IT戦略特別委員会提言
本年の4月末日をもって30年にわたった平成時代は幕を閉じた。平成の間に日本の社会経 済の持続的発展への制約・課題が顕在化したことは否めない。代表的な社会課題が少子高齢 化による人口減少や労働力の不足であり、今後、人口縮減を前提としたパラダイムへのシフ トが必要になっている。また、近年は、東日本大震災や西日本豪雨、北海道胆振東部地震な どの大規模災害が相次いで発生しており、国民の安全安心を確保するため、災害対策・防災 対策の高度化が急務となっている。一方で、平成時代は、ネットワークと計算能力が圧倒的な進歩を遂げ、デジタル機器が広 く社会全般に浸透した時代であった。誰もが手にするスマートフォンは、30年前のスーパー コンピュータの処理能力を凌駕しており、かつては最先端であったテクノロジーを手のひら の上で扱える時代となった。また、デジタル技術を用いた就業形態の多様化により、新たな 労働需要の喚起や労総生産性の向上がもたらされようとしている。さらに、デジタル技術の 進化に伴って、AI分析等を通じた災害予測の精緻化、災害情報の伝達の迅速化のほか、被災 後の生活再建支援を迅速・的確化といった災害対策・防災対策の高度化が期待される。我々はこの令和最初のデジタル・ニッポンにおいて、デジタル技術の活用による産業競争力の強化や社会課題の解決に加え、デジタル技術の恩恵を誰もが享受できる「インクルーシブなデジタル社会」の実現に向けた取組について提言する。