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190922なぜ統合的な学習が 求められるか 理科教育と STEM 教育の観点から
- 1. なぜ統合的な学習が 求められるか 理科教育と STEM 教育の観点から 於 理科教育学会 第69回全国大会 静岡大学 順天堂大学/早稲田大学 齊藤智樹 プログラムページ数 p.135 Why Trans-disciplinary Learning is Needed in the Educational Context?
- 2. アウトライン • 結論 • 問題の所在 • 研究課題 • 文献研究 • 考察 • まとめ 2
- 3. 結論 • 社会的に堅牢な知識を創り出すため • 科学者が競合する勧告を行っている場合がある • 環境事故，あるいは災害において専門家が，間違ったジャッジを下す可能性 • 関連するステークホルダーの参加を可能にする • 環境問題をはじめとして，科学的にオープンで競合的． • 多くの専門家は，例えば湿地生物学などのある特定の分野における一般化された事実についての専門 家であり，つい最近閉鎖された製紙工場による土壌汚染などの具体的な文脈における専門家ではない． • 新しくよく知られていないものを科学と社会の両面からよりよく知り，対処でき るようにしていくため • 自然災害や気候変動，資源の希少化，文化的背景の変化など自然・社会環境の根本的な変化に直面し ているため • 伝達可能な合理性（Communicative Rationality）を集合的な合理性の一形態として示している • VUCAに対応するため • 文脈的な知識は，複雑性と内部の状況の現実に洞察を持っており，しばしば反省的実践家と呼ばれる 実践的な人々によって，高度に発展される．したがって，科学分野の専門知識は，実践家の文脈的な 知識と組み合わされる必要がある． • Ideal Speech Situationの体現 • 市民社会において意思決定をする際に，知識を利用する効果的な手段を提供するため • 経験的な知識を研究の過程にもたらすため • 科学をその最初期から実践の過程に取り込んでいく • 多くの研究領域と社会との間の拡大し続ける溝を埋めていくため • 私たちが今日つくりだしてきた問題は，その問題を生み出したのと同じレベルで は解決できないため 3
- 4. 問題の所在 • 超領域的な学習環境の構築は，総合的な学習の時間， あるいはSTEM教育をはじめ，統合的な学習を提供す る生徒中心の教育活動の一つの形態として認知され てきた（例えば Vasquez ら，2013）． • ところが，その起源となる超領域性（Trans- Disciplinarity） の研究については，新しい知識の生 産方法として議論が成されており（Gibbons ら，1994），知識 を学ぶ場としての教育の文脈に適用可能であるのか という点が，STEMの議論から抜け落ちてきた。 4
- 5. 問題の所在 • エンジニアリング（を中心としたSTEM）は超領域であるか • STEM の提供するエンジニアリングの文脈が，学問領域として専門分 野を作っている工学や医学のように超領域的なものではないと捉える べきか • あるいは工学的知識が，たとえば『デザイン』という具体的な応用の 文脈において，その目的のために組織されるのであれば，Mode 2と捉 えることもできる（伊勢田，2010）のか • →少なくともSTEMの提供する文脈において，エンジニアリングは超領 域的な学習環境を導くものとなる． • →だとすれば，個別の学問分野の学習をサポートしない • →既にデータもある（e.g. Saito, Gunji, Kumano, 2015ほか) 5
- 6. 問題の所在 • Q：それでもやるのはなぜか？ • A：個別の学問分野における学習では達成できないものを，達成できる ようにするため 6 ・学びに向かう人間性 「理科が好きである」「理科で学ぶことは人生の役に立つ」 「新しいものを創りたい」「なんとかしなければならない」 ・領域をまたいで繋いでくる力 「システム」「アナロジー」「フラクタル」 →構造構成主義？ →21st Century Skills？ →領域横断的な概念？ →SILEの構築
- 7. 研究課題 • 超領域性や Mode 2 の知識生産の， 教育とい う文脈への翻訳 • そこに見いだされる課題について，STEM教育 の理論・実践と併せて検討する 7
- 8. 文献研究 • Trans-disciplinarityの起源から • 教育への翻訳を論じたもの • エンジニアリングの扱いを論じたもの 8
- 9. 疑問を問い/課題を定義する段階 • Mode 2においては，問いは社会からもたらされるが，教育の 文脈においては，生徒の問いや考慮から設定される。 • Mode 2においては，当然個々の研究者も自らの問いをもとに 課題解決に寄与するわけだが，いずれの場合も見出された問 いが必ずしも理科の学習内容と合致するわけではなく，現実 社会の問題や「科学技術の社会問題」（Socio-Scientific Issues）， あるいは持続可能性であったり，具体的なエンジニアリング 上の課題であったりする。これらには，正しい答え（解決 策）が複数あると同時に，適切な問いも複数存在する。 9 ・生徒中心主義の体現 ・根本的に知識伝達型の学習に合わない ・ある子は狙った知識に到達するが，ある子は到達しない ・共約不可能性（パラダイムの転換）
- 10. 知識や方法の持ち寄り • 問題の解決に寄与する研究者 は，それぞれの分野の知識を持ち寄り，問題 の解決に寄与するが，教育の文脈においては，生徒は初めから関係する分 野の知識や技能をもって学習環境に臨んでいるわけではない。このため， 応用や転移を意識しすぎると，知識を得る場面が単なる座学となる危険性 がある。 • 超領域的な文脈においては，問題の解決が第一であり，問題を解決するた めに学問分野自身がハイブリッドになっており，伝統的なカリキュラム自 体が，教室の外では機能しなくなっていく（Hurd, 1991）。 • 研究自体がより社会の側から求められ， また科学的知識が日常生活や，科 学技術の発展に寄与することに注意を向けるべきことを考えると， Gibbons が示す科学の商業化や知識生産の非均質性を含みこむ意味で，エ ンジニアリングがSTEM教育において強調される価値。 10 ・指導要領上の言葉で言う「活用」は，エンジニアリングとは異なる？ ・狙った形にしかならないため，座学と変わらない？ ・Disciplineがハイブリッドになるとは？→学習のハイブリッド化とは？ ・例えば，生物・地学は既にハイブリッド化してできた学問． ・エンジニアリングは，いかにSTMをハイブリッド化するか ・科学の商業化，非均質性の含みこみは，一例．これらを機能させる枠組みが必要．
- 11. 探究の過程についてと教師の役割 • 探究の過程 は少なくとも部分的には生徒が決める • 教師の役割はファシリテーター（Vasquez ら, 2013） 共同計画者・共同学習者（Drake & Burns, 2004） 学習者と共同で創造的な知識生産への参加者（Generator； 伊庭, 2019） • 学問分野自身がハイブリッドになると同時に，膨大な科学 の分野が作られており，そこでは「科学の方法」と呼ぶべ き単一の方法は存在せず（AAAS, 1990），むしろ，科学や技術に ついての多様な思考が提案されている（Hurd, 1991） • NGSS（2013）における8Practicesが単一の科学の方法やその探 求の過程を示しておらず，Cascadeと考えられていること は，この体を成す。 11 • 知識の生産は，非常に文脈固有になる（学校単位・教室単位） • 教師の役割はMode2における専門家の役割にも時に，なり得る？ • 科学とエンジニアリングの体験的・経験的活動（Practices）は，繰り返す （Iterative）だけでなく，回り道（Detour）も，逆戻り（Relapse）もあり得る． 同時発生的． • 知識生産への参加者はそれに自覚的（メタ認知）で，調整
- 12. 評価について • 評価においても生徒が参加する • 学習の目標を教師が決める一方で，複数の学問分 野からの評価方法を取り入れる • 学問分野をまたぐだけでなく，現実世界や生徒の 興味関心をまたぐ概念や技能を学習目標とする • 社会 （例えば，政治・省庁，あるいは企業やス ポンサー （助成金を含））による評価→21世紀 型能力 12 • 学問分野だけでなく，現実世界や生徒の興味関心をまたぐ概念や技能とは？ • 教育の文脈における社会による評価とは？
- 13. 考察 • 「知識を学ぶ場」としての教育の文脈とは異なる． • 「知識は文脈において生産される」（Gibbons） • Mode1 → Mode2 の教育への転換 • →教科の中でやるには，教科の目標の転換が必要 • →教科をまたぐならば，それをいかにつなぐか • →総合はそもそもMode２を想定しているのでは 13
- 14. 考察 • SILE（STEM Integrated Learning Environment, 2015; 2016) STEM教育における超領域的な学習環境 • 学習のシステム • 伝統的な授業とは異なり，学習は必ずしも既存の 学問分野に含まれないし，その内部で評価されな いかもしれない;(共約不可能性) • 学習者のネットワークの内部や，それをまたいだ 学習は，STEMの学問分野を超越して関係性を持 つ; （非均質性の含み込み） • したがってその学習環境は，そうした分野同士の 関係性によって構築・創発される 14
- 15. 考察 新たにSILEの特徴を示す可能性として • 科学の商業化 • 教師の役割：知識の共同生産者 • 学習の過程がCascade of Practicesである などが示された 15 • 専門家として科学の商業化はどう扱う？ • 教育研究者も，知識の共同生産者になっている部 分もある． • それぞれの学問分野ではできなかったことを示す ためには，それなりに基礎を構築していかないと 崩壊する．