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ソーシャルメディア上のニュース
接触・共有行動の実態と考察
2014年6月29日
関西大学
小笠原盛浩
第31回情報通信学会大会
報告内容
• 用語定義・背景・米国の状況
• 調査目的、調査概要
• 調査結果(ニュース共有概況)
• 結果まとめ、留意点、今後の予定
“If the news is that important, it will find me.”
用語の定義
• ニュース※
– 社会に関する事象を伝える情報
– 情報を伝える媒体(マス・メディア、SNS、Twitter、LINE等)
の違いは問わない
• 共有ニュース
– ソーシャルメディア利用者が他の利用者と共有しようと
する(シェア、リツイート等)ことで普及するニュース
• ニュース共有
– ソーシャルメディア利用者が他の利用者とニュースを共有
しようとする行動
※学会発表後の指摘を受け、本発表での定義を追記
背景
• ソーシャルメディアの利用率(総務省 2013)
– 家庭内:41.3%
– 家庭外:46.5%
• サービス別利用者数
– Facebook:約2,100万人(2013)
– Twitter:(PCから)約2,200万人(2013)
– LINE:5,000万人超(2014)
『マイナビニュース』(2014年5月16日)
ソーシャルメディア利用目的(総務省 2011)
米国人のニュース情報源(2010)
(%)
(Pew Research Center 2010)
米国のニュース共有状況(2010)
• 75%
– オンラインニュース消費者(成人の61%)のうち、
SNS・emailで転送されたニュースに接している
• 51%
– SNS利用者兼オンラインニュース消費者のうち、
SNSでフォローしている人からニュースを得ている
(インターネット利用者の28%)
(Pew Research Center 2010)
米国の共有ニュース接触状況(2013)
(%)
(Pew Research Center 2014)
報告内容
• 用語定義・背景・米国の状況
• 調査目的、調査概要
• 調査結果(ニュース共有概況)
• 結果まとめ、留意点、今後の予定
調査目的
• 共有ニュース接触、ニュース共有の現状把握
– 接触・共有の頻度
– ニュースジャンル別の接触・共有頻度
– 共有ニュースに対する評価
• 信憑性
• 有用性
– 接触・共有の動機(利用と満足)
– 接触・共有に影響する要因
• 一般的信頼
• 一般互酬性
• 共有ニュース接触、ニュース共有の影響(今回なし)
調査概要
• 調査方法
– オンラインアンケート調査
• 調査対象者
– ネット調査会社モニターからランダムに抽出した
10~70代の男女(性・年齢層別割り付け)
• 調査時期
– 2014年1月24日~26日
• サンプルサイズ
– 2272
• ※パネル調査の1回目
尺度
• メディア信憑性(各7件法)
– 「偏見がない」「客観的」「専門的」「詳しい」「信頼できる」
(Flanagin & Metzger 2000, Kiousis 2001 など)
• メディア有用性(各7件法)
– 「仕事・勉強(or 趣味・生活)の役に立つ」
• ソーシャルメディア上の一般的信頼(各5件法)
– 「ソーシャルメディア上では、ほとんどの人は信頼できる」
他5項目(山岸 1998)
• ソーシャルメディア上の一般互酬性(5件法)
– 「ソーシャルメディア上では、困った人を助けてあげれば、
私が困った時にも誰かが助けてくれるようになっているも
のだ」 ※(小林 ・池田 2005)等を参考に作成
報告内容
• 用語定義・背景・米国の状況
• 調査目的、調査概要
• 調査結果(ニュース共有概況)
• 結果まとめ、留意点、今後の予定
ニュースの接触・共有率
(%)
利用率
Facebook: 37.1%
Twitter : 31.7%
LINE : 39.7%
ソーシャルメディア友人数の比較
平均値 中央値 最頻値 標準偏差
Facebook 59.3 20 0 133.1
Twitter(フォロー) 122.0 20 0 486.2
Twitter(フォロワー) 122.0 15 0 598.4
LINE 56.7 30 30 69.3
共有ニュースのジャンル
(%)
閲覧するニュースジャンル数
(%)
平均値 :5.54
中央値 :5
最頻値 :5
標準偏差:2.73
平均値 :3.52
中央値 :3
最頻値 :1
標準偏差:2.44
信憑性の比較
• おおむね 新聞 > テレビ > 共有
有用性の比較
• おおむね 新聞 > テレビ > 共有
共有ニュース閲覧動機
(主因子法・プロマックス回転)
第1因子 第2因子 第3因子
(7) 興味のあるニュースを詳しく調べるため 0.785 -0.059 -0.061
(9) いま社会で何が起きているか把握しておくため 0.697 0.029 -0.088
(6) 趣味に役に立つニュースを入手するため 0.634 0.018 0.092
(5) 仕事や勉強に役に立つニュースを入手するため 0.56 0.072 0.042
(3)友達との間で話題になっているニュースを知るため -0.066 0.906 -0.038
(2)友達と話題にするニュースを入手するため 0.067 0.768 -0.003
(4) 友達がニュースについてどのような
考えを持っているのか知るため
0.061 0.564 0.080
(8) 時間つぶしのため 0.068 -0.012 0.868
(1) 気分転換のため -0.099 0.023 0.683
共有ニュース閲覧頻度の回帰分析
Facebook Twitter LINE
β β β
性別(1:男性 2:女性) -0.029 0.024 -0.023
年齢 0.02 -0.063 -0.116*
利用頻度 0.434*** 0.349*** 0.202***
ソーシャルメディア一般的信頼 -0.09 0.02 0.037
ソーシャルメディア一般互酬性 0.151* 0.084 0.149
情報探索動機 0.145** 0.094† 0.150*
コミュニケーション動機 0.103* 0.102† 0.033
気晴らし動機 0.104* 0.048 -0.003
調整済みR2 0.277 0.185 0.11
***:p<0.001、**:p<0.01、*:p<0.05、†:p<0.1
ニュース共有の動機
(主因子法・プロマックス分析)
第1因子 第2因子 第3因子
(6)友達に話題を提供するため 0.673 -0.083 0.075
(9) 友達の役に立ちそうなニュースだから 0.662 0.125 -0.176
(5) 友達と意見やアイディアを交換できるから 0.661 -0.005 0.111
(4) 友達から反応が得られるから 0.625 -0.035 0.135
(11)ふだん友達にニュースを紹介してもらっている
から
0.485 0.155 0.066
(12) 重要なニュースは皆が知っておくべきだから 0.044 0.757 -0.104
(13)重要なニュースは友達も知っておくべきだから 0.245 0.639 -0.163
(2) 自分の意見を記録しておくため -0.108 0.581 0.253
(1) 自分にとって役に立つ情報を記録しておくため -0.069 0.542 0.243
(7) 時間つぶしのため 0.073 -0.063 0.804
(8) 気分転換のため 0.029 0.104 0.738
ニュース共有頻度の回帰分析
Facebook Twitter LINE
β β β
性別(1:男性 2:女性) -0.078 -0.056 -0.148*
年齢 -0.042 -0.099 -0.088
利用頻度 0.125* 0.176** 0.119†
ソーシャルメディア一般的信頼 0.067 -0.018 0.100
ソーシャルメディア一般互酬性 0.124 0.177* 0.081
コミュニケーション動機 0.137† 0.199** 0.256**
共有・記録動機 0.165* 0.133† 0.069
気晴らし動機 0.120† 0.106† 0.058
調整済みR2
0.215 0.209 0.225
***:p<0.001、**:p<0.01、*:p<0.05、†:p<0.1
報告内容
• 用語定義・背景・米国の状況
• 調査目的、調査概要
• 調査結果(ニュース共有概況)
• 結果まとめ、留意点、今後の予定
結果まとめ①
• 共有ニュースへの接触率、ニュース共有率
– マスメディアニュースへの接触率より低い
– 接触率 > 共有率
– Facebook、Twitter > LINE
• 閲覧されるニュースジャンル
– マスメディア : 社会、政治
– 共有ニュース: 大きな差はない
– 共有ニュースは1ジャンルだけの閲覧が最多
• ニュースの信憑性、有用性
– おおむね 新聞 > テレビ >共有
結果まとめ②
• 共有ニュースの閲覧動機
– 情報探索、コミュニケーション、気晴らし
• ニュースの共有動機
– コミュニケーション、周知・記録、気晴らし
• 共有ニュース閲覧頻度の予測
– Facebookでは一般互酬性が有意
– LINEは情報探索のみ有意
• ニュース共有頻度の予測
– Twitterでは一般互酬性が有意
– LINEはコミュニケーションのみ有意
留意点
• アーキテクチャの違いの考慮
– Facebook、Twitterは友人からの共有
– LINEニュースは1次的にはLINE社からの配信
• 利用者ネットワークの違いの考慮
– Twitterネットワーク: 分散が大きい
– LINEネットワーク: 分散が小さいが狭い
今後の予定
• 2014年中に2回目のパネル調査を実施
• 共有ニュース接触、ニュース共有の影響を検証
– ネットワーク同質性
– 政治的知識
– 政治的態度
– 議題設定
– 政治関心
– 政治的自己効力感 など
参考文献
• Flanagin, A, J. and Metzger, M, J. (2000) Perception of Internet information
credibility. Journalism & Mass Communication Quarterly, 77, 515-540.
• Kiousis, S. (2001) Public trust or mistrust? Perception of media credibility in the
information age. Mass Communication & Society, 4(4), 381-403.
• 小林哲郎・池田謙一(2005) 「オンラインコミュニティの社会関係資本」 池田謙一
編『インターネット・コミュニティと日常世界』多賀出版, 148-184.
• 『マイナビニュース』「5大ソーシャルメディアのユーザー数まとめ!Facebook、
Twitter、LINE、Google+、YouTube」(2014年5月16日)
• “8 Key Takeaways about Social Media and News,”Pew Research Center, March
26, 2014,
• “Understanding the Participatory News Consumer,” Pew Research Center,
March 1, 2010
• 総務省(2011)『平成23年版 情報通信白書』
• 総務省(2013)『平成25年版 情報通信白書』
• 山岸俊男 (1998) 『信頼の構造-こころと社会の進化ゲーム』 東京大学出版会

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