（図書館情報技術論入門事前課題）

1. 絵地図を活用した街並み探訪
「陶都・多治見を中心とせる交通名所鳥瞰圖」から知る多治見の水路
多治見市図書館 熊谷雅子

2. これは昭和4年に出版された多治見の鳥瞰図です。大正の中頃から昭和二
十年代までの約三十年にわたり、1600枚を超えるといわれる鳥瞰図を描い
た吉田初三郎の手によるもので、昭和初年には既に複数の収集家がいたと
いう人気画家でした。この絵図は多治見市内を流れる土岐川を中心に、タ
イル工場や製陶所、市内の名所等が描かれており、昭和初期の多治見の様
子を詳しく知ることができます。
吉田初三郎「陶都・多治見を中心とせる交通名所鳥瞰圖」（部分）多治見商工会 1929

3. 建物の移転や名称が若干変わってはいるものの、橋や神社の位置関係
から現在の多治見と比較することができます。更にこの地図を拡大し
てみると、今の多治見にはない興味深いものが描かれている事がわか
ります。
この絵図の拡大画像はflickrで見る事ができます
http://www.flickr.com/photos/68698981@N06/sets/72157630326074646/

4. 絵図を少し拡大して、多治見の産土神である新羅神社の付近を見てみましょ
う。
画面右に見える神社の二の鳥居の正面に、水色で着色された水路のようなもの
があります。「多治見市史」によると、これは明治期の悪水路（排水路）とい
うことがわかりました。

5. 多治見は古くから水害に悩まされた地域でもあります。これは当館が所蔵して
いる江戸時代の絵図で、普請工事のために水害の被害状況を記録したもので
す。絵図に描かれている悪水路は、水害の水を川に排水するために作られたと
考えられています。この絵図にも画面右に先ほどの新羅神社が氏神と記されて
おり、道も現在とほぼ同じ形で残っています。
多治見村普請箇所絵図（慶応四年） 多治見村堤切所泥水入所絵図（江戸後期）

6. 絵図の場所を写真で確認してみましょう。これは新羅神社で昭和39年に撮影さ
れた写真（個人蔵）と現在の様子です。左の写真にはまだ二の鳥居の前に水路
があり厄除橋が架かっています。現在この場所は通路になっていますが、この
下に今でも水が流れており悪水路が残っていることがわかりました。では、こ
の水路がどこまで流れているのかを別の資料で調べてみます。

7. これは多治見市史に掲載されている昭和8年の水路図です。絵図に描かれてい
た悪水路の他にも排水を流すための水路が市内のあちこちにあり、現在も残っ
ていることがわかりました。青色で着色した部分がその水路です。

8. 水路は現在歩道という形で姿を変え、表からは見る事ができませんが、絵
図と地図を元にその面影と歴史を探ってみることはできます。
先日この絵図上の水路を散策する事業「古地図に描かれた幻の水を訪ね歩
く」を多治見市学習館が実施しました。同時期に郷土資料室では「水とこ
の町の暮らし」と題し、水路の歴史を通して多治見の町の移り変わり、
人々の暮らしの変遷をたどった展示を企画しました。
水路を散策した様子をflickrで見る事ができます。
身近な地域の歴史と暮らしを知る手掛かりとして、絵図をご活用くださ
い。
お問い合わせは多治見市図書館 郷土資料室まで。
まなびの散策ＨＰ
http://www.lib.tajimi.gifu.jp/kyodosiryositu/manabi.html
「古地図に描かれた幻の水を訪ね歩く」
http://www.flickr.com/photos/68698981@N06/sets/72157630131501110/
多治見市図書館 郷土資料室
http://www.lib.tajimi.gifu.jp/kyodosiryositu/kyodosiryo.htm