SlideShare a Scribd company logo
1 of 30
プロジェクトデザイン勉強会
2014年4月26日
1.クラウドファンディング
© KENSAKU MASUDA.2
1.クラウドファンディング
1-0 検討の背景
 前回はクラウドファンディングを活用した日本酒活性化についてブレストを行ったが
、クラウドファンディングの更なる活用を図る為には、裾野が広い中小製造業におけ
る活用は必須である。しかしながら、現状の活用状況を見る限りでは、中小製造業に
おいて活発に活用されているとは言い難い。
 本章では、中小製造業の大企業下請けからの脱却を進める「マイクロものづくり」を
提唱する「enmono」社のアプローチや、同社が構築したクラウドファンディングサイ
ト「zenmono」の機能を参考に、中小製造業がクラウドファンディングの活用を進め
る為に必要なアプローチや機能についてブレストしたい。
 なお、私見ではあるが、中小製造業が大企業下請けから脱却し、自社製品開発で市場
に直接アプローチする構図は、後半討議する食農ビジネスにも共通する構図である。
中小製造業のクラウドファンディング活用の可能性は、食農ビジネスにおけるクラウ
ドファンディング活用にも応用できると考える。
© KENSAKU MASUDA.3
1.クラウドファンディング
1-1 製造業:enmono社「マイクロモノづくり」
 enmono社が提唱する「マイクロモノづくり」においてはクラウドファンディングをテ
ストマーケティングと位置付けるとともに、CF上で多様なサポートの募集も行ってい
る。「マイクロモノづくり」 「マイクロモノづくり」アプローチ
 従来の中小製造業は、大手製造業の
「下請け」としての位置付けが中心
 生産・取引形態は「低コス」が中心
であった。
中小
製造業
大手
製造業
消費者
低コスト
 大手製造業のコスト削減要請、海外
進出により、中小を巡る環境は厳し
い。
 今後は下請け中心ではなく、尐量で
も高付加価値製品を自社開発、生
産、販売が必要。⇒「マイクロもの
づくり」
中小
製造業
消費者
尐量生産
高付加価値
しかしながら、中小はBtoCの实績が乏し
く
経営資源やノウハウも不足気味
 「マイクロモノづくり」のコンサルティングやセミナーを手掛けるenmono社の三木
代表取締役のインタビューの中では製品開発段階では、経営者一人で、自社設備の
範囲内で行うべきとされている。
製品開発 テストマーケティング 商品化
概
要
イ
メ
ー
ジ
 「気づいている事業にはほ
とんど競合がある」、「何
万人、何十万人の最大公約
数を取りに行こうとすると、
つまらないものが出来上が
る」
 ワクワクトレジャーハンテ
ィングチャート:技術・ス
キルと、趣味・嗜好をマッ
ピングし、クロスした部分
で製品開発
 クラウドファンディング:
出資者の反応をみたマーケ
ティングが可能。また
「zenmono」ではデザイナ
ー、マーケター、スタッフ
等も募ることができる。
(参考)デザイン・フェス
タ:1コマ2~3万円で出展でき、
製品に対しての意見、価格感
の生データが得られる
 製品開発やテストマーケ
ティングのプロセスを通じ
て、事業提案力が高まり、
販路開拓に活用できる。
 また経営者単独から、新規
事業に興味を持った社員か
らの提案を活用していく。
内面
笑顔
ブロッ
ク
手品
精密バネ製造
人と人が笑顔で
コミュニケーション
して繋がるツール
• 「zenmono」における新規
製品のテストマーケティン
グ
© KENSAKU MASUDA.4
1.クラウドファンディング
1-2 製造業:enmono社クラウドファンディング「Zenmono」
 「enmono」社が提供するクラウドファンディング「Zenmono」は、セミナーの教育ツ
ールとした経緯もあり、単純な資金調達だけではなく、新商品開発プロセス全体のサポ
ートを志向している。
「Zenmono」設立の経緯 クラウドファンディング「Zenmono」
 enmono社の本業は町工場の経営者
向けセミナー。下請け減尐に対して
町工場自身が企画し、販売できるセ
ミナーを展開。
 しかしながら2ヶ月間のセミナーで
最終発表した商品が、予算不足や日
常業務に追われている中で实現しな
い課題があった
 セミナーのアウトプットを現实に事
業化する為のツールとしてクラウド
ファンディングに着目。
• クラウドファンディングで資金調達
できれば、商品化せざる得ない状況
になる。教育のツールにちょうどい
い、と。
• (他CFサイトがあまりサポートしな
いのに対し)CFでの成功实績がセミ
ナーへの集実になりますし、(中略
)プロジェクト全体が成功しないと
損をする。
宇都宮代表取締役インタビュー
三木代表取締役インタビュー
 「Zenmono」はクラウドファンディングサイトとして資金調達機能はもちろん、
メイカーズを対象とした「工場引き合わせサービス」、「サポーター制度」によ
りプロジェクトの成功を志向している。
• 工場引き合わせサービス:CF掲載段階で量
産工場が決まっていない場合、enmono社で
選考の上、工場と引き合わせ。
(「Zenmono」HPより)
• 引き合わせサービスもやっているのです
が、それも機能ではなく、気が合いそう
か、相性で工場を紹介していますね、モ
ノづくりって人情商売的なところがあっ
て、人間味が欠かせない商売なんですよ
。
宇都宮代表取締役インタビュー
• サポート制度:資金調達だけではなく、デ
ザイナー、マーケター、販売者等のサポー
ターもクラウドファンディングで募集。
© KENSAKU MASUDA.5
1.クラウドファンディング
1-3 製造業:クラウドファンディングを活用した新製品開発事例
 横浜市金沢区のニットー社は、脱下請けに向けた取組みとして新製品開発に着手。ク
ラウドファンディング等の活用を通じて、消費者への提案力の強化が図れている。
ニットー社について クラウドファンディングを活用した新製品開発プロセス
 横浜市金沢区の一般的な町工
場
 プレス金型製作、プレス加工、
板金加工等を手掛け、大手メ
ーカーからの下請けが中心
 大手メーカーが海外への外注
を増やしている現状に危機感
を抱いた藤沢社長が、受注型
から提案型への変換を模索
製品開発 テストマーケティング 商品化
クラウドファンディング活用による効果
• 経営者個人で
iPhoneケース
「iPhone Trick
Cover」を開発
• ネット上のイベン
トに出展したとこ
ろ好評
• ガジェット系のクラウドファンディングが多い
「Cerevo Dash」(キャンプファイアーと連動)に
掲載。支援者200人、131万円を獲得。
• 試作品をユーチューブにアップし、支援者等から
意見を収集し、その意見を改善に活用。「短期間
で製品を完成させるのにユーザーの意見が本当に
役立ちました」(藤沢社長)
• クラウドファンディングで50万
円に達成した段階で量産化の告
知を行ったところ、アスキース
トア等の大手4代理店、海外代
理店等から取扱い希望の連絡が
入った。
量産化
告知
ニットー社
代理店
参照
取扱い希望
• 中小の製造業は基本的に大手メーカーの下請
けなので、自分で作ったモノを自分で売るこ
とに慣れていないんです。情報をどうユーザ
ーに届けるのかが難しい。今回、クラウドフ
ァンディングに挑戦して、その影響力に驚き
ました。
 PR効果:ツイッターやフェイスブックを利用して
情報を拡散した事で、「中小製造業がクラウドファ
ンディングを使って初めての自社製品開発に挑む」
というテーマでの紹介が増加。その効果として
BtoBの新しい案件が4件発生。
 下請け関係の変化:従来の取引先からも「面白い商
品を開発しているユニークな企業」と認識される事
により、単なる受発注の上下関係だけではなく、製
品についての意見・相談を求められるようになった
+
 クラウドファンディングのサイトの作り込み、ユー
チューブにおけるユーザーとのやり取り等を通じ
て、BtoCにおける経験を蓄積。
藤沢社長インタビュー
© KENSAKU MASUDA.6
1.クラウドファンディング
1-4 製造業:その他クラウドファンディング活用事例
 ニットー社のような新製品開発事例以外においても、復刻レンズやオーガニックタオ
ルのプロモーション等においても製造業の分野でクラウドファンディングは活用され
ている。ロモジャパン:19世紀レンズの復刻 池内タオル:オーガニックタオル
クラウドファンディング活用の概要
 池内タオルは今治のタオルメーカーの老舗であるが、過
去民事再生を受けた事、またオーガニックは品質が安定
しない為、銀行融資が難しく、ミュージックセキュリテ
ィーズの投資型クラウドファンディングを活用
 2011年:550万円(1口5万円)を約2ヶ月で調達
⇒4.18%の利率を付けて還元
 2012年: 1,780万円を数日で調達
クラウドファンディング掲載時の訴求ポイント
 オーガニックコットンの魅力:世界の全綿量の0.76%し
かない希尐性
 環境負荷への配慮:「風で織るタオル」として100%風
力発電の電力で製造
 オーガニックコットンの品質不安定をブランド化:「ワ
インのようにコットンの違いを楽しむ」と表現
クラウドファンディング活用の効果
⇒資金提供者が商品のことを理解し、納得の上で投資する
為、投資家がファン顧実化する。
⇒ファン顧実化すると、次回資金調達時にも資金提供する
可能性が高い為、資金調達が年々容易となる。
クラウドファンディング活用の概要
 フィルムカメラを販売するロモジャパン(オーストリア
)が企画した「歴史的な19世紀のレンズを現代のアナロ
グ&デジタルカメラ用レンズとして蘇らせる」プロジェ
クト
 世界中のクラウドファンディングで同時展開しており、
最終的に1億5,000万円を超える支援を集めた
 日本での調達金額は1061万円、資金提供者は269名と、
日本のクラウドファンディングでは大型の調達金額
クラウドファンディング掲載時の訴求ポイント
 グローバルに統一したプロモーション動画や画像の掲載
 継続的な情報提供:活動報告を2日に一度のペースで更
新し、ホームページ、フェイスブック、ツイッターで情
報を発信
 情報拡散の仕掛け作り:「500万円達成すると全員に特
性クリーニングクロスをプレゼント等、達成金額に応じ
たプレゼントを設定する事で、既存支援者からの周囲へ
の情報拡散を図った
クラウドファンディング活用の効果
⇒クラウドファンディングという仕掛けを通じて、支援者
が周囲に情報提供をしており、認知度向上を図れている
⇒「企業として初期投資しづらい時代にあって、今までに
ないもの、革新的なものを世に出す時の舞台として、向
いていると思います」(ロモジャパン担当者)
© KENSAKU MASUDA.7
1.クラウドファンディング
1-5 ブレストテーマ
① 「enmono」社が対象としているような大企業下請けからの脱却を図っている中小製造
業は多数存在すると考えられる。今後、更に多くの中小製造業が同社のようなアプロ
ーチ手法を使って新製品開発を進めるにあたり、何が課題となるか?新製品開発プロセ
ス×「人材」、「資金」、「情報」の切り口から考えたい。
② 「zenmono」は、モノづくりを対象として特化し、「工場引き合わせサービス」、「
サポート制度」を特徴としている。中小製造業が新製品開発を進めるにあたり、その
他で有用となる機能は何が考えられるか?①で検討した課題を踏まえながら考えたい。
15分
2.銀行融資サポート
© KENSAKU MASUDA.9
2.銀行融資サポート
2-0 銀行からの資金調達
 これまでクラウドファンディングを中心として取り上げてきたが、中小・中堅企業の
資金調達の基本は現状銀行融資が中心である。
 中小・中堅企業のサポート事業という視点で考えた場合、中小・中堅企業の資金調達
を受けやすくするサポートも重要なテーマの一つとなりうる。
 本章では、銀行融資の基本を押さえるとともに、銀行の融資プロセスから逆算した中
小・中堅企業へのサポート事業の可能性を考えたい。
 なお、銀行側における中小企業融資の課題とその取組みも添付している。長期的には
中小企業融資の銀行からの外部化が進む可能性があり、そこから考えられる事業展開
の可能性もブレストしたい。
© KENSAKU MASUDA.10
2.銀行融資サポート
2-1 銀行からの資金調達:基礎知識
 銀行からの融資形態は、借入先の信用により異なってくる。審査ポイントは定量、定
性の視点がある為、それぞれに対応した対銀行対策が必要となる。
信用保証協会
付融資
ビジネス
ローン
プロパー
融資
審査厳
審査緩
金額大金額小
審査厳
審査緩
長期
金額大
短期
金額小
証書貸付
手形貸付
手形割引
当座貸越
銀行の審査プロセス(概略) 審査ポイント(概略)
• 「金銭消費貸借契約書」に必要事項を記入し、銀行に差し
出して融資を受ける手法。主に長期(1年超)の融資で使
用。• 借入用の手形を差し入れ融資を受ける手法。主に短期間の
融資で使用。融資の取り決めは銀行取引約定書で定義。
• 売上手形を銀行jが買い取る事によって資金が引き出される
融資方法。
• 融資の極度額を設定し、その極度額までは自由に融資を受
けたり返済したりできる融資方法。
当座貸越
証書貸付手形貸付
手形割引
信用保証協会
付融資
ビジネス
ローン
プロパー融資• 信用保証協会の保証を得た上で銀行から融資を受ける。近
年、やや審査が強化されているが、基本的に銀行より審査
は緩い。
• 営業・審査を効率化する為、コンピューターが決算書の数
値から点数を付けて融資の可否を決める。「銀行単独で」
という意味ではプロパー融資だが、銀行内では切り分けら
れている• 信用保証協会の保証無しで銀行単独で融資。
• 審査が最も厳しいが、銀行が融資を行いたい企業としての
信用が得られる。
取引担当者による
稟議申請書作成
支店(支社)長によ
る査定
(稟議に対する判断
)
本店審査部による
審査判断
支店・支社内
定量的視点
(8割)
定性的視点
(2割)
 BS/PL経営分析(特に純資産、経常利益
チェック)。
 銀行としての採算分析を行うが、格付けが低
いと信用コストが高くなり採算が悪化しやす
い(格付け⇒財務状況等を元に判定) 経営者との面談による評価
 経営計画(但し、収支計画に対しては2割以
上)
 経営課題に対する対応状況 等
 大きい銀行ほど取引担当者、支店長の裁量権限が大きく、
小さい銀行ほど本店の影響力が大きい傾向がある。
© KENSAKU MASUDA.11
2.銀行融資サポート
2-2 銀行からの資金調達:融資サポートプラン
 融資による円滑な資金調達を实現する為には、銀行の融資プロセスを踏まえたアクシ
ョンが借入企業には求められる。アクションの中には中小・中堅企業では対応が難し
いものもある為、外部からのサポートニーズも有ると考える。
新規顧実開拓 顧実フォロー融資实行
銀行の融資プロセスから逆算した融資サポートプラン案
銀行の視点・
アクション
企業が取るべ
きアクション
サポートプラ
ン
 国内の貸出市場は飽和状
態で、既存顧実から貸出
増加は難しい為、常に新
規顧実を求めている
 一方で、一見実に対して
は信用力等を慎重に見極
める姿勢もある。
⇒基本は銀行と取引がある先
からの紹介が望ましい。
⇒紹介無しの融資依頼はNG
であるが、口座開設時の
会社案内等は有効
⇒帝国データ等の信用調査が
入った時は、積極的な情
報開示が必要。
⇒銀行取引先のデータベース
化を進め、紹介依頼を斡
旋
⇒会社案内作成サポート
⇒信用調査時の対応サポート
 融資の回収が円滑に進む
ように定期的(月に1回程
度)に訪問。特に資金繰
りや決算状況は要チェッ
ク。
 一方でデリバティブ・保
険のクロスセル等、新規
取引の機会を適宜伺って
いる。⇒決算説明は担当者のみに行
うのではなく、担当者に
依頼して支店・支社長に
対しても説明を行う事が
重要
⇒デリバティブや保険の販売
は、企業利益の最適化を
考慮して慎重に判断
⇒決算説明時に併せて説明す
る経営計画書等の作成・
説明サポート
⇒デリバティブ・保険等の新
規取引に対する第三者評
価
担当者:企業か
らのヒアリング
、受領資料を元
に稟議資料を作
成
支店長・本部:
稟議資料や担当
者からの説明を
元に融資の可否
・条件を決定
担当者:稟議の
決定を元に、融
資金額・金利等
を企業に提示
⇒基本的には、担当者の稟議資料作
成を協力する姿勢が重要
⇒特に今後3~5年間の収支見通し等
の提出は重要であり、こうした事
業計画の確度が高いと判断される
程、足元の状況に関わらず、融資
判断に傾く可能性がある
⇒必ず、と言っ
ていい程、金
利は高めに表
示される。相
見積の可能性
等も示しつつ
、金利交渉は
重要。
⇒事業計画作成サポート
特に収支計画のロジック構築
等、精度向上のサポート
⇒金利等、条
件見直し交
渉サポート
© KENSAKU MASUDA.12
2.銀行融資サポート
2-3 近年の中小企業向け融資の動向
 バブル崩壊以降、銀行における中小企業向け融資は減尐傾向が止まらない。
 効率的な中小企業向け融資の増大に向け、専門化や外部化の取組みが行われている。
中小企業向け融資の現状
 バブル崩壊以降、国内銀行の中小
企業向け融資はほぼ一貫して減尐
しており、足元の貸付残高は170
兆円と、対2000年度比で約2割減
尐
 一般的に言われる「貸しはがし」、
「貸し渋り」の側面もあるが、中
小企業の資金需要自体が減尐して
いる事も一因
銀行視点の中小企業向け融資の課題
 大企業・中堅企業と比較すると個社別の貸出ボリューム
のロットが小さく、営業経費等の経費効率が悪い
 上記経費効率を改善する為、かつはスコアリングで融資
判定を行うビジネスローンが拡大したが、不良債権化し
た貸出が増加する結果となった。
銀行
大企業
中堅企業
中小企業
掛ける動力は同じ
(信用リスクがある分、中小の
方が手間が掛かる事も)
中小企業向け融資に向けた銀行の取組み
 銀行における中小企業に対する審査力向上や、また事業
承継、ビジネスマッチング等、主に中小・中堅企業の多
様なニーズに対応する為の専門部署の設置を行ってい
る。
 また、経費効率の改善等も視野に、中小企業向け営業専
門の子会社を設立する動きも一部メガバンク等ではあ
る。銀行
中小専門
子会社
中小専門
部隊
中小企業
審査力向上だけでなく、
事業承継、ビジネスマッチング
等、
ノウハウ蓄積
経費効率改善も期待効果
粉飾決算等の信用リスク
 また、良質貸出の増加策として、TKC全国会等と提携し
た貸出強化も行われている。
TKC会員事務所
関与先企業
TKC会員
会計・税務事務所
三菱東京
UFJ
顧問契約
財務会計システム利用
最大1億円融資
無担保(経営者保証有)
© KENSAKU MASUDA.13
2.銀行融資サポート
2-4 ブレストテーマ
① 前述の「融資サポートプラン」は案である為、銀行の視点・アクションを踏まえた場
合、「企業が取るべきアクション」、また外部からの「サポートプラン」としてその
他に考えられる事はないか?
「新規顧実開拓」「融資实行」「顧実フォロー」のプロセス別に考えたい
② 今後も銀行は中小企業融資の更なる効率化を追求する可能性が高く、三菱東京UFJ銀
行とTKCとの提携のように、外部提携による新規開拓を進めると考えられる。この場
合、銀行から見て外部提携先に求められる経営資源は何であるか?
外部提携先に求められる有形資源と無形資源別に考えたい。
15分
3.食農ビジネス
© KENSAKU MASUDA.15
3.食農ビジネス
3-0 検討テーマ全体
 近年、農業改革やTPP等の環境変化もあり、農業ビジネスへの関心が高まっている。
農業ビジネスは、生産段階である1次産業だけではなく、生産加工業である2次産業、
小売業や飲食業である3次産業とも深く関連している為、本章においては「食農ビジネ
ス」として考えたい。
 食農ビジネスとして中心テーマになるのが、相対的に付加価値が低い1次産品から、2
次、3次と更に付加価値を高めて市場にアプローチする「6次産業化」である。食クラ
スター全体で見ると70兆円規模である事から、政府も10年間で6次産業化市場を10年
で10兆円とする目標を掲げている。
 一方で、その实現に向けては様々課題が指摘されている。本章では、「人材育成」、
「高付加価値化」、「資金調達」、「IT化」において、それぞれの課題と対応事例を
参考としながら、新たなソリューションについてブレストしたい。
© KENSAKU MASUDA.16
3.食農ビジネス
3-1 検討テーマ全体像
 農漁業、食品加工業、飲食業等を包含する食農ビジネスを検討するにあたり、農漁業
の担い手や六次産業化を推進するプロデューサー育成等の「人材育成」(人)、農産
物等の商品の「高付加価値化」(商品)、六次産業化等推進の為の「資金調達」(金
)、食農ビジネス基盤強化の為の「IT化」(情報)の各面から検討したい。
人材育成
高付加価値化
資金調達
IT化
本資料にて取り上げるテーマ
人
商品
金
情報
 食の六次産業化プロデューサー
 アグリトリノ
 植物工場における高付加価値化戦略
 農林漁業成長産業化ファンド
 食農クラウド
© KENSAKU MASUDA.17
3.食農ビジネス
3-2 人材育成:食の6次産業化プロデューサー認定制度
 6次産業化の可能性は大きいものの、生産側と流通側では相違も大きく、連携を困難と
させている。生産と流通をプロデュースする人材の育成が求めらえている。
6次産業化の可能性と課題
「食の6次産業化プロデューサー」認定制度等を
通じて生産者と流通をプロデュースする人材の育
成 一次産業の国内生産額は10兆円(輸入は8兆円)程度で
あるのに対して、飲食料の最終消費額は73兆円と、約4
倍の規模で付加価値が生まれている。
 こうした市場状況を踏まえ、国は「6次産業化市場を10
年間で10兆円に拡大する」事を目標として掲げてい
る。
最終消費額
(73兆円)
一次産業(国内
)
(10兆円)
輸入一次産品
(8兆円)
約4倍の
付加価値
しかしながら課題も多い、、
 生産者業界と流通業界等、業界間の垣根を越えた連携
コーディネートやプロデュースする人材が不足。6次産
業化の推進の為には、業界間の連携を推進する人材や
組織が必要となる。
生産者業界
数ヶ月、数年単
位のサイクル
流通業界
数週間単位
のサイクル
連携困難
連携コーディネ
ートが必要
レベル7
レベル6
レベル5
レベル4
レベル3
レベル2
レベル1
• トップ・プロ
フェショナル
• プロレベルの
スキル
• 高度な専門
性・オリジナ
リティ
• チーム内でリ
ーダーシップ
• チーム内で
リーダーシッ
プ
• 一定の支持の
もと仕事
• 職業準備教育
を受けた段階
• 組織内外で後進を育成/他の農家
に対して6次化の手法・戦略を指
導
• プロジェクトを管理/異業種間や
関係者間のコーディネート
• 生産体制、流通経路を確立/事業
化を支援
• 支援を受けながら6次化を实践/
支援業務を实践
• 实習等による経験
• 商品のブランド化/他の法人の
パートナーとして活躍
• プロジェクトを多角化し、複数
の商品や分野に進出し、継続的
な实績
レベ
ル
特徴 人材イメージ例
© KENSAKU MASUDA.18
3.食農ビジネス
3-2 人材育成:東北復興・農業トレーニングセンタープロジェクト
 「キリン絆プロジェクト」の一環である「東北復興・農業トレーニングセンタープロ
ジェクト」は、東北の生産者と東京のビジネスマンの能力向上を図り、コラボして農
業復興を図るものである。こうした様々なバックグラウンドを持った人材によるコラ
ボも、六次産業化の推進には不可欠と考えられる。
東北復興・農業トレーニングセンタープロジェク
ト
2013年度プロジェクトの取組み事例(抜粋)
 既に2013年度の企画から具体的な事業化が進んでいる。 東北クラス:自社で行っている栽培~収穫~販売までが”農
業経営者”という視点でどこまで取り組めているのか?を考
え、その上でまず改良すべき課題とは何か?を掘り下げる
農業経営者リーダーズ
ネットワーク(東北)
地域
誘実
人材
育成
資金
調達
経営
強化
経営
強化
農業復興プロデューサ
ー
カリキュラム(東京)
メディア
新規顧実開
拓サービス
飲食展開 経営強化
新商品化
イベント・
地域誘実
 東京クラス:農業復興を軸にしながら消費者のニーズを取り
込むことで、地域にとってどのような効果がもたらされるの
か?東京ではどうか?と実観的な指摘やアイデアを展開
Community
Kitchen
丸の内dish
遠野パドロン
ブランディン
グ
プロジェクト
~進撃の農業人
~Training Day’s
概要 示唆
• 東北・東京共同企画
• スペインではポピュラーな
ビールのおつまみながらも、
日本国内では未開拓なパドロ
ンの生産力アップと消費者・
市場へのアプローチ強化を図
る
• 東京企画
• 料理教室ビジネス。キッチン
スペースでナビゲーターによ
る本格調理を仲間と楽しみな
がら、東北の生産者や食材に
ついての理解を深める
• 東北企画
• 農業法人5社が連携する「人
材育成クラスター」構想。現
实の問題の解決策の迅速な発
見・解決等、地域の繋がりを
活用して取り組める環境づく
り
• 消費者に近く、営
業経験等もある東
京メンバーとコラ
ボする事で、従来
の品質からストー
リー性を重視した
売込⇒新規開拓に
繋がっている。
• 単純な売り場によ
る食材とお金のや
り取りでは生まれ
ないロイヤリティ
を醸成できる。効
率は高くないもの
の、着实なブラン
ド育成が可能。
• 東北復興・農業プ
ロジェクトの経験
は一過性とするの
ではなく、モデリ
ングした上で拡
大、横展開してい
くことが重要。
© KENSAKU MASUDA.19
3-2 人材育成:事例紹介「イタリア・アグリトリノプロジェクト」(
1/2)
 イタリア・ピエモンテ州は、豊富な食材やワイン産地としての農業基盤の上に、「ス
ローフード運動」の展開や世界最大級の食の祭典企画等、食ムーブメント発信源とし
て知られている。
イタリア・ピエモンテ州(州都トリノ)
は食材、ワインの宝庫
 豊富な食材
• 水田が広がり、ト
リュフ、ポルチー
ニ茸などの食材が
豊富
 イタリアを代表する
ワインの産地
• 最高級ワインのバ
ローロやバルバレ
スコの産地
グローバルでの「スローフード運動」展開等、
食ムーブメントの発信源
 スローフード運動発祥の地
• ピエモンテ州ブラを発祥として、地元の食文化や食
材を見直す運動。品質認定(「味の箱舟」、「プレ
シディオ」)やプロモーション支援を通じて生産者
支援(132ヶ国・10万人が参加)
• イタリアにおける食科学大学の設立や、トリノ近郊
で開催される世界最大級の食の祭典「サローネ・デ
ル・グスト」を開催する等、企画力・発信力が高い。
• 日本においても「味の箱舟」、「プレシディオ」の
品質認定やプロモーション支援が取り組まれている。
© KENSAKU MASUDA.20
3-2 人材育成:事例紹介「イタリア・アグリトリノプロジェクト」(
2/2)
 ピエモンテ州では、農業で雇用創出を図る「アグリトリノ」構想トが始動している。
若年失業率が高く、耕作放棄地も多い日本においても、同様の取組み余地の可能性は
高いと考える。
雇用対策プロジェクト「アグリトリノ」 イタリア国内での現在の反応
日本における可能性
イタリア失業率:12%(13年4月)
25歳以下では37.8%
若者の雇用促進の活動を農業に
求めるムーブメントの萌芽
若年失業者
休耕地貸与 技術的サポート 補助金
職業訓練機関、金融機関、修道会等が協力
消費者
中間事業者を経
由せず直接販売教育サポート等を元に
就農
「アグリトリノ」の期待効果
就業機会の増大による
失業率の改善
若者の農業回帰の促進
と食糧の安定供給
品質・価格等競争力が
ある農業モデル創出
 マスコミ等における注目
• 2013年3月にプロジェクト構
想が発表され、イタリアのテ
レビ局、新聞、ネット等で紹
介
 参加状況
• 発表以前から20名程度が応募
し、賛同企業・団体も出現
今後本格展開
 イタリア程ではないが、若年失
業率(7.3%)は相対的に高い
 耕作放棄地の増加も社会問題と
なっており、「アグリトリノ」
に類似する取組余地の可能性は
大きい
一定期間
の就農体
験
耕作放棄
地等を活
用した新
規開農
プログラム化し展開
© KENSAKU MASUDA.21
3.食農ビジネス
3-3 高付加価値化:植物工場における成功戦略(1/2)
 植物工場ビジネスは国の後援等もあり近年活発化しているが、黒字化を实現している
のは約1割程度となっている。黒字化工場は、「低コスト戦略」、「高付加価値戦略」
が明確となっている。
植物工場ビジネス
新規参入ブーム
 09年度に農水省・経産省で植物
工場の普及事業や研究開発の為
の大型補正予算(約150億円)が
確保され、補助金を元に工場建
設に乗り出す企業が増加
 参入企業は建設業、製造業、運
輸業、飲食業など多様で、自社
資源を活用しながらの進出ケー
スが多い(例:製造業における
未稼働工場の活用等)
成功している企業は約1割、
成功している企業は「低コスト戦略」or「高付加価値戦略」が明確
6割が赤字
3割が収支均衡
1割が黒字
 植物工場コンサルティ
ングを手掛けるNPO法
人イノプレックス調査
結果(07~11年設立工
場を対象)
 黒字化に成功している
工場は大規模化による
「低コスト戦略」か、
食物の高機能化による
「高付加価値戦略」を
徹底している
低コスト
戦略
高付加価値
戦略
大規模化、既存物流シ
ステム活用等により低
価格化を实現
低価格を武器にして
新規販路開拓
ニッチな野菜の開発・
製造に特化し、差別化
差別化ポイントを訴求
し、
新規販路開拓
© KENSAKU MASUDA.22
3.食農ビジネス
3-3 高付加価値化:植物工場における成功戦略(2/2)
 京都「スプレッド」の事例では、既存取引先確保による量産化、既存資源の活用によ
り低コスト化を实現している。「日本アドバンストグリル」、「会津富士加工」の事
例では、商品の特長により販路開拓に成功している。
「スプレッド」における低コスト戦略事例 高付加価値戦略事例
 京都・亀岡においてレタス等の葉野菜を生産。完全人
口光型では世界最大規模の生産能力。
 経営の多角化を図っている青果卸の子会社であり、既
存のグループ既存顧実を販路先とする事により、大規
模生産が可能となっている⇒「規模の経済」による低コ
スト化
トレード
(親会社
)
不動産
物流事業
スプレッド
(植物工場)
既存
グループ
顧実
販売先確保
⇒量産化可能に
 また、グループ内の物流・輸送システムを活用する事
により、更なる低コスト化を实現している
⇒「範囲の経済」による低コスト化
スプレッド
(植物工場) 既存
グループ
顧実既存の物流・輸
送システム活用
輸送
日本アドバ
ンストアグ
リ
会津富士
加工
特長 販路先
 自社でアイスプラン
ト栽培研究を实施
し、自社ブランド野
菜「ツブリナ」を製
造・販売
 アイスプラントは葉
を食べるのが主流で
あるが、茎が食べれ
たり、プチプチとし
た食感等で差別化
⇒年間供給でき
る強み等も活
かして飲食店
に販売
 遊休プラントを活用
して植物工場を開始
した半導体製造装置
部品メーカー
 賢臓病患者向けの低
カリウムレタスの量
産化に日本で最初に
成功
⇒入院患者用食
材として病院
に納入
⇒全国20店舗の
百貨店でも販
売
⇒フランチャイ
ズ加盟企業を
募集中
© KENSAKU MASUDA.23
3.食農ビジネス
3-4 資金調達:官民ファンドによる六次産業化支援(概要)
 農漁業は二次・三次産業には無いリスクが多く、従来は公的・農協支援に依存してき
た。これに対し、昨年度より六次産業化を志向する農漁業に対するファンド支援が活
発となっている。
現状の農業資金調達の構造
 自然条件による豊作・凶作変動、農産物の価格変動が大
きい
 供給实績が乏しく、審査ノウハウが蓄積されていない
 他産業と比較すると、経営管理体制が整備されていない
事が多い
一般金融機関が農業分野に資金供給する場合の障害
従来は公的機関が融資する「制度融資」や農協系からの
金融支援が中心であり、一般金融機関からの融資は僅か
であった
(農業経営融資:平成20年度・総額2.2兆円)
1.5兆円
0.6兆円
399億円
40億円
(出所:農林水産省資料)
六次産業化支援の為の官民ファンド:
農林漁業成長産業化ファンド
 六次産業化支援の為の農業・漁業分野への資金供給を活
性化を目的として、民間資金の呼び水となる為、2013年1
月に「農林漁業成長産業化支援機構」を発足。
(支援機構は国が300億、民間企業(食品メーカー等が中
心)が18億円出資)
国300億円
民間18億円
農林漁業成長産業
化支援機構
民間金融機関
サブファン
ド
農林
漁業
出資
2013年度末までの实績
41サブファンド創
設
(総額666億円)
相談件数:327件
「六次産業化・地
産地消法」に基づ
く事業計画1,708件
 なお、一部のファンドでは支援機構側のスピードの遅さ
に不満な声もあり、独自ファンドを組成する動きもみら
れる。
© KENSAKU MASUDA.24
3.食農ビジネス
3-4 資金調達:官民ファンドによる六次産業化支援(事例)
 農林漁業成長産業化ファンドにおいては、農漁業とパートナー企業が六次産業化を目
的として設立した合弁会社に対して出資し、六次産業化の促進を図っている。
「株式会社あおもり海山」事例(「とうほくのみらい応募ファンド」投資案件)
現在の商流
~ほぼ県内は漁業機能のみ~
今後の商流
~県内に加工・販売機能を付与していく~
県内 県外
県内 県外
株)ホリエ
イ
(漁業者)
株)ホリエ
イ
(仲買人)
中央市場
地方市場
ベンダー・
消費者
1次 2次 3次
株)ホリエ
イ
(漁業者)
株)ホリエ
イ
(仲買人)
1次 2次・3次 3次
株)あおもり海山
• 業務は、①さく加工、②冷凍、
③保管、④販売
• ホリエイ、エーピーカンパニー
、ファンドが出資
深浦町
マグトロ丼
飲食店・直売
・ネット販売
エーピーカン
パニー等
大手飲食
食品卸・飲食
店・小売り
© KENSAKU MASUDA.25
3.食農ビジネス
3-5 IT化:食農クラウドサービスの活用(概要)
 食農クラウドサービスの導入は、システムコスト抑制だけでなく、業務高度化が期待
でき、現在の市場規模が小さいが、今後の市場拡大が期待されている。
食農クラウドサービスの概要 今後の市場予測
 食農(農業)クラウドサービスは、経営分析や生産技
術、販売、物流、融資などの情報を農産物生産者へ提供
し、地域振興を図るために自治体等が主体となって構築
するクラウドサービスである。
融資情報 生産情報報 物流情報 販売情報
経営分析
農業生産者
データの蓄積 データの活用
クラウドサービス
例:生産技術情報-温度や湿度、養分の量等をセンサーネッ
トワークで自動集計・提供し、適切な数値を維持しなが
ら栽培
食農クラウドサービスの期待効果
従来 今後
• 小規模事業者が多く、
システム導入が難しい
• ノウハウ・スキルが可
視化できず、業務が属
人化されやすい
• 初期導入や人材確保の
負担が小さい
• ノウハウ・スキルの可
視化を通じて、新規人
材の受入も容易となる
⇒その他、予測可能性の向上
等のメリットもある
 現状、クラウドサービスに対して、「現在利用中」、
「今後2~3年以内利用予定」、「計画はないが、利用を
検討」を合わせても、食関連産業33.5%、農林水産業
23.6%と他産業と比べて低い。
 しかしながら、調査機関の調査等では、農業クラウドサ
ービス市場の急拡大が予想されている。
農業IT化市場規模予測(単位:億円)
(シード・プランニング社調査)
※農業クラウドサービスの市場予測は、基盤構築や各サービ
スの提供を行うICTベンダ4社(富士通、NEC、日立ソ
リューションズ、アグリコンパス)の現況と今後の事業
計画から推定。
© KENSAKU MASUDA.26
3.食農ビジネス
3-5 IT化:食農クラウドサービスの活用(事例)
 北海道の「興農社」においては、作業管理、トレーサビリティ、各種情報等の機能を
備えた自社システムを開発。着实に導入効果を上げており、今後はパッケージ化によ
る他農業法人への拡販をはかる。
「興農社」のシステム化事例 導入効果と今後の展望
 「興農社」概要
• 北海道富良野の農業法人で、北海道内でも大規模
• エコファーマー、6次産業化法認定、JGAP取得等、経
営の高度化の取組みに積極的
• 今後のTPPや6次産業化等、外部環境の変化の対応や、
業務効率化や意識改革を目的として自社システムを開
発
作業管理
• 作業スケジュール
• 打ち合わせBBS
• 営農計画DB
トレーサビリテ
ィ
• KSS作業日誌
• 写真アップロード
• 機会メンテナンス
従業員意識向上
• 企業の経営方針報告
営農技術情報
• JA、農業改良普及セ
ンターの情報と連動
気象情報
• 日本気象協会北海道
支部のデータと連動
KSSシステム概要
• 従業員への作業指示
• 打ち合わせ
• 情報共有
• 営農ノウハウ蓄積
興農社内での活用
先進的取組とし
てメディア露出
増加
取引照会の
増加?
データを活用し
た予測可能性向
/技術の共有化
規格外品の
減尐
2010年度
1,000万円利益
↓
2011年度
1,800万円利益
 先進的取組みによるPR効果、また生産品質の高度化等に
より、増収の効果が現れている。
 他農家からのニーズもあった事から、ITベンダと共同し
てパッケージ化を实施。今後、他農業法人に展開してい
く予定。
興農社
富貴堂
ユーザック
(ITベンダ)
パッケージ化
自社システム
ノウハウ
パッケージ化
スキル
農業法人
農業法人
農業法人
拡販
© KENSAKU MASUDA.27
3.食農ビジネス
3-6 ブレストテーマ:人材育成
① 日本で「アグリトリノ」のような取組みを進めるにあたり、プロジェクトの推進上、
課題となる事と、その対応策は何か。就農者側とサポート側の2つの視点と、就農に必
要な有形資源・無形資源の2つの切り口から考えたい。
15分
© KENSAKU MASUDA.28
3.食農ビジネス
3-6 ブレストテーマ:資金調達
① 現在推進されている官民ファンドの中でも、一般金融機関の資金調達が困難であった
理由の「農産物の価格変動が大きい」、「審査ノウハウが蓄積されていない」、「経
営管理体制が整備されていない事が多い」が解消されている訳ではない。本章の「人
材育成」、「高付加価値化」、「IT化」の検討も踏まえ、当該課題の対応策を考えた
い。
② 官民ファンドの導入前後にクラウドファンディングも併用する事によるメリットとし
て、どのような事が考えられるか。官民ファンドを受ける側の視点から、クラウドフ
ァンディング实施時期を官民ファンド受入の前後に分けて考えたい。
15分
© KENSAKU MASUDA.29
3.食農ビジネス
3-6 ブレストテーマ:IT化
① 現在想定されている食農(農業)クラウドサービスの期待効果はコスト効率化や、生
産過程の情報の共有化が中心である。今後、6次産業化を推進するにあたり、資金調達
面や販売面におけるクラウドサービスの期待効果としてどのような事が考えられるか
。
15分

More Related Content

Featured

Content Methodology: A Best Practices Report (Webinar)
Content Methodology: A Best Practices Report (Webinar)Content Methodology: A Best Practices Report (Webinar)
Content Methodology: A Best Practices Report (Webinar)contently
 
How to Prepare For a Successful Job Search for 2024
How to Prepare For a Successful Job Search for 2024How to Prepare For a Successful Job Search for 2024
How to Prepare For a Successful Job Search for 2024Albert Qian
 
Social Media Marketing Trends 2024 // The Global Indie Insights
Social Media Marketing Trends 2024 // The Global Indie InsightsSocial Media Marketing Trends 2024 // The Global Indie Insights
Social Media Marketing Trends 2024 // The Global Indie InsightsKurio // The Social Media Age(ncy)
 
Trends In Paid Search: Navigating The Digital Landscape In 2024
Trends In Paid Search: Navigating The Digital Landscape In 2024Trends In Paid Search: Navigating The Digital Landscape In 2024
Trends In Paid Search: Navigating The Digital Landscape In 2024Search Engine Journal
 
5 Public speaking tips from TED - Visualized summary
5 Public speaking tips from TED - Visualized summary5 Public speaking tips from TED - Visualized summary
5 Public speaking tips from TED - Visualized summarySpeakerHub
 
ChatGPT and the Future of Work - Clark Boyd
ChatGPT and the Future of Work - Clark Boyd ChatGPT and the Future of Work - Clark Boyd
ChatGPT and the Future of Work - Clark Boyd Clark Boyd
 
Getting into the tech field. what next
Getting into the tech field. what next Getting into the tech field. what next
Getting into the tech field. what next Tessa Mero
 
Google's Just Not That Into You: Understanding Core Updates & Search Intent
Google's Just Not That Into You: Understanding Core Updates & Search IntentGoogle's Just Not That Into You: Understanding Core Updates & Search Intent
Google's Just Not That Into You: Understanding Core Updates & Search IntentLily Ray
 
Time Management & Productivity - Best Practices
Time Management & Productivity -  Best PracticesTime Management & Productivity -  Best Practices
Time Management & Productivity - Best PracticesVit Horky
 
The six step guide to practical project management
The six step guide to practical project managementThe six step guide to practical project management
The six step guide to practical project managementMindGenius
 
Beginners Guide to TikTok for Search - Rachel Pearson - We are Tilt __ Bright...
Beginners Guide to TikTok for Search - Rachel Pearson - We are Tilt __ Bright...Beginners Guide to TikTok for Search - Rachel Pearson - We are Tilt __ Bright...
Beginners Guide to TikTok for Search - Rachel Pearson - We are Tilt __ Bright...RachelPearson36
 
Unlocking the Power of ChatGPT and AI in Testing - A Real-World Look, present...
Unlocking the Power of ChatGPT and AI in Testing - A Real-World Look, present...Unlocking the Power of ChatGPT and AI in Testing - A Real-World Look, present...
Unlocking the Power of ChatGPT and AI in Testing - A Real-World Look, present...Applitools
 
12 Ways to Increase Your Influence at Work
12 Ways to Increase Your Influence at Work12 Ways to Increase Your Influence at Work
12 Ways to Increase Your Influence at WorkGetSmarter
 
Ride the Storm: Navigating Through Unstable Periods / Katerina Rudko (Belka G...
Ride the Storm: Navigating Through Unstable Periods / Katerina Rudko (Belka G...Ride the Storm: Navigating Through Unstable Periods / Katerina Rudko (Belka G...
Ride the Storm: Navigating Through Unstable Periods / Katerina Rudko (Belka G...DevGAMM Conference
 
Barbie - Brand Strategy Presentation
Barbie - Brand Strategy PresentationBarbie - Brand Strategy Presentation
Barbie - Brand Strategy PresentationErica Santiago
 
Good Stuff Happens in 1:1 Meetings: Why you need them and how to do them well
Good Stuff Happens in 1:1 Meetings: Why you need them and how to do them wellGood Stuff Happens in 1:1 Meetings: Why you need them and how to do them well
Good Stuff Happens in 1:1 Meetings: Why you need them and how to do them wellSaba Software
 

Featured (20)

Content Methodology: A Best Practices Report (Webinar)
Content Methodology: A Best Practices Report (Webinar)Content Methodology: A Best Practices Report (Webinar)
Content Methodology: A Best Practices Report (Webinar)
 
How to Prepare For a Successful Job Search for 2024
How to Prepare For a Successful Job Search for 2024How to Prepare For a Successful Job Search for 2024
How to Prepare For a Successful Job Search for 2024
 
Social Media Marketing Trends 2024 // The Global Indie Insights
Social Media Marketing Trends 2024 // The Global Indie InsightsSocial Media Marketing Trends 2024 // The Global Indie Insights
Social Media Marketing Trends 2024 // The Global Indie Insights
 
Trends In Paid Search: Navigating The Digital Landscape In 2024
Trends In Paid Search: Navigating The Digital Landscape In 2024Trends In Paid Search: Navigating The Digital Landscape In 2024
Trends In Paid Search: Navigating The Digital Landscape In 2024
 
5 Public speaking tips from TED - Visualized summary
5 Public speaking tips from TED - Visualized summary5 Public speaking tips from TED - Visualized summary
5 Public speaking tips from TED - Visualized summary
 
ChatGPT and the Future of Work - Clark Boyd
ChatGPT and the Future of Work - Clark Boyd ChatGPT and the Future of Work - Clark Boyd
ChatGPT and the Future of Work - Clark Boyd
 
Getting into the tech field. what next
Getting into the tech field. what next Getting into the tech field. what next
Getting into the tech field. what next
 
Google's Just Not That Into You: Understanding Core Updates & Search Intent
Google's Just Not That Into You: Understanding Core Updates & Search IntentGoogle's Just Not That Into You: Understanding Core Updates & Search Intent
Google's Just Not That Into You: Understanding Core Updates & Search Intent
 
How to have difficult conversations
How to have difficult conversations How to have difficult conversations
How to have difficult conversations
 
Introduction to Data Science
Introduction to Data ScienceIntroduction to Data Science
Introduction to Data Science
 
Time Management & Productivity - Best Practices
Time Management & Productivity -  Best PracticesTime Management & Productivity -  Best Practices
Time Management & Productivity - Best Practices
 
The six step guide to practical project management
The six step guide to practical project managementThe six step guide to practical project management
The six step guide to practical project management
 
Beginners Guide to TikTok for Search - Rachel Pearson - We are Tilt __ Bright...
Beginners Guide to TikTok for Search - Rachel Pearson - We are Tilt __ Bright...Beginners Guide to TikTok for Search - Rachel Pearson - We are Tilt __ Bright...
Beginners Guide to TikTok for Search - Rachel Pearson - We are Tilt __ Bright...
 
Unlocking the Power of ChatGPT and AI in Testing - A Real-World Look, present...
Unlocking the Power of ChatGPT and AI in Testing - A Real-World Look, present...Unlocking the Power of ChatGPT and AI in Testing - A Real-World Look, present...
Unlocking the Power of ChatGPT and AI in Testing - A Real-World Look, present...
 
12 Ways to Increase Your Influence at Work
12 Ways to Increase Your Influence at Work12 Ways to Increase Your Influence at Work
12 Ways to Increase Your Influence at Work
 
ChatGPT webinar slides
ChatGPT webinar slidesChatGPT webinar slides
ChatGPT webinar slides
 
More than Just Lines on a Map: Best Practices for U.S Bike Routes
More than Just Lines on a Map: Best Practices for U.S Bike RoutesMore than Just Lines on a Map: Best Practices for U.S Bike Routes
More than Just Lines on a Map: Best Practices for U.S Bike Routes
 
Ride the Storm: Navigating Through Unstable Periods / Katerina Rudko (Belka G...
Ride the Storm: Navigating Through Unstable Periods / Katerina Rudko (Belka G...Ride the Storm: Navigating Through Unstable Periods / Katerina Rudko (Belka G...
Ride the Storm: Navigating Through Unstable Periods / Katerina Rudko (Belka G...
 
Barbie - Brand Strategy Presentation
Barbie - Brand Strategy PresentationBarbie - Brand Strategy Presentation
Barbie - Brand Strategy Presentation
 
Good Stuff Happens in 1:1 Meetings: Why you need them and how to do them well
Good Stuff Happens in 1:1 Meetings: Why you need them and how to do them wellGood Stuff Happens in 1:1 Meetings: Why you need them and how to do them well
Good Stuff Happens in 1:1 Meetings: Why you need them and how to do them well
 

0426 project design_final

  • 3. © KENSAKU MASUDA.2 1.クラウドファンディング 1-0 検討の背景  前回はクラウドファンディングを活用した日本酒活性化についてブレストを行ったが 、クラウドファンディングの更なる活用を図る為には、裾野が広い中小製造業におけ る活用は必須である。しかしながら、現状の活用状況を見る限りでは、中小製造業に おいて活発に活用されているとは言い難い。  本章では、中小製造業の大企業下請けからの脱却を進める「マイクロものづくり」を 提唱する「enmono」社のアプローチや、同社が構築したクラウドファンディングサイ ト「zenmono」の機能を参考に、中小製造業がクラウドファンディングの活用を進め る為に必要なアプローチや機能についてブレストしたい。  なお、私見ではあるが、中小製造業が大企業下請けから脱却し、自社製品開発で市場 に直接アプローチする構図は、後半討議する食農ビジネスにも共通する構図である。 中小製造業のクラウドファンディング活用の可能性は、食農ビジネスにおけるクラウ ドファンディング活用にも応用できると考える。
  • 4. © KENSAKU MASUDA.3 1.クラウドファンディング 1-1 製造業:enmono社「マイクロモノづくり」  enmono社が提唱する「マイクロモノづくり」においてはクラウドファンディングをテ ストマーケティングと位置付けるとともに、CF上で多様なサポートの募集も行ってい る。「マイクロモノづくり」 「マイクロモノづくり」アプローチ  従来の中小製造業は、大手製造業の 「下請け」としての位置付けが中心  生産・取引形態は「低コス」が中心 であった。 中小 製造業 大手 製造業 消費者 低コスト  大手製造業のコスト削減要請、海外 進出により、中小を巡る環境は厳し い。  今後は下請け中心ではなく、尐量で も高付加価値製品を自社開発、生 産、販売が必要。⇒「マイクロもの づくり」 中小 製造業 消費者 尐量生産 高付加価値 しかしながら、中小はBtoCの实績が乏し く 経営資源やノウハウも不足気味  「マイクロモノづくり」のコンサルティングやセミナーを手掛けるenmono社の三木 代表取締役のインタビューの中では製品開発段階では、経営者一人で、自社設備の 範囲内で行うべきとされている。 製品開発 テストマーケティング 商品化 概 要 イ メ ー ジ  「気づいている事業にはほ とんど競合がある」、「何 万人、何十万人の最大公約 数を取りに行こうとすると、 つまらないものが出来上が る」  ワクワクトレジャーハンテ ィングチャート:技術・ス キルと、趣味・嗜好をマッ ピングし、クロスした部分 で製品開発  クラウドファンディング: 出資者の反応をみたマーケ ティングが可能。また 「zenmono」ではデザイナ ー、マーケター、スタッフ 等も募ることができる。 (参考)デザイン・フェス タ:1コマ2~3万円で出展でき、 製品に対しての意見、価格感 の生データが得られる  製品開発やテストマーケ ティングのプロセスを通じ て、事業提案力が高まり、 販路開拓に活用できる。  また経営者単独から、新規 事業に興味を持った社員か らの提案を活用していく。 内面 笑顔 ブロッ ク 手品 精密バネ製造 人と人が笑顔で コミュニケーション して繋がるツール • 「zenmono」における新規 製品のテストマーケティン グ
  • 5. © KENSAKU MASUDA.4 1.クラウドファンディング 1-2 製造業:enmono社クラウドファンディング「Zenmono」  「enmono」社が提供するクラウドファンディング「Zenmono」は、セミナーの教育ツ ールとした経緯もあり、単純な資金調達だけではなく、新商品開発プロセス全体のサポ ートを志向している。 「Zenmono」設立の経緯 クラウドファンディング「Zenmono」  enmono社の本業は町工場の経営者 向けセミナー。下請け減尐に対して 町工場自身が企画し、販売できるセ ミナーを展開。  しかしながら2ヶ月間のセミナーで 最終発表した商品が、予算不足や日 常業務に追われている中で实現しな い課題があった  セミナーのアウトプットを現实に事 業化する為のツールとしてクラウド ファンディングに着目。 • クラウドファンディングで資金調達 できれば、商品化せざる得ない状況 になる。教育のツールにちょうどい い、と。 • (他CFサイトがあまりサポートしな いのに対し)CFでの成功实績がセミ ナーへの集実になりますし、(中略 )プロジェクト全体が成功しないと 損をする。 宇都宮代表取締役インタビュー 三木代表取締役インタビュー  「Zenmono」はクラウドファンディングサイトとして資金調達機能はもちろん、 メイカーズを対象とした「工場引き合わせサービス」、「サポーター制度」によ りプロジェクトの成功を志向している。 • 工場引き合わせサービス:CF掲載段階で量 産工場が決まっていない場合、enmono社で 選考の上、工場と引き合わせ。 (「Zenmono」HPより) • 引き合わせサービスもやっているのです が、それも機能ではなく、気が合いそう か、相性で工場を紹介していますね、モ ノづくりって人情商売的なところがあっ て、人間味が欠かせない商売なんですよ 。 宇都宮代表取締役インタビュー • サポート制度:資金調達だけではなく、デ ザイナー、マーケター、販売者等のサポー ターもクラウドファンディングで募集。
  • 6. © KENSAKU MASUDA.5 1.クラウドファンディング 1-3 製造業:クラウドファンディングを活用した新製品開発事例  横浜市金沢区のニットー社は、脱下請けに向けた取組みとして新製品開発に着手。ク ラウドファンディング等の活用を通じて、消費者への提案力の強化が図れている。 ニットー社について クラウドファンディングを活用した新製品開発プロセス  横浜市金沢区の一般的な町工 場  プレス金型製作、プレス加工、 板金加工等を手掛け、大手メ ーカーからの下請けが中心  大手メーカーが海外への外注 を増やしている現状に危機感 を抱いた藤沢社長が、受注型 から提案型への変換を模索 製品開発 テストマーケティング 商品化 クラウドファンディング活用による効果 • 経営者個人で iPhoneケース 「iPhone Trick Cover」を開発 • ネット上のイベン トに出展したとこ ろ好評 • ガジェット系のクラウドファンディングが多い 「Cerevo Dash」(キャンプファイアーと連動)に 掲載。支援者200人、131万円を獲得。 • 試作品をユーチューブにアップし、支援者等から 意見を収集し、その意見を改善に活用。「短期間 で製品を完成させるのにユーザーの意見が本当に 役立ちました」(藤沢社長) • クラウドファンディングで50万 円に達成した段階で量産化の告 知を行ったところ、アスキース トア等の大手4代理店、海外代 理店等から取扱い希望の連絡が 入った。 量産化 告知 ニットー社 代理店 参照 取扱い希望 • 中小の製造業は基本的に大手メーカーの下請 けなので、自分で作ったモノを自分で売るこ とに慣れていないんです。情報をどうユーザ ーに届けるのかが難しい。今回、クラウドフ ァンディングに挑戦して、その影響力に驚き ました。  PR効果:ツイッターやフェイスブックを利用して 情報を拡散した事で、「中小製造業がクラウドファ ンディングを使って初めての自社製品開発に挑む」 というテーマでの紹介が増加。その効果として BtoBの新しい案件が4件発生。  下請け関係の変化:従来の取引先からも「面白い商 品を開発しているユニークな企業」と認識される事 により、単なる受発注の上下関係だけではなく、製 品についての意見・相談を求められるようになった +  クラウドファンディングのサイトの作り込み、ユー チューブにおけるユーザーとのやり取り等を通じ て、BtoCにおける経験を蓄積。 藤沢社長インタビュー
  • 7. © KENSAKU MASUDA.6 1.クラウドファンディング 1-4 製造業:その他クラウドファンディング活用事例  ニットー社のような新製品開発事例以外においても、復刻レンズやオーガニックタオ ルのプロモーション等においても製造業の分野でクラウドファンディングは活用され ている。ロモジャパン:19世紀レンズの復刻 池内タオル:オーガニックタオル クラウドファンディング活用の概要  池内タオルは今治のタオルメーカーの老舗であるが、過 去民事再生を受けた事、またオーガニックは品質が安定 しない為、銀行融資が難しく、ミュージックセキュリテ ィーズの投資型クラウドファンディングを活用  2011年:550万円(1口5万円)を約2ヶ月で調達 ⇒4.18%の利率を付けて還元  2012年: 1,780万円を数日で調達 クラウドファンディング掲載時の訴求ポイント  オーガニックコットンの魅力:世界の全綿量の0.76%し かない希尐性  環境負荷への配慮:「風で織るタオル」として100%風 力発電の電力で製造  オーガニックコットンの品質不安定をブランド化:「ワ インのようにコットンの違いを楽しむ」と表現 クラウドファンディング活用の効果 ⇒資金提供者が商品のことを理解し、納得の上で投資する 為、投資家がファン顧実化する。 ⇒ファン顧実化すると、次回資金調達時にも資金提供する 可能性が高い為、資金調達が年々容易となる。 クラウドファンディング活用の概要  フィルムカメラを販売するロモジャパン(オーストリア )が企画した「歴史的な19世紀のレンズを現代のアナロ グ&デジタルカメラ用レンズとして蘇らせる」プロジェ クト  世界中のクラウドファンディングで同時展開しており、 最終的に1億5,000万円を超える支援を集めた  日本での調達金額は1061万円、資金提供者は269名と、 日本のクラウドファンディングでは大型の調達金額 クラウドファンディング掲載時の訴求ポイント  グローバルに統一したプロモーション動画や画像の掲載  継続的な情報提供:活動報告を2日に一度のペースで更 新し、ホームページ、フェイスブック、ツイッターで情 報を発信  情報拡散の仕掛け作り:「500万円達成すると全員に特 性クリーニングクロスをプレゼント等、達成金額に応じ たプレゼントを設定する事で、既存支援者からの周囲へ の情報拡散を図った クラウドファンディング活用の効果 ⇒クラウドファンディングという仕掛けを通じて、支援者 が周囲に情報提供をしており、認知度向上を図れている ⇒「企業として初期投資しづらい時代にあって、今までに ないもの、革新的なものを世に出す時の舞台として、向 いていると思います」(ロモジャパン担当者)
  • 8. © KENSAKU MASUDA.7 1.クラウドファンディング 1-5 ブレストテーマ ① 「enmono」社が対象としているような大企業下請けからの脱却を図っている中小製造 業は多数存在すると考えられる。今後、更に多くの中小製造業が同社のようなアプロ ーチ手法を使って新製品開発を進めるにあたり、何が課題となるか?新製品開発プロセ ス×「人材」、「資金」、「情報」の切り口から考えたい。 ② 「zenmono」は、モノづくりを対象として特化し、「工場引き合わせサービス」、「 サポート制度」を特徴としている。中小製造業が新製品開発を進めるにあたり、その 他で有用となる機能は何が考えられるか?①で検討した課題を踏まえながら考えたい。 15分
  • 10. © KENSAKU MASUDA.9 2.銀行融資サポート 2-0 銀行からの資金調達  これまでクラウドファンディングを中心として取り上げてきたが、中小・中堅企業の 資金調達の基本は現状銀行融資が中心である。  中小・中堅企業のサポート事業という視点で考えた場合、中小・中堅企業の資金調達 を受けやすくするサポートも重要なテーマの一つとなりうる。  本章では、銀行融資の基本を押さえるとともに、銀行の融資プロセスから逆算した中 小・中堅企業へのサポート事業の可能性を考えたい。  なお、銀行側における中小企業融資の課題とその取組みも添付している。長期的には 中小企業融資の銀行からの外部化が進む可能性があり、そこから考えられる事業展開 の可能性もブレストしたい。
  • 11. © KENSAKU MASUDA.10 2.銀行融資サポート 2-1 銀行からの資金調達:基礎知識  銀行からの融資形態は、借入先の信用により異なってくる。審査ポイントは定量、定 性の視点がある為、それぞれに対応した対銀行対策が必要となる。 信用保証協会 付融資 ビジネス ローン プロパー 融資 審査厳 審査緩 金額大金額小 審査厳 審査緩 長期 金額大 短期 金額小 証書貸付 手形貸付 手形割引 当座貸越 銀行の審査プロセス(概略) 審査ポイント(概略) • 「金銭消費貸借契約書」に必要事項を記入し、銀行に差し 出して融資を受ける手法。主に長期(1年超)の融資で使 用。• 借入用の手形を差し入れ融資を受ける手法。主に短期間の 融資で使用。融資の取り決めは銀行取引約定書で定義。 • 売上手形を銀行jが買い取る事によって資金が引き出される 融資方法。 • 融資の極度額を設定し、その極度額までは自由に融資を受 けたり返済したりできる融資方法。 当座貸越 証書貸付手形貸付 手形割引 信用保証協会 付融資 ビジネス ローン プロパー融資• 信用保証協会の保証を得た上で銀行から融資を受ける。近 年、やや審査が強化されているが、基本的に銀行より審査 は緩い。 • 営業・審査を効率化する為、コンピューターが決算書の数 値から点数を付けて融資の可否を決める。「銀行単独で」 という意味ではプロパー融資だが、銀行内では切り分けら れている• 信用保証協会の保証無しで銀行単独で融資。 • 審査が最も厳しいが、銀行が融資を行いたい企業としての 信用が得られる。 取引担当者による 稟議申請書作成 支店(支社)長によ る査定 (稟議に対する判断 ) 本店審査部による 審査判断 支店・支社内 定量的視点 (8割) 定性的視点 (2割)  BS/PL経営分析(特に純資産、経常利益 チェック)。  銀行としての採算分析を行うが、格付けが低 いと信用コストが高くなり採算が悪化しやす い(格付け⇒財務状況等を元に判定) 経営者との面談による評価  経営計画(但し、収支計画に対しては2割以 上)  経営課題に対する対応状況 等  大きい銀行ほど取引担当者、支店長の裁量権限が大きく、 小さい銀行ほど本店の影響力が大きい傾向がある。
  • 12. © KENSAKU MASUDA.11 2.銀行融資サポート 2-2 銀行からの資金調達:融資サポートプラン  融資による円滑な資金調達を实現する為には、銀行の融資プロセスを踏まえたアクシ ョンが借入企業には求められる。アクションの中には中小・中堅企業では対応が難し いものもある為、外部からのサポートニーズも有ると考える。 新規顧実開拓 顧実フォロー融資实行 銀行の融資プロセスから逆算した融資サポートプラン案 銀行の視点・ アクション 企業が取るべ きアクション サポートプラ ン  国内の貸出市場は飽和状 態で、既存顧実から貸出 増加は難しい為、常に新 規顧実を求めている  一方で、一見実に対して は信用力等を慎重に見極 める姿勢もある。 ⇒基本は銀行と取引がある先 からの紹介が望ましい。 ⇒紹介無しの融資依頼はNG であるが、口座開設時の 会社案内等は有効 ⇒帝国データ等の信用調査が 入った時は、積極的な情 報開示が必要。 ⇒銀行取引先のデータベース 化を進め、紹介依頼を斡 旋 ⇒会社案内作成サポート ⇒信用調査時の対応サポート  融資の回収が円滑に進む ように定期的(月に1回程 度)に訪問。特に資金繰 りや決算状況は要チェッ ク。  一方でデリバティブ・保 険のクロスセル等、新規 取引の機会を適宜伺って いる。⇒決算説明は担当者のみに行 うのではなく、担当者に 依頼して支店・支社長に 対しても説明を行う事が 重要 ⇒デリバティブや保険の販売 は、企業利益の最適化を 考慮して慎重に判断 ⇒決算説明時に併せて説明す る経営計画書等の作成・ 説明サポート ⇒デリバティブ・保険等の新 規取引に対する第三者評 価 担当者:企業か らのヒアリング 、受領資料を元 に稟議資料を作 成 支店長・本部: 稟議資料や担当 者からの説明を 元に融資の可否 ・条件を決定 担当者:稟議の 決定を元に、融 資金額・金利等 を企業に提示 ⇒基本的には、担当者の稟議資料作 成を協力する姿勢が重要 ⇒特に今後3~5年間の収支見通し等 の提出は重要であり、こうした事 業計画の確度が高いと判断される 程、足元の状況に関わらず、融資 判断に傾く可能性がある ⇒必ず、と言っ ていい程、金 利は高めに表 示される。相 見積の可能性 等も示しつつ 、金利交渉は 重要。 ⇒事業計画作成サポート 特に収支計画のロジック構築 等、精度向上のサポート ⇒金利等、条 件見直し交 渉サポート
  • 13. © KENSAKU MASUDA.12 2.銀行融資サポート 2-3 近年の中小企業向け融資の動向  バブル崩壊以降、銀行における中小企業向け融資は減尐傾向が止まらない。  効率的な中小企業向け融資の増大に向け、専門化や外部化の取組みが行われている。 中小企業向け融資の現状  バブル崩壊以降、国内銀行の中小 企業向け融資はほぼ一貫して減尐 しており、足元の貸付残高は170 兆円と、対2000年度比で約2割減 尐  一般的に言われる「貸しはがし」、 「貸し渋り」の側面もあるが、中 小企業の資金需要自体が減尐して いる事も一因 銀行視点の中小企業向け融資の課題  大企業・中堅企業と比較すると個社別の貸出ボリューム のロットが小さく、営業経費等の経費効率が悪い  上記経費効率を改善する為、かつはスコアリングで融資 判定を行うビジネスローンが拡大したが、不良債権化し た貸出が増加する結果となった。 銀行 大企業 中堅企業 中小企業 掛ける動力は同じ (信用リスクがある分、中小の 方が手間が掛かる事も) 中小企業向け融資に向けた銀行の取組み  銀行における中小企業に対する審査力向上や、また事業 承継、ビジネスマッチング等、主に中小・中堅企業の多 様なニーズに対応する為の専門部署の設置を行ってい る。  また、経費効率の改善等も視野に、中小企業向け営業専 門の子会社を設立する動きも一部メガバンク等ではあ る。銀行 中小専門 子会社 中小専門 部隊 中小企業 審査力向上だけでなく、 事業承継、ビジネスマッチング 等、 ノウハウ蓄積 経費効率改善も期待効果 粉飾決算等の信用リスク  また、良質貸出の増加策として、TKC全国会等と提携し た貸出強化も行われている。 TKC会員事務所 関与先企業 TKC会員 会計・税務事務所 三菱東京 UFJ 顧問契約 財務会計システム利用 最大1億円融資 無担保(経営者保証有)
  • 14. © KENSAKU MASUDA.13 2.銀行融資サポート 2-4 ブレストテーマ ① 前述の「融資サポートプラン」は案である為、銀行の視点・アクションを踏まえた場 合、「企業が取るべきアクション」、また外部からの「サポートプラン」としてその 他に考えられる事はないか? 「新規顧実開拓」「融資实行」「顧実フォロー」のプロセス別に考えたい ② 今後も銀行は中小企業融資の更なる効率化を追求する可能性が高く、三菱東京UFJ銀 行とTKCとの提携のように、外部提携による新規開拓を進めると考えられる。この場 合、銀行から見て外部提携先に求められる経営資源は何であるか? 外部提携先に求められる有形資源と無形資源別に考えたい。 15分
  • 16. © KENSAKU MASUDA.15 3.食農ビジネス 3-0 検討テーマ全体  近年、農業改革やTPP等の環境変化もあり、農業ビジネスへの関心が高まっている。 農業ビジネスは、生産段階である1次産業だけではなく、生産加工業である2次産業、 小売業や飲食業である3次産業とも深く関連している為、本章においては「食農ビジネ ス」として考えたい。  食農ビジネスとして中心テーマになるのが、相対的に付加価値が低い1次産品から、2 次、3次と更に付加価値を高めて市場にアプローチする「6次産業化」である。食クラ スター全体で見ると70兆円規模である事から、政府も10年間で6次産業化市場を10年 で10兆円とする目標を掲げている。  一方で、その实現に向けては様々課題が指摘されている。本章では、「人材育成」、 「高付加価値化」、「資金調達」、「IT化」において、それぞれの課題と対応事例を 参考としながら、新たなソリューションについてブレストしたい。
  • 17. © KENSAKU MASUDA.16 3.食農ビジネス 3-1 検討テーマ全体像  農漁業、食品加工業、飲食業等を包含する食農ビジネスを検討するにあたり、農漁業 の担い手や六次産業化を推進するプロデューサー育成等の「人材育成」(人)、農産 物等の商品の「高付加価値化」(商品)、六次産業化等推進の為の「資金調達」(金 )、食農ビジネス基盤強化の為の「IT化」(情報)の各面から検討したい。 人材育成 高付加価値化 資金調達 IT化 本資料にて取り上げるテーマ 人 商品 金 情報  食の六次産業化プロデューサー  アグリトリノ  植物工場における高付加価値化戦略  農林漁業成長産業化ファンド  食農クラウド
  • 18. © KENSAKU MASUDA.17 3.食農ビジネス 3-2 人材育成:食の6次産業化プロデューサー認定制度  6次産業化の可能性は大きいものの、生産側と流通側では相違も大きく、連携を困難と させている。生産と流通をプロデュースする人材の育成が求めらえている。 6次産業化の可能性と課題 「食の6次産業化プロデューサー」認定制度等を 通じて生産者と流通をプロデュースする人材の育 成 一次産業の国内生産額は10兆円(輸入は8兆円)程度で あるのに対して、飲食料の最終消費額は73兆円と、約4 倍の規模で付加価値が生まれている。  こうした市場状況を踏まえ、国は「6次産業化市場を10 年間で10兆円に拡大する」事を目標として掲げてい る。 最終消費額 (73兆円) 一次産業(国内 ) (10兆円) 輸入一次産品 (8兆円) 約4倍の 付加価値 しかしながら課題も多い、、  生産者業界と流通業界等、業界間の垣根を越えた連携 コーディネートやプロデュースする人材が不足。6次産 業化の推進の為には、業界間の連携を推進する人材や 組織が必要となる。 生産者業界 数ヶ月、数年単 位のサイクル 流通業界 数週間単位 のサイクル 連携困難 連携コーディネ ートが必要 レベル7 レベル6 レベル5 レベル4 レベル3 レベル2 レベル1 • トップ・プロ フェショナル • プロレベルの スキル • 高度な専門 性・オリジナ リティ • チーム内でリ ーダーシップ • チーム内で リーダーシッ プ • 一定の支持の もと仕事 • 職業準備教育 を受けた段階 • 組織内外で後進を育成/他の農家 に対して6次化の手法・戦略を指 導 • プロジェクトを管理/異業種間や 関係者間のコーディネート • 生産体制、流通経路を確立/事業 化を支援 • 支援を受けながら6次化を实践/ 支援業務を实践 • 实習等による経験 • 商品のブランド化/他の法人の パートナーとして活躍 • プロジェクトを多角化し、複数 の商品や分野に進出し、継続的 な实績 レベ ル 特徴 人材イメージ例
  • 19. © KENSAKU MASUDA.18 3.食農ビジネス 3-2 人材育成:東北復興・農業トレーニングセンタープロジェクト  「キリン絆プロジェクト」の一環である「東北復興・農業トレーニングセンタープロ ジェクト」は、東北の生産者と東京のビジネスマンの能力向上を図り、コラボして農 業復興を図るものである。こうした様々なバックグラウンドを持った人材によるコラ ボも、六次産業化の推進には不可欠と考えられる。 東北復興・農業トレーニングセンタープロジェク ト 2013年度プロジェクトの取組み事例(抜粋)  既に2013年度の企画から具体的な事業化が進んでいる。 東北クラス:自社で行っている栽培~収穫~販売までが”農 業経営者”という視点でどこまで取り組めているのか?を考 え、その上でまず改良すべき課題とは何か?を掘り下げる 農業経営者リーダーズ ネットワーク(東北) 地域 誘実 人材 育成 資金 調達 経営 強化 経営 強化 農業復興プロデューサ ー カリキュラム(東京) メディア 新規顧実開 拓サービス 飲食展開 経営強化 新商品化 イベント・ 地域誘実  東京クラス:農業復興を軸にしながら消費者のニーズを取り 込むことで、地域にとってどのような効果がもたらされるの か?東京ではどうか?と実観的な指摘やアイデアを展開 Community Kitchen 丸の内dish 遠野パドロン ブランディン グ プロジェクト ~進撃の農業人 ~Training Day’s 概要 示唆 • 東北・東京共同企画 • スペインではポピュラーな ビールのおつまみながらも、 日本国内では未開拓なパドロ ンの生産力アップと消費者・ 市場へのアプローチ強化を図 る • 東京企画 • 料理教室ビジネス。キッチン スペースでナビゲーターによ る本格調理を仲間と楽しみな がら、東北の生産者や食材に ついての理解を深める • 東北企画 • 農業法人5社が連携する「人 材育成クラスター」構想。現 实の問題の解決策の迅速な発 見・解決等、地域の繋がりを 活用して取り組める環境づく り • 消費者に近く、営 業経験等もある東 京メンバーとコラ ボする事で、従来 の品質からストー リー性を重視した 売込⇒新規開拓に 繋がっている。 • 単純な売り場によ る食材とお金のや り取りでは生まれ ないロイヤリティ を醸成できる。効 率は高くないもの の、着实なブラン ド育成が可能。 • 東北復興・農業プ ロジェクトの経験 は一過性とするの ではなく、モデリ ングした上で拡 大、横展開してい くことが重要。
  • 20. © KENSAKU MASUDA.19 3-2 人材育成:事例紹介「イタリア・アグリトリノプロジェクト」( 1/2)  イタリア・ピエモンテ州は、豊富な食材やワイン産地としての農業基盤の上に、「ス ローフード運動」の展開や世界最大級の食の祭典企画等、食ムーブメント発信源とし て知られている。 イタリア・ピエモンテ州(州都トリノ) は食材、ワインの宝庫  豊富な食材 • 水田が広がり、ト リュフ、ポルチー ニ茸などの食材が 豊富  イタリアを代表する ワインの産地 • 最高級ワインのバ ローロやバルバレ スコの産地 グローバルでの「スローフード運動」展開等、 食ムーブメントの発信源  スローフード運動発祥の地 • ピエモンテ州ブラを発祥として、地元の食文化や食 材を見直す運動。品質認定(「味の箱舟」、「プレ シディオ」)やプロモーション支援を通じて生産者 支援(132ヶ国・10万人が参加) • イタリアにおける食科学大学の設立や、トリノ近郊 で開催される世界最大級の食の祭典「サローネ・デ ル・グスト」を開催する等、企画力・発信力が高い。 • 日本においても「味の箱舟」、「プレシディオ」の 品質認定やプロモーション支援が取り組まれている。
  • 21. © KENSAKU MASUDA.20 3-2 人材育成:事例紹介「イタリア・アグリトリノプロジェクト」( 2/2)  ピエモンテ州では、農業で雇用創出を図る「アグリトリノ」構想トが始動している。 若年失業率が高く、耕作放棄地も多い日本においても、同様の取組み余地の可能性は 高いと考える。 雇用対策プロジェクト「アグリトリノ」 イタリア国内での現在の反応 日本における可能性 イタリア失業率:12%(13年4月) 25歳以下では37.8% 若者の雇用促進の活動を農業に 求めるムーブメントの萌芽 若年失業者 休耕地貸与 技術的サポート 補助金 職業訓練機関、金融機関、修道会等が協力 消費者 中間事業者を経 由せず直接販売教育サポート等を元に 就農 「アグリトリノ」の期待効果 就業機会の増大による 失業率の改善 若者の農業回帰の促進 と食糧の安定供給 品質・価格等競争力が ある農業モデル創出  マスコミ等における注目 • 2013年3月にプロジェクト構 想が発表され、イタリアのテ レビ局、新聞、ネット等で紹 介  参加状況 • 発表以前から20名程度が応募 し、賛同企業・団体も出現 今後本格展開  イタリア程ではないが、若年失 業率(7.3%)は相対的に高い  耕作放棄地の増加も社会問題と なっており、「アグリトリノ」 に類似する取組余地の可能性は 大きい 一定期間 の就農体 験 耕作放棄 地等を活 用した新 規開農 プログラム化し展開
  • 22. © KENSAKU MASUDA.21 3.食農ビジネス 3-3 高付加価値化:植物工場における成功戦略(1/2)  植物工場ビジネスは国の後援等もあり近年活発化しているが、黒字化を实現している のは約1割程度となっている。黒字化工場は、「低コスト戦略」、「高付加価値戦略」 が明確となっている。 植物工場ビジネス 新規参入ブーム  09年度に農水省・経産省で植物 工場の普及事業や研究開発の為 の大型補正予算(約150億円)が 確保され、補助金を元に工場建 設に乗り出す企業が増加  参入企業は建設業、製造業、運 輸業、飲食業など多様で、自社 資源を活用しながらの進出ケー スが多い(例:製造業における 未稼働工場の活用等) 成功している企業は約1割、 成功している企業は「低コスト戦略」or「高付加価値戦略」が明確 6割が赤字 3割が収支均衡 1割が黒字  植物工場コンサルティ ングを手掛けるNPO法 人イノプレックス調査 結果(07~11年設立工 場を対象)  黒字化に成功している 工場は大規模化による 「低コスト戦略」か、 食物の高機能化による 「高付加価値戦略」を 徹底している 低コスト 戦略 高付加価値 戦略 大規模化、既存物流シ ステム活用等により低 価格化を实現 低価格を武器にして 新規販路開拓 ニッチな野菜の開発・ 製造に特化し、差別化 差別化ポイントを訴求 し、 新規販路開拓
  • 23. © KENSAKU MASUDA.22 3.食農ビジネス 3-3 高付加価値化:植物工場における成功戦略(2/2)  京都「スプレッド」の事例では、既存取引先確保による量産化、既存資源の活用によ り低コスト化を实現している。「日本アドバンストグリル」、「会津富士加工」の事 例では、商品の特長により販路開拓に成功している。 「スプレッド」における低コスト戦略事例 高付加価値戦略事例  京都・亀岡においてレタス等の葉野菜を生産。完全人 口光型では世界最大規模の生産能力。  経営の多角化を図っている青果卸の子会社であり、既 存のグループ既存顧実を販路先とする事により、大規 模生産が可能となっている⇒「規模の経済」による低コ スト化 トレード (親会社 ) 不動産 物流事業 スプレッド (植物工場) 既存 グループ 顧実 販売先確保 ⇒量産化可能に  また、グループ内の物流・輸送システムを活用する事 により、更なる低コスト化を实現している ⇒「範囲の経済」による低コスト化 スプレッド (植物工場) 既存 グループ 顧実既存の物流・輸 送システム活用 輸送 日本アドバ ンストアグ リ 会津富士 加工 特長 販路先  自社でアイスプラン ト栽培研究を实施 し、自社ブランド野 菜「ツブリナ」を製 造・販売  アイスプラントは葉 を食べるのが主流で あるが、茎が食べれ たり、プチプチとし た食感等で差別化 ⇒年間供給でき る強み等も活 かして飲食店 に販売  遊休プラントを活用 して植物工場を開始 した半導体製造装置 部品メーカー  賢臓病患者向けの低 カリウムレタスの量 産化に日本で最初に 成功 ⇒入院患者用食 材として病院 に納入 ⇒全国20店舗の 百貨店でも販 売 ⇒フランチャイ ズ加盟企業を 募集中
  • 24. © KENSAKU MASUDA.23 3.食農ビジネス 3-4 資金調達:官民ファンドによる六次産業化支援(概要)  農漁業は二次・三次産業には無いリスクが多く、従来は公的・農協支援に依存してき た。これに対し、昨年度より六次産業化を志向する農漁業に対するファンド支援が活 発となっている。 現状の農業資金調達の構造  自然条件による豊作・凶作変動、農産物の価格変動が大 きい  供給实績が乏しく、審査ノウハウが蓄積されていない  他産業と比較すると、経営管理体制が整備されていない 事が多い 一般金融機関が農業分野に資金供給する場合の障害 従来は公的機関が融資する「制度融資」や農協系からの 金融支援が中心であり、一般金融機関からの融資は僅か であった (農業経営融資:平成20年度・総額2.2兆円) 1.5兆円 0.6兆円 399億円 40億円 (出所:農林水産省資料) 六次産業化支援の為の官民ファンド: 農林漁業成長産業化ファンド  六次産業化支援の為の農業・漁業分野への資金供給を活 性化を目的として、民間資金の呼び水となる為、2013年1 月に「農林漁業成長産業化支援機構」を発足。 (支援機構は国が300億、民間企業(食品メーカー等が中 心)が18億円出資) 国300億円 民間18億円 農林漁業成長産業 化支援機構 民間金融機関 サブファン ド 農林 漁業 出資 2013年度末までの实績 41サブファンド創 設 (総額666億円) 相談件数:327件 「六次産業化・地 産地消法」に基づ く事業計画1,708件  なお、一部のファンドでは支援機構側のスピードの遅さ に不満な声もあり、独自ファンドを組成する動きもみら れる。
  • 25. © KENSAKU MASUDA.24 3.食農ビジネス 3-4 資金調達:官民ファンドによる六次産業化支援(事例)  農林漁業成長産業化ファンドにおいては、農漁業とパートナー企業が六次産業化を目 的として設立した合弁会社に対して出資し、六次産業化の促進を図っている。 「株式会社あおもり海山」事例(「とうほくのみらい応募ファンド」投資案件) 現在の商流 ~ほぼ県内は漁業機能のみ~ 今後の商流 ~県内に加工・販売機能を付与していく~ 県内 県外 県内 県外 株)ホリエ イ (漁業者) 株)ホリエ イ (仲買人) 中央市場 地方市場 ベンダー・ 消費者 1次 2次 3次 株)ホリエ イ (漁業者) 株)ホリエ イ (仲買人) 1次 2次・3次 3次 株)あおもり海山 • 業務は、①さく加工、②冷凍、 ③保管、④販売 • ホリエイ、エーピーカンパニー 、ファンドが出資 深浦町 マグトロ丼 飲食店・直売 ・ネット販売 エーピーカン パニー等 大手飲食 食品卸・飲食 店・小売り
  • 26. © KENSAKU MASUDA.25 3.食農ビジネス 3-5 IT化:食農クラウドサービスの活用(概要)  食農クラウドサービスの導入は、システムコスト抑制だけでなく、業務高度化が期待 でき、現在の市場規模が小さいが、今後の市場拡大が期待されている。 食農クラウドサービスの概要 今後の市場予測  食農(農業)クラウドサービスは、経営分析や生産技 術、販売、物流、融資などの情報を農産物生産者へ提供 し、地域振興を図るために自治体等が主体となって構築 するクラウドサービスである。 融資情報 生産情報報 物流情報 販売情報 経営分析 農業生産者 データの蓄積 データの活用 クラウドサービス 例:生産技術情報-温度や湿度、養分の量等をセンサーネッ トワークで自動集計・提供し、適切な数値を維持しなが ら栽培 食農クラウドサービスの期待効果 従来 今後 • 小規模事業者が多く、 システム導入が難しい • ノウハウ・スキルが可 視化できず、業務が属 人化されやすい • 初期導入や人材確保の 負担が小さい • ノウハウ・スキルの可 視化を通じて、新規人 材の受入も容易となる ⇒その他、予測可能性の向上 等のメリットもある  現状、クラウドサービスに対して、「現在利用中」、 「今後2~3年以内利用予定」、「計画はないが、利用を 検討」を合わせても、食関連産業33.5%、農林水産業 23.6%と他産業と比べて低い。  しかしながら、調査機関の調査等では、農業クラウドサ ービス市場の急拡大が予想されている。 農業IT化市場規模予測(単位:億円) (シード・プランニング社調査) ※農業クラウドサービスの市場予測は、基盤構築や各サービ スの提供を行うICTベンダ4社(富士通、NEC、日立ソ リューションズ、アグリコンパス)の現況と今後の事業 計画から推定。
  • 27. © KENSAKU MASUDA.26 3.食農ビジネス 3-5 IT化:食農クラウドサービスの活用(事例)  北海道の「興農社」においては、作業管理、トレーサビリティ、各種情報等の機能を 備えた自社システムを開発。着实に導入効果を上げており、今後はパッケージ化によ る他農業法人への拡販をはかる。 「興農社」のシステム化事例 導入効果と今後の展望  「興農社」概要 • 北海道富良野の農業法人で、北海道内でも大規模 • エコファーマー、6次産業化法認定、JGAP取得等、経 営の高度化の取組みに積極的 • 今後のTPPや6次産業化等、外部環境の変化の対応や、 業務効率化や意識改革を目的として自社システムを開 発 作業管理 • 作業スケジュール • 打ち合わせBBS • 営農計画DB トレーサビリテ ィ • KSS作業日誌 • 写真アップロード • 機会メンテナンス 従業員意識向上 • 企業の経営方針報告 営農技術情報 • JA、農業改良普及セ ンターの情報と連動 気象情報 • 日本気象協会北海道 支部のデータと連動 KSSシステム概要 • 従業員への作業指示 • 打ち合わせ • 情報共有 • 営農ノウハウ蓄積 興農社内での活用 先進的取組とし てメディア露出 増加 取引照会の 増加? データを活用し た予測可能性向 /技術の共有化 規格外品の 減尐 2010年度 1,000万円利益 ↓ 2011年度 1,800万円利益  先進的取組みによるPR効果、また生産品質の高度化等に より、増収の効果が現れている。  他農家からのニーズもあった事から、ITベンダと共同し てパッケージ化を实施。今後、他農業法人に展開してい く予定。 興農社 富貴堂 ユーザック (ITベンダ) パッケージ化 自社システム ノウハウ パッケージ化 スキル 農業法人 農業法人 農業法人 拡販
  • 28. © KENSAKU MASUDA.27 3.食農ビジネス 3-6 ブレストテーマ:人材育成 ① 日本で「アグリトリノ」のような取組みを進めるにあたり、プロジェクトの推進上、 課題となる事と、その対応策は何か。就農者側とサポート側の2つの視点と、就農に必 要な有形資源・無形資源の2つの切り口から考えたい。 15分
  • 29. © KENSAKU MASUDA.28 3.食農ビジネス 3-6 ブレストテーマ:資金調達 ① 現在推進されている官民ファンドの中でも、一般金融機関の資金調達が困難であった 理由の「農産物の価格変動が大きい」、「審査ノウハウが蓄積されていない」、「経 営管理体制が整備されていない事が多い」が解消されている訳ではない。本章の「人 材育成」、「高付加価値化」、「IT化」の検討も踏まえ、当該課題の対応策を考えた い。 ② 官民ファンドの導入前後にクラウドファンディングも併用する事によるメリットとし て、どのような事が考えられるか。官民ファンドを受ける側の視点から、クラウドフ ァンディング实施時期を官民ファンド受入の前後に分けて考えたい。 15分
  • 30. © KENSAKU MASUDA.29 3.食農ビジネス 3-6 ブレストテーマ:IT化 ① 現在想定されている食農(農業)クラウドサービスの期待効果はコスト効率化や、生 産過程の情報の共有化が中心である。今後、6次産業化を推進するにあたり、資金調達 面や販売面におけるクラウドサービスの期待効果としてどのような事が考えられるか 。 15分