山本 5月28日 4章,9章
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2013 夏藤本隆宏ゼミ 『人工物複雑化の時代 4 章/9 章』 07-121092 山本晃大
4 章
■4-1 なぜアーキテクチャ研究なのか
・アーキテクチャ研究とは「人工物の特性として要素間の結合状態を取り上げよう」という非常にシン
プルな発想から始まっている。だから、どんなものにもアーキテクチャは存在しており非常に広い適
用可能性を持つので研究する価値が高い。
・アーキテクチャ研究は「複雑なシステムは共通したアーキテクチャを持っている」という仮説を有し
ている。(Simon 1962)
■4-2 複雑な人工物のアーキテクチャ
4-2-1 初期のアーキテクチャ研究
●複雑な人工物が共通のアーキテクチャを持つ理由
1.人間の認識力に限界があるから。複雑システムは設計要素の集合である「かたまり」と、「か
たまり」から構成される「階層」を持つものとして認識される。
(例:「人体は頭、体、手足で構成される」と認識することなしにいきなり「人体は神経細胞、
筋細胞、上皮細胞で構成される」とは考えない)
2.複雑なシステムが生成されるプロセスが関与している。この過程には多くの時間がかかり完
成を阻害するようなノイズに満ちあふれている。その過程上にはいくつかの中間状態(サブ
アッセンブリー)が存在するはずである。中間状態を設けると、人工物のアーキテクチャは
「複数の設計要素を集めてモジュールにする」段階と、「モジュールを組み合わせて複雑シス
テムを構成する」段階に分割される。
(例:時計職人は、時計針、ゼンマイ、歯車などを組み合わせたサブアッセンブリーをいく
つも作る。こうすることにより、途中でノイズが入って作業が中断しても中間状態から再
開すれば良いので効率が良い)
●複雑な人工物のアーキテクチャが共通して持つ特性
(この特徴を持つ複雑システムを「準分解システム」と呼ぶ)
1.モジュール内の設計要素間の依存関係は強く、モジュール間の設計要素間の依存関係は「非
常に弱い」もしくは「存在しない」
2.各モジュールの動きは短期的には、他のモジュールの動きとは独立している。
3.各モジュールの動きは長期的には、他のモジュールに影響する。
4-2-2 複雑な人工物に対するアーキテクチャ概念の適用(1990 年初頭の研究)
・準分解システムの1の特徴が取り上げられた。強調された2つのポイント。
1.コンポーネントレベルよりもアーキテクチャレベルのイノベーションが産業構造に大きな影
響を与える点
2.アーキテクチャレベルの問題解決には工程間オーバーラップや横断組織、重量級リーダー、
組織間の関係特殊的能力などの広汎な知識を統合する組織能力が重要である点
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4-5-2 階層分析
・(図4-11)分割レベルが大きいものを第一階
層とし、分割レベル(モジュール数)を2倍細
かくするに従って階層番号を上げている。第6
階層は全体を 128 のモジュールで説明している。
この図から3つの示唆が得られる。
1.全ての階層においてインテグラルからモジ
ュラーへと単調にアーキテクチャが変化し
たケースは存在しない。
2.階層ごとにアーキテクチャの変化の幅が異なる。下位階層(コンポーネントレベル)では小
さな変化しか発生していなかったとしても、それは集合的には上位階層(アーキテクチャレ
ベル)では大きな変化が生まれていることを示している。
3.「上位階層のアーキテクチャ変化」と「下位階層のアーキテクチャ変化」が逆相関している。
「第1~4階層」と「第5/6階層」の間には大きなギャップがある。
■4-6 インプリケーションと課題
・(図4-12)上位階層と下位階層では設計の進化が
逆になる可能性がある。この場合、コンポーネント
レベルの小さな変化を見逃さないようにすればする
ほど、アーキテクチャレベルの変化の方向性を間違
えるのである。つまり、本章の分析からは「コンポ
ーネントレベルとアーキテクチャレベルでは別々の
組織的な認知能力が必要である」という示唆が得ら
れる。
9 章
■9-1 はじめに
・(図9-1)デジタル化の進展に伴い、製品機
能自体や製品機能を実現する手段の多様化が
進んでいる。
・デジタル化の進んだ製品を構成する技術要素
は、大きくメカ部品、エレキ部品、組み込み
ソフトウェアの3つに大別される。
・そこでは「①製品のデジタル化の進展⇒②製
品の高機能化・多機能化⇒③異なる技術要素
間・部門間での相互調整の必要性増大⇒④組
織内でのコンフリクトの増大⇒⑤製品開発の
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・期間:1987 年から 2001 年まで
9-3-2 デジタル複合機産業の特徴
・複写機/複合機市場はアナログ機時代から同質化競争が高度に進んでいる。置き換え需要が主で
あり、消耗品やアフターサービスから得られる収益が大きい。
9-3-3 デジタル複合機の製品アーキテクチャ
・(図9-3)ハードウェアに注目すると、各々の製品機能と HW コンポーネントが一対多対応して
いる。しかし、これら HW のみでは機能せず、各機能を実現するためにはそれらを制御するため
の組み込みソフトウェアが必要である。
・組み込みソフトウェア・コンポーネントにも注目すると各機能と APL とが綺麗に一対一対応して
いることが分かる。
・(図9-4)1987 年から 2001 年までのアーキテクチャは2つに大別できる。
特徴 メリット デメリット
NAD アーキテク
チャ
・各機能の「部分最適」を志向する。
・APL ソフトや OS、CPU をひとつ
のセットにして、そのボードの追加
によって多機能化に対応する。
CPU の処理速度への要求が小さ
く、各機能のパフォーマンスは最
適化される
冗長性が高いので部材費用が
高くなる
ASAP アーキテ
クチャ/GW ア
ーキテクチャ
・各機能の「全体最適」を志向する。
・ひとつの OS 上で複数の APL ソフ
トを動作させることで、機能の追加
や削除の要求に APL レイヤにおい
て対応する。
デジタル複合機に求められる統
合機能を実現するのには向いて
おり、部材費用を削減することも
出来る。
高速処理が可能な CPU が必要
となる。
各組込みソフトウェア・コンポ
ーネントを開発する際に機能
間で多くの相互調整が必要で
ある。
9-3-4 リコーにおける製品アーキテクチャの組織内選択プロセス(図9-5)