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【日本政府への要請】
2014 年 11 月 4 日
南相馬市の特定難勧奨地点の指定解除をしないことの政府への要請
南相馬・避難勧奨地域の会 世話人 小澤洋一
■2014 年 10 月 10 日、17 日、24 日と 3 回にわたって要請文などを提出しているが、いまだに文書による正式な回答がない。
■2014 年 10 月 29 日、参議院東日本大震災復興特別委員会で又市征治参院議員(社会民主党・護憲連合)の質問への答弁で
以下のことが明らかになった。これらの回答は、地域住民を蔑にしている何よりの証拠であり到底許されるものではない。
(1)国際放射線防護委員会(ICRP)が定める現存被ばく状況では、年間 1~20mSv の下方に参考レベルを設定し、そこに向か
って下げていくということが示されているが、残念ながら、わが国においてはこの参考レベルなどは設定されていない。
(2)南相馬市の特定避難勧奨地点世帯 151 世帯のうち 14 世帯で空間線量率が(放射線管理区域の基準である)毎時 0.6μSv
以上となっている。これは最も放射線量が低い玄関先や庭先での測定値であり、実際はもっと高い。(2014 年 7-8 月測定)
(3)南相馬市の土壌の放射性セシウム沈着量測定では測定した 17 ヵ中、特定避難勧奨地点周辺の 3 ヵ所は全て(放射線管理
区域の基準である)4 万 Bq/m2 を超えている。実際は数十万 Bq/m2以上であるが数値は示されていない。(2013 年 11 月測定)
(4)政府は外部被ばく線量の評価については、(土壌汚染ではなく)空間線量率だけで十分対応が可能だとの認識でいる。
(5)(電離放射線障害防止規則に定める)放射線管理区域は事業者に放射線管理を課すものであり、放射線管理区域の基準
を上回っている地域で解除を行っても、年間 20mSv という解除の基準は発がんリスクの明らかな増加を証明することは難し
いレベルであり、リスクの観点からは十分に低い水準であると考えている。
(6)特定避難勧奨地点の指定時が玄関先と庭先での測定であったため、今回も放射線量の低減を比較するために同じ基準で
行った。裏庭の放射線量が高いことなどは承知しているが、リスクの評価基準としては採用しないし、無視することとした。
■2011 年 7 月 19 日、当時の原子力安全委員会が「今後の避難解除に関する基本的な考え方について」で、「現存被ばく状況
にあることについての判断の「めやす」を設定するに当たっては、予想される全被ばく経路からの被ばくを総合的に考慮し
なければならない。この「めやす」の設定においては、【空間線量率(μSv/h)、土壌の放射能濃度や表面沈着濃度(Bq/kg、
Bq/m2)を使用すること】も考えられる。」としているが、現状、各世帯での土壌放射能濃度測定は完全に無視されている。
■また「防護措置の最適化のための参考レベルは、ICRP の勧告に従えば、現存被ばく状況に適用されるバンドの【年 1~20mS
vの下方の線量を選定すること】となる。その際、状況を漸進的に改善するための中間的な参考レベルを設定することもで
きるが、長期的には、年間 1mSv を目標とする。」とあるが、国は年 20mSv にこだわり中間的な参考レベルさえ設けていない。
チェルノブイリ原発事故では、いまだに 30km 圏内を立ち入り禁止、事故 5 年後に年 5mSv 以上を強制避難区域としている。
■2011 年 8 月 4 日付け原子力安全委員会の「緊急防護措置の解除の基本的考え方」では、解除の条件として「緊急防護措置
の目的を踏まえ、当該措置を【継続する必要性、正当性が無い】と判断されること。具体的には、当該措置が設定された際
の基準、又は当該措置を解除する際の状況を踏まえて【策定される新たな基準を下回ること】が確実であること」とされて
いるが、継続する必要性や正当性は、隣接する飯舘村や小高区と比較すれば明らかだし、新たな基準さえ策定されていない。
■また、「緊急防護措置の解除に当たって行うべき【新たな防護措置】の実施時期、方法、内容等を定め、必要な準備を行
った上で、適切に解除すること」については、新たな防護措置は示されず、注意喚起情報さえ発していない。さらに、「緊
急防護措置を解除し、適切な管理や除染・改善措置等の新たな防護措置の計画を立案する際には、関連する地元の自治体・
【住民等が関与できる枠組みを構築】し、適切に運用すること」に至っては、住民はまったく蚊帳の外に置かれている。
■環境省の除染ガイドラインでは、放射線防護教育を受けた作業者基準値は毎時 2.5μSv 未満(*1)です。南相馬市では、
妊婦・子どもの世帯が地上高 50cm 毎時 2μSv 以上で特定避難勧奨地点に指定されたのに、指定解除は地上 1m で毎時 3.8μ
Sv(*2)未満、なぜ指定解除による補償打ち切りで放射線のリスクを知らない子どもたちに帰還を強要するのか、なぜ同じ
フィールドにありながら作業者基準値よりベネフィットが全然ない妊婦・子どもなどの指定解除基準値が高いのか、住民を
獣以下に扱う国の姿勢を南相馬・避難勧奨地域の会としては全く理解できません。地域住民にとっての放射線管理区域の境
界基準は毎時 0.6μSv(*3、毎時 3.8μSv はこの 6 倍以上)、事業所境界での公衆被曝限度は毎時 0.11μSv(*4、毎時 3.8
μSv はこの約 35 倍)と法で定められていることを、避難解除を推進する役人や政治家たちは知っているのでしょうか。
*1:放射線管理区域の基準 3 ヶ月 1.3mSv=2.5μSv/h、1,300μSv÷(三ヶ月 13 週×週 5 日×一日 8 時間)=2.5μSv/h
*2:年間 20mSv=3.8μSv/h、20,000μSv÷[{屋外 8 時間+(屋内 16 時間×40%)}×365 日]=3.8μSv/h、木造屋内 4 掛
*3:放射線管理区域の基準 3 ヶ月 1.3mSv=0.6μSv/h、1,300μSv÷(三ヶ月 13 週×週 7 日×一日 24 時間)=0.6μSv/h
*4:3 ヶ月 250μSv=年 1mSv=0.11μSv/h、250μSv÷(三ヶ月 13 週×週 7 日×一日 24 時間)=0.11μSv/h
■「特定避難勧奨地点」を抱える地域の国による現地視察はようやく始まったばかりです。国はもっと地域住民の声と地域
の実情に目を向けてください。隣接していていまだに居住が制限されている、旧警戒区域の南相馬市小高区や旧計画的避
難区域の飯舘村と比較しても、私たちの地域は同等かそれ以上に放射能で汚染されている所がたくさんあります。
■「電離放射線障害防止規則」によれば、除染が終わっても私たちの地域は「放射線管理区域」です。環境全体を見れば、
人々が住むことは過酷であることが理解できるはずです。国は庭の一点だけで放射線の影響評価をしないでください。
■現場を知らない安全派の専門家といわれる方々の意見ばかりを採用しないでください。私たちは、地面やコンクリート・
アスファルトなどの取れない放射能汚染、山からの再汚染の実態をとらえていますので国が検証してください。
■南相馬市の妊婦・子ども世帯は、地上高50cm、毎時2マイクロシーベルトで特定避難勧奨地点に指定されましたが、
理不尽にも国は、地上高1メートル、毎時3.8マイクロシーベルトを指定解除の基準としています。また、年間20ミ
リシーベルトの避難基準は、原発事故後1年以内であるはずなのに、いまだにこの基準で被ばくを強要されています。私
たちは生涯被ばくを80ミリシーベルトと考えていますが、いったい、いくらの被ばくをすることになるのでしょうか。

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  • 2. ■2011 年 7 月 19 日、当時の原子力安全委員会が「今後の避難解除に関する基本的な考え方について」で、「現存被ばく状況 にあることについての判断の「めやす」を設定するに当たっては、予想される全被ばく経路からの被ばくを総合的に考慮し なければならない。この「めやす」の設定においては、【空間線量率(μSv/h)、土壌の放射能濃度や表面沈着濃度(Bq/kg、 Bq/m2)を使用すること】も考えられる。」としているが、現状、各世帯での土壌放射能濃度測定は完全に無視されている。 ■また「防護措置の最適化のための参考レベルは、ICRP の勧告に従えば、現存被ばく状況に適用されるバンドの【年 1~20mS vの下方の線量を選定すること】となる。その際、状況を漸進的に改善するための中間的な参考レベルを設定することもで きるが、長期的には、年間 1mSv を目標とする。」とあるが、国は年 20mSv にこだわり中間的な参考レベルさえ設けていない。 チェルノブイリ原発事故では、いまだに 30km 圏内を立ち入り禁止、事故 5 年後に年 5mSv 以上を強制避難区域としている。 ■2011 年 8 月 4 日付け原子力安全委員会の「緊急防護措置の解除の基本的考え方」では、解除の条件として「緊急防護措置 の目的を踏まえ、当該措置を【継続する必要性、正当性が無い】と判断されること。具体的には、当該措置が設定された際 の基準、又は当該措置を解除する際の状況を踏まえて【策定される新たな基準を下回ること】が確実であること」とされて いるが、継続する必要性や正当性は、隣接する飯舘村や小高区と比較すれば明らかだし、新たな基準さえ策定されていない。 ■また、「緊急防護措置の解除に当たって行うべき【新たな防護措置】の実施時期、方法、内容等を定め、必要な準備を行 った上で、適切に解除すること」については、新たな防護措置は示されず、注意喚起情報さえ発していない。さらに、「緊 急防護措置を解除し、適切な管理や除染・改善措置等の新たな防護措置の計画を立案する際には、関連する地元の自治体・ 【住民等が関与できる枠組みを構築】し、適切に運用すること」に至っては、住民はまったく蚊帳の外に置かれている。 ■環境省の除染ガイドラインでは、放射線防護教育を受けた作業者基準値は毎時 2.5μSv 未満(*1)です。南相馬市では、 妊婦・子どもの世帯が地上高 50cm 毎時 2μSv 以上で特定避難勧奨地点に指定されたのに、指定解除は地上 1m で毎時 3.8μ Sv(*2)未満、なぜ指定解除による補償打ち切りで放射線のリスクを知らない子どもたちに帰還を強要するのか、なぜ同じ
  • 3. フィールドにありながら作業者基準値よりベネフィットが全然ない妊婦・子どもなどの指定解除基準値が高いのか、住民を 獣以下に扱う国の姿勢を南相馬・避難勧奨地域の会としては全く理解できません。地域住民にとっての放射線管理区域の境 界基準は毎時 0.6μSv(*3、毎時 3.8μSv はこの 6 倍以上)、事業所境界での公衆被曝限度は毎時 0.11μSv(*4、毎時 3.8 μSv はこの約 35 倍)と法で定められていることを、避難解除を推進する役人や政治家たちは知っているのでしょうか。 *1:放射線管理区域の基準 3 ヶ月 1.3mSv=2.5μSv/h、1,300μSv÷(三ヶ月 13 週×週 5 日×一日 8 時間)=2.5μSv/h *2:年間 20mSv=3.8μSv/h、20,000μSv÷[{屋外 8 時間+(屋内 16 時間×40%)}×365 日]=3.8μSv/h、木造屋内 4 掛 *3:放射線管理区域の基準 3 ヶ月 1.3mSv=0.6μSv/h、1,300μSv÷(三ヶ月 13 週×週 7 日×一日 24 時間)=0.6μSv/h *4:3 ヶ月 250μSv=年 1mSv=0.11μSv/h、250μSv÷(三ヶ月 13 週×週 7 日×一日 24 時間)=0.11μSv/h ■「特定避難勧奨地点」を抱える地域の国による現地視察はようやく始まったばかりです。国はもっと地域住民の声と地域 の実情に目を向けてください。隣接していていまだに居住が制限されている、旧警戒区域の南相馬市小高区や旧計画的避 難区域の飯舘村と比較しても、私たちの地域は同等かそれ以上に放射能で汚染されている所がたくさんあります。 ■「電離放射線障害防止規則」によれば、除染が終わっても私たちの地域は「放射線管理区域」です。環境全体を見れば、 人々が住むことは過酷であることが理解できるはずです。国は庭の一点だけで放射線の影響評価をしないでください。 ■現場を知らない安全派の専門家といわれる方々の意見ばかりを採用しないでください。私たちは、地面やコンクリート・ アスファルトなどの取れない放射能汚染、山からの再汚染の実態をとらえていますので国が検証してください。 ■南相馬市の妊婦・子ども世帯は、地上高50cm、毎時2マイクロシーベルトで特定避難勧奨地点に指定されましたが、 理不尽にも国は、地上高1メートル、毎時3.8マイクロシーベルトを指定解除の基準としています。また、年間20ミ リシーベルトの避難基準は、原発事故後1年以内であるはずなのに、いまだにこの基準で被ばくを強要されています。私 たちは生涯被ばくを80ミリシーベルトと考えていますが、いったい、いくらの被ばくをすることになるのでしょうか。