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はじめにーー今村明恒の提言
  列島の「地震の旺盛期」の基準 ー「三陸沖地下大活動」
(1)7世紀末期から9世紀末ーー貞観津波が代表
(2)16世紀末から18世紀初頭、
(3)19世紀半ば以降

「とくに第1期、第2期はその期間あまり長からざるにかか
わらず、地震活動が、この間に本邦における地震帯の全系統
を少なくも一巡している。各期における活動の原因が広く日
本に対して働きつつあった一勢力にありとみる時、斯様な現
象の起こるのもむしろ自然のように思われる」
(『地震』8巻3号、12号、1936年。東京大学理学部
           地震学教室)
貞観地震以前
(1)7世紀末、8世紀前半の地震
  678年筑紫地震 ー水縄断層
 684年南海地震 ー南海トラフ沿いのプレート境界地震

 701年丹後地震(局地)
 715年遠江・三河地震 ー天龍上流平岡断層( OR中央構造線)

 734年畿内地震 ーーー誉田断層・生駒断層系、M7.1

 誉田山古墳の前方後円形を破壊。家屋倒壊・山崩・断層・余
   震。飢饉と疫病の中、衝撃大。聖武、畿内・大和地霊を恐れ
   る。
 聖武、周の文王の故事(天譴思想)により「責任は我一人、
   恐れず遷都しない」と宣言。しかし、仏教帰依を強め、739
   年大仏建立宣言。740年近江に大仏建立開始し、同時に山城
   恭仁京建設ー近江紫香楽京大仏構想。
 744年肥後国地震

 745年美濃地震ー養老桑名四日市断層帯ー紫香楽・恭仁京
   直撃
 大仏は奈良へ。地震は政治史に大きな影響
(2)8世紀後半の噴火
 8世紀前半は局地地震(中央構造線沿い)→→8世紀後半、
  地震は静穏化し、噴火の時期
 (イ)765年大隅海底火山の噴火ーー大穴持命(オオアナムチ)の噴
    火
     神の「冶鋳」(冶金と鋳造)の仕業による「神造嶋」。神
    の「アズマヤ」のような石組み。本宅は桜島か。
   益田勝実『火山列島の思想』、保立道久『かぐや姫と王権神
    話』
   日本の最大の神は火山神ー地震神。大穴持命とは大国主命の
    自然神・火山神としての名。「アナ=噴火口、ナ=大地」。
   (ロ)霧島など九州火山の噴火
     771年豊後の別府鶴見岳の小噴火。
     788年、大隅国贈於郡の曾乃峯(霧島御鉢)の大噴火。
   霧島への「天孫降臨」神話の現場。
   10世紀、書写山の性空上人。霧島で修行。身辺に地震を自
    由に起こせる。
   (ハ)富士の大噴火
   800年。足柄路をふさぐ、箱根道を造る。
(3)九世紀前半の地震・噴火
 (1)桓武ーー全体として静謐。

 (2)嵯峨 ーー関東地震

 (3)淳和 ーー京都群発地震。大地動乱の時代のク
  ライマックスの到来を告げる。
 (4)仁明ーー群発地震はおさまるが噴火。

    (在位中の京都有感地震の年間平均は2,5回
  ほど)。
      伊豆神津島の大噴火ー火山の女神ー「地
  (な)の神」ー山の神は女の火山神。
 (5)文徳ーー『方丈記』、東大寺の仏頭落下の地震。

     文徳の陵墓は「地震神」に狙われた。
    地震の神が追跡する足音。
東日本太平洋岸地震のプレート深部断層と類
               似
     東北地方のボーリング調査で貞観津波痕跡発見
    陸奥国の地、大いに震動す。流光、昼の如く
    隠映す。しばらく人民叫呼して、伏して起きる
    ことあたわず。あるいは屋倒て圧死し、あるい
    は地裂けて埋殪(埋死)す。馬牛は駭奔し、あ
    るいは互いに昇踏す。城郭・倉庫・門櫓・墻壁
    など頽落して顛覆すること、その数を知らず。
    海口は哮吼し、その聲、雷霆に似る。驚濤と涌
    潮と、泝洄し、漲長して、忽ちに城下に到る。
    海を去ること数十百里、浩々としてその涯を弁
    ぜす。原野道路、全て滄溟となる。船に乗る暇
    あらず、山に登るも及び難し。溺死するもの千
    ばかり、資産・苗稼、殆ど一つとして遺ること
    なし(『日本三代実録』貞観十一年五月廿六日
現代語訳
   陸奥国の大地が大いに震動した。(夜)、流光が
    昼のように空をおおい照らした(地震発光の最初の記
    録)。直後、人民は叫び呼び、地面に伏して起きあ
    がれない。家屋が倒れて圧死し、断層の中に埋
    まって死んでしまう。馬牛は、驚き走って踏みつ
    けあう。城郭や倉庫、門櫓、垣壁などの崩落と転
    倒は数知れない。海口は吠えたて、その声は雷電
    のようであった。そして、激しい波と高潮がやっ
    てきて、川をさかのぼり、また漲り進んで、たち
    まち多賀城直下に到来した。海を離れること数十
    百里の距離まで冠水した様子は、広々としてその
    果てを区別できない。原野や道路はすべて青海原、
    船に乗る余裕もなく、山に登る時間もなく、その
    中で、溺死するものは千余人。資産や田畠の作物
    は、ひとつとして遺ることなく全滅した。
?



  プレート境界地震としての共通性と差異
津波遡及・冠水域の比較ーー今後の調査が必要
 3,11津波の遡及域。北上川、河口から約五〇㌔、11センチ
  の水位変化。冠水域。内陸約5㌔(道路でストップ)
 貞観津波の遡及域。不明。冠水域。文章表現、「海を去るこ
  と数十百里」=数十と百の間、漢文の語法では八十里と一〇
  〇里の間=約五〇㌔前後。 ボーリング調査。石巻平野から
  磐城海岸まで、海岸線から三㌔内陸へ三㌢から五㌢ほどの砂
  層。矛盾
 貞観津波が大きい?   条件の相違?。(1)史料表現に修
  飾?、(2)海河岸構築物の不在、(2)旧暦五月という季
  節性(灌漑井堰の破壊)、(3)地盤沈下規模の相違。
震源位置 ーー貞観津波は北よりか
 3,11京都震度3強。貞観地震、京都有感記録なし(震度2以
  下か)。
 三陸のリアス式海岸湾内、堆積層が少なく、ボーリング調査
  困難。
 貞観津波は3,11と相違して常陸、上総国まで及んでないか。
余震の広がりーー「自余国々」の地震
   一月半後ーー大和国地震ーー名張断層の延長部
   半年後、肥後国の津波地震ーー雲仙・有明海の活断層?
   九州の地震と火山フロントの背景
       アムールプレートとフィリピン海プレートの衝突とマントルの上昇流。

韓半島地震・噴火との連動
   韓国の地震、870年四月(王都慶州)、872年4月(同)、875年2
    月(王都および東部)。『三国史記』による。被害記事はなし。 『大日本地
    震史料』採録漏。
   8・9世紀は韓国でも「地震の旺盛期」だが、870年代の集中は特異。
   十和田カルデラ(列島の有史最大)と韓半島白頭山の噴火の連動、10世紀
    初頭

貞観津波は一〇〇〇年に一度か?
 1454年(享徳三)11月23日 陸奥国津波
 夜半ニ天地震動、奥州ニ津波入テ、山ノ奥百里入テ、カヘリニ人多取ル
  (『王代記』山梨県史資料編六)
 約一月後(朝鮮王朝暦、端宗王二年十二月甲辰)に、朝鮮の南部、慶尚道・
  全羅道などで大地震。多数の圧死者(『朝鮮王朝実録』)。
この連動構造は現在も生きているか?
(1)旱魃・飢饉・疫病ーー温暖化
  ロットネスト海進期(8/9世紀から)ー1・2度の温度上昇ー九世
紀後半に、特に急激(屋久杉、尾瀬泥炭)。 気候不順、旱魃。
  清和天皇詔「年ごろ、水旱時ならず。疫癘しばしば發す」(859
年貞觀1)。
  epidemic。疱瘡、インフルエンザ(韓半島も)。866年(貞観8)
にピーク
(2)富士山の大噴火、別府鶴見岳の噴火、阿蘇の活動
富士山の大噴火。864ー866(貞観6-8)
  富士噴火史上、最大。青木ケ原溶岩流と富士五湖の形成。
  火山性地震、火山雷、大噴火。恐るべき火山神に地震の実態をみ
る。
  山頂に石造りの「社宮」を幻想する。
阿蘇噴火。864年10月
  阿蘇。日本を代表する火山(『隋書』)。カルデラ池が大きく震
動、噴火、石神の崩壊。 「亀筮」の結果は「水疫の災」。山頂に
「神院」
別府鶴見岳の噴火 867年(貞観9)
  記録に残る鶴見岳唯一の噴火。 火山池の震動、硫黄噴出、火山
(3)前年(貞観10年)の播磨・摂津地震
京都有感地震、20回
   7月8日 、京都家屋倒壊の地震ー震度5弱?
   震源地、播磨、郡役所・寺院など倒壊。摂津でも、地震・余震強し。
   占いー摂津広田社と生田社の神の怒り。六甲山地東南縁断層帯
播磨山崎断層の活動。マグニチュード7.0以上、
   山崎断層(加古川・姫路・相生の北を通過)から、地震波が摂津へ
   山崎断層の地震神ー姫路市北部、広峰神社(素戔鳴神社)。
(4)祇園御霊会の起源ーー貞観地震の翌月
   播磨広峰神社から「牛頭天王」(=素戔鳴尊と同体)が移座。
   旱魃・疫病からの「悪神」を祭るーー前年の地震神を祭った。
   牛頭天王は広峰神社から移座(「廿二社註式」)。
   日本の地霊=地震神=地底に棲む神、スサノオ。
   アマテラスへの怒り。「山川ことごとく動き、国土みな震りき」
    (『古事記』上)
(5)地震神話と地霊ータカミムスビ・スサノウ・オオアナムチ
   8・9世紀はプレート間地震だけでなく、局地的な
   地震、しかも京都畿内の群発地震が多い。そして地震
   が少し収まったかと思うと火山が噴火する。しかも温
   暖化を一つの条件とした旱魃・疫病の流行によって飢
   饉が社会を直撃するという時代であった。
   地震・噴火が、この時期の政治社会に巨大な影響を
   もたらしたことが、これまでの歴史研究の視野に入っ
   ていなかった。たとえば887年(仁和地震、南海プ
   レート間地震は光孝天皇を直撃、直後に死去。
 大きな反省。歴史環境学の必要。学問の総点検。

 特に神話論。中国伝来の陰陽道を支えにして、当時の
   人々も社会意識としては、見えない自然を見ていた。
   見ようとしていた。神話の認識力を軽視してはならな
   い。我々はどこまで進歩しているか。事実にそくして
   謙虚にみて進歩を探る歴史認識。
   天孫降臨と火山神話ーー最大・最強の神、
    火山神(地震神・雷神)
天地創造神ーータカミムスビ
   タカミムスビーー大和朝廷の本来の主催神、天の最高神はアマテラスで
  はなく、このタカミムスビで。「日神」「月神」の「祖」。アマテラスは
  副次的な神。
   「天地を鎔造した功」をもつ創造神(『日本書紀』(顕宗紀、五世紀末
  の大王)所載の対馬と壱岐の豪族の証言)
   天地鎔造ーー鍛冶と鋳造。
   カグツチ、スサノオ、オオアナムチ、彼らの「祖」神。オオアナムチ
  「神造島」を「冶鋳」
   日本神話の原風景としての「磐石飛び乱る」火山山巓の風景
騎馬民族国家説から「東アジア火山国家説」へ
   騎馬民族国家説の一つの根拠。騎馬民族は鍛冶民族(馬具生産とユーラ
  シアの鉱業資源の掌握)。彼らが日本にタカミムスビ信仰を持ち込んだ。
 東北アジアの火山分布 (江原『中国大陸の火山・地熱・温泉』九州大学
  出版会)
 (1)カムチャッカから日本列島につづく太平洋プレートの沈込みにともなう
  火山帯、(2)内モンゴル自治区の大興安嶺山脈と黒龍江省から韓半島にむか
  う長白山脈に広がるホットスポット型の玄武岩質火山」
   神話の共通性の条件、ユーラシア東部の地殻運動の自然的共通性
まとめにかえて
   (イ)東アジアの噴火・地震ーー騎馬民族国家説から火山神話国家説へ
        東アジア共同体の基礎。
   (ロ)歴史常識の見直し、科学化
     文理融合とそれにもとづく歴史像の見直しの絶対的な必要。

   (ハ)文理融合ーー大学がやってきたことの点検
   1936年の今村の仕事以降の全体的な自己点検。
   学術の全体性、統合性と学術の社会的責任のためにも、各分野の研
    究者が必要な内省をする条件としての諸学融合、文理融合。
   地震学・防災学・土木工学・原子力工学の統合・融合。
   (ニ)真の神話と「安全神話」ー無縁・無力と叡智
        神話、見えない物を見る。
        「安全神話」、見える物を見えなくする。
      人間の無力の実在としての放射線

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  • 1. はじめにーー今村明恒の提言 列島の「地震の旺盛期」の基準 ー「三陸沖地下大活動」 (1)7世紀末期から9世紀末ーー貞観津波が代表 (2)16世紀末から18世紀初頭、 (3)19世紀半ば以降 「とくに第1期、第2期はその期間あまり長からざるにかか わらず、地震活動が、この間に本邦における地震帯の全系統 を少なくも一巡している。各期における活動の原因が広く日 本に対して働きつつあった一勢力にありとみる時、斯様な現 象の起こるのもむしろ自然のように思われる」 (『地震』8巻3号、12号、1936年。東京大学理学部 地震学教室)
  • 2. 貞観地震以前 (1)7世紀末、8世紀前半の地震  678年筑紫地震 ー水縄断層  684年南海地震 ー南海トラフ沿いのプレート境界地震  701年丹後地震(局地)  715年遠江・三河地震 ー天龍上流平岡断層( OR中央構造線)  734年畿内地震 ーーー誉田断層・生駒断層系、M7.1  誉田山古墳の前方後円形を破壊。家屋倒壊・山崩・断層・余 震。飢饉と疫病の中、衝撃大。聖武、畿内・大和地霊を恐れ る。  聖武、周の文王の故事(天譴思想)により「責任は我一人、 恐れず遷都しない」と宣言。しかし、仏教帰依を強め、739 年大仏建立宣言。740年近江に大仏建立開始し、同時に山城 恭仁京建設ー近江紫香楽京大仏構想。  744年肥後国地震  745年美濃地震ー養老桑名四日市断層帯ー紫香楽・恭仁京 直撃  大仏は奈良へ。地震は政治史に大きな影響
  • 3. (2)8世紀後半の噴火  8世紀前半は局地地震(中央構造線沿い)→→8世紀後半、 地震は静穏化し、噴火の時期  (イ)765年大隅海底火山の噴火ーー大穴持命(オオアナムチ)の噴 火  神の「冶鋳」(冶金と鋳造)の仕業による「神造嶋」。神 の「アズマヤ」のような石組み。本宅は桜島か。  益田勝実『火山列島の思想』、保立道久『かぐや姫と王権神 話』  日本の最大の神は火山神ー地震神。大穴持命とは大国主命の 自然神・火山神としての名。「アナ=噴火口、ナ=大地」。  (ロ)霧島など九州火山の噴火  771年豊後の別府鶴見岳の小噴火。  788年、大隅国贈於郡の曾乃峯(霧島御鉢)の大噴火。  霧島への「天孫降臨」神話の現場。  10世紀、書写山の性空上人。霧島で修行。身辺に地震を自 由に起こせる。  (ハ)富士の大噴火  800年。足柄路をふさぐ、箱根道を造る。
  • 4. (3)九世紀前半の地震・噴火  (1)桓武ーー全体として静謐。  (2)嵯峨 ーー関東地震  (3)淳和 ーー京都群発地震。大地動乱の時代のク ライマックスの到来を告げる。  (4)仁明ーー群発地震はおさまるが噴火。 (在位中の京都有感地震の年間平均は2,5回 ほど)。 伊豆神津島の大噴火ー火山の女神ー「地 (な)の神」ー山の神は女の火山神。  (5)文徳ーー『方丈記』、東大寺の仏頭落下の地震。 文徳の陵墓は「地震神」に狙われた。 地震の神が追跡する足音。
  • 5. 東日本太平洋岸地震のプレート深部断層と類 似 東北地方のボーリング調査で貞観津波痕跡発見  陸奥国の地、大いに震動す。流光、昼の如く 隠映す。しばらく人民叫呼して、伏して起きる ことあたわず。あるいは屋倒て圧死し、あるい は地裂けて埋殪(埋死)す。馬牛は駭奔し、あ るいは互いに昇踏す。城郭・倉庫・門櫓・墻壁 など頽落して顛覆すること、その数を知らず。 海口は哮吼し、その聲、雷霆に似る。驚濤と涌 潮と、泝洄し、漲長して、忽ちに城下に到る。 海を去ること数十百里、浩々としてその涯を弁 ぜす。原野道路、全て滄溟となる。船に乗る暇 あらず、山に登るも及び難し。溺死するもの千 ばかり、資産・苗稼、殆ど一つとして遺ること なし(『日本三代実録』貞観十一年五月廿六日
  • 6. 現代語訳  陸奥国の大地が大いに震動した。(夜)、流光が 昼のように空をおおい照らした(地震発光の最初の記 録)。直後、人民は叫び呼び、地面に伏して起きあ がれない。家屋が倒れて圧死し、断層の中に埋 まって死んでしまう。馬牛は、驚き走って踏みつ けあう。城郭や倉庫、門櫓、垣壁などの崩落と転 倒は数知れない。海口は吠えたて、その声は雷電 のようであった。そして、激しい波と高潮がやっ てきて、川をさかのぼり、また漲り進んで、たち まち多賀城直下に到来した。海を離れること数十 百里の距離まで冠水した様子は、広々としてその 果てを区別できない。原野や道路はすべて青海原、 船に乗る余裕もなく、山に登る時間もなく、その 中で、溺死するものは千余人。資産や田畠の作物 は、ひとつとして遺ることなく全滅した。
  • 7. ? プレート境界地震としての共通性と差異 津波遡及・冠水域の比較ーー今後の調査が必要  3,11津波の遡及域。北上川、河口から約五〇㌔、11センチ の水位変化。冠水域。内陸約5㌔(道路でストップ)  貞観津波の遡及域。不明。冠水域。文章表現、「海を去るこ と数十百里」=数十と百の間、漢文の語法では八十里と一〇 〇里の間=約五〇㌔前後。 ボーリング調査。石巻平野から 磐城海岸まで、海岸線から三㌔内陸へ三㌢から五㌢ほどの砂 層。矛盾  貞観津波が大きい? 条件の相違?。(1)史料表現に修 飾?、(2)海河岸構築物の不在、(2)旧暦五月という季 節性(灌漑井堰の破壊)、(3)地盤沈下規模の相違。 震源位置 ーー貞観津波は北よりか  3,11京都震度3強。貞観地震、京都有感記録なし(震度2以 下か)。  三陸のリアス式海岸湾内、堆積層が少なく、ボーリング調査 困難。  貞観津波は3,11と相違して常陸、上総国まで及んでないか。
  • 8. 余震の広がりーー「自余国々」の地震  一月半後ーー大和国地震ーー名張断層の延長部  半年後、肥後国の津波地震ーー雲仙・有明海の活断層?  九州の地震と火山フロントの背景 アムールプレートとフィリピン海プレートの衝突とマントルの上昇流。 韓半島地震・噴火との連動  韓国の地震、870年四月(王都慶州)、872年4月(同)、875年2 月(王都および東部)。『三国史記』による。被害記事はなし。 『大日本地 震史料』採録漏。  8・9世紀は韓国でも「地震の旺盛期」だが、870年代の集中は特異。  十和田カルデラ(列島の有史最大)と韓半島白頭山の噴火の連動、10世紀 初頭 貞観津波は一〇〇〇年に一度か?  1454年(享徳三)11月23日 陸奥国津波  夜半ニ天地震動、奥州ニ津波入テ、山ノ奥百里入テ、カヘリニ人多取ル (『王代記』山梨県史資料編六)  約一月後(朝鮮王朝暦、端宗王二年十二月甲辰)に、朝鮮の南部、慶尚道・ 全羅道などで大地震。多数の圧死者(『朝鮮王朝実録』)。 この連動構造は現在も生きているか?
  • 9. (1)旱魃・飢饉・疫病ーー温暖化 ロットネスト海進期(8/9世紀から)ー1・2度の温度上昇ー九世 紀後半に、特に急激(屋久杉、尾瀬泥炭)。 気候不順、旱魃。 清和天皇詔「年ごろ、水旱時ならず。疫癘しばしば發す」(859 年貞觀1)。 epidemic。疱瘡、インフルエンザ(韓半島も)。866年(貞観8) にピーク (2)富士山の大噴火、別府鶴見岳の噴火、阿蘇の活動 富士山の大噴火。864ー866(貞観6-8) 富士噴火史上、最大。青木ケ原溶岩流と富士五湖の形成。 火山性地震、火山雷、大噴火。恐るべき火山神に地震の実態をみ る。 山頂に石造りの「社宮」を幻想する。 阿蘇噴火。864年10月 阿蘇。日本を代表する火山(『隋書』)。カルデラ池が大きく震 動、噴火、石神の崩壊。 「亀筮」の結果は「水疫の災」。山頂に 「神院」 別府鶴見岳の噴火 867年(貞観9) 記録に残る鶴見岳唯一の噴火。 火山池の震動、硫黄噴出、火山
  • 10. (3)前年(貞観10年)の播磨・摂津地震 京都有感地震、20回  7月8日 、京都家屋倒壊の地震ー震度5弱?  震源地、播磨、郡役所・寺院など倒壊。摂津でも、地震・余震強し。  占いー摂津広田社と生田社の神の怒り。六甲山地東南縁断層帯 播磨山崎断層の活動。マグニチュード7.0以上、  山崎断層(加古川・姫路・相生の北を通過)から、地震波が摂津へ  山崎断層の地震神ー姫路市北部、広峰神社(素戔鳴神社)。 (4)祇園御霊会の起源ーー貞観地震の翌月  播磨広峰神社から「牛頭天王」(=素戔鳴尊と同体)が移座。  旱魃・疫病からの「悪神」を祭るーー前年の地震神を祭った。  牛頭天王は広峰神社から移座(「廿二社註式」)。  日本の地霊=地震神=地底に棲む神、スサノオ。  アマテラスへの怒り。「山川ことごとく動き、国土みな震りき」 (『古事記』上)
  • 11. (5)地震神話と地霊ータカミムスビ・スサノウ・オオアナムチ  8・9世紀はプレート間地震だけでなく、局地的な 地震、しかも京都畿内の群発地震が多い。そして地震 が少し収まったかと思うと火山が噴火する。しかも温 暖化を一つの条件とした旱魃・疫病の流行によって飢 饉が社会を直撃するという時代であった。  地震・噴火が、この時期の政治社会に巨大な影響を もたらしたことが、これまでの歴史研究の視野に入っ ていなかった。たとえば887年(仁和地震、南海プ レート間地震は光孝天皇を直撃、直後に死去。  大きな反省。歴史環境学の必要。学問の総点検。  特に神話論。中国伝来の陰陽道を支えにして、当時の 人々も社会意識としては、見えない自然を見ていた。 見ようとしていた。神話の認識力を軽視してはならな い。我々はどこまで進歩しているか。事実にそくして 謙虚にみて進歩を探る歴史認識。
  • 12. 天孫降臨と火山神話ーー最大・最強の神、 火山神(地震神・雷神) 天地創造神ーータカミムスビ  タカミムスビーー大和朝廷の本来の主催神、天の最高神はアマテラスで はなく、このタカミムスビで。「日神」「月神」の「祖」。アマテラスは 副次的な神。  「天地を鎔造した功」をもつ創造神(『日本書紀』(顕宗紀、五世紀末 の大王)所載の対馬と壱岐の豪族の証言)  天地鎔造ーー鍛冶と鋳造。  カグツチ、スサノオ、オオアナムチ、彼らの「祖」神。オオアナムチ 「神造島」を「冶鋳」  日本神話の原風景としての「磐石飛び乱る」火山山巓の風景 騎馬民族国家説から「東アジア火山国家説」へ  騎馬民族国家説の一つの根拠。騎馬民族は鍛冶民族(馬具生産とユーラ シアの鉱業資源の掌握)。彼らが日本にタカミムスビ信仰を持ち込んだ。  東北アジアの火山分布 (江原『中国大陸の火山・地熱・温泉』九州大学 出版会)  (1)カムチャッカから日本列島につづく太平洋プレートの沈込みにともなう 火山帯、(2)内モンゴル自治区の大興安嶺山脈と黒龍江省から韓半島にむか う長白山脈に広がるホットスポット型の玄武岩質火山」  神話の共通性の条件、ユーラシア東部の地殻運動の自然的共通性
  • 13. まとめにかえて  (イ)東アジアの噴火・地震ーー騎馬民族国家説から火山神話国家説へ 東アジア共同体の基礎。  (ロ)歴史常識の見直し、科学化  文理融合とそれにもとづく歴史像の見直しの絶対的な必要。  (ハ)文理融合ーー大学がやってきたことの点検  1936年の今村の仕事以降の全体的な自己点検。  学術の全体性、統合性と学術の社会的責任のためにも、各分野の研 究者が必要な内省をする条件としての諸学融合、文理融合。  地震学・防災学・土木工学・原子力工学の統合・融合。  (ニ)真の神話と「安全神話」ー無縁・無力と叡智 神話、見えない物を見る。 「安全神話」、見える物を見えなくする。 人間の無力の実在としての放射線