＜目次＞ ・女性特有の訴え・症状 ・女性の腹痛　見逃せない４つ ・妊娠検査とFASTを使って鑑別！ ・１、異所性妊娠 ・２、卵巣嚢腫茎捻転 ・３、卵巣出血 ・４、骨盤内炎症性疾患 ・まとめ ＜NEURAL GP Networkとは＞ 島根県初・総合診療医育成プロジェクト 地域医療現場と大学を結ぶTeal型組織構造 診療医療の育成は現場においてのみ可能である。 しかし、現場だけでは日本全体の総合診療を成長させるには不十分。 だから、わたしたちは今、 島根県からITを駆使して総合医療のニューラルネットワーク構築を目指します。 NEURAL GP Network WEBサイト: https://shimanegp.com/

1. v
女性特有の訴え・症状
鈴木真紀

2. 女性特有の訴え・症状
• 女性の腹痛
• 外陰部の異常・帯下の異常
• 緊急避妊
• 月経困難症
• 妊娠 特に出血をメインに
• 更年期障害
女性の救急外来ただいま診断中 中外医学社

3. 女性特有の訴え・症状
• 女性の腹痛
• 外陰部の異常・帯下の異常
• 緊急避妊
• 月経困難症
• 妊娠 特に出血をメインに
• 更年期障害
女性の救急外来ただいま診断中 中外医学社

4. 女性の腹痛 見逃せない４つ
❶ 異所性妊娠
❷ 卵巣嚢腫茎捻転
❸ 卵巣出血
❹ 骨盤内炎症性疾患
これだけ！

5. 妊娠検査とFASTを使って鑑別！
FAST??
体腔内に液体貯留がないか？
ベッドサイドで簡便にできる
超音波の方法！
難しくない！
妊娠可能？
（12歳〜50歳）
FAST
妊娠検査は？
子宮瘤膿腫 /
卵管卵巣膿瘍
子宮外妊娠
流産
切迫流産など
月経困難症
骨盤内炎症性疾患
卵巣茎捻転
卵巣出血
いつ妊娠検査をする？
• 女性の腹痛・性器出血・月経不順
• 女性にX線を使う画像検査をする時
• 女性の原因不明のショック
• 女性に薬を処方する時
(+)
(-)
生理中
生理中
じゃない
〜11w
12w〜
腹水
嚢胞
加藤一朗. レジデントノート 2013; 女性の腹痛
妊娠を疑う症状 ❶月経のおくれ ❷嘔気 ❸乳房の張り

6. 1. 異所性妊娠
実は、女性の6%は妊娠に気づいていない！
不妊治療を受けた人や、卵管結紮、PID後の人に多い
 異所性妊娠を疑う症状 ①月経異常 ②性器出血 ③下腹部痛
 妊娠可能女性のショック、失神も注意が必要
 妊娠5〜7週での発症が多い
症例
36歳女性。下腹部痛と過去12時間で2度の失神で受診。
6週間月経が遅れており、5日前から不正性器出血があった。
BP 80/60mmHg, P 110/min。末梢冷感があり、青ざめている。腹部に圧痛があり、筋性防御がある。
妊娠反応は陰性だった。
Hippokratia 2014;18:282-284
 妊娠可能女性。
 異所性妊娠の3%は陰性のこともある。逆に97%は陽性。

7. 2. 卵巣嚢腫茎捻転
5cm以上の卵巣嚢腫が捻転のリスク。癒着が少ない成熟嚢胞性奇形腫で多い
突然発症の腹痛がポイント。嘔吐を伴うこともある。
阻血により36時間以内に壊死するので緊急手術が必要
22歳女性。突然発症の右鼠蹊部の痛みを自覚し、救急外来に受診した。
性交後に症状が出現し、数時間継続し、背部に放散した。
痛みは鋭く、持続痛で、かなり強く、嘔吐を伴った。ここ数週間で同じ発作があった。
エコーで、右下腹部に8cmの嚢胞が認められた。
緊急腹腔鏡手術で8cmの奇形腫であり、摘出を行った。
Australian Medical Student Journal 2012
 突然の痛み→TROP(Tear避ける/Rupture破裂する/Obstruction詰まる/Perforation穴が開く)
 持続痛で、鋭い痛み、嘔吐を伴っている。性行為や激しい運動が契機になることが多い。
 痛みと一致した部位にエコーで嚢胞が認められる

8. 3. 卵巣出血
黄体期の女性(68%)が性交(46%)を契機に発症するのが典型的
腹腔内にfree echo spaceが認められる
24歳女性。4-6時間前から継続する腹痛と嘔吐で来院。月経は20日前で、周期は整だった。
BP 100/60mmHg, P 100/minで、顔は青ざめていた。
腹部は全体的に圧痛があり、筋性防御を認めた。血液検査でHgb7g/dLだった。
超音波では54x46mmの嚢胞があり、echo free spaceがあった。妊娠反応は陰性だった。
緊急手術で腹腔内に2Lの出血と大きなルテイン嚢胞があり、出血している所見が得られた。
 妊娠可能女性。黄体期の腹痛
Jupiter online journal pf case study 2013
 腹部全体の圧痛があり、腹膜刺激がある。臥位で増悪する肩痛が出る場合もある。
 超音波でecho free spaceがある。
 妊娠反応が陰性！（卵巣出血と診断した場合経過を見ることがあるので、異所性妊娠を必ず鑑別）

9. 4. 骨盤内炎症性疾患
性殖年齢の女性。不妊のリスクになるため、ぜひ見つけて治療したい。
PIDの既往や複数のパートナー、子宮内避妊具などがリスク
Fitz-Hugh-Curtis症候群：肝周囲炎。胆嚢炎？のようで胆嚢炎じゃない疾患
16歳女性。2日間続く下腹部痛で受診した。
痛みは体動で増悪し、嘔気を伴った。また、ここ数日帯下が増えていた。
彼女は、2年前にNexplanonを埋め込んでおり、3ヶ月以内に避妊具なしの性交渉があった。
腹部は平坦、軟で下腹部全体に筋性防御を伴う圧痛があった。
陰部診察では帯下は膿性だった。双手法では付属器に圧痛があった。
GP. Pelvic inflammatory disease- clinical review
 下腹部痛があり、帯下の変化がある
 避妊具なしの性交渉がある
 ピンポン感染を防ぐためにパートナーの治療も大事
Nexplanonは皮下埋め込み型の避妊具で
5年間プロゲステロンを放出し続ける。
日本では未承認です

10. 更年期障害
更年期障害

11. 更年期とは？
閉経までの移行期から閉経して数年の間
ホルモンのバランスが崩れ、Hot flashes（ほてり）や頭痛倦怠感などの多彩な症状を呈する
Hot flashes / 血管運動症状
更年期の女性の80%が経験するが、治療を求めるのは全体の20-30%で、多くは気にしない。
閉経の2年ほど前から症状が現れ、閉経後1年時点で最も有病率が高くなる。
通常は治療せずとも数年で消失するが、一部の女性ではさらに続くこともある。
リスクは肥満、運動不足、喫煙など
症状は、2-4分継続する突然発症の顔面の火照りや発汗である。
夜間に症状があると「寝汗」と表現されることもあり、睡眠障害に発展することがある。
鑑別診断は、甲状腺機能亢進症、褐色細胞腫、悪性リンパ腫、うつ病 など
40歳未満で更年期症状を認める場合は早発卵巣不全を考え、婦人科受診を勧める！
UpToDate: menopause hotflush
女性の救急外来ただいま診療中

12. 更年期治療の対処法は？
• 通常は無治療で改善する。
• 乳がんや子宮体癌のリスクが低く、症状が強い人はホルモン補充療法を
行うことがある。
• 救急外来を受診された場合は婦人科に紹介すること
• 抗不安薬などの安易な処方は依存を招く恐れがあるため避ける
• 救急外来では漢方の処方も考えられる

13. まとめ
❶ 女性の腹痛は4つの婦人科疾患の鑑別をしっ
かり持つこと
❷ 基本に忠実に妊娠反応とFASTをすること
❸ 更年期障害は多くの女性が経験するが、
多くは治療を必要としない。
❹ 救急外来で診療した場合、安易な処方は避ける。
漢方の処方は良い選択肢かもしれない