More Related Content
More from Kazuhide Fukada
More from Kazuhide Fukada (20)
008
- 1. 3.3 ケーススタディ(その2)
《リサイクル原子燃料貯蔵技術》
3.3.1 研究開発の概要
原子力委員会は、2005 年 10 月、原子力政策大綱において、使用済(リサイクル)燃料の再処
理政策を再確認し、使用済燃料の中間貯蔵は、使用済燃料が再処理されるまでの間の時間的な調
整を行うことを可能にする手段として重要であると明示している。
当研究所は、使用済燃料の中間貯蔵・輸送に関わる要素技術の試験・研究をわが国の他の研究
機関に先駆けて行ってきた。当該技術について、当研
二次蓋
究所は以下の強みを有している。
一次蓋
中間貯蔵は電気事業固有の課題であり、そのニー
ズや立地上の問題点を早期に把握し、解決するた
使用済燃料集合体
めの総合的研究力を有していること
内筒(ガンマ線遮へい体)
当研究所は使用済燃料などの輸送や貯蔵について、
20 年以上の研究実績があり、
海外の最新情報にも
精通していること
貯蔵と輸送の両分野で、国と電気事業の双方に学
高
さ
約
5
m
中性子遮へい体
外筒
術的な立場で技術的な提言を行える国内随一のポ
テンシャルと実績を有すること
当研究所では金属キャスク貯蔵(貯蔵専用または輸
送 貯蔵兼用)
・
とコンクリートキャスク貯蔵(貯蔵専用)
を中心に、試験・研究を行ってきた。
外径約2.5m
使用済燃料を貯蔵する金属キャスクの概念例
金属キャスクに関しては、事故時の安全機能確認な
どのために、主に以下の試験研究を実施してきた。
燃料被覆管の温度解析試験
被覆管クリープ試験
金属ガスケット長期密封試験
キャスクの落下事故試験
鋳鉄キャスク材料試験
キャスク上への重量物落下試験
地震によるキャスク転倒試験
使用済燃料を貯蔵するコンクリートキャスク
の概念例
コンクリートキャスクに関しては、主に以下の試験研究などを実施している。
要素技術試験
貯蔵施設設計
実物大コンクリートキャスク試験
安全規制の基礎資料整備
23
- 3. ■ 学術研究機関として国の委員会における活動(原子燃料サイクルに関する政策立案支援)
■ 国からの受託研究推進(キャスクに関する様々な規格・基準の策定に反映)
■ 国内外の学協会標準・規格委員としての活動(キャスクに関する民間規格・基準の策定に反映)
■ 中間貯蔵立地候補地などでの講演
■ 海外の中立機関などとの連携
■ IAEA 貯蔵研究会および中間貯蔵国際セミナーの開催
■ 海外協力
これらの活動にかかる著作物は多数に上る。その他、例えば、当研究所が作成を支援した資
源エネルギー庁が発刊したパンフレットは公衆の中間貯蔵に関する理解促進に一定の貢献をし
たと考えられる(2003 年 1 万セット、2006 年 5 千セット配布)
。
リサイクル原子燃料に関する様々なパンフレット (資源エネルギー庁
刊行)
3.3.3 当研究所のインカム
本技術の当研究所インカムに関しては、一部受託研究のヒストリカルコストの算出にとどまっ
たが、その評価額は 160 億円程度であった。相当の経済的価値があると評価でき、当研究所の研
究能力について社会からも高い評価を得ているということができる。
3.3.4 当研究所のアウトカム
中間貯蔵技術のアウトカムについて特徴的なのは、当研究所の研究成果が直接電力会社に便
益をもたらすというよりも、国内あるいは国際的な規格・基準の策定に影響を与えることを通
して間接的に便益をもたらし、さらに核燃料サイクルの実現に貢献する点である。この観点か
ら、当該技術にかかるアウトカムとしては、規格・基準への反映状況を詳述した上で、中間貯
蔵について金属キャスク・コンクリートキャスクを利用することによる便益(コスト削減効果)
を試算することにする。
(1) 外部社会のアウトプット(規格・基準類への反映など)
現在、電気事業者が操業に向け中間貯蔵施設の立地を進めており(2050 年までに計 2∼5 箇所
の施設が必要とされる)、国や学会においても、中間貯蔵の法令整備、安全審査指針及び技術要
件の策定や学会規格・基準の制定を行っているところである。
当研究所では、リサイクル原子燃料貯蔵の技術開発に先見性をもっていち早く取り組み、約
20 年間に亘り全所の総合力を発揮して推進してきた。常にその時点における社会的ニーズの一
25