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経済効果推計と国際協調の動向 
OK Festival 2014 から 
渡辺智暁 
OKFJ/ GLOCOM/ CCJP 
オープンデータ・トークシリーズ第10回「OKFest参加 
報告と最近の話題」 
於:GLOCOM 2014.08.30.
開催概要 
・7月15-17日、ベルリン 
・市の中心部からほど近い文化施設で開催 
・コピー:”OPEN MINDS to OPEN ACTION” 
・URL: http://2014.okfestival.org/
印象・特徴 
・冒頭挨拶でRufus Pollockが説明(意訳): 
スピーカーのみなさんには申し訳ないが、重 
要なのは参加者のみんなの交流です。ス 
ピーカーは、いないとみんなが来てくれない 
から呼びました。 
・サイドイベント(主催者が開催していないイベ 
ント)が非常に多かった。
印象・特徴 
・昨年のOK Conference:「透明性」に関するNGO 
関係者が多いという印象⇔今年は多様 
・クリエイティブ・コモンズ、Fablab、オープン教 
育、Code for、オープンアクセスなど、オープ 
ン化関係者が多方面から参加。 
・地域的にはアフリカ系が増加。(後述) 
・アジア太平洋地域のOKFメンバーは、インド、 
中国、ネパール、ハワイ、バングラディシュ、 
フィリピン・香港等
動向1:経済効果 
・経済効果推計は時間と費用がかなりかかる大仕事。 
- ACIL Tasmanによる推計は評価。MGIの推計は手法が不透明なので慎重。 
※日本にあてはめると前者は数千億円、後者は十数兆円の効果 
- まだ途上の研究もある。(公言されているところではODI) 
- オーストラリアのLateral Economicsから出た推計が、MGIに相当する効果を推計。 
向こう5年間での実現を見込む。→強い関心をひいた。 
- 捕捉できるのが「氷山の一角」になる 
・捕捉しやすい利用例:BtoC系ウェブサービス 
・捕捉しにくい利用例:BtoB、社内利用、ODと非ODの組み合わせ利用 
※経済効果は後者が大きいとの見方も多い 
- ACIL Tasmanの方法: 
・直接効果:業界別にヒアリング+文献調査→データ利用による生産性向上効果(売 
上げ増につながると見なす)と、普及率を推測。 
・間接効果:業界別の効果+マクロ経済モデル→相互作用や経済全体への効果を 
推計。
経済効果(2) 
ではどうするか? 
・分野を絞って、事例を収集し、例からの類推で、「OD 
の経済効果はある」と確証を深める 
(既存の取り組み) 
・全方位的にとにかく事例を収集し、「ODの経済効果は 
これだけの広がりがある」「成功事例は少数の例外で 
はない」と確証を深める(Open Data 500のアプローチ) 
・OD500は、内容は薄く、個別の件についてよく理解で 
きないこともある。が、広がりは示せる。 
・ODI(英)も実施すべくGovLab(米・本家本元)と相談中。 
・(この話を聞く前から!)日本でも実施呼びかけ。
動向2:国際協調 
2013 
・OK Conference (9月)世銀・ODI・OKFの途上国OD支援プロジェクトが発表。 
毎年数億円程度を世銀が拠出。 
→欧州とアフリカの支援が多い。 
・G8 OD憲章(10月) 
OKFによる各国の達成度評価もこの頃公表 
2014 
・Web Foundation のODDCプロジェクトが途上国のODの成果を、サイドイベ 
ントとして発表。アフリカ諸国からも多数参加。(財源はカナダのIDRC) 
・G20(11月)のアジェンダとしてODをプッシュ 
先述のLateral Economicsの推計も、G20の経済成長目標達成の非常に有力 
な手段と位置づけ。 
※アジアはまだ圏外の印象あり。日本が支援するべきか?

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Od 経済効果推計と国際協調

  • 1. 経済効果推計と国際協調の動向 OK Festival 2014 から 渡辺智暁 OKFJ/ GLOCOM/ CCJP オープンデータ・トークシリーズ第10回「OKFest参加 報告と最近の話題」 於:GLOCOM 2014.08.30.
  • 2. 開催概要 ・7月15-17日、ベルリン ・市の中心部からほど近い文化施設で開催 ・コピー:”OPEN MINDS to OPEN ACTION” ・URL: http://2014.okfestival.org/
  • 3. 印象・特徴 ・冒頭挨拶でRufus Pollockが説明(意訳): スピーカーのみなさんには申し訳ないが、重 要なのは参加者のみんなの交流です。ス ピーカーは、いないとみんなが来てくれない から呼びました。 ・サイドイベント(主催者が開催していないイベ ント)が非常に多かった。
  • 4. 印象・特徴 ・昨年のOK Conference:「透明性」に関するNGO 関係者が多いという印象⇔今年は多様 ・クリエイティブ・コモンズ、Fablab、オープン教 育、Code for、オープンアクセスなど、オープ ン化関係者が多方面から参加。 ・地域的にはアフリカ系が増加。(後述) ・アジア太平洋地域のOKFメンバーは、インド、 中国、ネパール、ハワイ、バングラディシュ、 フィリピン・香港等
  • 5. 動向1:経済効果 ・経済効果推計は時間と費用がかなりかかる大仕事。 - ACIL Tasmanによる推計は評価。MGIの推計は手法が不透明なので慎重。 ※日本にあてはめると前者は数千億円、後者は十数兆円の効果 - まだ途上の研究もある。(公言されているところではODI) - オーストラリアのLateral Economicsから出た推計が、MGIに相当する効果を推計。 向こう5年間での実現を見込む。→強い関心をひいた。 - 捕捉できるのが「氷山の一角」になる ・捕捉しやすい利用例:BtoC系ウェブサービス ・捕捉しにくい利用例:BtoB、社内利用、ODと非ODの組み合わせ利用 ※経済効果は後者が大きいとの見方も多い - ACIL Tasmanの方法: ・直接効果:業界別にヒアリング+文献調査→データ利用による生産性向上効果(売 上げ増につながると見なす)と、普及率を推測。 ・間接効果:業界別の効果+マクロ経済モデル→相互作用や経済全体への効果を 推計。
  • 6. 経済効果(2) ではどうするか? ・分野を絞って、事例を収集し、例からの類推で、「OD の経済効果はある」と確証を深める (既存の取り組み) ・全方位的にとにかく事例を収集し、「ODの経済効果は これだけの広がりがある」「成功事例は少数の例外で はない」と確証を深める(Open Data 500のアプローチ) ・OD500は、内容は薄く、個別の件についてよく理解で きないこともある。が、広がりは示せる。 ・ODI(英)も実施すべくGovLab(米・本家本元)と相談中。 ・(この話を聞く前から!)日本でも実施呼びかけ。
  • 7. 動向2:国際協調 2013 ・OK Conference (9月)世銀・ODI・OKFの途上国OD支援プロジェクトが発表。 毎年数億円程度を世銀が拠出。 →欧州とアフリカの支援が多い。 ・G8 OD憲章(10月) OKFによる各国の達成度評価もこの頃公表 2014 ・Web Foundation のODDCプロジェクトが途上国のODの成果を、サイドイベ ントとして発表。アフリカ諸国からも多数参加。(財源はカナダのIDRC) ・G20(11月)のアジェンダとしてODをプッシュ 先述のLateral Economicsの推計も、G20の経済成長目標達成の非常に有力 な手段と位置づけ。 ※アジアはまだ圏外の印象あり。日本が支援するべきか?