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- 1. “Go eat a bat, Chang!”: On the Emergence of Sinophobic Behavior on Web Communities in the Face of COVID-19 2021輪読会 論文紹介 東京大学 大学院工学系研究科 システム創成学専攻 鳥海研究室 修士2年 江間勇希
- 2. 書誌情報 タイトル “Go eat a bat, Chang!”: On the Emergence of Sinophobic Behavior on Web Communities in the Face of COVID-19 学会 WWW 2021 著者 Tahmasbi, F., Schild, L., Ling, C., Blackburn, J., Stringhini, G., Zhang, Y., & Zannettou, S. URL https://dl.acm.org/doi/abs/10.1145/3442381.3450024
- 3. 目次 • Abstract • Introduction • Related Work • Datasets • Temporal Analysis • Content Analysis • Content Evolution • Conclusion
- 4. 目次 • Abstract • Introduction • Related Work • Datasets • Temporal Analysis • Content Analysis • Content Evolution • Conclusion
- 5. Abstract • COVID-19による中国に関するヘイトスピーチの増加 “自粛”によりWebがエンタメ，コミュニケーション，情報収集の手段に 同時にWebにはヘイトスピーチや陰謀論などが飛び交う 「コロナは中国から発生した」としてアジア人を中傷するものも • 実験1.COVID-19に伴う中国差別についての示唆を得る Twitterと4chanの政治関連板から5ヶ月分データを収集 →Webにおいて中国恐怖症の傾向はCOVID-19により強まった →中国差別の伝染はプラットフォームにかかわらず起こるものであることが判明 →4chanにおける中国差別はtwitterに比べ強い • 実験2.COVID-19に伴う表現の変化を見る 単語埋め込みを用いて，どんな感情や表現が中国差別と共起するか分析 →Twitterでは，中国人を非難する声が増えた →一方,4chanでは差別的な表現が多かった
- 6. 目次 • Abstract • Introduction • Related Work • Datasets • Temporal Analysis • Content Analysis • Content Evolution • Conclusion
- 8. Introduction(2) 具体的な発見 主に4つの知見が得られた 1. 中国や中国人への言及に関して COVID-19の発生に伴い，中国への言及や中傷は増加した これらの増加傾向はCOVID-19と関連する実社会の出来事とタイミングが一致する 2. 言及内での表現に関して Twitterでも4chanでも中国に関する話に，人種差別表現を用いていた →ネット上の端でも，一般的なところでも中傷は行われていた 3. 単語埋め込みを用いた実験に関して 蔓延に伴い新たに使われるようになった中傷的表現が存在する 4chanでは「Kungflu」，Twitterでは「asshoe」 4. COVID-19発生前後を比較した分析に関して 投稿内容に変化が見られた Twitterでは中国を非難する方向に，4chanでは中国をより差別的な表現を用いるように
- 9. 目次 • Abstract • Introduction • Related Work • Datasets • Temporal Analysis • Content Analysis • Content Evolution • Conclusion
- 10. Related Work(1) コロナウイルスに関する研究 ソーシャルメディアでコロナウイルスがどのような影響を与えたかを分析した 論文は多数発行されている • Chen et al. [10] コロナに関するTweet5000万件のデータセットを公開 • Cinelli et al. [12], Singh et al. [41], and Kouzy et al. [31] Twitter上でのCOVID−19に関するデマの分析 • Lopez et al. [32] 複数ヶ国語でのTweetを元に，各国でCOVID-19に対してどのような反応が見られたか分析
- 11. Related Work(2) 人種差別に関する研究 ソーシャルネットワーク上での人種差別に関する研究も多い • Zimmerman et al. [56] 匿名性によって人がオンライン上での口撃に参加しやすくなることを示す • Relia et al. [39] ヘイトクライム（特定のカテゴリーに属する人々に対する憎悪または偏見 を動機とする犯 罪）を起こすユーザはソーシャルメディア上で人種差別主義になりやすい • Zannettou et al. [55] Twitterユーザの人口統計学的特徴が，人種差別活動の予測因子としてどう機能するか調査 →男性と若年層（35歳以下)はTwitter上で人種差別行為を行う可能性が高いと判明 コロナウイルスに伴う中国人やアジア人差別に着目した論文は本論文が初めて である．
- 12. 目次 • Abstract • Introduction • Related Work • Datasets • Temporal Analysis • Content Analysis • Content Evolution • Conclusion
- 13. Datasets Webメディアの代表と思われるTwitterと4chanの政治関連掲示板(/pol/)からデータを収 集 • Twitter 英文で書かれた全てのツイートのうち1%をランダムに取得 期間：2019/10/28 ~ 2020/03/22 222,212,841 ツイートを取得 • 4chan’s /pol/ 4chanの中でも政治に関する出来事に関して議論する板 期間：2019/10/28 ~ 2020/03/22 16,808,191 個もの投稿を取得 Twitterはソーシャルメディアの中でも主流のものの例として， 4chanは攻撃的な表現などが飛び交う「色物」の例として扱う
- 14. 目次 • Abstract • Introduction • Related Work • Datasets • Temporal Analysis • Content Analysis • Content Evolution • Conclusion
- 16. Temporal Analysis(2) 時系列に沿った分析：/pol/ の結果 コロナに関わる実社会での出来事と中国の投稿の数，割合は連動する 1.トランプ大統領が中国との初期貿易協定 に署名 2.中国で武漢がロックダウンされる 3.WHOが公衆衛生緊急宣言を発令 4.イタリア ロンバルディア州の11の自治 体がロックダウンされる 5.イタリア、北部地域の規制を拡大 6.トランプ大統領，Twitterで コロナのことを「中国ウイルス」と発言
- 17. Temporal Analysis(3) 時系列に沿った分析：Twitterの結果 • 基本的に/pol/と同じよう な変化になる • イタリアがロックダウン した前後の盛り上がりが 4chanに比べ少ない • 4chanは陰謀論や人種差別 の話と一緒になって 「燃えやすい」からと考え られる コロナに関わる実社会での出来事と中国の投稿の数，割合は連動する 1.トランプ大統領が中国と の初期貿易協定に署名 2.中国で武漢がロックダウ ンされる 3.WHOが公衆衛生緊急宣言 を発令 4.イタリア ロンバルディア州の 11の自治体がロックダウンされる 5.イタリア、北部地域の規 制を拡大 6.トランプ大統領，Twitterで コロナのことを「中国ウイルス」と発言
- 19. Temporal Analysis(5) 差別用語分析：/pol/の結果 • 基本的にはChina,Chinese と同じように推移する • トランプ大統領のツイー ト(6)以降，差別用語の投 稿は概ね増加傾向にある • ”chink” は差別用語の中で も突出して使用頻度が多 い 具体例 世界が一丸となって、この地 球上のチンクを一人残らず抹 殺することを願っています。
- 20. Temporal Analysis(6) 差別用語分析：Twitterの結果 • 12月にChinkが突発的に増加 K-pop関連の炎上によるものであり関係ない • 4chanに比べ各差別単語が使われる頻度は 少ない • データセットの終わりには“chingchong”を 用いた差別的な投稿が散見された 具体例 すべてはチン・チョンがランチにカエルを生で食 べたからだ。 お前が俺に何かしたら、お前の首をへし折ってや るよ......チンチョンコロナウイルス
- 21. Temporal Analysis(7) 考察 • /pol/において”china”などの出現頻度と中傷の出現頻度が似通っているの は，差別的な思想の発信地である/pol/の特性によるものである • なぜこのように中傷が発生するのか？ ストレスに対応するための戦略である 望まない自身の特性を，「自分のせいではない」として他者に投影し，その他者を攻撃する 「優れている」西洋にコロナウイルスが蔓延してしまったことでこのような反応が起きた このような「スケープゴート化」は人種差別を起こす主な要因であるとされている 歴史上，特定の国籍や地域から疫病が発生し，それが差別につながったケースは多い イタリア人はかつて梅毒を「フランス病」と呼んでいた
- 22. 目次 • Abstract • Introduction • Related Work • Datasets • Temporal Analysis • Content Analysis • Content Evolution • Conclusion
- 23. Content Analysis(1) 実験手法① 目的 中国に関連する単語にどのようなものがあるか理解する 手法 対象データをもとに３つのword2vecモデルを学習させた Word2vec:単語を高次元のベクトルに変換するモデル 意味的に近い単語は空間上で近い場所に配置される 特定の単語前後の単語を予想するニューラルネットワークを学習させ，隠れ層の出力を利用する 1. 期間中の全ての文章を学習させたモデル 2. 期間中の文章から特定の一週間分を取り出して学習させたモデル 3. 2016/1/1~ 2019/12/1 までの，期間前の文章を学習させたモデル 1.のモデルにおいて”china”,”Chinese”,”virus”と意味的に近い単語を見る cosine類似度を計算し，類似度の高い上位20単語を見る
- 24. Content Analysis(2) 実験結果① • /pol/では，さまざまな差別用語が意味的に 近い場所に置かれており，4chanにおける差 別思想はかなり広まっている Ex. Chink, chinkland • Twitterでは，”china””chinese”と政治関連用語 のcosine類似度が高い Ex. Government ,ccp(Chinese community party) • Twitterでは，”china”と“chinazi”の類似度が高く， twitterにおいても中傷は存在する • /pol/，Twitterの双方で，”virus”とコロナウイ ルス関連の単語のcosine類似度が高く，コロ ナの影響が単語の使い方に出ている
- 25. Content Analysis(3) 実験手法② “Chinese “と関連性の高い単語をもっと見やすく可視化する． グラフ作成手法 1. “Chinese”とのcosine類似度が閾値より高い単語をグラフのノードに追加する 2. それらの単語と“Chinese”の間に，cosine類似度を重みとするリンクを貼る 3. ノードの単語それぞれにおいてcosine類似度が閾値より高い単語をグラフのノードに追加す る 4. それらの単語と“Chinese”の間に，cosine類似度を重みとするリンクを貼る 可視化方法 1. Cosine類似度の高い単語同士を近くに置くようにする 2. ノードの大きさは出現頻度に比例する 3. Louvain法を用いたコミュニティ分割を行い，コミュニティごとに異なる色を用いる
- 28. 目次 • Abstract • Introduction • Related Work • Datasets • Temporal Analysis • Content Analysis • Content Evolution • Conclusion
- 29. Content Evolution(1) 実験手法① 目的 中国差別に関わる言葉が使われる文脈はどのように変化するか理解する 手法 特定の一週間分を取り出して学習させたモデルを使用 最初の週と最終週のモデルを比較 1. “china””Chinese ””virus”とcosine類似度の高い上位20単語を取り出して比較 2. 先述のグラフ作成，可視化手法によりできた図を比較
- 31. Content Evolution(3) /pol/のグラフの変化 • コロナ蔓延後は攻撃的な表現と”chinese”の類似度が高くな る • 蔓延後の赤と青のコミュニティは差別用語を多く含む “ricenigger,” “fuckface,” “zipperhead,” “bugpeople,” “subhumans,”
- 33. Content Evolution(5) twitterのグラフの 変化 • コロナ蔓延前はアジア地域や，中国に関連する事柄が見られる “tradewar” • 蔓延後は差別用語が多く見られる • 蔓延後はドナルドトランプの行動に関連する用語が見られる “racistinchief”
- 34. Content Evolution(6) 実験手法② 目的 新しい言葉がどのように生まれていくのか理解する 手法 コロナ蔓延前と蔓延中のモデルを比較 1. コロナ前のモデルに含まれる語彙を抜き出し，basic vocabularyとする 2. 蔓延期間中の文章を一週間分ずつ学習させたモデルそれぞれに含まれる語彙の うち，basic vocabularyに含まれないものを取り出し,new term とする 3. New term が見つかった週のモデルで“chinese”とnew termのcosine類似度を測り， 上位n単語の使用頻度の推移を見る /pol/においてn=20, twitterにおいてn=40
- 35. Content Evolution(7) 実験結果②-1 /pol/ の結果 特徴的なデマや陰謀論に伴い造語が発生し ている Batsoup コロナの始まりは中国人がコウモリを食べた ことにあるとするデマに伴い初期に発生 Biolab,biowarfare コロナは作られたウイルスだ，また，生物兵 器として作られた，といった議論により定着 新しい差別用語も誕生している Kungflu コロナに感染した中国人を示す言葉 カンフー+flu(インフルエンザ) これらの単語は登場初期から一貫して投稿 に使われ続けている
- 37. Content Evolution(9) 実験手法③ cosine類似度の推移 目的 COVID-19の展開に伴い、2つの用語が同じような文脈でより頻繁に現れるかどうかを理 解する 手法 Cosine類似度を比較 1. 類似度を測りたい単語2つを用意する 2. 蔓延期間中の文章を一週間分ずつ学習させたモデル(Twitterと/pol/双方)で，2単 語のcosine類似度を計算し，その推移を見る “chinese”と”virus” “chinese”と”chink” “Chinese”と”bat”の三つの関係性を見る
- 39. 目次 • Abstract • Introduction • Related Work • Datasets • Temporal Analysis • Content Analysis • Content Evolution • Conclusion