＜NEURAL GP Networkとは＞ 島根県初・総合診療医育成プロジェクト 地域医療現場と大学を結ぶTeal型組織構造 診療医療の育成は現場においてのみ可能である。 しかし、現場だけでは日本全体の総合診療を成長させるには不十分。 だから、わたしたちは今、 島根県からITを駆使して総合医療のニューラルネットワーク構築を目指します。 NEURAL GP Network WEBサイト: https://shimanegp.com/

1. v
誤嚥
パート2: 問診・診断 ただ治して満足しない様に
西倉希

2. よくあるケース
80代 男性
発熱、喀痰増加で来院.
家族によると最近むせやすくなっていた。
2週間前には胃もたれで近医受診していた。
精査の結果、誤嚥性肺炎の診断
抗菌薬治療で熱は良くなったが…
STさんの評価では嚥下困難
経管栄養？看取り？

3. 嚥下をこう分ける
• 先行期
• 準備期
• 口腔期
• 咽頭期
• 食道期
咽頭
食道
vs ×
器質的
機能的
vs

4. 嚥下機能低下の鑑別診断
川見典之, 岩切 勝彦 「嚥下障害・嚥下痛」 medicina. 54(6) :842-845. 2017
Ronnie Fass, MD. Approach to the evaluation of dysphagia in adults. In: UpToDate, Post TW (Ed), UpToDate, Waltham, MA.(Accessed on February 24, 2021.)
器質的 機能的
咽頭
口内炎・舌炎・咽頭喉頭炎・扁桃炎
悪性腫瘍（舌・中下咽頭・喉頭）
壁外圧迫（甲状腺・頸部リンパ節）
Zenker憩室
脳血管障害（球麻痺・仮性球麻痺）
Parkinson病・PSP
ALS・筋ジストロフィー
多発性硬化症
Guillain-barre症候群
食道
食道潰瘍瘢痕
好酸球性食道炎
食道癌・食道胃接合部癌
食道憩室
食道裂孔ヘルニア
壁外圧迫（大動脈瘤・縦隔腫瘍・心拡大）
食道アカラシア
びまん性食道痙攣
逆流性食道炎
強皮症
ーCritical ーCommon

5. 鑑別のポイント：問診
• つかえる部位
口腔咽頭に食物が留まる 咽頭期
胸部でのつかえ感 食道期
• 経過
数週〜数ヶ月 腫瘍の可能性
数年 良性疾患の可能性
変動する 重症筋無力症の可能性
• その他
嚥下痛の有無, 嗄声の有無, 胸焼け・呑酸の有無
喫煙・飲酒歴, アレルギー歴
Ronnie Fass, MD. Approach to the evaluation of dysphagia in adults. In: UpToDate, Post TW (Ed), UpToDate, Waltham, MA.(Accessed on February 24, 2021.)
川見典之, 岩切 勝彦 「嚥下障害・嚥下痛」 medicina. 54(6) :842-845. 2017

6. 鑑別のポイント：身体所見
• 視診：口腔咽頭疾患で重要
発赤, 粘膜萎縮, 扁桃腺肥大, 舌炎・口内炎の有無, 甲状腺腫大の有無
• 神経診察：神経・筋疾患において重要
四肢の運動障害・感覚障害の有無, 脳神経所見
• その他
皮膚硬化所見：強皮症
全身状態（発熱, 貧血, リンパ節腫脹)：悪性腫瘍など
川見典之, 岩切 勝彦 「嚥下障害・嚥下痛」 medicina. 54(6) :842-845. 2017
Ronnie Fass, MD. Approach to the evaluation of dysphagia in adults. In: UpToDate, Post TW (Ed), UpToDate, Waltham, MA.(Accessed on February 24, 2021.)

7. Case 続き
入院後神経所見を取ると、両側上肢の固縮を認めていた。
問診を取り直すと家族から見てここ数週間で、表情に乏しく
元気がない様子が続いていおり、歩行も一歩目が出にくい様子が
あったと。
近医での処方歴を見直すと、胃もたれに対してスルピリド（ドパミ
ン受容体ブロッカー）が処方されていた。
診断は？

8. Case 続き
スルピリドを中止し、経過観察
神経所見は徐々に改善。
改善とともに嚥下機能評価を再度行い、
徐々に食事を元のレベルに戻すことができた。
Diagnosis: スルピリドによる薬剤性パーキンソン症候群

9. • 「抗菌薬使って肺炎は良くなったけど…」
の向こう側
• “咽頭vs食道” × “器質性 vs 機能性”
• 治せる嚥下障害を見逃さない：
薬は特に要注意
まとめ