社会医療法人博愛会 相良病院
相良 安昭・山本瀬奈・江口恵子
実践 Advance Care Planning
転移・再発乳がん患者のニーズに応えた薬物療法とケア
2
実践 Advance Care Planning
転移・再発乳がん患者のニーズに応えた薬物療法とケア
1. 転移・再発がん患者を取り巻く現状
2. Advance care planning (ACP)の実践
3. EOLディスカッション・ACPに関するエビデンス
U. Dafni et al, Breast Cancer Res Treat 2010
Dawood et al, JCO 2008
転移性乳癌の生存率 -診断年ごとの変化-全生存率(%)
100
50
0
2 4 6 8 100
再発後からの経過(年)
12
治療の進歩により転移性乳癌の生存期間は年々延長しているが、
現状では完治困難
全生存率(%)
100
40
0
20
60
80
再発後からの経過(年)
1 2 3 4 5
SEER (Stage IV: 15,438症例)Greece (遠隔再発: 1,361 症例)
• 転移性乳癌が治癒可能と思っている方の割合
General Population Survey, ESMO Pfizer, 2015
一般の方の転移性乳癌に対する認識
桜井なおみ、NPO法人HOPEプロジェクト がん患者白書2016
・亡くなるまで積極的な治療を行った人の割合は、「今後の話し合いを行っ
た人24%」に対して「今後の話し合いを行わなかった人38%」と1.5倍と
なった。
治療は受けて
いない; 13%
亡くなるま
で; 38%
1週間前ま
で; 4%
2週間前まで;
9%
1か月前まで;
14%
3か月前まで;
13%
6か月前まで;
9%
Q20-1.抗がん剤治療など、いわゆる積極的な治療を、亡くなる何か月前まで受けられていましたか?(1つ選択)
終末期抗がん剤の状況
今後の話し合いを行った人(N=72) 今後の話し合いを行わなった人
(N=128)
治療は受けて
いない; 16%
亡くなるま
で; 24%
1週間前まで;
12%
2週間前ま
で; 7%
1か月前まで;
20%
3か月前まで;
16%
6か月前まで; 5%
桜井なおみ、NPO法人HOPEプロジェクト がん患者白書2016
CANCER CARE OUTCOMES RESEARCH & SURVEILLANCE CONSORTIUM (CANCORS)
米国におけるEOLディスカッションの状況
http://appliedresearch.cancer.gov/cancors/
前向きコホート研究 (CANCORS)
対象: 2003年〜2005年
Stage Ⅳ 大腸癌 ・ 肺癌 943名
EOLディスカッション・ACPを行ったタイミング
16% : 未施行
33% : 亡くなった月
51% : 亡くなる月以前
Jennifer W. Mack et al, Ann Intern Med. 2012
米国におけるEOLディスカッションの状況
– ACP・EOLディスカッションあり vs. なし
• オッズ比 : 0.41 (p<.001)
– ACP・EOLディスカッション〜亡くなるまでの期間
3ヶ月以上 vs. 30日以内
• オッズ比 : 0.74 (p<.001)
亡くなる 14日以内に化学療法を行なった割合
Jennifer W. Mack et al., J Clin Oncol. 2012
10
転移・再発がん患者を取り巻く現状
• 治療が治癒を目指したものと期待している患者や家族は多い
• 家族は患者と“これからのこと”を話し合えていないことが多い
• EOLディスカッションを十分に受けておらず、亡くなる直前まで積極的治療
を受ける傾向が高い
医療者側からみたEOLディスカッションが困難な理由
2014年1月
がん薬物療法専門医 864名に
質問紙送付。 490名から回答
垂見ら, Palliat Care Res 2016; 11 (1) : 301-05
回答内容の一覧
12
実践 Advance Care Planning
転移・再発乳がん患者のニーズに応えた薬物療法とケア
1. 転移・再発がん患者を取り巻く現状
2. Advance care planning (ACP)の実践
3. EOLディスカッション・ACPに関するエビデンス
• 将来(EOL)に向けて、ケアを計画する“プロセス”
• 患者の価値観、ゴール、好みを引き出す
• 患者を中心に医療者、家族と一緒に話し合う
• アドバンス・ディレクティブ(AD)を含んでも良い
•ポイント:ACP≠AD
ACP(Advance Care Planning)とは?
Advance Care Planning: A Guide for Health and Social Care Staff: NHS UK
J Pain Symptom Manage. 2017
PEACE project 緩和ケア研修会資料
<研究結果>
余命:
月単位 週単位 日
ケアの移行期
(治療場所、ケアの程度
やゴール)
“エンド オブ ライフ (EOL)”
終末期 最終段階
Hui et al. J Pain Symptom Manage. 2014
• システマティックレビュー
• MEDLINEやPsycINFO, Embase, CINAHLにて1948 – 2012年の文献
• 10冊の辞書, 4冊の緩和のテキストブック, 13団体のウェブサイト
<研究方法>
ACP=将来(EOL)に向けて
ケアを計画する“プロセス”, 話し合い
年単位
End of Life(EOL)はいつ?
上記の3つの共通点は?
身体機能身体機能
高い
低い
高い
低い
時間経過
時間経過
死
死
身体機能
高い
低い
時間経過
死
急速な身体機能の低下
例: がん
不規則な身体機能の低下
例:心不全、腎不全など
ゆっくりとした身体機能の低下
例:認知症、老衰
J Lynn, Hasting Center Report 2005
亡くなるまでの主な3つの軌跡
医療の進歩によって罹患から亡くなるまでの期間が長期となってきた
→ ACPの重要性が増加
海外におけるACPの取り組み
医療者向けのガイドブック
イギリス ナショナルヘルスサービス(NHS)
2007年刊行
患者と家族向けのガイドブック
アメリカ臨床腫瘍学会 (ASCO)
2015年刊行
☐ 将来への不安や恐れについて確認し、心理的
サポートを行う(精神的苦痛の管理を参照)
☐本人自身が意思決定が可能か、代理決定者が
必要かどうかを評価する
☐本人の価値観
☐EOLにおける優先事項を話し合う
☐患者の価値観や優先事項、他のどのような決
定事項も医療レコードやサマリーに記載する
☐患者の価値観やゴール、病状の観点に基づ
き、推奨される治療法を推奨する
☐患者や家族、代理決定者と、今後の希望につ
いて話し合うことを促す
☐緩和ケアのオプション(必要であればホスピスも
含めて)についての話し合いを始める
☐必要であれば緩和ケアチームを紹介する
初期介入
受容可能な場合
• 適切なACPが可能であった
• 患者や家族の心配の軽減
が出来ている
• 容認可能な本人のコント
ロール感
• 周囲のケアを与える方の
負担軽減できている
• 医療スタッフと患者との関
係が強化されている
• 最善の生活の質が提供さ
れている
• 患者の個人的な成長、人
生の意義を高めている
上記の項目に関して、
困難な場合
☐ なぜ患者がACPを受け入れら
れなかったかを検討する
☐ 病気に対する恐れや心配を検
討する
☐ ACPの話し合いが困難であっ
た場合には緩和ケア科を紹介す
る
☐ 精神状況の評価のために心
療内科への紹介を考慮する
☐ 悲嘆に対するマネジメントに関
するNCCNガイドラインを参照
☐ 患者と医療チームと
の再評価とコミュ
ケーションの継続
再評価
の継続
評価
予想される余命が数年、1年から数ヶ月単位
ACP介入とそれに続くACPの評価方法
NCCN 医療者向けガイドライン - palliative care 2017 ver.2-
☐月〜年単位の介入を話し合う
☐最後を過ごす場所に関する、患者と家族の希望を明
らかにする
☐病状の変化を考慮し患者の希望と決意を確認する
☐もし以前行っていなければ、患者の価値観やゴール
に合った適切な治療方法を提示する
☐ケアに関わるすべての医療者がACPの計画にアクセ
スできるように、ACPの書類(可能であればDNRの意思
を含めた)が完成されていることを確認する
☐患者のプランに対する家族の懸念や心配を明らかに
し、患者・家族のゴールや希望の不一致の解決策を探
る
☐その不一致の解決策に関して、患者や家族、医療者
の同意に至らない場合には、緩和ケアの専門家に相
談する
☐将来に対する恐れや不安を明らかにし、心理的サ
ポートを行う(精神的苦痛の管理を参照)
予想される余命が月、週単位
介入
予想される余命が週、日単位
☐上記の全ての項目を終えていることを確認する
☐ACPが実行され、遵守されていることを確認する
☐必要に応じ生命維持やCPRに関する患者の意思を明
らかにし確認する
☐臓器提供や剖検の意思を確認する
☐患者や家族にDNRを含むCPRの不利益を勧める
受容可能な場合
• 適切なACPが可能であった
• 患者や家族の心配の軽減
が出来ている
• 容認可能な本人のコント
ロール感
• 周囲のケアを与える方の
負担軽減できている
• 医療スタッフと患者との関
係が強化されている
• 最善の生活の質が提供さ
れている
• 患者の個人的な成長、人
生の意義を高めている
上記の項目に関して、
困難な場合
☐ なぜ患者がACPを受け入れら
れなかったかを検討する
☐ 病気に対する恐れや心配を検
討する
☐ ACPの話し合いが困難であっ
た場合には緩和ケア科を紹介す
る
☐ 精神状況の評価のために心
療内科への紹介を考慮する
☐ 悲嘆に対するマネジメントに関
するNCCNガイドラインを参照
☐ 患者と医療チームと
の再評価とコミュ
ケーションの継続
再評価
の継続
評価
ACP介入とそれに続くACPの評価方法
NCCN 医療者向けガイドライン - palliative care 2017 ver.2-
当院や国内におけるACPの取り組み
ACPを実践するために
① 話し合いのためのツールを使う
② 多職種で話し合う
③ 話し合いを継続し、話し合った内容を記録する
どれもできそうではあるけど…
それで実践できる?
山本瀬奈, 第25回乳癌学会 2017年
ACPを行うにあたっての問題点とは?
• 医師側の障壁
– 知識、スキル、態度
– 予後予測の難しさ
– ACPを始めるタイミング
• 医療システムの機能不全
– 調整役や協働関係者の欠如
– 標準化された文書や手順の欠如
– フィードバックや質改善の欠如
Lakin et al., JAMA Internal Medicine 2016
ACPを行うにあたっての問題点とは?
• 医師側の障壁
– 知識、スキル、態度
– 予後予測の難しさ
– ACPを始めるタイミング
• 医療システムの機能不全
– 調整役や協働関係者の欠如
– 標準化された文書や手順の欠如
– フィードバックや質改善の欠如
Lakin et al., JAMA Internal Medicine 2016
話し合いのための
ツールを使う
ACPを行うにあたっての問題点とは?
• 医師側の障壁
– 知識、スキル、態度
– 予後予測の難しさ
– ACPを始めるタイミング
• 医療システムの機能不全
– 調整役や協働関係者の欠如
– 標準化された文書や手順の欠如
– フィードバックや質改善の欠如
Lakin et al., JAMA Internal Medicine 2016
多職種で話し合う
ACPを行うにあたっての問題点とは?
• 医師側の障壁
– 知識、スキル、態度
– 予後予測の難しさ
– ACPを始めるタイミング
• 医療システムの機能不全
– 調整役や協働関係者の欠如
– 標準化された文書や手順の欠如
– フィードバックや質改善の欠如
Lakin et al., JAMA Internal Medicine 2016
話し合いを継続し
記録する
ACPを実践するために
① 話し合いのためのツールを使う
② 多職種で話し合う
③ 話し合いを継続し、話し合った内容を記録する
①話し合いのためのツールを使う
• 話を切り出すきっかけになる
• 患者・家族が回答するかどうか選択できる
– まずは質問紙そのものに答えて良いと思うかどうか
– 次に、どの質問にどのように答えているか
(答えていないというのもひとつのメッセージ)
• 話し合う内容を医療者間で統一できる
共に治療について考えていくための質問紙
• 今後の医療者との話し合いについて、ご希望をお聞かせください。
1)今後起こりうること(症状、生活への影響など)について話し合いたいと思います
か。
2)病状についてご家族とも話し合いながら、治療を進めていきたいと思いますか。
3)未成年のお子さんがおられる方は、病状についてお子さんへも伝えていきたいと思い
ますか。
4)医療者に聞きたいこと、話し合いたいことがありましたらご自由にお書きください。
• 治療を進めていく上で、あなたが大切にしたい
ことはどのようなことですか(自由記載)。
<質問内容>
• 今後の治療について、ご希望をお聞かせください(自由記載)。
• 次のような場合に化学療法(抗がん剤治療)を希望されますか。
(1) 生活の質(自分が希望するような生活の過ごし方、満足感、充実感)が高まる場合
(2) 治療効果を得られる可能性が高い場合
(3) 治療効果を得られる可能性が低い場合(可能性が低くても治療を希望する)
• これからの治療で大切にしていきたいことをあてはまるものを教えてください(複数回答可)
□ 自立した自分でいられること □ 楽しみや喜びがあること
□ 家族や友人との時間を過ごすこと □ 家庭や社会で自分の役割を果たすこと
□ できる限りの治療を受けること □ 痛みや苦しみの少ない状態で過ごすこと
□ 自分の意思で治療を選択すること □ 大切な人と一緒に治療について考えること
• 予後についてできるだけ詳しく知りたいと思いますか。
共に治療について考えていくための質問紙
etc.
[治療変更時]
今後どうなるの
かしら?
今後の治療において、
あなたが大切にしたい
ことや希望を
教えてください
[医師との話し合いの後]
できる限りの治療を受け
たいけど、、
あなたに最善の治療法を
一緒に考えていきたいので、
質問紙に答えて
頂けませんか?
ACP質問紙を渡すタイミング
治療方針の変更時や医師との話し合いの後
患者と医療者の認識のギャップを感じる時など
医師もしくは看護師から提案
質問紙のメリット
質問内容の標準化・網羅性
効率化
当院での質問紙の使い方
• 時期は問わず、気持ちが落ち着いているときに
(つまり、早くても良い!というルール)
• 原則としてまずは自己記入(その後、面談)
• 回答前に質問紙の構成を医療者と一緒に確認
必ず伝えていること
• 質問紙を活用する目的
– あなたが大切にしていることを私たちも一緒に大切
にして治療を考えていきたい
– あなたと、あなたの大切な人と一緒に考えたい
• 必ずしも答えなくて良いこと
• 全ての質問に答えなくても良いこと
• ありのままの気持ちが知りたいということ
• いつでも回答は変えられること
患者さんの反応は?
過去の質問紙 245部から
② 希望する治療法を伝える
上で質問紙は必要か
① 質問紙への回答は心理的
な負担になるか
いつ話し合いを始めるか
「衝撃」の時期を
過ぎてから
病状や治療状況が
落ち着いているときに
できるだけ早く
いつになれば始められるか
(n=245)
基盤となる関係を
構築できた時期が
目安
何から話し合えば良いか
再発~エンドオブライフ
再発
診断時
再発
治療期
BSC
移行期
診断~
初期治療
積極的治療
緩和医療
「今」の治療について患者・家族の価値観や希望を確認する
「これから」受ける治療について
価値観を共有し目標を再設定する
「EOLに備えて」話し合う
40
効果が得られる可能性が少なくても
化学療法を受けたい
全く思わな
い
あまり思わ
ない
どちらとも
言えない
思う 強く思う 合計
症例数 (%)
治療に期待すること
病気が治る
全く思わない 5 (71) 0 (0) 1 (14) 0 (0) 1 (14) 7
あまり思わない 3 (21) 5 (35) 4 (29) 1 (7) 1 (7) 14
どちらとも言え
ない
6 (24) 8 (32) 10 (40) 1 (4) 0 (0) 26
思う 3 (5) 14 (25) 21 (38) 17 (30) 1 (2) 56
強く思う 16 (15) 14 (13) 40 (38) 16 (15) 18 (17) 104
合計 33 (16) 41 (20) 76 (37) 35 (17) 21 (10) 206
Chi-Square test: p< 0.001
2013年2月ー2017年5月 転移性乳癌に対して当院で治療中の患者
有効回答 206症例
転移性乳がん患者の治療に対する期待
結果: 2013年2月- 2017年5月 64名の方がACP質問紙を用い
られた後、亡くなられた
• 質問紙活用から死亡までの期間
⁃ 中央値 7.5か月(IQR: 4.8–16.3か月)
• 最終化学療法から死亡までの期間
⁃ 中央値 70日(IQR: 52.8–156.5日)
• 死亡前14日以内:0件
• 死亡前30日以内:4件(6.3%)
• 死亡前60日以内:24件(37.5%)
ACP問診票を用いた患者における終末期化学療法の現状
IQR: interquartile range (四分位範囲)
山本瀬奈ら、ABC4@リスボン 発表予定
ACPを実践するために
① 話し合いのためのツールを使う
② 多職種で話し合う
③ 話し合いを継続し、話し合った内容を記録する
多職種で話し合うことの意味
• 話し合いや意思決定を困難にしている物事への
対応の手立てを増やす
• 患者・家族の全体像をより深く理解する
– お互いの情報を共有し、つなぎ合わせる
(場や相手に応じて語られていることもある)
– 話し合えていること、話し合う必要があることを整理
する
• 医療者自身の価値観や考えの傾向に気づく
– 医療者からみた望ましい選択をゴールにしていないか
高齢者のACPにおける多職種協働
NCCNガイドライン 高齢者のがん治療 2007年第2版
(Senior Adult Oncology V.2. 2007)
日本乳がん情報ネットワーク
http://www.jccnb.net/guideline/
高齢者の評価は
暦年齢だけでは不十分!
医療の過不足が生じやすい
包括的な評価が必要
機能・併存症・栄養・多剤投与
認知・情緒評価・社会経済的問題
当院で実施しているスクリーニング
• 一般全身状態(Performance Status)
• 臨床フレイル・スケール Rockwood et al., CMAJ. 2005
• 高齢者脆弱性調査(VES-13) Saliba et al., J Am Geriatr Soc. 2001
– 年齢、健康の自己評価、身体機能の限界・機能的障害
• G8 スクリーニング・ツール Bellera et al., Ann Oncol. 2012
– 年齢、簡易栄養状態評価表から抽出した項目
• チャールソン併存疾患指数 Charlson et al., J Chronic Dis. 1987
A4両面1枚に集約して活用 表面は問診・裏面は医療者評価
キャンサーボード
方針・術前・術後
毎週火曜~木曜
合同倫理
カンファレンス
毎月第1金曜
多職種で話し合い
互いの専門性を発揮
カンファレンスでの意見をもとに
最善についての個別化した判断ができるよう
患者・家族・担当医療チームで話し合う
医療チームの方針検討
倫理的課題への
組織的対応を検討
手術・再発の全症例について
治療方針を検討
医療・ケアの
質の担保と
価値の共有
カンファレンスにおけるACPの共有・評価
医療・
ケアチーム
本人-家族
一般的価値観 生物学的
個々の価値観 いのちの物語り的
キャンサーボード
方針・術前・術後
毎週火曜~木曜
カンファレンスでの意見をもとに
最善についての個別化した判断ができるよう
患者・家族・担当医療チームで話し合う
手術・再発の全症例について
治療方針を検討
カンファレンスにおけるACPの共有・評価
医療・
ケアチーム
本人-家族
一般的価値観 生物学的
個々の価値観 いのちの物語り的
脆弱性に応じた
治療選択(意思決定)
薬剤調整
患者指導
療養環境の整備
栄養指導
リハビリテーション など
ACPを実践するために
① 話し合いのためのツールを使う
② 多職種で話し合う
③ 話し合いを継続し、話し合った内容を記録する
継続と記録の重要性
• ツールを使って話し合うとき、腰を据えて話し
合うときだけがACPではない
– 日々のやりとりの中にも患者・家族の価値観や希望
がみえることがある
• 一度に話し合えること、一人で話し合えること
には限界がある
• 話し合いの経過を振り返ることができるように
サマリー用紙の活用(計画中)
• 医療者間の情報共有、プロセスの振り返り
• 患者・家族とも共有し、次の話し合いに生かす
記録する事柄
患者にとっての関心事
・病状や将来についての気がかり、不安・心配
・大切にしたいこと
今後の治療やケアに
対する希望
・病状の説明や今後の話し合いについて
・今後の治療について
・将来のケアに関して優先的に希望すること
意思決定に関すること
① 病状に対する認識
② 患者の意思決定能力
③ 重要他者や代理意思決定者
④ ③と話し合っている内容
ACPを実践するために
① 話し合いのためのツールを使う
② 多職種で話し合う
③ 話し合いを継続し、話し合った内容を記録する
それぞれが使いやすいツー
ルを用いて
多職種で共有し、評価する
(話し合う)
いつでも話し合いの内容が
見れるように
できれば標準化を
55
実践 Advance Care Planning
転移・再発乳がん患者のニーズに応えた薬物療法とケア
1. 転移・再発がん患者を取り巻く現状
2. Advance care planning (ACP)の実践
3. EOLディスカッション・ACPに関するエビデンス
共に治療について考えていくための質問紙の回答から
予後についてできるだけ詳しく知りたいと思いますか。
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
2013年2月ー2017年5月 転移性乳癌に対して当院治療中でACP問診票を用いた患者
有効回答 215症例
症例数(人)
EOLコミュニケーションの基本的な考え方
• 殆どの患者は予後に関して出来るだけ詳しく知りたいと思っている
• EOLについて話し合うことは、患者を傷つけるわけではない
• EOLディスカッションにおいて、患者や医療者が心配することは正常な反応で
ある
• 患者は治療による延命以外にも、それぞれのゴールや優先したいことを持って
いる
• 個々の患者のゴールや優先したいことを知ることは、医療者により良いケアを
提供する力を与える
Communication About Serious Illness Care Goals
A Review and Synthesis of Best Practices
RE. Bernacki, et al. JAMA Internal Medicine 2014
EOLコミュニケーションにおけるコツ
Don’t Do
予後に関する情報を知りたいという
患者の要望を避ける
端的に正直に予後を伝える
曖昧な (例.「完治は難しい」)、もしくはあまり
にも具体的な情報を伝える
(例. 「余命は6ヶ月程度です」)
予後に関する情報を幅を持って伝える、不確
かさを認める
(例. 「週単位もしくは数ヶ月と思われますが、
短くなることも長くなることもありえます」)
コミュニケーションの半分以上
において医療者が話している
沈黙を与える
患者の感情の強い表出に対して、
医学的情報で対応する
患者が感情を表出することを、
医療者は容認し、感じとる
治療に焦点を当てる
患者の生活の質やゴール、
恐れや懸念などに焦点を当てる
Communication About Serious Illness Care Goals
A Review and Synthesis of Best Practices
RE. Bernacki, et al. JAMA Internal Medicine 2014
Brinkman-Stoppelenburg A et al. Palliat Med. 2014
結果:
• ACP(ADを含む)に関して113の臨床研究が行われているが95%は
観察研究
• 積極的な治療を行う病院やICU以外でのケアが増え、患者の希望
に沿ったケアが行われて満足度が増す
• ADなどの書面による介入のみよりも、より広い範囲に渡るACPが
効果的であった
ACPがEOLに与える影響に関するシステマティックレビュー
Detering et al, BMJ 2010;340:c1345
対象:80歳以上の入院患者
方法:ランダム化比較試験 (ACP介入群 vs. コントロール群)
ACPの方法:
• ファシリテーターと医師、他医療者、患者、家族がACPに参加
• 医師は患者の状態や治療オプション、予後についてアドバイス
• 患者のゴール(その代替となりうるもの)や価値観を明確化し、
将来の治療選択について話し合い共有化する
医師
看護師
医師
BMJ 2010;340:c1345
結果 1:患者の満足度
入院中の全体的な満足度
入院中の提供された情報に対する満足度
入院中に話を聞いてもらえたという満足感
入院中に治療の意思決定に関わることが出来たという満足感
入院中に意思決定に関わることが出来たという家族の満足感
ACP群
(n=133)
コントロール群
(n=139)
86%がACP完了
結果 2:全体で56名が死亡
ICUで亡くなる方が減少
EOLディスカッションの増加
患者が亡くなった後の
家族の感情的なトラウマが減少
家族の心配やうつの減少
家族の満足度の上昇
ACP群において
ACP群 コントロール群
Detering et al, BMJ 2010;340:c1345
患者、家族、医療提供者にとっての良い死(good death)の6つの要素
1. 痛みと症状のマネージメントが出来ている
2. はっきりとした意思決定が出来ている
3. 死にたいする準備ができている
– 病気の理解、患者が亡くなった後のこと
4. やり遂げることができている
– 人生のレビュー、争いの解決、家族や友人との時間
5. 他者への貢献ができている
6. 一人の人間としての(全人的な)肯定ができている
– 病気のみを診るのではなく、人として接する、共感の大切さ
Steinhauser et al. Ann Intern Med. 2000
薬物療法
の役割
ACPの
役割
生命倫理の4原則
1. Autonomy:自律
2. Non-maleficence:無害
3. Justice:正義
4. Beneficence:善行
Tom Beauchamp and Jim Childress, 生命医学倫理, 1979年
65
実践 Advance Care Planning
転移・再発乳がん患者のニーズに応えた薬物療法とケア
1. 転移・再発がん患者を取り巻く現状
2. Advance care planning (ACP)の実践
3. EOLディスカッション・ACPに関するエビデンス
“がんで亡くなるとしても、がんに負けるということではない。
人々はどのように生きるか、なぜ生きるか、
どのような態度で生きるかで、がんに打ち克つのだ。”
“When you die, it does not mean that you lose to cancer.
You beat cancer by how you live, why you live,
and in the manner in which you live.”
Stuart Scott @ ESPY awards 2014
“私たちは皆いつか亡くなる。
おそらくその状況における勝者は、平穏の中で亡くなる人であって、
戦いながら亡くなる人ではない。
人生の喜びに我々はフォーカスし、
がんで亡くなる人々を敗者としないようにしよう。
がんを勝者のように見せるのはもうやめよう。”
LM. Ellis et al, JAMA Oncology 2015
ありがとうございました
email: yasuaki@sagara.or.jp

実践アドバンスケアプランニング -転移・再発乳がん患者のニーズに応えた薬物療法とケア-

Editor's Notes

  • #2 原先生、大住先生、青儀先生
  • #14 PEACE program 重要性
  • #15 MD Anderson
  • #26 → トレーニングシステム (e.g. PEACE program) → 患者や家族は知りたいと思っている。どのように? → リマインダー、看護師のトレーニング   インセンティブ、期待余命 1、2年 Delineate explicit responsibilities for elements of conversation among clinicians Build care models that incentivize coordination of care between clinicians in a fragmented care delivery system Use policy to ensure follow-up and management of needs generated by conversations about patients’ wishesCreate Build practice metrics on timing, quality, and quantity of conversations completed for selected patients Develop national consensus and promulgation of key metrics for timing, quality, and number of conversations for different patient populations
  • #27 → トレーニングシステム (e.g. PEACE program) → 患者や家族は知りたいと思っている。どのように? → リマインダー、看護師のトレーニング   インセンティブ、期待余命 1、2年 Delineate explicit responsibilities for elements of conversation among clinicians Build care models that incentivize coordination of care between clinicians in a fragmented care delivery system Use policy to ensure follow-up and management of needs generated by conversations about patients’ wishesCreate Build practice metrics on timing, quality, and quantity of conversations completed for selected patients Develop national consensus and promulgation of key metrics for timing, quality, and number of conversations for different patient populations
  • #28 → トレーニングシステム (e.g. PEACE program) → 患者や家族は知りたいと思っている。どのように? → リマインダー、看護師のトレーニング   インセンティブ、期待余命 1、2年 Delineate explicit responsibilities for elements of conversation among clinicians Build care models that incentivize coordination of care between clinicians in a fragmented care delivery system Use policy to ensure follow-up and management of needs generated by conversations about patients’ wishesCreate Build practice metrics on timing, quality, and quantity of conversations completed for selected patients Develop national consensus and promulgation of key metrics for timing, quality, and number of conversations for different patient populations
  • #29 → トレーニングシステム (e.g. PEACE program) → 患者や家族は知りたいと思っている。どのように? → リマインダー、看護師のトレーニング   インセンティブ、期待余命 1、2年 Delineate explicit responsibilities for elements of conversation among clinicians Build care models that incentivize coordination of care between clinicians in a fragmented care delivery system Use policy to ensure follow-up and management of needs generated by conversations about patients’ wishesCreate Build practice metrics on timing, quality, and quantity of conversations completed for selected patients Develop national consensus and promulgation of key metrics for timing, quality, and number of conversations for different patient populations
  • #32 治療開始後の、比較的体調や気持ちが安定している時期に、患者と話し合うツールとして質問紙を活用している。 医師から、質問紙をつかう目的を説明して、書いてもらい、 その後、書いてもらった質問紙を使い、看護師が面談する。
  • #34 質問紙のメリット 標準化・網羅性・時間の効率化
  • #61 最も有名な試験
  • #64 ナース、ソーシャルワーカー、チャプレン、ホスピスボランティア、医師、患者、遺族 4ヶ月、フォーカスグループ 治療の役割は1の部分のみ どのような治療を受けたかというのは、“良い死”かどうかには影響がない
  • #67 “When you die, it does not mean that you lose to cancer. You beat cancer by how you live, why you live, and in the manner in which you live.” We will all die one day; perhaps the winner here is the person who does it under his or her own terms; the person who dies peacefully and not at war. Let us focus on the life that people enjoyed before being told “you have cancer” and remember them as victors in life, not losers in death. Let us stop letting cancer appear to be the winner."
  • #68 “When you die, it does not mean that you lose to cancer. You beat cancer by how you live, why you live, and in the manner in which you live.” We will all die one day; perhaps the winner here is the person who does it under his or her own terms; the person who dies peacefully and not at war. Let us focus on the life that people enjoyed before being told “you have cancer” and remember them as victors in life, not losers in death. Let us stop letting cancer appear to be the winner."