精神症状の理解とアセスメント⑥
~MSEから捉える精神症状(意識/認識)~
医療法人社団正心会 岡本病院
精神看護専門看護師 相澤加奈
外 観 言語活動
行動の変化
異常行為
感 情
知 覚 思 考 知識と知能
認 識
意 識 自我意識
自我機能
意志・欲動
MSEの枠組み
精神症状を観察するためのポイント
意 識
外部からの刺激に注意をはらい、それに適切に反応
し、現実に生じていることを理解したり心の中で起
きていることに気づいている
頭がすっきりして
いるかどうか
周囲の出来事がはっきり
と分かるかどうか
覚醒度 注意の及ぶ範囲
覚醒度
意識混濁 意識が清明でない状態
清明 • すっきり覚醒している
昏蒙 • 無関心で自発性に乏しく注意散漫、了解不良
傾眠 • 刺激(声かけ)で反応する
嗜眠 • 強い刺激(体を揺り動かす)で反応する
昏眠 • 痛み刺激で反応する
昏睡 • 刺激には無反応
JCSによる意識障害の分類
Ⅰ 刺激しない
でも 覚醒し
ている状態
1.意識清明とはいえない (1)
2.見当識障害がある (2)
3.自分の名前・生年月日が言えない (3)
Ⅱ 刺激すると
覚醒状態
刺激をやめる
と眠り込む
1.呼びかけで容易に開眼する (10)
運動が出来、言葉も発するが間違いが多い
2.簡単な命令に応じる (20)
3.呼びかけを繰り返すとかろうじて開眼する (30)
Ⅲ 刺激をして
も覚醒しな
い状態
1.痛み刺激に対し払いのけるような動作をする (100)
2.痛み刺激に対し少し手を動かしたり顔をしかめる (200)
3.痛み刺激に反応しない (300)
意識変容 比較的軽い意識混濁に多彩な精神刺激
症状が加わった意識障害
せん妄
軽度~中等度の意識混濁
活発な幻覚・妄想、不安、不穏
作業せん妄
せん妄時に日常の慣習的な動作
を行う(着衣や寝具をまさぐ
る動作をする、主婦が掃除の
仕草をするなど)
振戦せん妄
アルコール症の離脱にみられる
全身の粗大な振戦、不眠、発汗・
頻脈などの自律神経症状、小動物
や虫の幻視などが特徴
アメンチア
軽い意識混濁
思考錯乱と周囲の状況が理解
できないために起こる困惑
産褥性精神病でみられることが多い
もうろう
意識の範囲が突然狭窄し
回復する 健忘を残す
ex.てんかんのもうろう状態
錯 乱
意識混濁を背景に、見当識や記憶が低下し、
思路が乱れまとまりに欠いた状態
ある対象に心的エネルギーを向けること
注意散漫
注意減退
意識障害
躁状態
疲 労
注意過多
注意と集中力
が亢進した、
精神警報状態
覚せい剤などの
薬物中毒
統合失調症の初期
注 意
転導性
注意が次々に新しい対象にそれていくこと
まとまった作業ができるか
話や行動が次から次へと飛ぶ
躁と軽躁を見極める
ポイントとなる
選択的注意
次の行動を起こすために、外界の刺激から
意味のあるものを抽出すること
統合失調症患者は適切な刺激に焦
点を合わせることができず、無関
係な刺激に干渉を受けやすい
見当識
自分:名前、年齢、生年月日
時:自分は今いつごろにいるのだろうか
場所:自分は今どこにいるのだろうか
「自分は今このような状態にあるのだろう」と識別する能力
見当識の獲得と喪失
見当識の獲得
人
場 所
時 間
見当識の喪失
時 間
場 所
人
認知症の見当識障害は発達と逆の順番で起こる
“何か変だ”
意識障害が隠れているかも
軽い意識障害のサイン
ひょっとして、せん妄?
話のまとまりが悪い
話がまわりくどい
話題がとびやすく注意がそれる
単語の取り違い
不注意が目立つ
話を遮ってしゃべる
妙に明るく
深刻味がない
不機嫌で怒りっぽい
何もせずぼんやりしている
状況にふさわしくない
感情反応を示す
せん妄の特徴①
主に、意識、注意、認知、知覚が障害される病態
意識障害 注意障害 認知機能障害 知覚障害
昏睡には至らない
が、ぼんやりとし
た寝ぼけや夢うつ
つのような状態
一つの刺激に対し
て注意を集中・維
持し続けたり、周
囲の雑音や物の動
きなど多彩な刺激
に対して意図的・
選択的に反応でき
ない状態
記憶や見当識、会
話・言語の障害が
みられる
錯覚や幻覚、誤解
などの症状がみら
れる
確信を持っており
それにともなう情
動反応がみられる
せん妄の特徴②
睡眠、精神運動活動、情動が障
害される場合もある
障害は短期間(数時間~数日)で出現し、一日のうちで変動する
傾向がある
急に症状があらわれる
元の状態に戻すことができる
(可逆性である)
認知症やうつ病と間違われやすいので
特徴をしっかりおさえる
せん妄/認知症/うつ病
せん妄 認知症 うつ病
発生の様式 急激に発症 徐々に発症 比較的急性的に
発 症
初発症状 記憶障害 意識障害
注意集中困難
睡眠障害
抑うつ 妄想
症状の持続 進行性で緩徐
(年単位)
動揺性で急激
(数時間~数週間)
やや長い経過
日内変動 夕方から夜間に
かけてが多い
変動なし 朝方に症状が強い
覚醒水準 変動する 正 常 正 常
睡眠・覚醒リズム 日中傾眠
夜間不眠
アルツハイマー
:障害されにくい
血管性
:睡眠の分断
早朝覚醒
中途覚醒
入眠困難
回 復 可逆性 不可逆性 治療で改善するが
遷延化しやすい
せん妄の要因
認知症、高 齢
脳血管性疾患の既往
せん妄
直接因子
脳神経障害
呼吸/循環障害
感染、腫瘍、甲状腺機能異常
手術侵襲
代謝異常
薬剤
促進因子
心理的ストレス
感覚遮断または過剰
環境の変化
ベッド上安静による不動化
素 因
せん妄のタイプ
過活動型 低活動型 混合型
興奮、幻覚
妄想、不眠 など
無表情、無気力
傾眠 など
過活動型と低活動
型の特徴が混在し
ている
夜間徘徊、転倒、点
滴抜去などがあり、
症状がコントロール
出来ないときは抑制
が必要なことがある
意識障害、内的不穏は
持続している
うつ病や不眠症と間違
われやすい
せん妄のケア①
声かけ、タッチング
ゆっくりとした速さ・落ち着いたトーンの口調、優しく身体に触れる
せん妄の際、患者の意識がどのくらい障害されて
いるかを調べる基本手技は、刺激を与えてそれに
対する反応をみることである。その代表的なもの
が、名前を呼ぶことと痛みを与えることである。
医療の現場では当たり前の手技であるが、きわめ
て示唆に富んでいる。つまり人が我に返るために
重要なのは、一つは他者からの呼びかけであり、
今一つが痛覚刺激である。また、ケアという観点
に立てば、患者に現実感覚を取り戻してもらうに
は、家族や看護にあたるものが身体に触れてあげ
るとよい。つまり触覚刺激である。
せん妄のケア②
原因の除去
苦痛の緩和:鎮痛
安静度の緩和
カテーテル類の抜去
不安の解消:家族の面会のセッティング
今の現状と今後の見通しについて情報提供
鎮静剤や睡眠導入剤の
投与量・時間の調節
せん妄のケア③
安全を守る
転倒・転落の予防
:ナースコールは手の届くところに
ベッド周囲の整理・整頓
ベッド柵を必ず上げる、ベッドの高さを調節
医療者の目の届くところにベッド移動
離床センサーの設置
医療機器のコードを整理、床は濡れたままにしない
ドレーン、ライン類の自己抜去予防
:固定状況を適宜観察
点滴ボトル、ドレーン、ラインは視界に入らないように
可能な限り早期の抜去
身体拘束は最後の手段
⇒せん妄の促進要因になるため、解除の基準を必ず設ける
せん妄のケア④
環境調整
感覚遮断を減らす
:視力障害、聴力障害の有無を入院時から情報収集しておく
眼鏡や補聴器がある場合は忘れずに使用してもらう
ベッドアップを積極的に行い、患者自身が周囲を確認できるよう
にする
睡眠環境を整える(概日リズムの維持)
:昼間は太陽光を取り入れ、夜間は照明を落とす(好みの明るさ)
できる限り医療機器の音量を落とす
夜間の処置は最低限にする
面会環境を整える
:家族の面会制限はせず、
できるだけ要望を取り入れる
せん妄のケア⑤
現実適応を助ける
見当識の保持
:カレンダーや時計を患者が見やすい場所に配置する
会話の中でさりげなく、見当識を確認していく
「今日は〇月△日ですね」「ここは病院ですが~」
※「今日は何日ですか?」「ここはどこですか?」という質問は
見当識があいまいな患者さんにとって大きな不安になる
人物などの誤認はそのままにしない
訂正するときはゆっくりと優しい口調で、患者の自尊心を考慮する
テレビやラジオをつけ、
状況認識や時間感覚を保持する
せん妄のケア⑥
注意したい言葉がけ、介入
過活動型の
興 奮
行動の背景を考える
低活動型の
無気力 傾眠
様々なストレスによって心身が
疲労困憊した状態と考える
「日中は起きていま
しょうね」と強制的
に覚醒を促す
患者の好きなことを取り入れながら
少しづつ覚醒の時間を延ばす
「動かないでくだ
さい」と一方的に
指示や指導をする
患者の要望や苦痛をまず汲み取る
ある程度は行動を許容する
せん妄の薬物療法
夜間の睡眠確保と興奮抑制
〈経口摂取が可能〉
リスパダール(0.5~2.0mg)
セロクエル(25~100mg)
〈経口摂取が不可〉
セレネース(1~3A)DIV
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬や抗不安薬は、せん妄の
増悪・脱抑制をきたすことがあるので少量から開始する
日本総合病院精神医学会治療指針より

精神症状の理解とアセスメント⑥