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ビジネスがセマンティックに求める未来
- 1. ビジネスが
セマンティックに求める未来
2012.03.08
セマンティック Web コンファレン
ス 2012
渋谷 健
©Takeshi Shibuya . 2012. All Rights Reserved.
- 2. 文書変更履歴
Ve r 更新日 更新者 更新内容
0.01 2012/ 2/ 16 渋谷 健 ド フト
ラ 作成
©Takeshi Shibuya . 2012. All Rights Reserved. 2
- 4. ???
出典:
Never
2017
出典: Wikipedia
2012
2007
©Takeshi Shibuya . 2012. All Rights Reserved.
- 5. 「多様性」
ビッグデータ
「量」 Info
Data
Info Data
Data
「速さ」
「複雑性」
©Takeshi Shibuya . 2012. All Rights Reserved. 5
- 6. 「多様性」
ビッグデータ
「量」 Info
Data
Info Data
Data
「速さ」
「複雑性」 このまま飲み込まれていくのか?
©Takeshi Shibuya . 2012. All Rights Reserved. 6
- 8. つなぐ
Tim Berners-Lee
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- 9. 積みあがる
変化
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- 10. 意思
直感
分析
価値観 結合
検索
保存
存在 記録
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- 11. 聞く
価値観 × 信頼
考える
調べる
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- 12. 本質的
適正
価値観 × 信頼 × 視点
社会生活
創造性
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- 13. 経済・経 構造・制度
営
価値観 × 信頼 × 視点 + 方向性
技術・科
利用者・生活
学
者
©Takeshi Shibuya . 2012. All Rights Reserved. 13
- 14. エネルギー
交通
安全 行政
流通 金融
製造
小売
教育 医療
スマート・シティ
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- 15. “ できない ” はいらない
つながりが“壁 ” を越える
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- 16. LOD は始まり
セマンティックは手段
めることは、もっとも ” ふさわしい“カタ
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- 17. 人が想像することは、
必ず人が実現できる。
ジュール・ヴェルヌ( 1828-1905, 小説家 , フランス)
©Takeshi Shibuya . 2012. All Rights Reserved.
- 18. ご清聴ありがとうございまし
た。
Twitter : @shibutake79
Facebook : @takeshi.shibuya
Blog : Big Future From Small World
http://shibuya-bfsw.blogspot.com/
本資料内容はブログに解説付で掲載いたします。
ご意見お待ちしております。
2012.03.08
セマンティック Web コンファレン
ス 2012
渋谷 健
©Takeshi Shibuya . 2012. All Rights Reserved.
- 19. • 渋谷 健(しぶや たけし)
≪ 略歴≫
– 2002 年 アクセンチュア株式会社 入社
製造流通業を中心に、業務・ SI コンサルティングに従事
– 2008 年 サントリーグループ 株式会社エイチ・ビー・アイ 入社
外食企業向けの経営コンサルティングに従事
ナレッジマネジメント実行責任者、
および、流通システムの開発・運用責任者を務める
– 2010 年 株式会社 ゼンリン 入社(継続)
新規事業開発、人材育成等に従事
事業開発本部 ビジネス開発部 マネージャー
– 2010 年 日本 BPM 協会 運営幹事着任(継続)
日本 BPM 協会の企画・運営に参加
≪ 関連図書≫
– 「クラウドどこでも勉強術」( 2011 年 村上 崇)
インタビュー掲載
©Takeshi Shibuya . 2012. All Rights Reserved. 19
Editor's Notes
- セマンティック。ビッグデータがトレンドとなっている2012年。このキーワードを耳にすることは少なくなくなってきました。このセマンティックはいったいどのような可能性をビジネスにもたらせるのでしょうか。そしてビジネスはどのような未来をセマンティックに、そして LOD に求めればよいのでしょうか。 セマンティックがビジネスにもたらす可能性を考えるためには、 ・私たちの社会に今何が起きているか ・私たちの社会でセマンティックがどういう位置づけで利用されるのか の2点を知ることから始めなければ行けません。 しかし、これは始まりに過ぎません。ビジネスを考えるには、より深い考察が必要です。では、何を、どう考えるべきでしょうか。私たちはどうするべきでしょうか。それを知ることでようやく、セマンティックがビジネスにもたらす可能性が見えてくるはずです。 ビジネスにとって、セマンティックが未来への追い風となるのか、巨大な嵐としてすべてを飲み込むのか、それとも全く別次元の存在となるのか。その答えを探す旅へと出発しましょう。
- まずは改めて私 渋谷 健(しぶや たけし) の自己紹介をさせてください。 もともとはコンサルティング会社のアクセンチュアで、業務コンサルティングに携わっていました。その後、外食チェーン向けのコンサルティングを提供するサントリー系列の HBI という会社に移り、社外向けのコンサルティングと社内向けのナレッジマネジメント導入を行っていました。 このナレッジマネジメントの活動を日本 BPM 協会( BPM-J )に紹介させていただく機会があり、 2009 年の BPM フォーラムにて講演させていただきました。それがきっかけで現職であるゼンリンに声をかけてもらい、現在に至っています。 なお、ゼンリンでは新規事業開発や経営戦略などを主に行っております。また、 BPM 協会のほうでは運営幹事を、ゼンリンが参画している事業連合組合のほうでは外国人観光客をターゲットにした地域活性事業を、そして LOD チャレンジでは実行委員を勤めています。一見、無関係に見えそうな活動ですが、これらは必ずつながってきます。今はそのために一つ一つ要素を紡いでいる段階です。 今回ご紹介する内容は、この LOD チャレンジにて 2011 年 11 月に開催いたしました「 LOD チャレンジデー」で講演させていただいた内容をもとに再構成しています。
- 現在、 2012 年、私たちは大きな、とても大きな変化の中にいます。それはいったいどれほど大きな変化でしょうか。そして今後、どれほどの変化になっていくのでしょうか。 言葉で表すことは簡単ではありません。しかし、具体的に何が起きたかを見ると、変化の大きさを感じることができます。 例えば現在、一人の投手がいます。日本ハムの齋藤投手。わずか 5 年前、彼はハンカチ王子と呼ばれていました。その当時、 2007 年は ・ Web2.0 が叫ばれ始め ・ Mixi が流行し ・フィーチャーフォンが全盛であり ・ iPod が流行し ・日本の顔は小泉首相で ・アメリカの顔はブッシュ大統領 という時代でした。 それからわずか 5 年。ハンカチ王子が齋藤投手になるまでの間に ・ Web2.0 は当たり前のものになり ・ Facebook が 8 億人を超えるユーザを集め ・スマートフォンが主流となり ・タブレット PC が普及し ・リーマンショックが起き ・アラブの春が起き ・ギリシャ危機が発生してとりあえずの回避に至る中 ・日本の顔は 6 回変わり ・アメリカの顔は史上初めての黒人大統領、オバマ大統領になる という変化がありました。 さて、ここでひとつ質問です。皆さんは 5 年前、 2007 年に今日 2012 年の社会を予想することはできたでしょうか。 5 年前の予想よりも小さな変化ですんでいるでしょうか。この問いに対し“できた”と答えられる方はごくごくわずかでしょう。たった 5 年で、私たちの想像をはるかに超える変化が起きているのです。ただし、骨子、大きな道筋までは予想できた方もいるのではないでしょうか。例えば、今ビジネスをリードしている人たちは、そうだったのかもしれません。 では、もうひとつの質問です。今から 5 年後、 2017 年。私たちの社会はどうなっているでしょうか。 この質問にも正確に回答することは困難でしょう。おそらく、今私たちが想像もしていない変化が起きるはずです。しかし、その変化がどのようなものか、可能な限り想定しておかなければ対応が難しくなります。 100% 完璧で具体的な予想は困難であっても、いくつかの可能性は考えられるはずです。その可能性を見ておくことで、今日のビジネスをリードする人々のように、 5 年後の未来でビジネスをリードできるかもしれません。
- では、これから先の5年間を予測する上での骨子、大きな道筋は何をたよりに考えればいいでしょうか。そのキーワードは何でしょうか。すでにマーケットにはいくつかの言葉が並んでいます。例えば ・携帯電話に代表される「スマート(最適化)」 ・電力や資源の問題で注目される「サスティナビリティ(持続可能性)」 ・ 3.11 をきっかけにクローズアップされてきた「レジリエント(回復力)」 といったものがあげられます。ほかにも Facebook に代表される「ソーシャル」、著しく普及している「クラウド」というものもあげられます。少し観点を変えれば、問題が後を絶たない「社会保障制度」、欧州危機で問題が表面化した「金融システム」、世界的な人口増加による「水・食料の問題」、対照的に日本国内では今後大きく社会に影響するであろう「少子・高齢化」、そしてもちろん 3.11 からの「復興」といったものもあげられます。キーワードをあげたら切りがありません。あまりにも多くの情報が入り乱れているのです。 ここで一歩引いて見てみましょう。すると、私たちは今“膨大な情報に取り囲まれている”という状況が見えてきます。誰もがインターネットから気軽に情報を得て、携帯電話で自由に連絡を取り、 SNS で情報発信を行っているのです。現在、情報は ・かつてとは比べ物にならない「速さ」で処理され、伝わり、 ・人類史上最も多い「量」で発生し、蓄積され ・世界のインターネットユーザ20億人分の「多様性」を生み出し、 ・一見しただけでは到底わからない「複雑性」をもって 私たちの周りに存在するようになっているのです。そして、先ほどあげたいくつかのキーワードもこの“膨大な情報”を無視できない環境にあります。それがすべての問題に直結する訳ではありませんが、この“膨大な情報”に対峙することは未来に進むために必然となっています。つまり、 5 年後の未来を占うために、私たちが最も重視すべきキーワードの一つはこの“膨大な情報”=”ビッグデータ“なのです。
- もしこの“ビッグデータ”をうまく利用できれば、社会を大きく変革し、私たちは今はまだ見えていない全く新しい価値を手に入れることができるかもしれません。それは私たちの祖先が文字を手に入れて文明を作り上げたように、動力を手に入れて今日の産業の礎を築いたように、人類の歴史に大きな影響を与えることでしょう。なぜなら、この”ビッグデータ“による世界は、私たちが手にしたことがない、見たことがない可能性にあふれた世界だからです。 しかし、その反面リスクも存在します。例えば Facebook などの SNS で目についたトピック。芸能人のゴシップかもしれませんし、首相が発表した新方針についてのトピックかもしれません。いずれにしても“ビッグデータ”の全体からすれば本当に小さなトピックです。しかし、そのトピックがいつの間にか一人歩きし、多くの人々に影響を与えてしまうことがあります。たとえそのトピックが嘘であったとしてもです。そして“膨大な情報”の中で踊らされ、惑わされ、正しくない選択をしてしまう可能性もあるのです。 そして私たちは今、“ビッグデータ”の未知の可能性ではなく、リスクに直面しています。可能性を見いだす前に、“ビッグデータがもたらす問題を解決しなければいけなくなっているのです。しかし、”ビッグデータ“はかつてない「速さ」「量」「多様性」「複雑性」をもつ未知の存在。今までの常識やテクノロジーで挑むのでは、”ビッグデータ“に私たちはただ飲み込まれ、さらに混沌とした社会がやってくるのを待つことしかできないでしょう。
- では、“ビッグデータ”のリスクを乗り越え、その可能性を手にするために私たちはどうするべきでしょうか。私たちはどのように“ビッグデータ”と対峙すればよいのでしょうか。答えはシンプルです。“ビッグデータ”を手なづけるのです。“ビッグデータ”を構成する情報を図書館の本棚のように整然と管理し、優秀な司書のように必要としている情報だけを的確に提供できる仕組みを実現するのです。
- 次の問題は、具体的にどうやって“ビッグデータ”を手なづけるかです。具体的に“ビッグデータ”を構成する情報を整理して、ユーザに必要な情報を提供する方法が必要なのです。 その解決策は、蜘蛛の巣をイメージすると見えてきます。蜘蛛の巣は、草木や壁を糸でつなぐことを繰り返して作られます。巣は非常に丈夫な構造をしており、ちょっとぐらいの雨風では壊れることはありません。蜘蛛は巣の上を自由に動き回り、ひとたび獲物がやってくれば巣の上であっという間に捕らえてしまいます。この蜘蛛が進化の過程で手に入れた知恵を、“ビッグデータ”を手なづけるために拝借するのです。 つまり、 ・草木の代わりに、“ビッグデータ”を構成する情報を扱い ・糸の代わりに、ネットワークで繋ぎ合わせ ・巣の変わりに、情報の関係構造(オントロジー)を定義し ・蜘蛛が自由に巣の上を移動できるように、情報をオープンに自由に利用できるようにし ・蜘蛛が獲物を捕らえるように、ユーザの問いに瞬時に解を出す そんな仕組みを作ればよいのです。つまり、 WWW の発明者であるティム・オライリーが提唱し続けているセマンティックが“ビッグデータ”を手なづけるための手段なのです。 しかし、これだけの仕組みを一気に実現することは簡単ではありません。“ビッグデータ”の「速さ」「量」「多様性」「複雑性」をすべて手なづけなければいけないためです。実現のためには段階が必要です。では何から始めるのか。すでに取り扱うべき“ビッグデータ”の情報は存在しています。そうであれば、次に取るべきアクションは“つなぐ”こと。そして関係構造を整理して、オープンにしていくことです。つまり、 “ビッグデータ”を手なづけるためのステップとして、セマンティックを実現するためアクションとして、情報をオープンに繋いで自由に利用できる環境を作る LOD ( Linked Open Data )の取り組みがまず必要なのです。
- LOD の取り組みを始めていくことで、そしてセマンティックを実現していくことで、この先私たちは徐々に“ビッグデータ”を手なづけていくでしょう。そして“ビッグデータ”を利用することで、少しずつ新たな価値が創造され、小さな変化が社会に積み上がっていきます。やがて積みあがった小さな変化が、社会に、そしてビジネスに大きな影響をもたらすことになります。
- “ ビッグデータ” による変化や影響はさまざまな場面で出てきます。しかしながら、もっとも社会に、ビジネスにインパクトを与える変化は、私たち一人ひとりの情報に対する価値観の変化です。価値観は私たちの行動を決める最大の要因であり、モノが欲しい・サービスを利用したいというニーズの根源です。“ビッグデータ”を手なづけることで情報との接し方が代わり、私たちの情報に対する価値観は大きく変わっていきます。この変化を捉え、影響を読むことができれば、将来のビジネスに備えることが可能になります。 では、具体的にどのように私たちの情報に対する価値観は変わっていくのでしょうか。それにはまず、情報に対する価値観の考え方を整理することが必要です。 もともと情報は「存在」しているだけで価値がありました。かつて集落で長老とよばれる人たちが尊敬を集めていたのは、より多くの知識をもつ存在だったからです。 しかし、誰かが持っているだけの情報は、その人がいなければ伝えることができません。そこで情報が「記録」されていることが価値になりました。例えば本がなければ私たち人類は多くの知識を共有することもなく、宗教が広まることもなかったでしょう。 「記録」の次に求められる価値は「保存」です。いくら「記録」しても一過性のものであっては意味がありません。図書館や博物館が人類にとって非常に重要な価値を持っているように、「記録」されたものが「保存」できること、「保存」されていることに価値が置かれるようになるのです。 「保存」した情報は使われる機会も増えていきます。そうなると今度は必要な情報を簡単に見つけ出す仕組み、つまり「検索」できることに価値が移ってきます。今ではほとんどが電子化されていますが、図書館は蔵書をカードに書き記して検索できる仕組みが古くから利用されていました。 そして「検索」された情報は、それ一つだけで必ずしも十分な答えを与えてくれるとは限りません。いくつかの情報を一ヶ所で繋ぎ合わせる、つまり「結合」できることが必要となります。法律の判例集、医療の症例集などの専門書が価値を持っていることもその一例でしょう。なお、ここでいう「結合」には、情報の収集(アグリゲーション)の意味も含んでいます。 しかし、「結合」した情報には重複するものや不必要なものが含まれていることもあります。また、単純に「結合」するだけではわからない情報が眠っていることもあります。そこで次に「分析」できること、「分析」されていることが求められます。弁護士や医者などの専門家による報告書がもつ価値がその例に当たります。なお、ここでいう「分析」には、情報の整理(キュレーション)の意味も含んでいます。 ただ「分析」された情報にも一つ問題があります。色々な観点から「分析」を重ねた結果、価値のある情報には違いはないのですが、理解するためには難しい内容になってしまうことが少なくないのです。実際、専門家の報告書は確かに重要なことは書いてあるのですが、素人が簡単に理解できるものではありません。そこで「直感」的にわかりやすくすることが求められるようになります。人生の教訓などをこどもにもわかるようにするために仕立て上げられた童話や童謡が例としては挙げられます。 「直感」的にわかりやすい情報を得れば、あとは行動するだけです。しかしながら、実際にはどういう行動をとればいいのか迷ってしまうことも少なくありません。そこで最後に求められる価値が行動そのものを決める「意思」です。信じることができるカリスマ的リーダーの声、先人の英知が示す道のように、“どういう行動を取るべきか(=行動への意思決定)”それ自体を示す情報が高い価値を持つようになるのです。 こうして示された「意思」に従い行動を続けるとどうなるでしょうか。自分の「意思」なく、誰かの「意思」に従うだけの行動に疑問をもつようになることは想像にたやすいでしょう。そしてその疑問に向き合うことで、再び深くものごとを考え、まったく新たな情報(この場合は思想といったほうがいいかもしれません)が生まれてきます。結果、生まれた情報は、「存在」するだけで影響を与えるだけの価値を持つようになるのではないでしょうか。 このように情報に対する価値観は「存在」「記録」「保存」「検索」「結合」「分析」「直感」「意思」とつみあがっていき、そして再び「存在」へと戻ってきます。すくなくとも過去の人類の歴史をみると、この価値観の変化は説明することができます。 では、この価値観の変化を現代のビジネスに当てはめてみたらどうなるでしょうか。まず、「存在」の価値を提供しているのは、特定領域の技能・知識を持っている人・職人でしょう。そして「記録」はマニュアル、レポートなどの文書、「保存」はデータベースがその価値を提供しています。そして「検索」の価値を提供しているのは、インターネットの検索エンジンです。その証拠に Google はいまや世界的な企業にまで成長しています。そして現在、クラウド上でのマッシュアップがサービスとして普及し「結合」の価値を提供するまでにいたっています。 つまり、今後提供されていく価値は「分析」・「直感」・「意思」だと考えられるのです。すでに「分析」についてはアナリティクス・サービスの提供が一つのビジネストレンドとなってきています。そして「直感」は、ユーザのリアルな行動と融合する O2O サービスなどで価値が具現かされていくでしょう。さらに「意思」の価値、つまり私たちの行動を具体的に提案するサービスとして、セマンティックを利用した行動提案サービスなどが提供されていくと考えられるのです。
- “ ビッグデータ”をセマンティックと LOD によって手なづけることで情報に対する価値観の変化が起きます。この変化に対応した商品やサービスを提供すれば、この先成功するビジネスを実現できるのでしょうか。残念ながら価値観に対応するだけでは不十分です。なぜなら、価値観はあくまでもニーズの源泉でしかなく、ニーズを決めるには他の要素も必要だからです。価値観と同様に私たちの社会やビジネスに大きく影響し、ニーズに関わる他の要素も探らなければいけません。 その中で特に優先的に考えるべきものは信頼です。普段の生活を見返してみてください。どんなに自分の価値観にあった商品やサービスでも、信頼に足りる相手が提供し、納得のいく内容でなければ、その商品やサービスを利用しようとはしないはずです。提供すべき価値を見据えたのであれば、まず信頼を確保することが必要なのです。むしろ、信頼がないのであれば、どのような価値を提供しても意味がないといってもいいかもしれません。ビジネスに信頼は非常に重要な要素なのです。とくに膨大な情報に囲まれる今後、信頼の重要性はさらに増していきます。 ではその信頼はどうやって確保すればよいでしょうか。それには大きく3つの方法があります。それは「調べる」、「聞く」、「考える」の3つです。 「調べる」とは、しかるべき人がしかるべき手法で直接事実を確認することで信頼を得ていく、というものです。土地は測量士が測量器具を使って、ワインの品質はソムリエが自らの舌をつかって「調べる」ことで事実確認をするからこそ、多くの人びとからの信頼を得ているのです。 「聞く」というのは、その事実を第三者に保証してもらうことで信頼を得ていく、というものです。クレジットカードはその最たる例です。自分の経済的な信頼を、クレジット会社に保証してもらっているからこそ、商品やサービスを提供する店舗からの信頼を私たちは得ることができるのです。また、口コミにより“みんなが言っている”という事実で信頼を得ているケースも少なくありません。 この「調べる」と「聞く」はすでに起きている事実については信頼を確保することができます。しかしながら、新しく始めること、これから創り出すものについては十分に信頼を確保することはできません。そこで必要になるのが「考える」という方法です。すでに得ている事実情報を論理的に組み合わせる、または実際に何かを試して体験した結果から考察を重ねることで、信頼にたる情報としていくのです。新商品や新しいビジネスを立ち上げる際の計画書はその代表例でしょう。 この「調べる」、「聞く」、「考える」という 3 つの方法によって信頼を確保していくわけですが、ここでひとつ注意が必要です。それはいずれの方法も完全ではないということです。例えば「調べる」には時間とコストがかかるため、現実的な手段として採用できないこともあります。「聞く」という方法は、第三者からの情報に誤りが含まれない可能性は否定しきれません。そして「考える」ことによって得た結果は主観的になりやすく、他者に伝えることが難しくなるケースもありえます。つまり、信頼を確保するには「調べる」、「聞く」、「考える」の方法を状況に応じて組み合わせることが必要不可欠なのです。
- セマンティックと LOD でビックデータを手なづけることで起きる情報に対する価値観の変化に対応し、必要な信頼を得ることができればビジネスとしての土台が出来上がります。次はそこでいかに具体的なニーズを捉えるか、がポイントになります。 “ ニーズを捉える”という課題は、とくにマーケティングの観点から言えばビジネスの永遠の課題です。ビジネスを進める上で、ニーズ=顧客が真に求める価値が何か、ということは常に考えなければいけません。なぜ常に考えなければいけないかというと、ニーズは社会環境に応じて変わり、その捉え方も変わっていくからです。つまり、社会環境を踏まえてニーズを捉えるための「視点」を明確にすることが必要です。マーケティングで環境分析を重要視する理由のひとつはここにあります。 では、今後の変化の中で具体的にどのような視点を私たちは持つべきでしょうか。まず「本質的であるかどうか」という視点が必要です。私たちを取り巻く環境は複雑に絡み合っています。表面的な問題を単純に解決する、目に付いたユーザの要望に場当たり的に応えていく、というだけでは十分にニーズを満たすことはできません。環境を俯瞰的に捉え、深い考察を重ねて、根本的な問題を捉えること、そして根本的な解決策を考えることが求められるのです。 次に「適正であるかどうか」 、という視点も求められます。地球規模でのエネルギー枯渇の問題、 Co2 排出量の問題などを背景に確実に私たちの生活にはエコが定着してきています。また、長期化した日本の景気低迷・消費低迷を受けてかつてのような大量消費は行われなくなっています。第 3 セクターなどの過剰な投資が回収できないままになっているという状況もあります。必要なものを必要な形で必要なだけ利用できること、それが求められてきます。 「創造性があるかどうか」 、という視点も重要です。私たちの周りには情報があふれています。ユーザは膨大な情報の中から、“欲しい”と思うものを見つけ、選ぶのです。当然、ありきたりな情報では見向きもされません。今までにない驚きと感動を提供する「創造性」を発揮し、他とは異なる特徴を打ち出していくことが必要不可欠なのです。 そしてもうひとつ「社会生活」からの視点も必要です。商品やサービスを使う側、その価値を享受する側、つまりユーザの視点で考えることが必要なのです。ここで気をつけるべきことは“ユーザが何を必要としているか”を考えるだけでは不十分です。“ユーザが何をしたいのか”、“どんな問題を解決したいのか”を考え、それを実現するための価値を考えていくことが必要なのです。 価値観の変化への対応と信頼の確保の上で、これら「本質的」・「適正」・「創造性」・ 「社会生活」の 4 つの視点をもってさらに深くマーケットを見つめることで、顧客のニーズが見えてきます。そして具体的な検討を重ね、アクションを起こしていくことでビジネスの実現に近づいていくのです。
- 変化する情報に対する価値観への対応と信頼の確保によってビジネスの土台を築き、その上でニーズを捉えるための視点をもったとしても、まだひとつ大きな問題があります。その視点の先に見ているものは、“ビッグデータ”の社会であり、その社会に潜んでいるニーズを探し出してこなければいけないからです。セマンティックと LOD によって“ビッグデータ”を手なづけたとしても、それは広大な海に沈んだ宝を探しに行くようなものです。闇雲に探しても簡単には見つけることはできません。 そこで必要になるのが、ビジネスを実現するための明確な「方向性」です。言い方を変えれば、実現するビジネスのコンセプトを明確にすること、ビジネスの実現によって解決すべき社会の課題を明らかにすることが必要なのです ではどうやって「方向性」を定めればよいでしょうか。そのヒントは ・技術・科学的な課題の解決 ・利用者・生活者の課題解決 ・経済・経営的な課題の解決 ・社会構造的な課題の解決 の 4 点にあります。 技術・科学的な課題とは、新しい技術を実現したり、科学的な研究の成果を得たりするために解決すべき課題です。より高度な技術や科学を実現する手段を提供する、と言い換えることもできます。例えば原子力に変わる新しいクリーンエネルギーの開発、エイズの治療薬の開発といったものが挙げられます。 利用者・生活者の課題解決とは、要するにユーザの利便性の向上です。このとき、まずユーザの商品やサービスの利用形態、生活習慣などを踏まえなければいけません。その上で、すでにユーザが抱いている不満を解決する、またはまだユーザが気づいていない改善・向上の可能性を提案する価値を提供していくのです。ユーザエクスペリエンスを追及していく、という言い方もできるでしょう。身近なところでは、多種多様なスマートフォンのアプリもその例になります。 経済・経営的な課題の解決とは、簡単に言ってしまえば企業の売上げや利益が上がるようにすることです。国という単位で考えれば GDP の成長となります。シンプルな言葉でまとめれば、“戦略と実行”を提供することになります。企業のコスト削減や収益拡大のためのマーケティング活動の提供などが具体例となります。 社会構造的な課題とは、医療、エネルギーや社会保障などを含めた社会システムそのものの課題です。日本の年金問題、少子高齢化、地域経済格差、医療格差などの具体例には尽きません。今日、私たちを取り巻く複雑な社会問題の解決する価値を提供していくのです。 これら 4 つのヒントをもとに、より具体的に、明確にイメージできるレベルで「方向性」を定義するのです。そうすることで変化する価値観に対応し信頼を得ながらニーズを捉えた提供価値、すなわちビジネスが実現できるのです。
- ビックデータを手なづけ、変化する情報に対する価値観へ対応し、重要性を増す信頼を確保しながら、方向性を定めて、新たな視点から捉えたニーズにこたえる。これらの要件をすべてそろえて実現されるビジネスとは一体どのようなものでしょうか。そのようなビジネスは本当に実現可能なのでしょうか。実はすでに動き始めているものがあります。それはスマートシティです。 スマートシティは、日本語で定義するならば「持続可能な最適化された社会」を実現するための取り組みです。エネルギーだけでなく、安心・安全、交通、医療、教育、行政、さらには金融、製造、流通、小売などのすべての社会システムの最適化を目指すものです。つまり、都市そのものを生まれ変わらせる、という明確な「方向性」があるのです。 このスマートシティでは情報に対する価値観は高度化しています。複雑に絡み合う情報が「結合」し、「分析」されることはもとより、「直感」的にその情報を利用して、人びとに「意思」を示すものでなければいけません。そこに暮らす人びとを含め、複雑な社会システムの情報がすべてが連動して、初めて実現できるのです。当然、“ビッグデータ”がそこには存在します。したがって、 LOD やセマンティックは必要不可欠になります。 また、都市の社会システムを扱うわけですから、「信頼性」が確保されていないことには話は進みません。サービスは「本質的」な問題を解決可能であり、「最適」な形で提供されることは必須です。さらなる都市の発展を考えれば「創造性」も不可欠でしょう。もちろん、これらは「社会生活」の視点で築かれたサービスでなければいけません。 スマートシティの取り組みは世界中で行われています。スマーターシティのコンセプトの元で、各分野で新たなサービスもたくさん登場してます。そしていずれは個々の都市で実現されたスマートシティの機能がつながり、さらに新しい価値を生み出すことも考えられます。 IBM が打ち出しているスマータープラネットが実現されるのです。派生的にまったく別の側面で、“ビッグデータ”を活用する新たなビジネスも生まれてくるでしょう。そのとき、 LOD やセマンティックはさらに必要不可欠な手段として位置づけられることになるのです。
- “ ビッグデータ”を手なづける、ということは簡単ではありません。しかしながら、 LOD やセマンティックという実現手段を私たちは手に入れています。それは確実に私たちの情報に対する価値観に変化を与え、信頼の重要性を高め、ニーズを捉えるための視点を変化させます。そして。広大な海に沈んだ宝を探すようにニーズを捉えることがビジネスには求められることになるでしょう。すでにスマートシティの取り組みは始まっていますが、こうした変化の中で本当にビジネスは実現していけるのでしょうか。 もし“できない”と思うのであれば、すこし思い起こしてください。5年前には想像もできなかったことが今は実現されているのではないでしょうか。そうであれば、今“できない”ことが、数年先には“できる”ことに変わっている可能性を否定することができるのでしょうか。 もちろん、すべてを一度に実現することはできません。 LOD で情報をつなぎ、それをきっかけに人と人がつながり、様々な活動同士がつなげていく。そうすれば、今まで見えなかった可能性が見えてくるはずです。その可能性を少しずつ実現し、形に変えていけば、新しい価値が生まれてきます。つながりは必ず壁を越えます。そのとき、セマンティックが間違いなく、ビジネスを後押しする技術となります。
- 今私たちの前で私たちの社会に影響を与え始めている“ビッグデータ”。この“ビッグデータ”を手なづけなければいけません。そしてビジネスの価値へと賞 k させていくことが必要なのです。 しかし、いきなりすべてはできません。だからこそ、始まりとして LOD があるのです。データをつなぎ、そのデータの背景にある人や場をつなぎ、新しいイノベーションを起こしていくのです。そして、そのつながりから見えた可能性を実現する手段としてセマンティックが必要なのです。 では最終的に何を求めることになるのでしょうか。一言で言えば、もっともふさわしい形です。この時代の価値観に対応し、信頼を確保し、視点を定め、明確に社会に価値を与える方向性に基づく価値の実現を追及していくことが必要なのです。セマンティックがあることで、その可能性の追求が許され、ビジネスは、そして社会は無限の広がりを得ることができるのです。
- 十五少年漂流記で有名なジュール・ヴェルヌは、「人が想像することは、必ず人が実現できる。」という言葉を残しました。事実、先人は何度も未知の世界を乗り越えてきました。想像の世界でしかなかったものを現実の世界でカタチにしてきました。先人がそうであったように、おそらく私たちもこの先の未来で必ず実現していくことになります。 つまり、ビジネスがセマンティックに求めている未来は、まさにこの言葉に象徴されるのです。ビジネスがセマンティックに求めるもの、それはジュール・ヴェルヌの言葉を実現し続け、まだ見ぬ未来を創造するためのエンジンとなること、そこにあるのです。