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長岡技術科学大学 工学研究科
○山城広周
井若玄貴
野中尋史
機械学習とエントロピーを
用いた作業時間の
無駄に関する要因分析
1
背景・目的
背景
製造工場において無駄は極力省きたい
無駄の原因を探るため要因分析が行われてきた
2
費用 時間
品質管理[1]
3
組織構造
工場環境
品質
運用パフォーマンス
相関分析
要因分析を行うために
• 工場に詳しい人
• 分析の専門家
待ち時間の要因分析[2]
モデルから得られる変数重要度を用いる
• 良い影響の要因か悪い影響の要因か不明
4
製造データ 機械学習
モデル
待機時間
背景
経験的な分析 専門家が必要
変数重要度 その要因の良し悪しが不明
問題設計を上手く行えば回避可能
• 既存のデータを用いず新しく設計したデータを収集
• 特定の作業に目的を絞る
5
現実的に難しい
背景
画像を用いて作業の無駄や異常を推定[3, 4]
• 固定カメラを設置して画像を取得
• 手元や姿勢に着目
工程情報と比較して
• 材料情報などを含まない
• 形状や機械の種類などの情報がない
6
背景
作業時間の無駄
• 作業時間が長時間のもの
• 作業時間のバラツキが激しいもの
作業時間のバラツキが大きい
• 探した限りあまり研究が行われていない
7
本研究では作業時間のバラツキ
目的
数理モデルの変数重要度を用いて要因分析は可能
• 良い影響があるか悪い影響があるか不明
画像を用いて無駄のみを推定することは可能
• 工程の詳細データは省かれている
作業時間の無駄
• 同一の工程情報でも作業時間にバラツキがあるもの
8
工程情報を用いた作業時間のバラツキの要因分析
9
手法
投稿時概略図
10
材料や機種など
の工程情報
データ
LightGBMで
作業時間を予測
予測値と実作業
時間を用いて
誤差を算出
作業時間の予測
出現確率から
エントロピーを算出
要因分析
要因分析
エントロピー
11
ハミング距離を用いる利点
• 各サンプルで比較可能
• 分布で判断するエントロピーより細かく分析可能
本発表概略図
12
材料や機種など
の工程情報
データ
LightGBMで
作業時間を予測
予測値と実作業
時間を用いて
誤差を算出
作業時間の予測
各項目から
ハミング距離を算出
要因分析
ハミング距離
13
誤差
200
100
300
100
150
400
200
240
300
平均220
平均以下
1
1
0
1
1
0
1
0
0
素材A
1
0
0
1
0
0
1
0
0
ハミング距離:2
素材B
0
1
1
0
0
1
0
0
0
ハミング距離:6
平均以下
1
1
0
1
1
0
1
0
0
平均以下
1
1
0
1
1
0
1
0
0
作業時間の予測
LightGBM[5]
• シーケンシャルに誤差を学習
14
15
実験・結果
利用データ
協力企業より提供された各製造サンプルの工程情報
2017年11月 ~ 2018年10月までのデータを使用
16
工程 件数 上限 下限
A 31137 作業時間の10% 300秒以内
B 15270 作業時間の10% 60秒以内
項目
作業者CD 材料 製造個数
商品CD 材料パラメータ 製品質量 実作業時間
feature 全16種類
target
LightGBMの結果
RMSEが作業時間の実測値平均の15%程度
• バラツキのあるデータは予測値から大きく離れたもの
17
工程 RMSE(秒) 実測値の平均(秒)
A 179.25 1256.42
B 65.07 400.48
LightGBMのRMSEと実測値の平均
ハミング距離の結果
18
項目 要素名
機種CD 110
機種CD 100
機種CD 80
名前CD 62991
機種CD 90
工程A
項目 要素名
名前CD 61721
材料1 素材1
材料P1 37
材料P2 10080
材料P1 35
工程B
誤差が平均以下の要素
• 距離を降順に並べた上位5つ
• 工程Aでは作業機種の要素が目立つ
• 工程Bでは材料,材料パラメータが目立つ
19
考察
考察
協力企業の技術者の方々と話し合い
• LightGBMのRMSEと実測値平均
• ハミング距離の結果上位5つの要素
20
バラツキ要因と考えられるもの
工程A
機種CDの80
• 利用頻度が低い
• 作業者が慣れず実作業時間にバラツキが生じる
工程B
材料P1の37
• 特殊な形状で加工が難しい
21
22
今後の課題・まとめ
今後の課題
入力データに存在するノイズの除去
• 原因不明な要素の改善に繋がる可能性
大規模データ・他工程への適用
モデルの変数重要度の活用
• 誤差の大小と入力データからハミング距離を計算
画像情報も入力として用いる手法の考案
23
まとめ
目的
• 工程情報から作業時間のバラツキ要因の分析
提案手法
結果・考察
• 低頻度の機種や特殊なパラメータを抽出
今後の課題
• ノイズの除去
24
ハミング距離
要因分析工程情報
作業時間の予測
参考文献
[1] Zhang, D., Linderman, K., & Schroeder, R. G. (2012). The
moderating role of contextual factors on quality management
practices. Journal of Operations Management, 30(1-2), 12-23.
[2] Meidan, Y., Lerner, B., Rabinowitz, G., & Hassoun, M. (2011).
Cycle-time key factor identification and prediction in
semiconductor manufacturing using machine learning and data
mining. IEEE Transactions on Semiconductor Manufacturing,
24(2), 237-248.
[3] 高橋典宏, 山澤一誠, 生雲公啓, 野田賢, & 横矢直和. (2007). 距離
画像センサを用いた俯瞰画像からの SVM による人物の姿勢分類. 電子
情報通信 学会技術研究報告. 電子情報通信学会, 107(384), 47-52
[4] 清水早苗, 平湯秀和, 浅井博次, & 丹羽義典. (2007). 人物動作に着
目したシーン分割による作業動作の異常検出. 情報処理学会研究報告コ
ンピュータビジョンとイメージメディア (CVIM), 2007(87 (2007-
CVIM-160)), 195-200.
[5] Ke, G., Meng, Q., Finley, T., Wang, T., Chen, W., Ma, W., ... &
Liu, T. Y. (2017). Lightgbm: A highly efficient gradient boosting
decision tree. In Advances in Neural Information Processing
Systems, 3146-3154.
25

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