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「夜までラボ☆テレビ」
   レポート
   2009 年 7 月 24 日




                いきいき研究室
              増産プロジェクト


          1
みなさんこんばんは。夜までラボ☆テレビの時間です。研究室における学生の鬱、丌登校…この
問題に関係するのが、「研究室のチームづくり」ではないでしょうか。研究室のチームづくりは
どうあるべきなのか、そのために何をすべきなのか…今回のテーマは「トゥギャザーしようぜ!
研究室のチームビルディング」です!



                  今回のメンバー
  【パネリスト】
        (50 音順・敬称略)
  今村綾(長浜バイオ大学 バイオサイエンス学科遺伝子生命科学コース    講師)
  佐上郁子(京都府立大学大学院生命環境科学研究科       教授)
  澤田芳郎(京都大学産官学連携センター教授・本プロジェクトアドバイザー)
  辻高明(京都大学大学院情報学研究科     特任助教)
  中村康江(立命館大学   法学部法学科   准教授)
  松原斎樹(京都府立大学大学院生命環境科学研究科       教授)
  三谷友彦(京都大学生存圏研究所     助教)
  宮野公樹(京都大学大学院工学研究科     講師・本プロジェクトメンバー)
  宿久洋(同志社大学文化情報学部     教授)


  【ゲストスピーカー】
           (50 音順・敬称略)
  遠藤範子(有限会社ミューズ 代表・国士舘大学 非常勤講師)
                              :コメンテーター
  灰谷孝(株式会社コーチングファームジャパン ビジョンパートナー)
                                 :プレゼンテーター・
  コメンテーター


  【司会進行】
  ケンキュウスルゾウ(いきいき研究室増産プロジェクトメンバー)




                        2
●○最初に、本プロジェクトの紹介○●


 皆さま、本日はありがとうございます。今日は簡単に、「いきいき研究室増産プロジェクト」
の話をします。まず、大学における問題です。大学の使命としては、教育、研究、社会貢献とい
うことが言われております。これらが大学のどこで行われているのかと言うと、研究室に他なり
ません。研究、人材育成…全部を研究室がやっている。その研究室を取り巻く外部事情としては、
様々な問題があります。あまり詳しくは説明しませんが、嫌なデータもたくさんあります。内部
事情も、研究したいとか、学会活動しなきゃ、外部資金とらなきゃ、申請書書かなきゃとかいろ
いろあります。授業もそうですし、大学運営、ナントカ委員もそうです。鬱になりがちな学生と
か、内部で競争しろとか。こういう中で、我々はどうしたらいいのか。現状では、授業とかはフ
ァカルティデヴェロップメントとか言っていますが、それは授業だけで、しかも表面的な、字や
声の大きさとかといった程度です。でも将来、研究室も評価される日がきっと来る。それに備え
て、じゃないですけども、研究室を活性化せんと。そうすればきっと研究も進むし、大学や日本
が良くなるんじゃないかということで、
                 「いきいき研究室増産プロジェクト」が生まれました。
今日のようなことを基本に、いろいろな活動をやってます。
 最終的には、研究室の構成員が能力を発揮できる組織にするための支援を行う。で、学生がど
んどん育って日本中にいきいき研究室が増加して、研究と教育が同時活性、人の国 JAPAN や!
ということでやっております。



       ●○司会ケンキュウスルゾウから趣旨説明○●


 私ケンキュウスルゾウ、と申します。今日は「チームビルディング」というテーマです。チー
ムビルディングはもともと企業で使われた概念だと思うんですが、大学研究室におけるチームビ
ルディングが存在するのかが、私自身もまだ分からない…というか興味があるんです。ひとまず
話してですね、仮にそういうものが存在するとしたら、企業でのチームビルディングの考え方が、
どういう風に大学に持ってこれるのかを、その後考えたいと思います。今日はいきなりご意見を
聞きたいなと思っています。で、議論する中で各自の経験やご所属を知っていただけると思いま
す。初めにチームビルディングが何かを確認したいと思っています。これは、灰谷さんに後で紹
介していただく資料から取ってきたんですけど、「チームビルディングとは、各自の強みを生か
し、全員が同じ目的に向かって行動することで、成果と成長を得られる組織づくり」と定義があ
ります。こういうものについて皆さんがどういう考えを持っているのかを、お聞きしたいと思い
ます。どうでしょうか?




                      3
●○さっそく議論スタート!○●


(三谷)  大学において企業といちばん大きく違うのは、人の入れ替わりが激しい。学生がチームの一員だと
いう前提のもとで話してますけど、学生は 4 回生からいて修士課程でだいたい 3 年ですね。3 年間で出て行

く。企業もチーム的なものは 3 年から 5 年間で変わるのか、もっと長いスパンなのかは、興味があります。

大学の場合は尐なくとも決まった時限があります。作れるのかっていう話はあるんですけど、そのあたりで

のチームの作り方には興味あります。



(ケンキュウスルゾウ)  ありがとうございます。発言は自由に言っていただいて構いません。無ければ勝手
にあてますけど、昔はいわゆる文系のところにいらっしゃって今は理系の研究室にいらっしゃる方なんか、

そのあたりの違いとかどうでしょう?



(辻)   無茶ぶりやな(笑)。僕はですね、理想だと思うチームって、緩やかなつながりだと思うんです。や
やもすると、チームビルディング、コミュニティといった言葉の響きには、収斂の強さ、凝集性の強さとい

う意味が強く出てると思うんです。いきいき研でこれまで議論した、ある種のハラスメントの問題っていう

のは、そういう集団性の強さが起因している面もあると思うんですね。チームビルディングはもちろん大事

ですし、うちの研究室がコミュニティとして発展、成長することは是なんですけども、集団性、凝集性が強

くなりすぎることによる弊害もあるんじゃないかって思って、そう意味で、あえてこのチームビルディング

っていうテーマの中で、
          「緩やかなつながり」って書かせてもらいました。チームづくりにおけるつながりの

プラスの側面、マイナスの側面から議論できればいいじゃないかなって思います。



(松原)  大学と企業との違いは、企業の場合はサラリーをいただいて働いていますけど、院生は、授業料を
払って学びに来ているので、どこまで彼らに教員についてくる義務があるかっていうあたりがありまして…。



(澤田)   ただいまの発言は、「研究室をチームとしてとらえること自体が間違いだ」という意味に、私は受
け取りました。私としてはチームの定義について反論はないんですよ。しかし、はたして大学の研究室はチ

ームなのか。その点でさきほど非常に良いことをおっしゃったと思うのが「コミュニティ」です。コミュニ

ティとチームはぜんぜん違っていて、成員が共通の目標を持っていない。そういう概念です。で、ここにあ

えて共通の目標を持たせることで力を発揮させようとすると、必ずそれに乗らない人が出てくるだろう。は

たして「チーム」にはめ込んでいくのがいいことなのかという点で疑問がある。というのが私の意見です
                          4
(宿久)私は、規模と同質性の問題がある、ということを申し上げたいです。研究室をどのくらいの大きさ
で考えるのかでだいぶ違うと思うんですね。規模によっては、一つの研究室の中にいろんなものが発生する。

私なんかはもともとは数学出身で、
               「勝手にやりなさい」で育った。今私がいるところは文系理系の両方の学

生がいる非常に難しい領域なので、必ずしも一対一が良いというものでもない、必ずしも全員一致が良いと

いうわけでもない。そこでどうやるかってことに非常に苦労しているところで、まあ今回ここでいろんな議

論いただいて、まあ情報持って帰りたいなと思ってるとこなんです。



(佐上)研究室の研究分野や、院生のタイプによっても違うんじゃないかなって気がします。

(澤田)ちょっと補足ですが、例えば何人か共同で論文をつくるということがあります。だから、それに参
加してる人たちはチームの定義に合うと思いますし、そういう「チーム現象」が研究室の中に生ずることは

否定していません。



   「必ず学生が入れ替わる。
(宮野)           」これ僕ね、ずっとデメリットだと思ってたんや。研究室ってどんどん
変わっていくって。だけどこの前「実はメリットちゃうか」と気付いた。えっとね、想像して下さい。この

中に、国の研究所とか企業の研究所とか行かれた方いますか。研究所があって研究員がいる。学生がいない。

ずーっとそのメンバーでやるんやで。ちょっと嫌じゃない(笑)??   でねー、ほんとそうなんよ。閉じとる

んよ、すごく。学生コロコロ変わるけど、それが実はマンパワーなんよ。やっと分かったわ。



(遠藤)複数人、つまり 2 人いればすでにチームなんやって私は感じてるねんけど、教師と学生とかをチー
ムだと思うのか、そうじゃなくて研究室自体がチームだと思うのか。そういう捉え方もできると思う。



(中村)私のところは全然皆さんと全然違うかなと思うのは、各自が研究テーマを持ってないですし、人数
も多いです。研究室に入るのは 3 回生からで非常に若い。チームという雰囲気のある集団、コミュニティを

つくろうとすると「これサークルじゃね?」って思うことがあるんです。自分のしてることが、サークルの

責任者と何が違うんだろうって。楽しいっていうのは学生にすごく言ってもらえるんです。そこは非常にあ

りがたいんですけど、
         「サークル入って良かったね。
                      」っていうのを超えられてる?って部分があって。



(宮野)   教育って、最初はやっぱどうしてもティーチングなんよね。ティーチングしてから、コーチング。
人によってコーチングのスタートの開始時期が変わる。きちっと教えんとダメやね。
                                     「答えは必ずあなたの心
                          5
の中にある」とか言うけど無いもんは無い。教えることは教えんと。




(宿久)特に私立の大学って均質性があまり無いんですね。ものすごく優秀な子がいる一方でそうでもない
子たちもいる、だから 1 人 1 人別々のテーマを持っている。その一方で、何かイベントが起こった時に組み

合わせて立ち向かっていく。これの両立をうまく回す。それは、共同で論文を書くである、とか。我々の研

究室でやってるのは、外部のコンテストとかコンペのために、院生をリーダーにしてグループつくって「君

これ出ようか」ってやって分担させる。



(中村)うちの分野はそういうのが無いので、よその先生と作ってます。よその大学のゼミと合同で、夏休
みに、合同コンペ。



(宿久)   対外試合はなかなか良いんですよー。

(遠藤)そういうコンペをすることによって、なぜチームワークが良くなると先生方はお考えなんですか?

(宿久)   やっぱ問題解決だと思うんですよね。何かハードルが設けられていて…。

(遠藤)   じゃあ問題解決するために、何が発生してると考えられてます?

(宿久)問題解決をするために何をしているか…。まあ必要な仕事の洗い出しも含めて業務がいっぱい出て
きますよね。それを、それこそチームワークで役割分担して、解決していく。



           ●○ここで、チームづくりのプロからのお話○●


   「チームって何やねん」ってことを話す時に例に出すこととして、想像していただきたいんですけ
(灰谷)
ども、エレベーターで偶然一緒になった人たちはチームでしょうか?…うーん…チームとは違う。じゃあ、

エレベーターが止まりました。その瞬間からひょっとしてその人たちがチームになる可能性ってありません

か?っていうお話をするんです。でもそれがチームになるかどうかは、その人たちのあり方で変わってくる

かもしれない。そんな話をします。今からお話しさせていただくことには前提が走ってますので、本当だっ

たらそこを話さなあかんと思うんですけど、背景はとばして実際何やってるのか話させていただきたいと思
                           6
います。

 チームづくりのためにやることは 3 つあるかなと思っていて、
                              (1)メンバーの強みを生かす、
                                            (2)全員

が同じ目的に向かっていく、
            (3)協働する、があると思います。この 3 つを仕掛けするのが、チームビルデ

ィングと考えていて、その結果「組織が成果をあげることと」と「人が成長する」が同時に起こる状態を目

指してます。どっちかだけでは組織としてダメだよねという考え方です。組織として人材の強みや、その人

が持っている事を本当にちゃんと利用できているのかに、1 つ目の問題があると考えています。企業が個人

のデータ持っている場合は、もっぱら評価のためのデータであって、その人の強みを生かすためではないこ

とに注目しています。2 つ目の問題は、向かう方向がバラバラ。たとえば自分自身がキャリアアップのため

に頑張るという人がいたり、お客様のために頑張るという人がいたり…何か一体感に欠けている状態って無

いです?というのが問題点の 2 つ目。あとは対立的、非効率な関係が無いのかってことです。特に企業です

と、個人とのやり取りと、もうひとつは組織同士の関係が非常に大きな無駄と言われてます。具体的に言う

と、人事と経営って仲悪い、とかそのような、個人同士の関係よりも組織同士の関係を扱いたいというのが

あります。人材力、組織力、そして関係力が生かせているという状態ができれば、人も成長して組織も効果

をあげれる。つまり全体への最適を目指そうという提案をさせていただいています。具体的に何やってんね

んて話ですが、たとえば人材力というところでは、その人の強みを知るための客観的アセスメントをやって

います。たとえばハーマンモデルというアセスメントですけど、皆さんに利き手があるように脳にも利き脳

があるらしい、というのですね。大脳生理学をもとにしたという触れ込みのアセスメントを使っています。

どんなもんやねんっていうのをちょっと体感。あくまでゲームとして考えてください。みなさん携帯電話を

選ぶ時に、この中やったらどれを優先しますか?



           <ここで、みんなでアセスメントを体感してみました!!>




(灰谷)今のはちょっとしたお遊びですけど、正式なものですと 80 くらいの項目にそって、自分自身がど
ういった使い方の癖を持っているのかを、アセスメントを使ってやります。例えば論理的な特性を持ってい

る人からすれば、感情を大切にする脳の使い方とか行動特性をもっている人を理解しにくいというところが

ある…でもそれは、本当にそうでしょうか?お互いがいるからこそ、ひとつのチームとしていいもの作って

いきませんか?という提案をするためのツールとしてこういうものを使っています。ですので同質という話

がありましたけど、異質な人が集まっているからこそより高い生産性をうめる、強みを生かしていこうとい

う考え方です。それから「組織力」なんですけど、特に企業では、経営理念みたいなものと組織の目標をし

っかり分けて共有する、ということをやっています。具体的には例えば営業ですと、売上目標、というのが
                         7
聞かれるんです。ところが「何のためにそもそも私たちここに集まっているんだろうか」ということが丌明

確な場合が多いんじゃないだろうか。それが丌明確だと短期的な目標やモチベーションはつくけれども、人

が辞めていったり、無理な頑張りが生じたり。…「そもそも私たち何のためにがんばっているのか」をはっ

きりさせていこう、ということです。3 つ目は関係力。協働という言葉を使うんですけど、互いを補いあい

協力できるようなコミュニケーションがありますか、その工夫があるでしょうか、という問いかけをします。

「工夫」なんですね。これよく研修で使うものなんですけど、同じ長さの組み合わせはどれだと思いますか?



          <「同じ長さの線は?」という有名な同調の実験をやってみました。>



(灰谷)  これをチームでしていただくと、4 番が正しいという人の声をかき消すんです。同調の実験で、ひ
とり以外は全員サクラで、1 番、と言うんです。サクラ以外の被験者はどう答えるのか。どうも、30%以上

「1 番」と答える。おかしいなあと思ってもそう答える、という結果が出ている。

 …そういった、本音のコミュニケーションができるかが大切だと思うんですよね。これができないと、お

かしいと思っていることが言えないという、チームとして最悪の結果が生まれかねない。同調が生じやすい

組織というのがあると思うんですけど、魅力的であればあるほど、そういう疑問をなげかける仕組みとして

持っていますか、ということです。ということで、人材力、組織力、関係力という 3 つを扱いながら、2 つ

の成果をあげていこうという提案をしようということで、企業ではさせていただいています。



         ●○お話を踏まえて、ふたたびディスカッション○●


(松原)  同じ目標って話がありましたけど、研究室では必ずしもこうはいかない。一方向に向けることが果
たして良いことかってことです。学生に「君たちはこれ、君たちはこれ」…とするのを、果たして大学の研

究と言えるんだろうか。なかなか、目的を共有するって難しい。



(辻)今の話、異質性や同質性の話はあったんですが、メンバーが基本的に並列的な立場であることが想定
のような気がしたんですが、研究室というコミュニティを考えると、そこには強力なパワーストラクチャー

があって、チームビルディングについて考える時にはそれを無視できない。ふつうの研究室には教授がコミ

ュニティの中心にいて、その人が研究室文化をつくる上で非常に重要な役割を果たしていて、その下には准

教授あるいは助教とか、教員の間にも立場や関係がある。学生でも、修士の学生と博士の学生ってだいぶ違

いますよね。その間には相当な位置関係の差はあって、研究室の中に存在するパワーストラクチャーのこと

を考えないといけないのかなと。
                          8
(ケンキュウスルゾウ)   企業にもありますよね、パワーストラクチャー。

(澤田)   パワーストラクチャーを正当化するためのに、「チーム」という概念を使うことができるという発
想はありうる。そういう意味で私は、大学の研究室にチームづくりという言葉を導入すること自体に根本的

に反対。権力の強い者が弱い者を支配していくことを、チームの名のもとに美化することができるという…。



(ケンキュウスルゾウ)   チームでやってるんだから従いなさい、と。

(澤田)  そう。さっきも言いましたけど、研究室の中に、たとえば論文とか、いつまでに何かしないといけ
ないことがある時に、何人かで集まってやっちゃう。コンペがあると○○大学を打ち負かしてやろう!と力

がわいてくる。それがチームですよ。そういう意味でチーム現象っていうのはあって良いと思いますね。あ

って良いけど、それを一般化して、そのチーム運営こそが研究室運営のあり方だ、というテーゼにしたら大

間違い。それはパワーストラクチャーの隠蔽に過ぎない。企業ではあるでしょうね。だけど企業っていうの

は教師-学生とは別の意味で決定的に激しい権力関係があるわけで、それだけにチームの概念が必要とされる

んじゃないかな。だけど、研究室でチームという現象自体が完全に否定されるべきなんてことは言ってませ

んよ。



(宮野)   結局僕らって、教員-学生の関係の本質をおさえていない。それは俺らの小・中・高の関係に強く
依存している。もっと言うと、それから抜け出せてない。で、自然とそれとしてあるから分からない。



(宿久)  研究室では「全員こっち向け」って、羊さんをコリーが追いかけるみたいなスタイルにはできない
と思いますね。研究室でまとまってこの方向に行くというのを認めて、しっかりした目的をマイルストーン

としておいてあげるっていうことは、ひとつのうまいやり方かな。あんまり極端にこれがっていう風には言

えない、ってことですよね。



(宮野)   それこそが大学の多様性であるしね。

(遠藤)  ちょっといいですか?「教授がいらっしゃって、准教授はその下…っていう中で、自分で研究する
んだけど、その場にいるとすごく落ち着いて、困った時にすぐ聞けるからすごく安心」っていうのも広い意

味でのチームなんじゃないかって、話伺ってて感じたんですけど。
                           9
(澤田)   逆に、先生といるとイライラしてどうしようもなくなるっていうのもチームなんですか?

(遠藤)   どうでしょう。

(灰谷)   質問いいですか。
              「良い研究で成果あげる」という大きな目的であれば共有できるのでは…。



(澤田)   いや、それすら強いてはいけないと思いますよ、研究室では。

(ケンキュウスルゾウ)  研究って、基本的には新しいものを見つけるってことじゃないですか。そのやり方
っていうのはいろいろあって、何やってんのっているのが実はすごかったりとか、良くありますよね。そう

いう状況では必ずしも、あるアプローチみたいなものを知ることがベストじゃないこともあるんじゃないか

なと思う。



(宿久)   目標がすごく曖昧な時には、環境の設定の方が意味が大きい。

(宮野)   場やね、場づくり。

(宿久) だから一緒にいる場をつくって、落ち着いて何かできるスペースがあるし、君の場所があるよ、っ
て。本とパソコンがあって、電子ジャーナルでも何でも君の好きなのあるし、我々は欲しいって言われたら

本はすべて買ってあげますよ、ってやってあげるわけですよ。そうするとその場所の中で本人が…。



(澤田) その「本人」というのが、建前でもあるんですよね。すごく悪く言うと、本人に自分で考えたと勘
違いさせることもできる。



(宮野) 何が良い、悪いの議論はやっぱり難しくて、それは、教員個人、学生個人の満足度に依存しますよ
ね。



(澤田)   満足度は高いけれどもパフォーマンスは低いということもある。

(宮野) それは難しいところです。研究室って論文が 1 本もなくても存続できるのでね。学生のモチベーシ
                          10
ョンって必ずしも研究だけじゃなくバラバラで、就職、起業、研究…「無い」。こういった中で、教員の欲求

を図示すると、おそらくこうなります(みんなのモチベーションが「研究!」。できればそうなってほしいか
                                   )

ら、たいがいの先生方が言うことは、これのどれかに収まりますよ。「学生たるもの、研究しろ!」「特許出

せるよ」
   「歴史に名を残せるよ」「国際会議に行けるよ。「就活のために学会発表した方が良いだろ」…。
                         」



(澤田)   それは、工学系の一流大学の一般論。



          ●○「何を目的として共有できるか」という話に○●


(宮野)   これは単なる提案ですけど、「学生各自のモチベーションを、研究を通して加速するんだ」と言っ
たらどうでしょう?



(澤田)   いや、そういう効果をもつ試みが他にいろいろあるんですね。「別に研究じゃなくても仲間づくり
ぐらいできるじゃないですか、先生。
                」と。



(宮野)その時僕が言うのは「君はバイトで目覚めてもいい、恋愛で目覚めてもいい、何でもいいけど、で
きれば僕は研究で君と一緒に目覚めたい。 と。
                  」 僕必ずマンツーマンでカウンセリングするんです、 人ずつ。
                                           1



(三谷)でも学生の終着点はここじゃないんですよ。もうひとつ言うと、学生は研究に対して責任を持てな
いんですよ。要するに、成果がゼロでも学生は卒業できる。



(松原)最近僕が考えているのは、4 回生や修士在学中だけでなく,もっと長い目で見て、卒業後も続くよ
うな知的な問題意識をもってもらう,あるいは出会ってもらうということです。卒業して 5 年後、10 年後に

「この研究室で学んで良かった」と思えるようになればいいな、と。ちょっと理想的すぎますけど,卒業・

修了して終わりじゃなくて、就職して 5 年 10 年たって,先生と話をしたいと思うとか、そうなったらいいな

と、思っています。ですから、在学中にどういう研究をするかだけだと,チームとしてのネガティブな面も

あるかも知れませんが,一生を通じての問題意識を持つということであれば、同じ研究室のメンバーとして

共通の価値観を持って研究していけるのかなと、最近考えています。現在そうできているというわけではな

く、これからの目標ですけど。



                           11
(宮野) 僕は先生方が「学生がやる気無い」って言うけど、ちゃんと学生に聞いたんか、と思う。なんで「や
る気無い」のか、と。入り込まな~。



(澤田) でも、そうすることが学生にとってプラスの意味を持つかは教員の人格次第なんですよ。ある意味
心配しなくても、学生は教員を見て育っちゃってるんですよ。良きにつけ悪きにつけ影響は残る。



(ケンキュウスルゾウ)   今の話は 20 代の若い学生を想定してますけど、最近は大学院にも社会人学生が増
えてますし、留学生も各研究室に 1 人 2 人は入るようになっている。多様なバックグラウンドを持つ学生が

増える中で、目的や目標も個々人で異なってきている。その中でどういう風に組織としての目標をつくって

いくか。そういう意味では難しくなってきているのかなって思うんですね。



(宿久) 10 年後の満足度とか 20 年後の満足度とかでもいいと思うんです。うちの大学も自分の子どもをこ
の大学に入れたいと思うような大学になりなさい、とかやっている。



(ケンキュウスルゾウ)   企業とかだと、目標の共有っていうのはどういう感じなんですか。「自分の子ども
を入れたいと思うような会社に」とか?



(灰谷) そういうのもあると思うんですけど、ひとつ違う視点というか、目的と言うとちょっと?てなるん
ですけど、使命感を高く持ってっていうのを使う方が…。どういうレベルの仕事をしてるのかってことです。

あなたの仕事は毎日の生活を良くするためですか?会社を大きくするためですか?それとも日本を良くする

ためっていう使命感持ってるんですか?そういうことは部下に伝わるし、部下のその使命感をあげたら部下

もより高い成果につながらないでしょうか、っていう風に言う場合があるんですけど。



(ケンキュウスルゾウ)   これに関連して、以前いきいき研で研究室でヒアリングした時に出たのが、「研究
室訓」ですね。材料工学のM1の学生さんによると、具体的にその先生が言ったわけじゃないみたいですけ

ど、
 「最先端のことを知ってないといけない、似てる研究はあるけど同じ研究は無いっていうのを重視してい

る」
 。



(松原) 私の話になるんですけど、私たちの頃っていうのはそれこそゆるやかな研究室ていうのが成り立っ
てたと思うんですね。前に私がいたところは、助教授がいて、ポスドクがいて、ドクターがいて、マスター

がいてっていう風な。こういう風な形に進んでいけるんだっていうロールモデルですね。でも今の大学生は 4
                           12
年生は進学はするけどマスター出て、企業の営業とかに入ってしまう。ロールモデルになるような学生がい

ないので、なんとなく過ごしてしまう学生が多いように思うんですね。



(宮野)ある研究室では、企業でがんばってる自分の研究室の先輩を呼んで発表や講演をさせてますね。自
分の研究室から出た先輩、自分の延長上にあそこがあるんだっていう、ね。



(澤田)   それはロールモデルが存在するということですよ。

   逆に先を意識しすぎて研究が手につかんってことが最近は非常にあって、学部インターンシップも
(宿久)
そうなんですけど、大学院のインターンシップってだいたい 6 月が締めなんです。で、企業はやっぱりうま

くやってくださるんですね。魅せてくださるんです。企業によっては往復旅費も出せば宿泊費も出せば日当

までっていう。で、現場をどんって見せるわけですよ。そりゃ、おおっ!てなる。



(宮野)   そうなんよ。

(宿久)   ハッピーライフには、就職は非常に重要です。

(宮野)さっきおっしゃってたように、研究室は通過点なんです。我々はもうずっと、見送る立場。そこで
学生に何を身につけさせるかっていう、のを考えないといけない。



(宿久)   現状は、出遅れてしまえばいい企業にはもう行けない。だから、教員は、「君がここでやる研究、
あるいはその経験ていうのは、役立つ。」と言うしかないですけど。



(宮野)   でも本当に役に立つに立つのかな?っていうのは…(笑)

(澤田)   背後にあるのは日本の反知性でしょう。勉強よりも経験積んだ方がよっぽど身につくじゃないか、
と。そういうレトリックはうっかりすると我々自身にも浸透している。



(宿久)で、今は知識投下型の講義とか嫌うようになっているじゃないですか。何かとプロジェクト型でや
る。それって楽しいし一定まではいいんだけど、ある程度のものを積んだ上でなくてもう、いきなり…。



                          13
(宮野)それを学生はやろうと思ってやっとるわけじゃないと僕は思う。ちょっと変わったことやろう思っ
てやっとるだけや。



(澤田)   でも教員で 1 時間なり 1 時間半なりを通して話して、
                                  「ああ、面白い話だ」と思わせることができ
る人って、何人に 1 人でしょうね。



(宿久)モチベーションなんてのは、教育されていただく必要はない。モチベーションは学生の感性だ。感
性の無い学生なんてほっとけばいいって、ばーんと切っちゃうって考えもありますよね。



(澤田)   それも妥当だと思うんですけど、あんまりやるとこっちがパンクする。

(松原)今の大企業なんか、非常にうまい説明をされるので、私たちの話なんか、学生たちは全然面白くも
ないし、理解もしない。同じ事を言っても、モノクロのスライドはあれやけどカラーだとついていこうとか、

結局世の中どうもそっち行ってるみたいで…。



(ケンキュウスルゾウ)   そこはもうテクニックを割り切って学んで、伝えたいことをうまく伝えるって…。

(澤田)   ドキュメンタリーも昔は、技術を淡々と伝えてナレーションをつけるだけで見てくれたんですよ。
それではダメになった。やっぱりストーリー、そして感情移入ですね。ストーリーでもって、感情移入して

話しつつ、それをもう一回最後にとりまめる、あれにはこういう意味があるんですよって。こういうことを

する余地はあるんだと思います。



         ●○授業改善の話を経て、教員と学生の関係の話へ○●


(ケンキュウスルゾウ)   さっき教員と学生の関係性みたいな話を、最後聞きたいなと思って。例えばさっき
「サークル」って話してたのはそういう関係なんですか?



(中村)そうですね、古典的手法が一番かなと思って、うちはゼミ配属前にとにかく飲み会するんです。全
員出れるように絶対やるんです、日程変えて。それで全体の関係性をつかんだ後、個々が将来何をやりたく

て、今どういうとこかってところを見て、そういうことだったらこんな勉強したらいいよ、とか。



                           14
(宿久)大事なのはやっぱり飲み会。うちは4月に祇園でキックオフやるんですよ。祇園で、桜を見ること
がポイントなんですよ。その下で、ここでわれわれは頑張るんだという。



(中村)   飲み会、最初は恥ずかしかった。

(宮野)   飲み会を開催するのが恥ずかしいの?

(中村)なんていうんですか、最初は挨拶しろって言われるのとか…。ここを引っ張る身だっていう意識で
すね。立って挨拶する時、40 人くらいが座ってるわけですよ。ある意味、言葉は悪いけど親分みたい。



(今村)それまでの大勢対と違って、研究室に来て一対一になった時から話す内容も違うし、顔つきも多分
変わってる。最初に教員室で一対一になって、この子と 2 年間付き合うのかって。そこが私にとっては、最

初のスタート。研究室に入ってからは、なるべくもう出すようにしてます。自分が失敗した時にはしたって

いう事を学生にも話しますし、すごくイライラしてやってられない時なんかも話すようにして、嬉しい時に

はなんか一人でばか騒ぎしてっていうのを、自分から見せることで、今ぐらいから 4 回生の子なんか心を開

き始める。



(宮野)教員と学生ってどうしても、教える人と教わる人。これが例えばバイクの乗り方だったら別にいい
んや。ただ、サイエンスやから、科学では教員も学生も関係ない。フラットやから。そこにギャップという

か矛盾が生じてるんじゃないかと思う。



   僕自身は、実は学生に「こうです」
(松原)              「こうなんだ」ってのは言わないんです。
                                    「こうではないかな?」
しか言えない。
      「君こういうけど、これ、ああかな?こうかな?」っていう会話のやりとりだけなんです。こ

うだ、ああだって言って、学生が「ははー」って動くっていうのは、うらやましいなって思うけれども、い

や、僕の方が正しいんだとどっかで思って。



(ケンキュウスルゾウ)  カルト集団の洗脳とかって、なぜなぜなぜ…って問い詰めて答えが無くなった時に
「こうです」って言うとか…。なんて言うんでしょう、問いかけるっていうのは自分の考えに誘導するため

にじゃないかとか考えてしまって…どうなんですかね。



(澤田)   カルトの場合はいったん破壊するんですよ。そういうことをやろうと思えばできてしまう。
                           15
(宿久)   なかにはやっぱり、そういうのはしんどくて、「こうしろ」って言ってくれた方がはるかに楽だっ
たということもありますよね。



(辻)教員の学生の関係で言うと、比較的大きな講座だと、むしろ、教員が個の学生との関係をつくりづら
くなることもあると思うんです。それは教員もどんどん忙しくなってって場合もあるんですが、意識的であ

れ無意識的であれ、その他の学生との関係や他の構成員との関係とかに縛られて…。



                ●○最後にひとこと(抜粋)○●


「チームビルディングは、良いコミュニケーションの量。今回も、コミュニケーションしたことで、いろん

なこと分かり合えた。(遠藤)
         」



「教員が学生の目的に向かって協働できるか?」(三谷)



「研究室間のつながり。企業から学ぶ点あり、チームビルディングにおいて考慮すべき事柄では。越境的な

研究活動!」(辻)



「『研究室運営とは、良くも悪くも教師としての生きざま』であらざるを得ないのかな、と。(澤田)
                                          」



『先生のグラスを空にしないこと』
               。これはゼミの決まりなんですが、これをゼミ生が言い出してくれたこと

が嬉しかったんですね。こういうことを言ってくれる学生に、学問的にどう答えるかが課題です。(中村)
                                            」



「『研究室運営とは歯車を回すこと』。歯車ってあんまりいいイメージ無いんかなと思うですけど、ちっちゃ

な歯車も歯が欠けた歯車も転がってエネルギーになって。歯車はバラバラにしても一人一人転がる。」
                                             (宿久)



「変わらなきゃ、も変わらなきゃ。今度もよろしくお願いいたします。(宮野)
                               」


 最後に     「研究室」を、
               「チーム」という枠組みで捉えることがどこまで妥当なのか、という疑問は残

 ったものの、登壇者の皆さまの経験や知見を踏まえた議論によって、様々なことが明らかになりました。

 研究室という様々な矛盾を孕んだコミュニティの本質、そしてそのより良い運営方法について、これか

 らも議論を重ねていきたいと思います。登壇者のみなさま、本日はありがとうございました。
                       16
                             いきいき研究室増産プロジェクト

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夜までラボ☆テレビ7月24日開催分

  • 1. 「夜までラボ☆テレビ」 レポート 2009 年 7 月 24 日 いきいき研究室 増産プロジェクト 1
  • 2. みなさんこんばんは。夜までラボ☆テレビの時間です。研究室における学生の鬱、丌登校…この 問題に関係するのが、「研究室のチームづくり」ではないでしょうか。研究室のチームづくりは どうあるべきなのか、そのために何をすべきなのか…今回のテーマは「トゥギャザーしようぜ! 研究室のチームビルディング」です! 今回のメンバー 【パネリスト】 (50 音順・敬称略) 今村綾(長浜バイオ大学 バイオサイエンス学科遺伝子生命科学コース 講師) 佐上郁子(京都府立大学大学院生命環境科学研究科 教授) 澤田芳郎(京都大学産官学連携センター教授・本プロジェクトアドバイザー) 辻高明(京都大学大学院情報学研究科 特任助教) 中村康江(立命館大学 法学部法学科 准教授) 松原斎樹(京都府立大学大学院生命環境科学研究科 教授) 三谷友彦(京都大学生存圏研究所 助教) 宮野公樹(京都大学大学院工学研究科 講師・本プロジェクトメンバー) 宿久洋(同志社大学文化情報学部 教授) 【ゲストスピーカー】 (50 音順・敬称略) 遠藤範子(有限会社ミューズ 代表・国士舘大学 非常勤講師) :コメンテーター 灰谷孝(株式会社コーチングファームジャパン ビジョンパートナー) :プレゼンテーター・ コメンテーター 【司会進行】 ケンキュウスルゾウ(いきいき研究室増産プロジェクトメンバー) 2
  • 3. ●○最初に、本プロジェクトの紹介○● 皆さま、本日はありがとうございます。今日は簡単に、「いきいき研究室増産プロジェクト」 の話をします。まず、大学における問題です。大学の使命としては、教育、研究、社会貢献とい うことが言われております。これらが大学のどこで行われているのかと言うと、研究室に他なり ません。研究、人材育成…全部を研究室がやっている。その研究室を取り巻く外部事情としては、 様々な問題があります。あまり詳しくは説明しませんが、嫌なデータもたくさんあります。内部 事情も、研究したいとか、学会活動しなきゃ、外部資金とらなきゃ、申請書書かなきゃとかいろ いろあります。授業もそうですし、大学運営、ナントカ委員もそうです。鬱になりがちな学生と か、内部で競争しろとか。こういう中で、我々はどうしたらいいのか。現状では、授業とかはフ ァカルティデヴェロップメントとか言っていますが、それは授業だけで、しかも表面的な、字や 声の大きさとかといった程度です。でも将来、研究室も評価される日がきっと来る。それに備え て、じゃないですけども、研究室を活性化せんと。そうすればきっと研究も進むし、大学や日本 が良くなるんじゃないかということで、 「いきいき研究室増産プロジェクト」が生まれました。 今日のようなことを基本に、いろいろな活動をやってます。 最終的には、研究室の構成員が能力を発揮できる組織にするための支援を行う。で、学生がど んどん育って日本中にいきいき研究室が増加して、研究と教育が同時活性、人の国 JAPAN や! ということでやっております。 ●○司会ケンキュウスルゾウから趣旨説明○● 私ケンキュウスルゾウ、と申します。今日は「チームビルディング」というテーマです。チー ムビルディングはもともと企業で使われた概念だと思うんですが、大学研究室におけるチームビ ルディングが存在するのかが、私自身もまだ分からない…というか興味があるんです。ひとまず 話してですね、仮にそういうものが存在するとしたら、企業でのチームビルディングの考え方が、 どういう風に大学に持ってこれるのかを、その後考えたいと思います。今日はいきなりご意見を 聞きたいなと思っています。で、議論する中で各自の経験やご所属を知っていただけると思いま す。初めにチームビルディングが何かを確認したいと思っています。これは、灰谷さんに後で紹 介していただく資料から取ってきたんですけど、「チームビルディングとは、各自の強みを生か し、全員が同じ目的に向かって行動することで、成果と成長を得られる組織づくり」と定義があ ります。こういうものについて皆さんがどういう考えを持っているのかを、お聞きしたいと思い ます。どうでしょうか? 3
  • 4. ●○さっそく議論スタート!○● (三谷) 大学において企業といちばん大きく違うのは、人の入れ替わりが激しい。学生がチームの一員だと いう前提のもとで話してますけど、学生は 4 回生からいて修士課程でだいたい 3 年ですね。3 年間で出て行 く。企業もチーム的なものは 3 年から 5 年間で変わるのか、もっと長いスパンなのかは、興味があります。 大学の場合は尐なくとも決まった時限があります。作れるのかっていう話はあるんですけど、そのあたりで のチームの作り方には興味あります。 (ケンキュウスルゾウ) ありがとうございます。発言は自由に言っていただいて構いません。無ければ勝手 にあてますけど、昔はいわゆる文系のところにいらっしゃって今は理系の研究室にいらっしゃる方なんか、 そのあたりの違いとかどうでしょう? (辻) 無茶ぶりやな(笑)。僕はですね、理想だと思うチームって、緩やかなつながりだと思うんです。や やもすると、チームビルディング、コミュニティといった言葉の響きには、収斂の強さ、凝集性の強さとい う意味が強く出てると思うんです。いきいき研でこれまで議論した、ある種のハラスメントの問題っていう のは、そういう集団性の強さが起因している面もあると思うんですね。チームビルディングはもちろん大事 ですし、うちの研究室がコミュニティとして発展、成長することは是なんですけども、集団性、凝集性が強 くなりすぎることによる弊害もあるんじゃないかって思って、そう意味で、あえてこのチームビルディング っていうテーマの中で、 「緩やかなつながり」って書かせてもらいました。チームづくりにおけるつながりの プラスの側面、マイナスの側面から議論できればいいじゃないかなって思います。 (松原) 大学と企業との違いは、企業の場合はサラリーをいただいて働いていますけど、院生は、授業料を 払って学びに来ているので、どこまで彼らに教員についてくる義務があるかっていうあたりがありまして…。 (澤田) ただいまの発言は、「研究室をチームとしてとらえること自体が間違いだ」という意味に、私は受 け取りました。私としてはチームの定義について反論はないんですよ。しかし、はたして大学の研究室はチ ームなのか。その点でさきほど非常に良いことをおっしゃったと思うのが「コミュニティ」です。コミュニ ティとチームはぜんぜん違っていて、成員が共通の目標を持っていない。そういう概念です。で、ここにあ えて共通の目標を持たせることで力を発揮させようとすると、必ずそれに乗らない人が出てくるだろう。は たして「チーム」にはめ込んでいくのがいいことなのかという点で疑問がある。というのが私の意見です 4
  • 5. (宿久)私は、規模と同質性の問題がある、ということを申し上げたいです。研究室をどのくらいの大きさ で考えるのかでだいぶ違うと思うんですね。規模によっては、一つの研究室の中にいろんなものが発生する。 私なんかはもともとは数学出身で、 「勝手にやりなさい」で育った。今私がいるところは文系理系の両方の学 生がいる非常に難しい領域なので、必ずしも一対一が良いというものでもない、必ずしも全員一致が良いと いうわけでもない。そこでどうやるかってことに非常に苦労しているところで、まあ今回ここでいろんな議 論いただいて、まあ情報持って帰りたいなと思ってるとこなんです。 (佐上)研究室の研究分野や、院生のタイプによっても違うんじゃないかなって気がします。 (澤田)ちょっと補足ですが、例えば何人か共同で論文をつくるということがあります。だから、それに参 加してる人たちはチームの定義に合うと思いますし、そういう「チーム現象」が研究室の中に生ずることは 否定していません。 「必ず学生が入れ替わる。 (宮野) 」これ僕ね、ずっとデメリットだと思ってたんや。研究室ってどんどん 変わっていくって。だけどこの前「実はメリットちゃうか」と気付いた。えっとね、想像して下さい。この 中に、国の研究所とか企業の研究所とか行かれた方いますか。研究所があって研究員がいる。学生がいない。 ずーっとそのメンバーでやるんやで。ちょっと嫌じゃない(笑)?? でねー、ほんとそうなんよ。閉じとる んよ、すごく。学生コロコロ変わるけど、それが実はマンパワーなんよ。やっと分かったわ。 (遠藤)複数人、つまり 2 人いればすでにチームなんやって私は感じてるねんけど、教師と学生とかをチー ムだと思うのか、そうじゃなくて研究室自体がチームだと思うのか。そういう捉え方もできると思う。 (中村)私のところは全然皆さんと全然違うかなと思うのは、各自が研究テーマを持ってないですし、人数 も多いです。研究室に入るのは 3 回生からで非常に若い。チームという雰囲気のある集団、コミュニティを つくろうとすると「これサークルじゃね?」って思うことがあるんです。自分のしてることが、サークルの 責任者と何が違うんだろうって。楽しいっていうのは学生にすごく言ってもらえるんです。そこは非常にあ りがたいんですけど、 「サークル入って良かったね。 」っていうのを超えられてる?って部分があって。 (宮野) 教育って、最初はやっぱどうしてもティーチングなんよね。ティーチングしてから、コーチング。 人によってコーチングのスタートの開始時期が変わる。きちっと教えんとダメやね。 「答えは必ずあなたの心 5
  • 6. の中にある」とか言うけど無いもんは無い。教えることは教えんと。 (宿久)特に私立の大学って均質性があまり無いんですね。ものすごく優秀な子がいる一方でそうでもない 子たちもいる、だから 1 人 1 人別々のテーマを持っている。その一方で、何かイベントが起こった時に組み 合わせて立ち向かっていく。これの両立をうまく回す。それは、共同で論文を書くである、とか。我々の研 究室でやってるのは、外部のコンテストとかコンペのために、院生をリーダーにしてグループつくって「君 これ出ようか」ってやって分担させる。 (中村)うちの分野はそういうのが無いので、よその先生と作ってます。よその大学のゼミと合同で、夏休 みに、合同コンペ。 (宿久) 対外試合はなかなか良いんですよー。 (遠藤)そういうコンペをすることによって、なぜチームワークが良くなると先生方はお考えなんですか? (宿久) やっぱ問題解決だと思うんですよね。何かハードルが設けられていて…。 (遠藤) じゃあ問題解決するために、何が発生してると考えられてます? (宿久)問題解決をするために何をしているか…。まあ必要な仕事の洗い出しも含めて業務がいっぱい出て きますよね。それを、それこそチームワークで役割分担して、解決していく。 ●○ここで、チームづくりのプロからのお話○● 「チームって何やねん」ってことを話す時に例に出すこととして、想像していただきたいんですけ (灰谷) ども、エレベーターで偶然一緒になった人たちはチームでしょうか?…うーん…チームとは違う。じゃあ、 エレベーターが止まりました。その瞬間からひょっとしてその人たちがチームになる可能性ってありません か?っていうお話をするんです。でもそれがチームになるかどうかは、その人たちのあり方で変わってくる かもしれない。そんな話をします。今からお話しさせていただくことには前提が走ってますので、本当だっ たらそこを話さなあかんと思うんですけど、背景はとばして実際何やってるのか話させていただきたいと思 6
  • 7. います。 チームづくりのためにやることは 3 つあるかなと思っていて、 (1)メンバーの強みを生かす、 (2)全員 が同じ目的に向かっていく、 (3)協働する、があると思います。この 3 つを仕掛けするのが、チームビルデ ィングと考えていて、その結果「組織が成果をあげることと」と「人が成長する」が同時に起こる状態を目 指してます。どっちかだけでは組織としてダメだよねという考え方です。組織として人材の強みや、その人 が持っている事を本当にちゃんと利用できているのかに、1 つ目の問題があると考えています。企業が個人 のデータ持っている場合は、もっぱら評価のためのデータであって、その人の強みを生かすためではないこ とに注目しています。2 つ目の問題は、向かう方向がバラバラ。たとえば自分自身がキャリアアップのため に頑張るという人がいたり、お客様のために頑張るという人がいたり…何か一体感に欠けている状態って無 いです?というのが問題点の 2 つ目。あとは対立的、非効率な関係が無いのかってことです。特に企業です と、個人とのやり取りと、もうひとつは組織同士の関係が非常に大きな無駄と言われてます。具体的に言う と、人事と経営って仲悪い、とかそのような、個人同士の関係よりも組織同士の関係を扱いたいというのが あります。人材力、組織力、そして関係力が生かせているという状態ができれば、人も成長して組織も効果 をあげれる。つまり全体への最適を目指そうという提案をさせていただいています。具体的に何やってんね んて話ですが、たとえば人材力というところでは、その人の強みを知るための客観的アセスメントをやって います。たとえばハーマンモデルというアセスメントですけど、皆さんに利き手があるように脳にも利き脳 があるらしい、というのですね。大脳生理学をもとにしたという触れ込みのアセスメントを使っています。 どんなもんやねんっていうのをちょっと体感。あくまでゲームとして考えてください。みなさん携帯電話を 選ぶ時に、この中やったらどれを優先しますか? <ここで、みんなでアセスメントを体感してみました!!> (灰谷)今のはちょっとしたお遊びですけど、正式なものですと 80 くらいの項目にそって、自分自身がど ういった使い方の癖を持っているのかを、アセスメントを使ってやります。例えば論理的な特性を持ってい る人からすれば、感情を大切にする脳の使い方とか行動特性をもっている人を理解しにくいというところが ある…でもそれは、本当にそうでしょうか?お互いがいるからこそ、ひとつのチームとしていいもの作って いきませんか?という提案をするためのツールとしてこういうものを使っています。ですので同質という話 がありましたけど、異質な人が集まっているからこそより高い生産性をうめる、強みを生かしていこうとい う考え方です。それから「組織力」なんですけど、特に企業では、経営理念みたいなものと組織の目標をし っかり分けて共有する、ということをやっています。具体的には例えば営業ですと、売上目標、というのが 7
  • 8. 聞かれるんです。ところが「何のためにそもそも私たちここに集まっているんだろうか」ということが丌明 確な場合が多いんじゃないだろうか。それが丌明確だと短期的な目標やモチベーションはつくけれども、人 が辞めていったり、無理な頑張りが生じたり。…「そもそも私たち何のためにがんばっているのか」をはっ きりさせていこう、ということです。3 つ目は関係力。協働という言葉を使うんですけど、互いを補いあい 協力できるようなコミュニケーションがありますか、その工夫があるでしょうか、という問いかけをします。 「工夫」なんですね。これよく研修で使うものなんですけど、同じ長さの組み合わせはどれだと思いますか? <「同じ長さの線は?」という有名な同調の実験をやってみました。> (灰谷) これをチームでしていただくと、4 番が正しいという人の声をかき消すんです。同調の実験で、ひ とり以外は全員サクラで、1 番、と言うんです。サクラ以外の被験者はどう答えるのか。どうも、30%以上 「1 番」と答える。おかしいなあと思ってもそう答える、という結果が出ている。 …そういった、本音のコミュニケーションができるかが大切だと思うんですよね。これができないと、お かしいと思っていることが言えないという、チームとして最悪の結果が生まれかねない。同調が生じやすい 組織というのがあると思うんですけど、魅力的であればあるほど、そういう疑問をなげかける仕組みとして 持っていますか、ということです。ということで、人材力、組織力、関係力という 3 つを扱いながら、2 つ の成果をあげていこうという提案をしようということで、企業ではさせていただいています。 ●○お話を踏まえて、ふたたびディスカッション○● (松原) 同じ目標って話がありましたけど、研究室では必ずしもこうはいかない。一方向に向けることが果 たして良いことかってことです。学生に「君たちはこれ、君たちはこれ」…とするのを、果たして大学の研 究と言えるんだろうか。なかなか、目的を共有するって難しい。 (辻)今の話、異質性や同質性の話はあったんですが、メンバーが基本的に並列的な立場であることが想定 のような気がしたんですが、研究室というコミュニティを考えると、そこには強力なパワーストラクチャー があって、チームビルディングについて考える時にはそれを無視できない。ふつうの研究室には教授がコミ ュニティの中心にいて、その人が研究室文化をつくる上で非常に重要な役割を果たしていて、その下には准 教授あるいは助教とか、教員の間にも立場や関係がある。学生でも、修士の学生と博士の学生ってだいぶ違 いますよね。その間には相当な位置関係の差はあって、研究室の中に存在するパワーストラクチャーのこと を考えないといけないのかなと。 8
  • 9. (ケンキュウスルゾウ) 企業にもありますよね、パワーストラクチャー。 (澤田) パワーストラクチャーを正当化するためのに、「チーム」という概念を使うことができるという発 想はありうる。そういう意味で私は、大学の研究室にチームづくりという言葉を導入すること自体に根本的 に反対。権力の強い者が弱い者を支配していくことを、チームの名のもとに美化することができるという…。 (ケンキュウスルゾウ) チームでやってるんだから従いなさい、と。 (澤田) そう。さっきも言いましたけど、研究室の中に、たとえば論文とか、いつまでに何かしないといけ ないことがある時に、何人かで集まってやっちゃう。コンペがあると○○大学を打ち負かしてやろう!と力 がわいてくる。それがチームですよ。そういう意味でチーム現象っていうのはあって良いと思いますね。あ って良いけど、それを一般化して、そのチーム運営こそが研究室運営のあり方だ、というテーゼにしたら大 間違い。それはパワーストラクチャーの隠蔽に過ぎない。企業ではあるでしょうね。だけど企業っていうの は教師-学生とは別の意味で決定的に激しい権力関係があるわけで、それだけにチームの概念が必要とされる んじゃないかな。だけど、研究室でチームという現象自体が完全に否定されるべきなんてことは言ってませ んよ。 (宮野) 結局僕らって、教員-学生の関係の本質をおさえていない。それは俺らの小・中・高の関係に強く 依存している。もっと言うと、それから抜け出せてない。で、自然とそれとしてあるから分からない。 (宿久) 研究室では「全員こっち向け」って、羊さんをコリーが追いかけるみたいなスタイルにはできない と思いますね。研究室でまとまってこの方向に行くというのを認めて、しっかりした目的をマイルストーン としておいてあげるっていうことは、ひとつのうまいやり方かな。あんまり極端にこれがっていう風には言 えない、ってことですよね。 (宮野) それこそが大学の多様性であるしね。 (遠藤) ちょっといいですか?「教授がいらっしゃって、准教授はその下…っていう中で、自分で研究する んだけど、その場にいるとすごく落ち着いて、困った時にすぐ聞けるからすごく安心」っていうのも広い意 味でのチームなんじゃないかって、話伺ってて感じたんですけど。 9
  • 10. (澤田) 逆に、先生といるとイライラしてどうしようもなくなるっていうのもチームなんですか? (遠藤) どうでしょう。 (灰谷) 質問いいですか。 「良い研究で成果あげる」という大きな目的であれば共有できるのでは…。 (澤田) いや、それすら強いてはいけないと思いますよ、研究室では。 (ケンキュウスルゾウ) 研究って、基本的には新しいものを見つけるってことじゃないですか。そのやり方 っていうのはいろいろあって、何やってんのっているのが実はすごかったりとか、良くありますよね。そう いう状況では必ずしも、あるアプローチみたいなものを知ることがベストじゃないこともあるんじゃないか なと思う。 (宿久) 目標がすごく曖昧な時には、環境の設定の方が意味が大きい。 (宮野) 場やね、場づくり。 (宿久) だから一緒にいる場をつくって、落ち着いて何かできるスペースがあるし、君の場所があるよ、っ て。本とパソコンがあって、電子ジャーナルでも何でも君の好きなのあるし、我々は欲しいって言われたら 本はすべて買ってあげますよ、ってやってあげるわけですよ。そうするとその場所の中で本人が…。 (澤田) その「本人」というのが、建前でもあるんですよね。すごく悪く言うと、本人に自分で考えたと勘 違いさせることもできる。 (宮野) 何が良い、悪いの議論はやっぱり難しくて、それは、教員個人、学生個人の満足度に依存しますよ ね。 (澤田) 満足度は高いけれどもパフォーマンスは低いということもある。 (宮野) それは難しいところです。研究室って論文が 1 本もなくても存続できるのでね。学生のモチベーシ 10
  • 11. ョンって必ずしも研究だけじゃなくバラバラで、就職、起業、研究…「無い」。こういった中で、教員の欲求 を図示すると、おそらくこうなります(みんなのモチベーションが「研究!」。できればそうなってほしいか ) ら、たいがいの先生方が言うことは、これのどれかに収まりますよ。「学生たるもの、研究しろ!」「特許出 せるよ」 「歴史に名を残せるよ」「国際会議に行けるよ。「就活のために学会発表した方が良いだろ」…。 」 (澤田) それは、工学系の一流大学の一般論。 ●○「何を目的として共有できるか」という話に○● (宮野) これは単なる提案ですけど、「学生各自のモチベーションを、研究を通して加速するんだ」と言っ たらどうでしょう? (澤田) いや、そういう効果をもつ試みが他にいろいろあるんですね。「別に研究じゃなくても仲間づくり ぐらいできるじゃないですか、先生。 」と。 (宮野)その時僕が言うのは「君はバイトで目覚めてもいい、恋愛で目覚めてもいい、何でもいいけど、で きれば僕は研究で君と一緒に目覚めたい。 と。 」 僕必ずマンツーマンでカウンセリングするんです、 人ずつ。 1 (三谷)でも学生の終着点はここじゃないんですよ。もうひとつ言うと、学生は研究に対して責任を持てな いんですよ。要するに、成果がゼロでも学生は卒業できる。 (松原)最近僕が考えているのは、4 回生や修士在学中だけでなく,もっと長い目で見て、卒業後も続くよ うな知的な問題意識をもってもらう,あるいは出会ってもらうということです。卒業して 5 年後、10 年後に 「この研究室で学んで良かった」と思えるようになればいいな、と。ちょっと理想的すぎますけど,卒業・ 修了して終わりじゃなくて、就職して 5 年 10 年たって,先生と話をしたいと思うとか、そうなったらいいな と、思っています。ですから、在学中にどういう研究をするかだけだと,チームとしてのネガティブな面も あるかも知れませんが,一生を通じての問題意識を持つということであれば、同じ研究室のメンバーとして 共通の価値観を持って研究していけるのかなと、最近考えています。現在そうできているというわけではな く、これからの目標ですけど。 11
  • 12. (宮野) 僕は先生方が「学生がやる気無い」って言うけど、ちゃんと学生に聞いたんか、と思う。なんで「や る気無い」のか、と。入り込まな~。 (澤田) でも、そうすることが学生にとってプラスの意味を持つかは教員の人格次第なんですよ。ある意味 心配しなくても、学生は教員を見て育っちゃってるんですよ。良きにつけ悪きにつけ影響は残る。 (ケンキュウスルゾウ) 今の話は 20 代の若い学生を想定してますけど、最近は大学院にも社会人学生が増 えてますし、留学生も各研究室に 1 人 2 人は入るようになっている。多様なバックグラウンドを持つ学生が 増える中で、目的や目標も個々人で異なってきている。その中でどういう風に組織としての目標をつくって いくか。そういう意味では難しくなってきているのかなって思うんですね。 (宿久) 10 年後の満足度とか 20 年後の満足度とかでもいいと思うんです。うちの大学も自分の子どもをこ の大学に入れたいと思うような大学になりなさい、とかやっている。 (ケンキュウスルゾウ) 企業とかだと、目標の共有っていうのはどういう感じなんですか。「自分の子ども を入れたいと思うような会社に」とか? (灰谷) そういうのもあると思うんですけど、ひとつ違う視点というか、目的と言うとちょっと?てなるん ですけど、使命感を高く持ってっていうのを使う方が…。どういうレベルの仕事をしてるのかってことです。 あなたの仕事は毎日の生活を良くするためですか?会社を大きくするためですか?それとも日本を良くする ためっていう使命感持ってるんですか?そういうことは部下に伝わるし、部下のその使命感をあげたら部下 もより高い成果につながらないでしょうか、っていう風に言う場合があるんですけど。 (ケンキュウスルゾウ) これに関連して、以前いきいき研で研究室でヒアリングした時に出たのが、「研究 室訓」ですね。材料工学のM1の学生さんによると、具体的にその先生が言ったわけじゃないみたいですけ ど、 「最先端のことを知ってないといけない、似てる研究はあるけど同じ研究は無いっていうのを重視してい る」 。 (松原) 私の話になるんですけど、私たちの頃っていうのはそれこそゆるやかな研究室ていうのが成り立っ てたと思うんですね。前に私がいたところは、助教授がいて、ポスドクがいて、ドクターがいて、マスター がいてっていう風な。こういう風な形に進んでいけるんだっていうロールモデルですね。でも今の大学生は 4 12
  • 13. 年生は進学はするけどマスター出て、企業の営業とかに入ってしまう。ロールモデルになるような学生がい ないので、なんとなく過ごしてしまう学生が多いように思うんですね。 (宮野)ある研究室では、企業でがんばってる自分の研究室の先輩を呼んで発表や講演をさせてますね。自 分の研究室から出た先輩、自分の延長上にあそこがあるんだっていう、ね。 (澤田) それはロールモデルが存在するということですよ。 逆に先を意識しすぎて研究が手につかんってことが最近は非常にあって、学部インターンシップも (宿久) そうなんですけど、大学院のインターンシップってだいたい 6 月が締めなんです。で、企業はやっぱりうま くやってくださるんですね。魅せてくださるんです。企業によっては往復旅費も出せば宿泊費も出せば日当 までっていう。で、現場をどんって見せるわけですよ。そりゃ、おおっ!てなる。 (宮野) そうなんよ。 (宿久) ハッピーライフには、就職は非常に重要です。 (宮野)さっきおっしゃってたように、研究室は通過点なんです。我々はもうずっと、見送る立場。そこで 学生に何を身につけさせるかっていう、のを考えないといけない。 (宿久) 現状は、出遅れてしまえばいい企業にはもう行けない。だから、教員は、「君がここでやる研究、 あるいはその経験ていうのは、役立つ。」と言うしかないですけど。 (宮野) でも本当に役に立つに立つのかな?っていうのは…(笑) (澤田) 背後にあるのは日本の反知性でしょう。勉強よりも経験積んだ方がよっぽど身につくじゃないか、 と。そういうレトリックはうっかりすると我々自身にも浸透している。 (宿久)で、今は知識投下型の講義とか嫌うようになっているじゃないですか。何かとプロジェクト型でや る。それって楽しいし一定まではいいんだけど、ある程度のものを積んだ上でなくてもう、いきなり…。 13
  • 14. (宮野)それを学生はやろうと思ってやっとるわけじゃないと僕は思う。ちょっと変わったことやろう思っ てやっとるだけや。 (澤田) でも教員で 1 時間なり 1 時間半なりを通して話して、 「ああ、面白い話だ」と思わせることができ る人って、何人に 1 人でしょうね。 (宿久)モチベーションなんてのは、教育されていただく必要はない。モチベーションは学生の感性だ。感 性の無い学生なんてほっとけばいいって、ばーんと切っちゃうって考えもありますよね。 (澤田) それも妥当だと思うんですけど、あんまりやるとこっちがパンクする。 (松原)今の大企業なんか、非常にうまい説明をされるので、私たちの話なんか、学生たちは全然面白くも ないし、理解もしない。同じ事を言っても、モノクロのスライドはあれやけどカラーだとついていこうとか、 結局世の中どうもそっち行ってるみたいで…。 (ケンキュウスルゾウ) そこはもうテクニックを割り切って学んで、伝えたいことをうまく伝えるって…。 (澤田) ドキュメンタリーも昔は、技術を淡々と伝えてナレーションをつけるだけで見てくれたんですよ。 それではダメになった。やっぱりストーリー、そして感情移入ですね。ストーリーでもって、感情移入して 話しつつ、それをもう一回最後にとりまめる、あれにはこういう意味があるんですよって。こういうことを する余地はあるんだと思います。 ●○授業改善の話を経て、教員と学生の関係の話へ○● (ケンキュウスルゾウ) さっき教員と学生の関係性みたいな話を、最後聞きたいなと思って。例えばさっき 「サークル」って話してたのはそういう関係なんですか? (中村)そうですね、古典的手法が一番かなと思って、うちはゼミ配属前にとにかく飲み会するんです。全 員出れるように絶対やるんです、日程変えて。それで全体の関係性をつかんだ後、個々が将来何をやりたく て、今どういうとこかってところを見て、そういうことだったらこんな勉強したらいいよ、とか。 14
  • 15. (宿久)大事なのはやっぱり飲み会。うちは4月に祇園でキックオフやるんですよ。祇園で、桜を見ること がポイントなんですよ。その下で、ここでわれわれは頑張るんだという。 (中村) 飲み会、最初は恥ずかしかった。 (宮野) 飲み会を開催するのが恥ずかしいの? (中村)なんていうんですか、最初は挨拶しろって言われるのとか…。ここを引っ張る身だっていう意識で すね。立って挨拶する時、40 人くらいが座ってるわけですよ。ある意味、言葉は悪いけど親分みたい。 (今村)それまでの大勢対と違って、研究室に来て一対一になった時から話す内容も違うし、顔つきも多分 変わってる。最初に教員室で一対一になって、この子と 2 年間付き合うのかって。そこが私にとっては、最 初のスタート。研究室に入ってからは、なるべくもう出すようにしてます。自分が失敗した時にはしたって いう事を学生にも話しますし、すごくイライラしてやってられない時なんかも話すようにして、嬉しい時に はなんか一人でばか騒ぎしてっていうのを、自分から見せることで、今ぐらいから 4 回生の子なんか心を開 き始める。 (宮野)教員と学生ってどうしても、教える人と教わる人。これが例えばバイクの乗り方だったら別にいい んや。ただ、サイエンスやから、科学では教員も学生も関係ない。フラットやから。そこにギャップという か矛盾が生じてるんじゃないかと思う。 僕自身は、実は学生に「こうです」 (松原) 「こうなんだ」ってのは言わないんです。 「こうではないかな?」 しか言えない。 「君こういうけど、これ、ああかな?こうかな?」っていう会話のやりとりだけなんです。こ うだ、ああだって言って、学生が「ははー」って動くっていうのは、うらやましいなって思うけれども、い や、僕の方が正しいんだとどっかで思って。 (ケンキュウスルゾウ) カルト集団の洗脳とかって、なぜなぜなぜ…って問い詰めて答えが無くなった時に 「こうです」って言うとか…。なんて言うんでしょう、問いかけるっていうのは自分の考えに誘導するため にじゃないかとか考えてしまって…どうなんですかね。 (澤田) カルトの場合はいったん破壊するんですよ。そういうことをやろうと思えばできてしまう。 15
  • 16. (宿久) なかにはやっぱり、そういうのはしんどくて、「こうしろ」って言ってくれた方がはるかに楽だっ たということもありますよね。 (辻)教員の学生の関係で言うと、比較的大きな講座だと、むしろ、教員が個の学生との関係をつくりづら くなることもあると思うんです。それは教員もどんどん忙しくなってって場合もあるんですが、意識的であ れ無意識的であれ、その他の学生との関係や他の構成員との関係とかに縛られて…。 ●○最後にひとこと(抜粋)○● 「チームビルディングは、良いコミュニケーションの量。今回も、コミュニケーションしたことで、いろん なこと分かり合えた。(遠藤) 」 「教員が学生の目的に向かって協働できるか?」(三谷) 「研究室間のつながり。企業から学ぶ点あり、チームビルディングにおいて考慮すべき事柄では。越境的な 研究活動!」(辻) 「『研究室運営とは、良くも悪くも教師としての生きざま』であらざるを得ないのかな、と。(澤田) 」 『先生のグラスを空にしないこと』 。これはゼミの決まりなんですが、これをゼミ生が言い出してくれたこと が嬉しかったんですね。こういうことを言ってくれる学生に、学問的にどう答えるかが課題です。(中村) 」 「『研究室運営とは歯車を回すこと』。歯車ってあんまりいいイメージ無いんかなと思うですけど、ちっちゃ な歯車も歯が欠けた歯車も転がってエネルギーになって。歯車はバラバラにしても一人一人転がる。」 (宿久) 「変わらなきゃ、も変わらなきゃ。今度もよろしくお願いいたします。(宮野) 」 最後に 「研究室」を、 「チーム」という枠組みで捉えることがどこまで妥当なのか、という疑問は残 ったものの、登壇者の皆さまの経験や知見を踏まえた議論によって、様々なことが明らかになりました。 研究室という様々な矛盾を孕んだコミュニティの本質、そしてそのより良い運営方法について、これか らも議論を重ねていきたいと思います。登壇者のみなさま、本日はありがとうございました。 16 いきいき研究室増産プロジェクト