1. 高精度擬ポテンシャル法の開発
2. 応用計算:ZrB2表面のSiliceneの計算
@dc1394
高精度擬ポテンシャル法の開発と表面系へ
の応用
研究の目的
 密度汎関数法に基づく、第一原理電子構造計算
の適用限界を拡張するために、新しい高精度擬
ポテンシャルを開発し、最近見いだされた新しい
表面構造を理論的に解明する。
擬ポテンシャルとは
 第一原理計算において、擬ポテンシャル法という
手法がよく利用される。
 擬ポテンシャル法とは、第一原理計算において原
子核近傍の内殻電子を直接取り扱わず、これを
価電子に対する単なるポテンシャル関数に置き
換える手法である。
TM擬ポテンシャルとMBK擬ポテン
シャル
 TM擬ポテンシャルでは、単一の参照エネルギーしか
取れないため、広いエネルギー領域で散乱特性を再
現することができない。
 一方、MBK擬ポテンシャルでは、複数の参照エネル
ギーを取ることができるため、広いエネルギー領域で
散乱特性を再現できる。
 N. Troullier and J. L. Martins, Phys. Rev. B 43, 1993 (1991).
 I. Morrison, D. M. Bylander and L. Kleinman, Phys. Rev. B 47, 6728 (1993).
MBK擬ポテンシャルの作成法
 MBK擬ポテンシャルは非局所ポテンシャルとして
次式で与えられる。
 ここで、Qij=0として一般化ノルム保存条件を満た
すようにすると、一般のノルム保存型擬ポテン
シャルと同じ形になる。
対数微分の例
対数微分の
比較
Zr原子のs状態における
TM型擬ポテンシャルと
MBK擬ポテンシャルの対数
微分の比較。赤:All-
Electron, 緑:TM, 青:MBKを
示している。
MBK擬ポテンシャルは参照
エネルギーとして4s状態と
5s状態の両方を取れるが、
TM型擬ポテンシャルは4s
状態しか取れないので、5s
状態付近の高いエネル
ギー領域でずれる。
4s 5s
赤:All-Electron
緑:TM
青:MBK
TM型擬ポテンシャル
とMBK擬ポテンシャ
ルの対数微分の比較
Si原子のp状態におけるTM
型擬ポテンシャルとMBK擬
ポテンシャルの対数微分の
比較。下図はエネルギー0
以上の拡大図。
エネルギー0以上では、全
電子計算とTM型擬ポテン
シャルは全く異なっている。
全電子計算とMBK擬ポテ
ンシャルも完全に一致して
いるとは言い難いものの、
かなり改善されている。
2p 3p
赤:All-Electron
緑:TM
青:MBK
応用計算
ZrB2表面のSiliceneの計算
概要
 高精度擬ポテンシャルを用いて、ZrB2表面上のグラフェン様
Si単一層(Silicene)の原子構造および電子状態を計算した。
 その構造は最近、我々の研究室で作成された。
 Siliceneは、グラフェンと同様な構造を有していることから、現
在理論と応用の両面から関心を集めている。
 グラフェンはDirac coneと呼ばれる特異なバンド構造を有し
ている。
 Siliceneも同様の物性を有しているかどうかが注目されている。
Y.Yamada-Takamura et al.,Appl. Phys. Lett. 97, 073109 (2010)
銀表面におけるSilicene
Boubekeur Lalmi et al., Appl. Phys. Lett. 97 223109 (2010)
なぜZrB2なのか
 有用な特性
 高い硬度(モース硬度8)
 高融点性(2400℃)および金属性伝導率(熱伝導率99 (W/mK)、電気
抵抗4.6 (μΩ/cm))
 期待される用途
 電子エミッタ
 触媒
 (例えば、青色LEDなどの光学機器に使用される)GaNの薄膜結晶成
長のための基板
 実際に、Tolleらによって、Si基板の上に成長したZrB2層が、
GaNの薄膜結晶成長のための、非常によい鋳型を提供する
ことが発見された。
 我々はこの実験の過程で、Si基板の上のZrB2層のさらに上に、
Si基板のSi原子が移動して単一層を作ることを発見した。
J. Tolle et al., Appl. Phys. Lett. 84, 3510 (2004)
ZrB2上のSiliceneの実験結果
STM像 STM像(拡大) Si 2pのXPSスペクトル
Y. Yamada-Takamura et al., Appl. Phys. Lett. 97, 073109 (2010)
計算条件
 第一原理密度汎関数法計算プログラムOpenMX
 一般化勾配近似(GGA-PBE)
 ノルム保存型高精度擬ポテンシャル
 数値局在基底(DZP相当)
 構造最適化の際は、スカラー項のみの相対論的取り扱
いを、擬ポテンシャルを介して取り込んでいる。
 XPSの計算の際は、Siの2p軌道のスピン軌道分裂を取り
扱うために、fully relativisticな取り扱いをした。
Si on ZrB2の最適化構造
A. Fleurence et al., Phys. Rev. Lett. 108, 245501 (2012)
Si on ZrB2の構造
Si原子の位置 A (hollow) B (bridge) C (on-top)
ZrB2表面からの距
離(平均)
2.124 (Å) 3.062 (Å) 2.727 (Å)
最近接Zr原子との
距離(平均)
2.815 (Å) 3.216 (Å) 2.684 (Å)
最近接Si原子との
距離(平均)
2.266 (Å) 2.258 (Å) 2.242 (Å)
最近接Si原子と作
る角度(平均)
104.1°
(sp3 like)
109.7°
(intermediate)
117.8°
(sp2 like)
ARUPSスペクトルとSi on ZrB2のバンド構造の
比較と帰属
ARUPSによるバンド構造 計算によるバンド構造
ARUPSスペクトルとSi on ZrB2のバンド構造の
比較と帰属
ARUPSによるバンド構造 計算によるバンド構造
ARUPSスペクトルとSi on ZrB2のバンド構造の
比較と帰属
ARUPSによるバンド構造 計算によるバンド構造
SiliceneのDirac cone
 flat siliceneにはDirac coneが明らかに存在する。
 しかし、buckled siliceneはDirac coneが壊れている。
flat siliceneのバンド構造 buckled siliceneのバンド構造
Si on ZrB2のDirac coneの位置
Si on ZrB2のバンド構造
Si on ZrB2のDirac coneの位置
Si on ZrB2のバンド構造
XPSスペクトルと計算によるコアレベルシフト
の比較
 上図は実験によるXPS
スペクトル。下図はSi
の2p軌道を考慮した
高精度擬ポテンシャル
で計算した2p軌道のコ
アレベルシフトの計算。
 いずれの図も緑がA
(hollow)、赤がB
(bridge)、青がC (on-
top)。
 XPSスペクトルと計算
によるコアレベルシフ
トの両者は、良く一致
していることがわかる。
緑:A (hollow)
赤:B (bridge)
青:C (on-top)
いずれの図も緑がA (hollow)、
赤がB (bridge)、青がC (on-top)。
flat silicene、buckled siliceneとSi on ZrB2に
対するDOSの比較
Si on ZrB2に対するDOS
buckled siliceneに対するDOSflat siliceneに対するDOS
まとめ
 ZrB2表面上のSiliceneの第一原理計算を行った。
 buckledしたSilicene構造が、ZrB2表面上で安定構造を保
つことを、第一原理計算で示した。
 ARUPSと計算で得られたバンド構造を比較し、フェルミ面
近傍の状態が、ZrB2の表面状態とSi軌道の混成軌道で
あることがわかった。
 SiliceneのDirac coneに由来する軌道は、ZrB2との強い
相互作用と、bucklingにより、分裂してフェルミレベルから
1eV下付近に存在している。
 計算結果は、XPSによる実験スペクトルとよい一致を示し、
コアレベルシフトが、ZrB2との強い相互作用と、buckling
の二つの効果によって説明できることがわかった。

高精度擬ポテンシャル法の開発と表面系への応用