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コルモゴロフの公理系をみたす(Ω,F,P)
Ω…任意の集合
F…Ωの部分集合を要素とするσ加法族
P…Fの各要素から[0,1]への関数で、P(Ω)=1
かつσ加法性をみたすもの
5. 確率空間の例 1
Ω={表,裏}
F={φ, {表}, {裏}, {表,裏}}
P(φ)=0
P({表})=1/2
P({裏})=1/2
P({表,裏})=1
6. 確率空間の例 2
Ω= 一辺の長さが1の正方形
F= Ωの部分集合からなるσ加法族
P= 図形に対してその面積を与える関数
14. P(Ω)=1の効用
1×1=1
1×1×1=1
1×1×1×1=1
……
1×1×1×1×…×1=1
18. 確率論とは
● 全測度が1の測度論
● 割合の数学(組合せ論、積分計算)
● 繰り返しを増やしていったときに現れる性
質の研究(漸近挙動、極限定理)
31. たとえば、検定の考え方の基本は、
Aならば高確率でB
Bでない
よって、Aでないと判断しよう
見かけは
AならばB、Bでない、よってAでない
という反証に似ているけど論理的推論ではない
34. ● 伝統的な統計学は、確率が頻度と結びつくこ
とを前提にする(客観確率)
● ベイズ統計学は、確率=正しいと見なす度合
いとする(主観確率)
(注意: 「ベイズ統計」という語は、単にベイズの
定理を利用する手法全般を指す場合もある)
35. 違いの例:
モデルの未知パラメータは確率変数か
● 伝統的統計学「確率変数ではない。モデルの
パラメータが未知だからといって、確率分布を
とることにはならない」
● ベイズ統計学「確率変数である。未知パラ
メータの値は、我々にとって確定していない不
確実なこと。不確実なことに対する我々の確
信度=確率が存在する」
42. ● 頻度の安定性と大数の法則
デタラメな現象を繰り返し観測すると、頻度
が安定していく→大数の法則(自然法則で
はなく確率論の定理)との対応
● 誤差と中心極限定理
観測誤差を調べると正規分布に近いデー
タが得られる→中心極限定理との対応
など
43. 客観確率を定義する試み 1
● 頻度説: 確率の値=事象の起こる相対頻度
● 「確率=観測された頻度」→ 素朴すぎる。繰
り返し回数によって確率が変わる
● 大数の弱法則を利用→循環定義になる
● 大数の強法則を利用→無限回の試行は現
実では不可能なので科学で使える定義で
はない。確率=0は起こらないということで
はない
44. 客観確率を定義する試み 2
● 傾向説: 頻度と確率を直接結びつけるのでは
なく、そのような頻度を生じさせる物理的傾向
性の度合い=確率とする
● 問題点: クジの入った菓子をもらったとする
(アタリは10個のうち1個に入っている)。こ
の菓子に入っているクジはすでにアタリか
ハズレか確定しているので、アタリである物
理的傾向性は1または0に確定している。で
も「アタリの確率は1/10」と言いたい。
56. 主観確率についての疑問点 2
● 期待値の役割
期待値の大小に応じて選択を行う理由は、
大数の法則によって説明される(繰り返しと
独立性が必要)。
主観確率における期待値の役割・意味はど
う説明(あるいは正当化)されるのか?
57. 客観確率との関係の考え方 1
● 客観確率に歩みよる
● 客観確率が考えられる範囲では客観確率
● 主観確率と客観確率は、賭けの有利/不利
の判断を使って主観確率側から橋渡しする
(客観確率にオーバーラップさせる形で、主
観確率の値を決める)
58. 客観確率との関係の考え方 2
● 主観確率を重視する
客観確率には問題があり主観確率の方が良
い、主観確率の方が客観確率に先行する、な
どの主張
たとえば
● C.Howson、P.Urbach『Scientific Reasoning: The
Bayesian Approach』
● 内井惣七「確率」(『事典・哲学の木』の項目
http://www1.kcn.ne.jp/~h-uchii/intro.PS/probability.html)や『科
学哲学入門』
59. 客観確率との関係の考え方 3
● 気にしない
● 主観確率とか客観確率とかどうでもいい
● 伝統的な統計学もベイズ統計学も役に立
ちそうなら勝手に使うだけ
応用の場面では深く考えずに使われる
63. D. E. Knuth
『The Art of Computer Programming vol.2』
疑似乱数と確率の関係について多少触れるつ
もりだったけどまとまったことが思いつかなかっ
たので、代わりに疑似乱数を扱った本としてこれ
をあげる。
疑似乱数の生成アルゴリズムの部分の内容は
古いけど、それ以外の部分が豊富