いで経済制裁を科された。ロシア経済は以降、
輸出入の制限や、労働力不足、予備部品の供給問題などにより大きな打撃を受
けている。(c)AFP
ロシア、景気後退入り 2四半期連続のマイナス成長
13
-5月から6月にかけて高い水準で維持された。
-消費者平均価格は、主に青果物価格のシーズンオフの下落やルーブル高の影響
により、
ほぼ横ばいで推移した。
-資本移動の規制が続く中、ロシアの金融情勢は国内要因に支配されが、厳しい
ものが
あり。
-現在の消費者物価の上昇率は相対的に高くなると推定され、ロシア中銀の目標
に対し
て高いと評価され、インフレ促進リスクはディスインフレリスクより高いと評
価されている。
これらのリスクを考慮した金融政策の結果、2024年にはインフレ率は4%に
戻る。
-ロシアルーブル債の利回りが低下し、回転率が上昇した物価動向に関する良好
なデータ
に反応し、市場参加者の主要金利のさらなる低下への期待感が強まったため。
-同時に市場の取引量は依然として観測されたレベルを下回っている。
第1四半期のGDP成長率は3.5%のプラス成長
14
これは、複雑なグローバル生産チェーンへの
関与が少ないこと、原材料の自給率が高いこ
となどが主な要因である。つまり、供給側の
制約の規模が大きい産業は、比較的限定的。
中期的にはまだインフレ促進側に傾いている。
ロシア経済の中間消費財の輸入依存度は、マクロレベ
ルでも、どの産業でも、他国と比較して低い
15
中国はロシアとの貿易を遮断しているわけではない。
中国の輸入は過去最高を記録するほど急増している。
Y(GDP)=C+I+G
<個人消費(C)、設備投資(I)、政府支出(G)>
輸出規制と制裁がロシアの経済と軍事力を苦しめていることを示す証拠である。ロシアの輸入
は、制裁連合国からだけでなく、意外にも、制裁の採用を拒否している国、特に中国からの輸
入が大幅に減少している。習近平国家主席が「無制限」の協力を約束し、中国メディアが親ロ
シア的な傾向を示し、連帯を示したにもかかわらず、中国は侵略以来ロシアの輸入減少に貢献
した国としてEUに次いで第2位。
中国が西側諸国の制裁を遵守する理由として、中国の輸出の半分を外国の多国籍企業が担って
いることがある。これらの企業は世界経済とつながっている必要があり、北京からではなく、
制裁対象国の本社からの指示に従ったものと思われる。侵攻後の輸出減少のうち、外資系企業
と中国系企業によるものを区分することはできないが、外資系多国籍企業だけがコンプライア
ンスの推進役でないことは明らかである。中国銀聯は制裁を受けたロシアの銀行との取引を拒
否しているし、中国軍の支援を受けたと西側から非難されているブラックリスト入りの中国大
手ハイテク企業、華為もロシアでの事業を縮小している。 16
当年度のインフレ率見通しを12.0%-15.0%に引
き下げた。来年の見通しについては、5.0-7.0%
を維持。当社の金融政策は、経済再構築の必要性
を考慮し、2024年にインフレ率を4%の目標に戻
すことを目標として 価格圧力は引き続き緩和され
ている。
ルーブルの大幅な高騰は、物価感覚や人々の買い
物に対する意識に影響を与える。このことは、イ
ンフレ期待のダイナミクスにはっきりと表れる。7
月には10.8%に低下し、昨年3月以来の低水準と
なつた。人々は、現在の多くの商品の価格が不当
に高いと考え、その下落を待っている。企業の短
期的な価格期待は引き続き低下している。昨年の
春の水準に戻つた。
2022年7月22日のロシア銀行理事会を受けた
エルビラ・ナビウリナ総裁のステートメント
エルビラ・ナビウリ
ナ総裁
17
全体として、予測地平には3つの主な不確実性の原因があることに留意する必要があ
る。これらは、外部要因(地政学的な状況や世界的な景気後退によるリスク)、財
政政策、貯蓄性向の変化である。
キーレートの今後の推移は、2024年の目標インフレ率に対するリスクのバランスが
どのように推移するかによる。本日の決定を踏まえ修正した予想では、年平均の
キーレートは、今年10.5-10.8%(年末には7.4-8.0%のレンジに相当)、来年6.5-
8.5%、2024年に6.0-7.0%となります。インフレと経済への影響という点で、多
方向への展開が相次いでいることを特徴とする、変化の激しい状況下
2022年7月22日のロシア銀行理事会を受けた
エルビラ・ナビウリナ総裁のステートメント
エルビラ・ナビウリ
ナ総裁
18
財務省は、1.6兆ルーブルの2023-2025年の予算支出を最適化することを提案して
いる
歳入の減少と歳出の増加により、ロシアの連邦・地域予算
は低迷
出展:ロシア財務省、BOFIT
石油・ガス税収入以外の様々な収入源により、9月の名目連邦予算収入の落ち込みは緩和され、
前年同月比わずか4%にとどまった。しかし、過去3ヶ月間、連邦政府の収入は前年同期比
14%減となった。
19
2022年10月26日、ロシア国家院(ドゥーマ=下院)第1読会
『2023年連邦予算および
2024年/2025年の計画期予算』
単位:兆ルーブル
20
ロシアの銀行システムが国際舞台で完全に孤立したことは、2つの重要な結果を
もたらす。第一に、フィンテックなどの関連分野の発展を止めてしまう。
2つ目の結果はより重要で、国際金融システムに強力に関与するロシアの銀行部
門がなければ、世界貿易と金融の流れにおけるルーブルの役割の成長は望めない。
もちろん、これではルーブルを決済通貨とする考え方は成り立たなくなる。
ロシア当局は、問題の大きさを明確に認識しているので、機会あるごとに国際的
な制裁措置の緩和を実現しようとしている。
最近、ロイター通信は、ロシアがロッセルホズ銀行に対して、ロシアからの食料
輸出の決済を簡素化するための制限を解除するよう主張している。
農産物の輸出を促進するという議論は、もちろん遠回しに言っている。制裁下に
ない銀行を通じての決済は可能である。本当の目的は、どんな口実であれ、ロシ
アの銀行を一つずつ徐々に国際決済市場に戻していくことだ。
ルーブルを決済通貨とする考え方は成り立たなくなる
21
ウクライナはインフレの渦に巻き込まれた
22
2023年度予算案が最終版で閣議決定
(2022年10月31日(月))
政府は2023年のGDP成長率見通しを保守的なシナリオ(4.6%ではなく
3.2%)に調整したとのことだ。インフレ見通しを30%から28%に引き下げた。
同時に、2023年の予算は、1.3兆ウアフの収入を考慮して計画されて、調整さ
れたマクロ指標と税制の変更により、歳入面では500億ウアフ以上の増加を提案
している。
「支出は2兆6,000億円にのぼる。年金支給、ロシアの武力侵略の結果の解消
(人々の住宅の建設、修理、購入)、科学技術活動、国内避難民への住宅ロー
ン優遇のための支出額を増やした。一般的に、国家予算案の第2読会では、支出
部分が668億ウアフ増加した。」
「優先順位1位の安全保障と防衛に変わりはない。占領軍と戦うために、GDPの
18%以上にあたる1兆ウアフ以上を割り当てている。首相はさらに、「我々はウ
クライナ軍に、内部の資源を犠牲にして独自に資金を提供している」と付け加
えた。
23
ウクライナの公的債務
Y(GDP)=C+I+G
<個人消費(C)、設備投資(I)、政府支出(G)>
負債の3分の2近くが外貨建てで、フリヴナ建てが36%
-6兆4,000億UAH(2023年末までにウクライナの公的債務が増大する可能性)。
財務省の最新データによると、2022年8月末時点で、3.9兆UAH。
-毎月2,300〜2,500億円の支出をしていて、このうち約半分は防衛費に使われてい
る。
9月、税金と関税による収入は836億UAH、支出は2,331億UAH。うち、1,060億
ウアフは軍への給与。
公的債務が1年で借金がほぼ倍になる
不足分は欧米パートナーが補填。資金の一部は補助金(9月は725億円)の形
で提供されるが、大部分は融資である。
24
ウクライナの公的債務
Y(GDP)=C+I+G
<個人消費(C)、設備投資(I)、政府支出(G)>
ウクライナの債務はどうなる
危機以前、ウクライナは積極的に債務削減に取り組ん
でいた。名目上の規模は2016年の710億ドルから
2019年末には844億ドルに拡大しているが、対GDP
比では、国の借金は減少している。
これにより、2020年から2021年にかけて、政府はほ
ぼ無制限に借入れを行うことができた。
"昨年の成長後も、債務水準は金融の安定を脅かすも
のではなく、ユーロ圏加盟のためのマーストリヒト基
準の1つをほぼ満たしている"。この基準によれば、公
的債務および公的保証債務の水準は、GDPの60%未
満でなければならない」と国立銀行はEPに述べた。
25
8月31日現在、ウクライナ公的債務および公的保証債務の総
額は主に対外借入の増加3兆5,840億ウアフ、980億3000万
ドルに
https://www.epravda.com.ua/publications/2022/10/25/692991/
総負債に占める外部借入の割合は58.4%から
62.8%へと増加。Kyiv School of Economics
によると、大規模な対外借入により、2023年
には対外債務の割合が79%に増加する可能性
があるという。
うち、ウクライナはユーロ債の保有者に対して
最も多く負債を抱えており、その額は約225億
2000万ドル、8234億UAHにのぼる。しかし、
今後2年間はこの負債が財政を圧迫することは
ない。政府はユーロ債の支払い延期になんとか
合意した。
26
8月31日現在、ウクライナ公的債務および公的保証債務の総
額は主に対外借入の増加3兆5,840億ウアフ、980億3000万
ドルに
https://www.epravda.com.ua/publications/2022/10/25/692991/
加えて、ウクライナは国際的な金融機関である
カーギル、クレディ・アグリコル・コーポレー
ト・アンド・インベストメント・バンク、ドイツ
銀行から借り入れを行った。彼らへの借金は約
16億円。
残りの資金は、ウクライナが国際金融機関、特に
IMFや他国政府から借りたものである。このよう
に、2022年の初めから、内閣はイタリアとカナ
ダとの間で626億ウアフの融資契約を締結してい
る。
ウクライナはロシアに対してまだ約6億580万ド
ルの借金がある。2022年初頭以降、この負債の
額は変化していない。おそらく、ロシアはその支
払いをしないだろうが。
27
2023年に多額の借金をする予定なので、債務処理・返済コストは増える一方。
ユーロ債の保有者との交渉で、政府は2022年と2023年の予算における債務負
担を軽減し、IMFを含むIFIへの債務も借り換えられる可能性が高い。これによ
り、2023年の予算で対外債務の負担を回避することができる。
国内債権者、特にNBUに対する支払いの大半を行うことになる。
ウクライナ2023年予算で、政府は国債の利払いに
過去最大の3260億ウアフを計上
これは2022年の計画(1664億ウアフ)のほぼ2倍
28
ウクライナ経済産業省の、国の予算を算出する際の
主な指標についてのビジョン
1.政府の予測では、2023年のウクライナ経済はどうなるのか?
デニス・シュミハル首相のスピーチから以下の内容が判明している。
実質GDP成長率 - 4.6%.
インフレ率 - 約30%。
平均給与 - 18.5千UAH。
為替レート - 1米ドルあたり約42 UAH。
(為替レートの違いだけ。政府予測では、2023年末には1ドル=50UAHまで上
昇する可能性、その年の平均値は42UAH)
シュミハル・ウクライナ首相と会談する岸田総理
2022年9月23日、国連総会出席のためニューヨークを訪
問中の岸田文雄内閣総理大臣は、デニス・シュミハリ・
ウクライナ首相(H.E. Mr. Denys SHMYHAL, Prime Minister
of Ukraine)と会談
29
ウクライナ経済産業省の、国の予算を算出する際の
主な指標についてのビジョン
2.また、予算収入はどうするのか
納税者とその他の財源(国有企業やNBUの利益)から1兆2790億ウアフを徴収する
計画である(2022年予算では1兆395億ウアフ)。
予算総支出は、2022年計画の2兆2060億ウアフに対し、2兆5140億ウアフに達す
る見込みである。財政赤字は収入とほぼ同じ1兆2790億UAHで、その差は約5億フ
リヴニャ。
(GDP比では20%程度の財政[赤字] )
最低賃金は、月額UAH 6,700または時給UAH 40.46、健常者の最低生活費は月額
UAH 2,684となる予定
30
ウクライナ経済産業省の、国の予算を算出する際の
主な指標についてのビジョン
3.政府の試算によると、2022年の計画と比べて税収が大幅に減少する。
(30パーセントのインフレでも国庫を満たすことはできない。)
何百万人ものウクライナ人の強制移住によっ
て影響を受け、消費が減り、それに応じて間
接税も減る。
さらに、多くの大企業が破壊されたため、所
得税による予算収入が減少する。
ガス使用料による収入だけであろう。2022年
には計画のほぼ2倍にあたる970億UAH以上
を回収する予定。すべては、家賃の支払額を
左右するガスの相場が記録的な高値。
31
ウクライナ経済産業省の、国の予算を算出する際の
主な指標についてのビジョン
4.残りはどこからか?
徴収した税金と税外収入で、国が支出する金額の約
半分はまかなうことができる。残りの半分は借入金
で賄われ、その額は2023年には1.7兆ウアフに近づ
く。
対外借入を大幅に増やす計画で、最大で1兆6千億ウ
アフに上る。米国、EU、IMFと金融支援について交
渉している。
(EUとIMFが毎月10億ドルをウクライナに送金し、
国家予算は米国から毎月15億ドルを受け取ると予
想)
国内からの借入は900億にとどめたい。
国立銀行に対する金融支援の申請を拒否しないこと
を決定した。ハイパーインフレを回避するため、こ 32
ウクライナ経済産業省の、国の予算を算出する際の
主な指標についてのビジョン
⒌ 防衛予算(1)
2023年の予算を発表したシュミハルとマーチェン
コは、「戦争中の国の予算」と称した。防衛力の維
持が優先され、国防費の総額は1兆1,000億ウアフ
を超える。
国が徴収する税金と税外収入のほぼすべてがこの部
門に回されることになる。ウクライナはパートナー
から資金を調達し、残りの支出を賄う予定。
この状況は現在も続いている。政府は徴収した税金
をすべて国防費に充てているが、これは外部パート
ナーがウクライナに提供した資金を戦争の必要性に
使うことを禁じているからである。
33
ウクライナ経済産業省の、国の予算を算出する際の
主な指標についてのビジョン
⒌ 防衛予算(2)
2023年の国防省への支出は、前例のない8,500億
ウアフに達し、大戦開始前の2022年の国家予算の
2倍に達する見込み。
この金額の大部分、4941億9000万ウアフは、軍隊
の活動、軍隊の訓練、軍人や退役軍人とその家族の
医療支援を確保するために使われる。
軍備の購入、近代化、修理のための支出も大幅に増
加し、最大で3,551億3,000万ウアフに達する。
34
ウクライナ経済産業省の、国の予算を算出する際の
主な指標についてのビジョン
6.医療や教育への支出はどのように変化するのか?
教育や医療は、もともと政府が公然と支出を削減することを
ためらう分野である。この状況を一変させたのが、今回の戦
争である。
2022年、教育への支出は210億UAH(12%)減少し、2023
年には-1422億UAHに減少する予定である。
支出の減少の一部は、2022年に国が教育機関に対し、一時
的な移民が体育館に住んでいたことに対する補償として約47
億ウアフを割り当てたことで説明することができる。来年は
そのような支出はない。
支出の減少は、一部、学生を含む移動の過程を反映した。
同時に、2023年には、スクールバスの購入に10億ウアフ、
学校の安全な学習環境の整備に15億ウアフを拠出しています。
おそらく、シェルターの配置を指している。
医療費も来年には削減される予定である。今年の約2000億
ウアフから2023年には1760億ウアフになる。
政府は、医療保証制度のための支出を146億削減し、経費を
節減したいと考えている。その他の医療費は84億ウアフの削 35
ウクライナ経済産業省の、国の予算を算出する際の
主な指標についてのビジョン
7.行政への支出は変わるのか?
もう一つのコスト削減の源泉は、公務員と裁判官の維持管理。
しかし、中央政府、すなわちヴェルホヴナ議会、閣僚内閣、
大統領府への支出は2023年に増加する。
2022年の修正計画では71億ユーロ、2023年には85億ユー
ロと、おそらく最も大きな増加分が政府に関係する。
しかし、ここには裏切りはない。この増加は、予算の技術的
な変更に起因する。ウクライナ食品安全局は内閣に従属し、
その経費は2023年に15億ユーロ増加する予定。
大統領府と国会への支出は、ほぼ横ばい。しかし、これらの
部門における資金の再配分は大きく変化。特に、2022年の4
億700万UAHに対して、7200万UAHが国会の業務に充てら
れることになる。
政府は、裁判官を大幅に削減したいと考えている。2022年
の修正予算では191億ウアフに対し、地方裁判所、上訴裁判
所、最高裁判所、憲法裁判所の業務に183億ウアフを充てる
予定である。 36
ウクライナ経済産業省の、国の予算を算出する際の
主な指標についてのビジョン
8.経済を支えるプログラムや企業への融資も?
-2023年、政府は経済支援のためのプログラムを抜本的に見直す予定です。そのため、
2022年
に321.5億円を予定していた「eSupport」プログラムへの支出は予算から削除される予
定。
-その代わりに、ビジネスの創出と発展のための助成金(13億7000万ユーロ)、武力侵略
の結
果の排除のための基金(193億ユーロ)、占領解除された地域への助成金(ほぼ240億
ユー
ロ)が予算として計上される予定である。
-政府は、起業家育成ファンドを通じたソフトローンの融資を拡大する予定です。そのた
めの支出は、 37
ウクライナ経済産業省の、国の予算を算出する際の
主な指標についてのビジョン
9.また、「公共事業(インフラ整備等)」はどうか
景気刺激策である道路建設は、2022年の計画と比べて390億ウアフ削減されること
になる。
合計で469億ウアフをUkravtodorに割り当て、そのうち185億7000万ウアフは同
機関の債務返済に充てる予定である。
38
ウクライナ経済産業省の、国の予算を算出する際の
主な指標についてのビジョン
10.社会的支出はどうなるのか?
国民への社会的支援は、予算の第2優先事項。2023年には、この分野の支出額だけ
でなく、資金配分の手続きも変更する予定。
また、住宅や公共サービスに対する補助金も予算として計上されている。2022年
の378億7,000万ユーロに対し、379億UAH。
予算には、子供と家族の社会保護(273億UAH)、困難な生活環境にある市民の社
会保護(666億4000万UAH)、低所得者層への支援(729億UAH)の3大プログラ
ムが含まれている。
これらのプログラムがどのように機能し、誰に、どのような目的で資金が配分され
るかは未定。
2023年の年金に関する予算支出は、2022年と同じである。もし政府が年金の指標
化を望むなら、そのための追加支出は当然、年金基金自身の収入で賄われることに
なる。
39
ウクライナ経済産業省の、国の予算を算出する際の
主な指標についてのビジョン
11.巨額の公的債務はどうなるのか
2023年度予算の最大の課題のひとつは、多額の債務負担である。
2023年の公的債務残高は同国のGDPの100%に達すると予想され、
他の支出を賄うための政府の能力は著しく低下すると考えられる。
2022年、ウクライナは大幅に債務を増加させた。毎月の財政赤字
は50億ドルに達し、主に借入金でまかなわれた。
政府は、この国立銀行からの融資の一部を、国内国債の売却によっ
てまかなった。
これらの負債は、国立銀行が利益を支払うと予算に戻ってくる。た
だ問題は、これが1年後、国立銀行が2023年の業績を総括するとき
に起こるということ。
政府はNBUにさらにお金を刷らせることを望んでおり、毎年印刷し
ている。
全体として、2023年には債務返済のための公的支出が7400億円を
超え、そのうちほぼ半分の3260億円が利子の形で支払われなけれ
ばならない。
したがって、公的債務サービス支出は2023年には倍増することに 40
ウクライナ経済産業省の、国の予算を算出する際の
主な指標についてのビジョン
今回の予算はこれまでの予算とどう違うのか?
憲法によると、通常の議会選挙はヴェルホヴナラダの任期5年目の10月の最終日曜日に行われる。つ
まり、次の国会議員選挙は2023年10月に行われるはずである。しかし、国家予算に関する法律案で
は、選挙費用については規定されていない。同時に、予算の最終条項では、ウクライナの戒厳令が終
了次第、議会選挙の費用を規定すべき法律を策定し、ヴェルホヴナ ラーダに提出するよう政府に指
示している。
もし戒厳令が来年の秋まで続けば、2023年に議会選挙が行われないのは明らかだ。政府は予算の変
更を準備する時間がなく、CECは投票の準備をする時間がない。
もう一つ興味深いのは、ウクライナのGDPワラントの一部を政府が買い戻す可能性があるというこ
と。2023年の国家デリバティブの整備にかかる支出は予見されないが(夏のリストラが成功したた
め)、法律案では財務省がデリバティブの償還を含む業務を行うことができるようになっている。ウ
クライナの戦争勝利後、経済は高い回復率を示すことができる。GDPの急成長に伴い、ワラント*の
支払いも大きくなり、年間GDPの数パーセントに達することもある。これらの商品の買い戻しによ
り、財務省はこのリスクを最小限に抑えることができる。
*ワラント
一定の値段(権利行使価格)で、あらかじめ定められた期間内に発行会社の株式を購入できる権利のこと。 この
権利が付いた社債を「ワラント債」という。 41
「財政的ラムシュタイン」
ウクライナの復旧・復興・再建の「省庁間調整プラット
フォーム」
2023年1月26日、ドナー・コーディネーション・プラットフォームの第1回会合がビデオ会議
開催。ウクライナ、EU、G7諸国、EIB、EBRD、IMF、世界銀行などの金融機関が出席。
・短期的な資金援助と長期的な復興支援を提供するすべての主要な関係者の間の調
整改善を確保するためのより幅広いプロセスを開始する。
・EU加盟に向けて動き出したウクライナの復旧・復興プロセスを支援し、「投資が
改革と密接に関連する」ことを確実にするために、EUが引き続き重要な役割を果
たす。
EUとその加盟国および欧州金融機関は、総額ですでに490億ユーロに上る資金、予
算、緊急、人道および軍事支援をウクライナに提供している。
42
IMF、ウクライナのニーズに
最大160億ドル相当の複数年支援パッケージ
IMFは、ウクライナのニーズをカバーし、国際的な融資を増やすきっかけとなるよう、
最大160億ドル相当の複数年支援パッケージ。
2022年12月19日に最終的にIMFが承認
-3年から4年、140億ドルから160億ドルのプログラムが承認されれば、
初年度に50億ドルから70億ドルが融資。
-3月末までに計画が合意され、最初のトランシェは4月に。
43
ロシア予算:2022年12月に月間3兆8000億ルーブル
という記録的な財政赤字
-ガスプロム社(ロシア)からの1.2兆ルーブルの一時金で、ほぼ収入計画を達成。
-ロシアの原油は12月に入り急速に下がり始める。月末のウラル原油の平均価格は1バレル50.4ドル
(1月も下落が続く)。
-ウラル以外にも、ロシアは他の品種の原油を輸出している。
主に中国に行く東シベリアESPO(パイプライン)
IEFは、ブレント価格に対して大きなディスカウントをせずに取引を続けているが、そのシェアは小
さく、現物供給の70〜80%は安くなったウラルから供給されている。
-前月までの累計では5,570億ルーブルの黒字。2022年1-12月のウラル価格平均は1バレル76ドルで、
昨年より7ドル上昇により、ロシア連邦予算は年間収入目標を達成することができた。
-財政赤字を補うために、財務省は連邦貸付債権(OFZ)を発行し、ロシアの石油収入の一部を積み立
てている政府系ファンド「ナショナル・ウェルス・ファンド(NWF)」から 2兆4100億ルー
ブル(351億ドル)を充てる 。
-NWFの残高が1月1日現在で1484億ドルと1カ月で381億ドル減少した。
44
ロシア予算への制裁の「打
撃」
ー原油価格が予算より低く、国家財産基金から収入を補充することで、ルーブルを支えることになる
→「ルーブル安が続くことはなく、インフレを助長することもない」(オルロヴァ)
ー財務省は1月に545億ルーブル相当の元売りを見込んだガス輸出の減少により不足する可能性が大きいことを認めている。
☞ロシアはいつまで戦争資金を調達できるか?
ー石油製品への制裁が2月に発動されるため、現時点では予測すること難しい。原油の規制よりも輸出供給への打撃が大き
く、原油の生産量減少につながると試算。
ー2021年のロシアの石油製品輸出(合計700億米ドル相当)の約半分は欧州が占めていた。ロシア産重油はほぼ全量がヨー
ロッパに輸出されていた(サリホフ指摘)。
ー現在、ロシアにとっての主要な商品市場は中国とインドであり、彼らにはかなり大規模な精製設備があり安く原油を
買って精製することに興味がある。
ーその結果、ロシア企業は精製の一部をあきらめ、原油で売却する可能性がある。そのため石油製品の生産量が減少する。
ー赤字の大きさの目安は、財務省の石油・ガス収入のシナリオ分析表(石油生産量とウラル原油価格による)から知れる。
為替レートは1ドル68.3ルーブルで計算。
ー米国エネルギー省と国際エネルギー機関(IEA)は、ロシアの生産量が2023年末までに1070万bpdから950万bpdに減
少すると予測している。すると、ウラル原油が60ドルだと6000億ルーブル、50ドルだと1兆6000億円、現在の45ドル
だと2兆2000億円の予算が失われる。
45
制裁のマイナス効果(その1)
ヨーロッパにおけるガソリ
ン単価
2023年1月9日付
出展:在スウェーデン、ロシア大使
館
46
ロシアの2022年の実質国内総生産(GDP)
成長率 マイナス3.5%
国連の報告書によると( 2023年1月25日発表)
ロシアの2022年の実質国内総生産(GDP)成長率 マイナス
3.5%
→当初予想:マイナス10~15%
エネルギー輸出が堅調で、ウクライナ侵攻に対する経済制裁の影
響を抑えた。中国やインド、トルコへの石油輸出が急増
→23年予測:マイナス2.9%
一方、ウクライナの2022年はマイナス36.0%と大きく落ち
込み。
→インフラ施設の破壊などが大きく影響した。
47
ロシア財政:12月末の予算は、過去最高の月
間3兆8000億ルーブルの赤字
-但し、前月までの累計では5,570億ルーブルの黒字となっているが、多くの予算支出が年末に先送り
とされている。
-これは、1-12月のウラル石油の平均価格が1バレル76ドルで、昨年より7ドル上昇した。これにより、
ロシア連邦予算は年間収入目標を達成できた。昨年の予算収入は、27兆8000億ルーブルで、計画を
1000億円上回った。石油・ガス収入は、前年度比 27.9%の増加となり、その他の収入も、0.1%の
増加。
-石油・ガス税収には、ロシア・ガスプロム社の記録的な利益による配当も含まれていて。さらに戦前
の2021年の利益の半分にあたる1.2兆ルーブルを採掘税として追加で支払われた。
48
ロシア:12月の赤字補填策
財政赤字を補うために、ロシア財務省は
連邦貸付債権(OFZ)を発行し、国富ファンド(NWF基金)を合計で4兆円支出。
内訳としては:1兆円以上は、株式や債券の購入を通じて国営企業の支援に使われた。ロシア鉄道、アエ
ロフロート、ロサブトドールなどである。
一方、この1年間で、国民福祉基金の「流動的」な部分(プロジェクトに投資されていない)は6兆1千億円
まで減少。
国民福祉基金の非投資部分(「リキッド」):
・中央銀行に対する制裁後、ドル、ユーロ、ポンド、円がその口座で凍結され、NWFからの資金が事実上
差し引かれた代替に、ルーブルが刷られる。
・現在のNWFの主要通貨はSWFの中で制裁を受けていない中国の人民元(外貨)となり、財政赤
字の補填に重要な役割を果たす。
・年末のデータによると、SWFは3090億元、約3兆1000億ルーブルを保有しており、これはSWFの約半
分にあたる。
・1月中旬、中銀はSWFからの人民元の売却を開始すると発表し、石油・ガス収入の不足分を補うために
使われる、石油・ガス収入の目標を年間8兆ルーブルと定めている。不足分は、国富ファンドから外貨を
売って補うことになる。
49
ロシアはいつまで戦争資金を
調達できるのか?
オックスフォード・エコノミクスの新興国市場担当エコノミスト、タチアナ・オルロヴァリホフ氏とオルロバ氏による
と:
「石油製品への制裁が2月に発動されるため、現時点では確信を持って予測することができない。」と、原油の規制より
も輸出供給への打撃が大きく、原油の生産量減少につながると試算している。
現実はどうか?
ー2021年のロシアの石油製品輸出先の約半分は欧州が占めていた。例えば、ロシアで生産された重油は、ほぼ全量が
ヨーロッパに輸出されていた。ロシアは2021年に合計700億米ドル相当の石油製品を輸出した。
ー現在、ロシアにとっての主要な商品市場は中国とインドであり、彼らにはかなり大規模な精製設備があり、
ロシアから安く原油を買って自国で精製することに興味がある。
その結果、ロシア石油企業は精製の一部
をあきらめ、原油として売却する可能性
がある。 50
ロシア経済 GDP
ロシア経済、2022年の実質国内総生産(GDP)成長率マイナス3.5%
後から挿入
後から追記予定
51
IMFからのウクライナ融資
後から付け加え。
ー最大160億ドル相当の複数年支援パッケージを提供することを検討(2023.1)
ー3年から4年プログラムとする、初年度に50億ドルから70億ドルが支出される。
2023年3月に大規模な資金調達プログラムに置き換わる可能性。
別に:
ノルウェー、5年間の数十億クローネのウクライナ支援プログラムを承認予定
2023年には、軍事支援と復興を含む文民支援に均等に配分。
主に電力と食料の価格高騰を克服するための助成。)
ー「財政的ラムシュタイン」枠組み、ウクライナの復旧・復興・再建を支援するための「省庁間ドナー調整プラット
フォーム」の立ち上げ。
後から追記予定
52
ロシア財政赤字、1月のエネルギー収入落ち込みで
拡大
-エネルギー収入が落ち込む一方、歳出が急増した。
-1月の石油・ガス収入は前年比46.4%減
歳入が35.1%減少する一方で、歳出は58.7%増の3兆
1,200億ルーブルに。通年の歳出計画の10%を超えた。
-補填のために、信用支出でなく、「外貨準備を売却」を
以てした。
「外貨準備を売却、財政調整基金にあたる財政赤字を国民
福祉基金(NWF)の活用並びに連邦貸付債権による国内国
債の増発」で補ってきた。
速報値では、赤字額が1兆7600億ルーブル(247億8000万ドル)に拡大した。
国民福祉基金(NWF)について
次頁へ 53
国民福祉基金(NWF)について(1)
図 国民福祉基金の運用先とその基準
日臺 健雄、「ロシアの外貨準備およ
び危機対策における国民福祉基金の
機能 ウクライナ侵攻前後の動向を
中心に」2022年3月、p6
https://www.ier.hit-
u.ac.jp/rrc/Japanese/RRC_WP_N97.pdf
54
国民福祉基金(NWF)について(2)
図-国民福祉基金の残高(単位:億ドル)とGDP比(右軸) 55
国民福祉基金は,前身となる「ロ
シア連邦安定化基金」(2004 年 1
月設立)が 2008 年 2 月に改組さ
れて成立した。この安定化基金と
は,連邦の税収のうち石油関連の
収入の一部を原油価格下落時の財
政補填のために蓄積する基金であ
り,輸出関税と採掘税のうち基準
価格(「ウラル」原油価格 1 バレ
ル 27 ドル)を上回る部分への課
税分が予算外の基金に繰り入れら
れている。
ロシア財政:赤字財政(ルーブル国際発行を支える「国民福祉基金」
ウクライナ、予算補填に国際パートナーからの支援金
ー固定された公式為替レートでの通貨需要に対応するため、NBUは準備金から通貨を
売却している。
ー2022年末、NBUの外貨売却額は過去最高を記録した。年末の最終週、規制当局は
ほぼ11億ドルを「焼き尽くした」。公式為替レートが調整される前の5月に限って
は、2022年の方が多く売れた。
ー2023年1月の外貨準備高からの外貨売却額も31億ドルと大きい。
ーしかし、このような多額の通貨売却にもかかわらず、NBUの外貨準備高は増え続け
ている。2022年11月には252億ドルであったが、2023年2月上旬には300億ドル
近くに達している。
ーウクライナの国際収支がこのような状況になったのは、米国とEUを中心とする国際
パートナーの手厚い支援に負うところが大きい。
ー欧米が財政赤字を補填するために送る資金は、エネルギー機器や燃料の輸入業者や
EUのウクライナ難民の支出によって流出するよりも早く、NBUの準備金を補填して
いる。
56
ロシア中銀の金融政策
(1月見直し)
ーロシア財務省が6日に発表した1月の財政収支(速報値)は、赤字額が1兆7600億ルーブ
ル(約250億ドル)に拡大した。
ーエネルギー収入が落ち込む一方、歳出が急増。財政赤字の拡大は物価上昇と重なり、景気支援
に向けた利下げ余地が狭まっている。
ー中銀は声明で「財政支出の増大、対外貿易条件の悪化、労働市場の状況などでインフレリスク
が高まっている」と指摘を受け、ナビウリナ中銀総裁は記者会見で、1月の物価上昇ペースは
昨年4月以来の速さだったとし、「リスクバランスはインフレを促進する方向に傾いていると
評価している」と述べた。
ーロシア中銀は昨年2月末、ロシアによるウクライナ全面侵攻開始を受け政策金利を緊急的に2
0%に引き上げたが、その後は利下げを行い、昨年9月の利下げを最後に政策金利を7.5%に
とどめている。
ー次回見直しは3月17日。
57
ロシア、23年国家予算が82億ドル拡大
石油税制改革で
ロシアのコチュコフ財務次官は14日、議会の予算・税制
委員会で、北海ブレント価格に対するロシア産原油の割引
幅を固定するなど、石油産業の税制改革案により、202
3年の国家予算が6000億ルーブル(約82億ドル)増
えるとの見通しを示した。
また、この改革案がロシアの石油生産に悪影響を及ぼすこ
とはないと述べた。
2023年2月14日
58
関連資料
以下のサイトに本報告の資料を置いております。
ご参照下さい。
https://www.facebook.com/profile.php?id=100087438374230
59
ご清聴、ありがとうござい
ました。
60

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ウクライナ、ロシアの財政金融 桂木先生 2023.3.6 (2).pptx