特別イベント「人類は人工知能にいかに立ち向かうのか～将棋とオセロから考える」

1. 人類は人工知能にいかに立ち向かうか
～将棋とオセロから考える～
百木 漠
京都アカデメイアイベント
11/27 Sun.

2. 1. 将棋界における人工知能の現状

3. 将棋界における人工知能（AI）
・ここ数年で将棋界ではコンピュータソフト
（人工知能）が急速に発達。
・トッププロ棋士を圧倒するまでのレベルに。

4. 三浦弘行九段のソフト不正疑惑
・現役A級棋士の三浦九段にカンニング疑惑。
・複数の棋士から告発→年内出場停止処分に
・直前で竜王戦挑戦者権も剥奪。

5. 三浦弘行九段のソフト不正疑惑
・しかし、三浦九段はぬれぎぬだと反論。
・真偽はまだ明らかになっていない。調査続行中。
・マスコミでも大きく報道され、
将棋史でも有数のスキャンダルに。

6. ソフト不正疑惑が明らかにしたもの
・将棋界ももはや性善説は成り立たない。
・渡辺竜王や久保九段のようなトップ棋士ですら、
ソフトを使われれば勝てない。。
・今後は対局中の制限ルールは不可避。

7. 電王戦の開催
・第1回電王戦（2012年）
米長邦雄元名人 vs ボンクラーズ
→善戦するも敗北。
→引退棋士とはいえ、
元名人敗北の衝撃。

8. ・第2回電王戦（2013年）
プロ棋士5名 vs ソフト5強
→1勝3敗1分の衝撃。
→三浦九段（A級棋士）
も敗北の衝撃。

9. ・第3回電王戦（2014年）
→1勝4敗の惨敗。
→A級の屋敷九段、
元A級の森下九段、
若手の菅井五段も
敗北。

10. ・電王戦FINAL（2015年）
→3勝2敗でプロ棋士側初勝利！
→永瀬六段と阿久津八段がソフトのバグを突
いて勝利するなど、プロ棋士が対策を練った
成果が出た。

11. ・第1期電王戦（2016年）
→プロ棋士でトーナメント大会を実施（叡王戦）
→優勝棋士がその年の最強ソフトと対戦
→山崎隆之叡王の0勝2敗（vs ponanza）

12. 総合すると…
・電王戦の戦績はプロ棋士の5勝12敗1分け。
→プロ棋士側の大幅な負け越し。
「今のプロ棋士で、コンピュータより人間――
我々プロ棋士が強いと本気で思っている者は、
ほとんどいない」（先崎学の観戦記より）

13. 2. もはや人類は将棋で
コンピュータソフトに勝てないのか？

14. 電王戦が与えた影響1
・プロ棋士が研究にソフトを取り入れることは
もはや当たり前になった。
→厳密には、取り入れる派と
取り入れない派で分かれている。

15. 電王戦が与えた影響2
・対局の解説でもソフトの評価値や予想手が
積極的に取り入れられるようになった。

16. 電王戦が与えた影響3
・ソフトの発達によって定跡が変わり始めている。
・これまで人間的に「ありえない」
と思われていた手が有力だと
判明することもしばしば。
（ponanzaの初手7八金など）

17. 千田翔太五段
・将棋ソフトに最も詳しい若手棋士のひとり
・研究はソフトの対戦ばかり。
「プロ棋士と戦っているよりもソフトと対戦
しているほうが強くなる」
「自分の手をソフトに近づけられるように
日々努力している」

18. 糸谷哲郎八段
・2年前に竜王位を獲ったこともある実力者。
「将来、棋士の価値は普及にシフトしていくことになるの
ではないか」
「人間が顔と顔を突き合わせて教えるという
仕事は機械にはできない、という信仰が
最後まで残り続ける気がしています」

19. 羽生善治三冠
「ある種の人間がコンピュータやソフトに対して
感じるアレルギーというのは、想像している
よりも大きいと思っています」
「ソフトの将棋は基本的にかなり異質なものです。人が
指す将棋というのは形と手順の一貫性を重んじますが、
ソフトはその二つはまったく気にしていない」

20. 3. どのようにしてコンピュータソフトは
強くなったのか？

21. ・機械学習
過去のプロ棋士の棋譜を大量に読みこませる
・ディープラーニング
そこからどのようなパターンを指すと強いのか、
ソフト自身に分析をさせる

22. ・もともとは、人間が「駒の強さ」「良い形」などを
プログラミングしていた。
・人間がプログラミングするのではなく、ソフト自身に
棋譜を分析させるようにしたところ劇的に強くなり
始めた。
→しかし、この手法では限界があった。

23. ・もはやソフトは人間が「認識不可能なもの」を
認識し始めている。
cf. 大澤真幸「不可能性の時代」
・ソフトにとって最善手であるものが、人間にとって
の最善手であるかどうかは分からない。
→人間の認識能力を超えている可能性

24. ・実はソフトが一番強いのは終盤ではなく中盤。
・もはや創造力（想像力）も人間の特権物では
ない。では、人間の最終的な強みはどこか？
→人間の創造性がもっとも活きそうな場面こそ
ソフトが最も強かった、という驚き。

25. ※第3回電王戦での豊島将之七段の勝利
・がっぷり四つの中盤戦（矢倉、角換わりなど）を
避けて短期決戦に持っていった。
・危険と思われていた横歩取りで快勝。
・むしろ直線的な終盤戦なら
人間も対等に勝負できる。

26. 「選択肢が限られた直線的な読みなら人間も
対等に戦える」
「短期決戦なら人間もまだ体力が残っているので」
→人間の身体性（身体的限界）
を考慮に入れた戦い方

27. コンピュータソフトに欠けているもの
＝人間の身体性
を考慮に入れて戦うことが鍵になる？