植物生理学「水」1. 水
絵とき 植物生理学入門 改訂2版
第2章 2.2
12年3月12日月曜日
2. 水の吸収
水の経路 - 吸収する場所 - 維管束の働き
12年3月12日月曜日
3. 根における水の通路
アポプラストがメイン
細胞と細胞の間(細胞壁)
シンプラストは原形質連絡
を通る経路で抵抗が大
膜を一度は通る
カスパリ線は疎水性
(※膜を通る経路とシンプラストの区別は現実には無理なので、合わせてCell-to-cell pathとも言われる。
cf. http://www.rib.okayama-u.ac.jp/MolecularPhysiology/katsuhara/waterchannel.htm)
「テイツ/ザイガー 植物生理学 第3版」
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4. 吸収は主に根毛で起こる
土壌中へ伸びた根毛は
表面積を稼ぐ
生長端以外は
水が通りにくい
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5. 維管束の働き
水&土壌の養分
木部の流れは上へ
篩部の流れは下へ
光合成産物
(この図は後に説明します)
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6. 木部輸送
根圧 - 液現象 - 100mまで水を引き上げる- 水分上昇の凝集力説 - 蒸散による陰圧の発生
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7. 木部の中の水の流れ(根圧)
• 木部の浸透圧が駆動力
• 土壌に水が多く、蒸散の少ない
夜間に発生しやすい
• 蒸散があると木部は陰圧になる
ので日中は根圧の影響は少ない
• 0.05∼0.5MPa(1気圧≒0.1MPa)
根圧による 液現象
(葉縁に排水組織がある)
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8. 水の凝集力
• 水を100m引き上げるには3MPaの圧力勾配
が必要
人間
• 水は内部に気泡がない限り30MPa程度の引
張りに耐える(凝集力)
• 引っ張るための陰圧は葉で生じる(後述)
100mを超えるセコイア
Plant Physiology Fifth Edition ONLINE, Essay 4.3 How Water Climbs to the Top of a 112 Meter-Tall Tree(http://5e.plantphys.net/article.php?ch=e&id=100)
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9. 水柱を保つ仕組み
• 仮道管(右)や道管(左)は並行し
て存在しており、互いに接続
している
• キャビテーション(気泡の発生)
が起こった場合、その部分を
避けて水が移動できる
• すべての道管がダメになる前に
は新しい木部が作られている
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10. 気孔は蒸散流の出口
• クチクラからの水分損失は
5%程度で、ほとんどの水分
は気孔から出る
• 細胞壁から水が失われてい
くと、水は狭い 間へ逃げ
込み、界面は湾曲する
• 水の表面張力により、湾曲
した界面は高い張力、陰圧
を生む
木部輸送の駆動力
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11. 木部輸送のまとめ
• 水は基本的には細胞壁や細胞の間の間 を通る
• 夜は根圧の影響も見られるが、駆動力としては小さい
• 葉で水が蒸発することで、表面張力による陰圧が発生
• 高い木では水の凝集力が水柱の破壊を防いでいる
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12. 水ストレス
水分不足への植物の応答 - 糖類の蓄積 - 根の吸水阻害 - 水が多すぎる事による水ストレス
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13. 水分不足による水ストレス
• 水分不足にさらされるとショ糖などを
蓄積して浸透圧を上げる植物がある
• 水の吸収にはあまり寄与しない*(土壌
から吸える水の量はわずかしか増えな
い)
• 葉の水ポテンシャルを下げ、脱水を抑
制する効果が高いと考えられている
(右図上) 水ストレスで浸透圧を調整する
サトウダイコンと、ただ気孔を
閉じるだけのカウピー(ササゲ)
のストレス応答の違い
(*テキストの意見とは異なる)
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14. 根の吸水阻害
• 低温、嫌気的条件、呼吸阻害物質(シアン化物など)は水
の吸収を阻害する(メカニズムは不明)
• 冠水は酸欠を引き起こすので(水中では酸素がほとんど
拡散しない)、吸水阻害、根腐れ、しおれを引き起こす
水が不足する場合も多すぎる場合も
「水ストレス」と呼ぶので注意
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15. 篩部輸送
篩部により輸送される物質 - アブラムシによる篩管液の採取 - 圧流説
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16. 篩部を通って輸送される物質
• 水: もっとも多く、転流される物質が溶けている
• ショ糖:もっとも一般的で必ず含まれる(0.3∼0.9Mに達すること
もある)
• 窒素:アミノ酸、アミドとして輸送。グルタミン酸とアスパラ
ギン酸、そのアミドが多い。
• 無機成分:K、Mg、P、Clなどは多いが、硝酸、Ca、S、Feなどは
篩部移動しにくい
• その他:植物ホルモンやタンパク質など
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17. アリマキ(アブラムシ)による篩管液の採取
• アブラムシの吻は確実に篩管
に差し込まれる(図B)
• CO2麻酔後にレーザーメスで切
断することで篩管液採取可能
• 篩管液の流出は数時間も続く
(修復機構を阻害?)
• 応用して圧力の測定も可能
Plant Physiology Fifth Edition ONLINE, Topic 10.3, Sampling Phloem Sap(http://5e.plantphys.net/article.php?ch=t&id=136)
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18. 圧流説による転流の説明
2. 篩管へ水が流入 1. ソースで糖を「積み込む」
圧力差により篩管液は受動的に移動
1と3ではエネルギーを使うが、
輸送のほとんどは圧力差による移動
である、という説
4. 篩管から水が流出 3. シンクで糖を「積み下ろす」
「テイツ/ザイガー 植物生理学 第3版」
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19. まとめ
• 吸水は根毛で起こる
• 木部輸送は蒸散が主な駆動力で、水の凝集力が圧力を支える
• 根→葉への水の移動は細胞壁などを通る経路(アポプラスト)が主体
• 水ストレスで糖を蓄積する植物がある
• 冠水も酸欠から水ストレスを引き起こす
• 篩部輸送の中心は糖分で、窒素はアミノ酸として運ばれる
• 圧流説は篩部輸送を上手く説明できる
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20. 参考文献
• 「絵とき 植物生理学入門 改訂2版」
山本良一・櫻井直樹 共著、増田芳雄 監修
• 「テイツ/ザイガー 植物生理学 第3版」
L.テイツ・E.ザイガー 編、西谷和彦・島崎研一郎 監訳
• Plant Physiology Online (Fifth Edition)
http://5e.plantphys.net/
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