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2018 年 1月 25 日
グロービス経営大学院
社会課題解決型ビジネスプラン研究プロジェクト
森川・金子・鷹野・岸本
「子どもの貧困を解決する」
はじめに
 私たちは、日本の子どもの貧困問題に対し、子どもた
ちが生まれ育った環境に関わらず、自分の将来の可能性
にチャレンジできる社会を創ることにより、世代間の貧
困連鎖を断ち切ることを目標としています。
【日本の貧困率】
相対的貧困率  15.6%
子どもの貧困率  13.9%
ひとり親家庭の貧困率  50.8 %
出典:厚生労働省平成 28 年「国民生活基礎調査」
 ミッション
 経済的困難を抱えた世帯の若者は、中卒・高卒で就職するケースが多く
、就職しても早期に離職したり、定職につかないケースもあるのが実情
です。
 生活費や学費を稼ぐためのアルバイト経験などから、「仕事=生活費
を稼ぐ手段」という考えが強く、将来について立ち止まって考える時間の
ないまま、親や身近な先輩などをロールモデルとして卒業後の進路を考
えることが多くなります。
 我々は主に高校卒業後就職を視野に入れている若者に対し「高校生イン
ターンシップ」を提供することにより、経営者や先輩社会人との対話・仕
事経験を通じて、若者が新たな夢やロールモデルを見つけ、目標に挑戦
するきっかけを作りたいと考えています。
 
 そして、世代間の貧困連鎖を断ち切る社会を目指します。
 課題意識
インターンシップ事業について
自社
就職希望の
高校生
インターン希望登録
企業とのマッチング・
事前事後サポート
学生紹介
インターンプログラ
ム提供 企業
NPO
個人事業主等
学校
NPO
連携
就職を希望している高校生に対し、インターンシップ受
け入れ企業を紹介・マッチングを行う
経営層やリーダーとの対話を通じ、高校生が新たな
目標や人生のロールモデルを見つけることを目指す
サポート
 高校生インターンシップ概要
 近年、産業構造や就業構造の変化により、学校から社
会・職業への移行が円滑に行われていないという課題
認識により、文部科学省においても、学校におけるキャリ
ア教育の重要性が叫ばれている。
 インターンシップ制度を導入している高校は 8 割を超え
るものの、実際に体験した生徒は普通科では 2 割にと
どまる。内容は 2~3 日の職場体験がほとんど。
公立高校インターン実施率  81.8%
在学中に 1 回でも体験した生徒の割合  32.2%
  内訳)普通科  20.1%
  内訳)商業科・工業科等  65.3%
出典:国立教育政策研究所「 H27 年度における職場体験・インターンシップ実施
状況等」
 既存の高校生インターンシップ
 一般的なインターンシップとの違い
職場体験的インターンシップ 当事業のインターンシップ
職業体験的な経験はアルバイト等で持っている生徒が多い
非日常的な体験として、社会人との対話を重視
公共施設:消防署・図書館等
 
小売店:スーパー・コンビニ等
福祉施設:介護・保育等
派遣先
企業:地域の中小企業
個人:個人事業主・経営者
目的
職業観の形成
チャレンジ精神の涵養
ロールモデルの獲得
職業観の形成
学ぶ意欲の喚起
社会人マナーの会得
体験内容
棚卸や整理・接客等の作業体験
が中心
人生観や職業観、企業理念に基
づいた仕事についての対話・見
学が中心
トライアルの実施結果
・日時: 2017 年 12 月 25 日 ( 月 )   10:00~18:00
・参加者:埼玉県定時制高校  2 年生
・協力企業:株式会社ロコっち(地域 WEB メディア)
・協力高校:埼玉県立吹上秋桜高校
・アウトプット: WEB 記事の執筆(インターンでの学び)
・スケジュール
( AM ) 
  藤村社長の起業までの道のり、企業概要・ビジョンの説明
( PM ) 
  ワイズリビングラボ様 取材、たまプライベント打ち合わせ同席
  さくら工房様  HP& チラシ打ち合わせ
  荻原真知子税理士事務所様  HP 作成アフターサポート
 1Dayインターンシップ トライアル実績
 生徒募集用チラシ(参考)
インターン実施前 インターン実施後
仕事することの意味が変化 
「生きるための労働」に加え「社
会への価値提供」という意識が芽
生えた。
仕事への態度が変化 
我慢してやることから、仕事自体
に「やりがい」をもつことの重要
性を認識した。
チャレンジする意識が生まれ
た
失敗から学ぶ意識が高まった。
 生徒の変容
私は仕事に対してやりがいを見つけるのは個人の勝手で、それを見つける絶対的な必要性などこ
れっぽちも無いものだと心のどこかで思っていた部分があった。しかし目の前で今まで何度もやり直
しを経験して、やりがいの重要さを知った人がそう言ったという事が、私の考え方を変えさせてくれ
たんだろうなと思う。(中略)
私が会ったのは、仕事に納得出来ず、自分の納得のいく仕事を求めて行動したり、苦手な事にも手
を出して仕事にしたり、何度も何度も失敗を経験した上で、それでも諦めなかった強くてたくましい
誰かの手本になれるような方達だった。そうじゃなかったらきっとこの文章には上辺だけの「すごい
と思った」というフレーズが乱用されていた。(中略)
そしてこの日、失敗に対する考え方も変わった。人は何かをした時、誰もがそれを「成功した」、
「失敗した」と判断すると思う。「成功だ」と判断した場合は少なからず達成感や満足感を覚え、
「こうすれば成功する」ということを知り、持続していくことで自分の中に経験値として蓄える。
「失敗だ」と判断した場合は「こうすると失敗してしまう」ということを知って、それを知ったまま
にしないで改善することで経験値に変換される。ここまでがインターンシップに参加する前の私の考
え方だ。
今回インターンシップに参加して、この考えに「失敗と成功から得られる経験値の差」が追加され
た。ただ成功を繰り返すのと、失敗を経て成功するを繰り返すのでは果たしてどちらの経験値が高い
だろうか。失敗と聞くとあまりいいイメージがないのは確かだと思う。でもその失敗を経験した上で
成功したとしたら、普通に成功した時の経験値とは比べ物にならない、とても価値のあるものになる
と思う。失敗はけっして悪いことであるとは言い切れない。失敗する事には価値がある。この日は失
敗に対する考え方についても、個人的にとても考えさせられた日だった。
 1Dayインターンシップ 参加生徒の感想(抜
粋)
学生側 企業側
告知・募集
参加モチベーションの向上には、教員
からの推薦やサポートが大事。また、
保護者の影響力も比較的大きい
職業観の変化
起業家個人の過去の経験やビジョン、
使命感などの話を通じて、仕事に対す
る価値観が、「生活費を稼ぐもの」か
ら「自分なりのやりがいを見つけた
い」に変化
課題
インターンプログラム前後のフォロー
アップ、インターン後の継続的なサ
ポート大永の構築が必要
参加企業
課題感やあるべき姿に共感してくれる
企業を開拓
※ ロコっちの場合
地元密着をうたうロコっちでは、もと
もと地元の学生・主婦・シニアの参加
を歓迎。高校生を介したコミュニケー
ションにより、取引先との関係強化、
信頼関係構築ができた。
課題
事業の継続性担保のために、賛同して
くれる企業の具体的なメリットについ
て明確化し、プログラム開発、具体的
企業開拓を実施する
学生側への価値提供には一定の効果が見られた
今後は持続性担保のため、企業側メリットの明確化が重要
 1Dayインターン 結果
企業アンケート結果
 企業側 アンケート結果(回答数169)
 企業側 アンケート結果
メリット デメリット
採用
・「第 0 新卒」「つるつる子」
  手あかのついていない人材の獲得
・業種への理解が浸透し応募が増える
 
人材育成
・新卒採用を行っていない企業での、
 人材育成ノウハウを蓄積できる
マーケティング
・高校生年代の感性で自社の商品をど
 
 う売るか知ることができる。
・商品開発のヒント
・取引企業のインサイトを聞ける
業務の負担
 ・提供コンテンツの作成
 ・実施までの手続き
 ・当日の対応
事故等のリスク
 ・何かあれば信用の問題につながる
 ・未成年者である
実施した場合メリットはあると思えるが、実際に受け入れ
るにはハードルがある
 アンケート結果 
受け入れ企業募集
次回、 2018 年 3 月のインターン実施を予定しております。
高校生のインターン先として、本活動にご協力いただけ
る企業様を探しております。
・時期: 2018 年 3 月上旬および春休み期間
・期間: 1~5 日間
・学生募集:埼玉県内の高校・ NPO ・ WEB 経由
※ 今後チャネル拡大予定
・企業様: 3 月上旬( 2 社確定)・春休み期間( 3 社程度予
定 )
※ 今後、継続的に学校の長期休暇期間を中心に、継続して高校生イン
ターンの実施を予定しております。また、土日や放課後を利用した長期
インターン等についても検討してまいります。
※ また、実施エリアについても拡大を検討してまいります。
 今後の予定
アンケートで「現状ではいずれも困難」以外の回答をさ
れ、連絡先を記入していただいた方へは、今後個別に連
絡させていただくことがあります。その際は、よろしく
お願いします。
また、インターン生の受入れを検討可能という企業様が
あればコメントいただければと思います。
 ご協力のお願い

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