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METI 経済産業省
(問題意識)
IT化の進展と我が国産業の競争力について
~ソフトウェア・モジュールを通じた
我が国産業とIT産業のグローバルな競争力強化に向けて~
平成19年2月
経済産業省 商務情報政策局
資料1
METI 経済産業省
1
IT化の進展は我が国の産業競争力強化につながっているか?
IT化の進展は我が国の産業競争力強化につながっているか?
(IT化に関する我が国産業の現状と問題意識)
日本的強さとモジュール化による効率化~ソフトウェア戦略の使い分け
(IT化に関する我が国産業の課題)
情報システム、組込システム、半導体設計に共通する課題
METI 経済産業省
2
■IT化の進展は我が国の産業競争力強化につながっているか?
IT化の進展により、知識・ノウハウがデジタ
ル化され、ソフトウェアや半導体に組み込ま
れつつあり、製品におけるソフトウェアの比
率が上昇。
モノづくり産業やIT産業を中心として、我が
国産業は、垂直統合・囲い込み・すり合わせ
重視戦略を特徴としたビジネスモデルを指
向。これが我が国企業の強みとなっている。
一方で、海外企業はソフトウェアをモジュー
ル化して外販するビジネスモデルや、外販モ
ジュールを積極活用する動きが活発。このよ
うなビジネスモデルが高い利益率の一つの
背景となっている。
我が国産業も、従来の強みを生かしつつ、
IT化の進展を競争力強化、生産性向上にど
のように結びつけるのか考えていくべき時
期に至っているのではないか。
具体的には、以下の分野の戦略的使い分
けが重要ではないか:
自前で開発し囲い込む分野
自前開発モジュールを製品化・外部展
開し、外部と開発費用をシェアする分野
外部で開発されたモジュールを受け入
れる分野
これは、従来戦略の優位性を活かしつつ、
分野に応じてモジュールも使い分けるもの。
現 状 問題意識
METI 経済産業省
3
■ ソフトウェアやシステム開発規模の拡大
80年代半ば当時
(第三次オンライン計画)
500万行
郵貯システム改修
(見通し) 2000年当時
100万行
500万行
~1000万行
現在
2001年当時
100万行
500万行
現在
6,400万行
5倍以上
5~10倍
10倍以上
ソフトウェアやシステムの開発規模は年々増大
しており、それに伴って、その開発コストも大き
く増大している。
例えば、500万行のプログラムをゼロから構築
する場合、通常、1万人月程度が必要であり、
人件費は100億円にものぼる。
金融機関システム
携帯電話
自動車
プログラム行数
プログラム行数
プログラム行数
METI 経済産業省
4
■日本的強さとモジュール化による効率化~ソフトウェア戦略の
使い分け
自
動
車
化
学
機
械
研
究教
育
医
療通
信
製造業 サービス
流
通情
報
家
電
P
C
携
帯
通
信
機
器
研究開発・設計システム
製品開発システム
生産管理システム
エンタープライズ用システム
エンタープライズ用システム
SCMシステム
営業システム
マーケティングシステム
IT化の進展により企業活動のあらゆる分野でソフトウェアが重要になっている
次の3つの選択肢の戦略的な使い分け次の3つの選択肢の戦略的な使い分け
①①自前開発と囲い込み自前開発と囲い込み
②②自前開発モジュールの外部展開、共同開発(囲い込み戦略の柔軟化)自前開発モジュールの外部展開、共同開発(囲い込み戦略の柔軟化)
③③外部モジュールの導入(自前開発戦略の柔軟化)外部モジュールの導入(自前開発戦略の柔軟化)
(課題)(課題)
ユーザー企業の意識改革、ソフトウェア戦略見直しを促進する環境をどのよユーザー企業の意識改革、ソフトウェア戦略見直しを促進する環境をどのよ
うに醸成させるかうに醸成させるか
モジュールの外部展開・共同開発・導入を妨げる要因は何かモジュールの外部展開・共同開発・導入を妨げる要因は何か
自前開発(垂直統合)・囲い込み戦略 ソフトウェア戦略の使い分け
ユーザー産業ユーザー産業
(現状)(現状)
低収益性と慢性的な人材難低収益性と慢性的な人材難 (職種への魅力(職種への魅力
が低い)が低い)
(課題)(課題)
ユーザーノウハウをどのように蓄積するかユーザーノウハウをどのように蓄積するか
グローバルな展開力をどのように構築するかグローバルな展開力をどのように構築するか
これらを担う人材の育成確保をどうするかこれらを担う人材の育成確保をどうするか
モジュール再利用のためのインテグレーションモジュール再利用のためのインテグレーション
技術はどうあるべきか技術はどうあるべきか情
報
シ
ス
テ
ム 組
込
シ
ス
テ
ム
半
導
体
設
計
IT産業IT産業
・受注中心のビ
ジネスモデル
・作り込み中心
の開発
・モジュール製品ビ
ジネスの強化
・モジュール再利用
の拡大
signal PRESENT_STATE
begin
SEQ_PROC : process( RESET, CLK )
begin
if RESET = '1' then
PRESENT_STATE <= V0;
elsif CLK'event and CLK = '1' then
case PRESENT_STATE is
when V0 =>
if START = '1' then
PRESENT_STATE <= V1;
end if;
when V1 =>
if ACK = '1' then
VHDLで記述した例
ITIT化がもたらすもの化がもたらすもの
強いモジュール製品強いモジュール製品
普及拡大に伴う普及拡大に伴う
スケールメリットスケールメリット
多数のユーザー多数のユーザー
企業に普及企業に普及
多数のユーザー企業の情
報・ノウハウがモジュール
メーカーに蓄積
I
T
技
術
I
T
技
術
強
い
モ
ジ
ュ
ー
ル
製
品
ユ
ー
ザ
ー
側
の
ノ
ウ
ハ
ウ
ユ
ー
ザ
ー
側
の
ノ
ウ
ハ
ウ
ノウハウや知識はソフトウェアに蓄積され、モジュール製品になりやすいノウハウや知識はソフトウェアに蓄積され、モジュール製品になりやすい
モジュールはソフトウェアの利用・開発のいずれも効率化モジュールはソフトウェアの利用・開発のいずれも効率化
モジュールはプラットフォームに成長する可能性ありモジュールはプラットフォームに成長する可能性あり
METI 経済産業省
5
■情報システム、組込システム、半導体設計に共通する課題
利用分野 ソフトウェアの種類 おもな開発形態 開発に関する課題
情報システム
ハード製品
ロジック半導体
(ASIC)
論理設計
・IT産業による
受託開発
・半導体メーカー
による受託設
計
・製品メーカー
による自前開
発
・組込メーカー
による受託開
発
組込システム
情報システム
・信頼性の確保
・生産性の向上(開
発費の削減)
・開発人材の確保
※ASIC=Application
Specific Integrated
Circuit
private int id;
protected Database database;
protected Trace trace;
private String objectName;
private long modificationId;
private boolean temporary;
protected DbObject(Database database, int id, S
this.database = database;
this.trace = database.getTrace(traceModule);
this.id = id;
this.objectName = name;
signal PRESENT_STATE
begin
SEQ_PROC : process( RESET, CLK )
begin
if RESET = '1' then
PRESENT_STATE <= V0;
elsif CLK'event and CLK = '1' then
case PRESENT_STATE is
when V0 =>
if START = '1' then
PRESENT_STATE <= V1;
end if;
when V1 =>
if ACK = '1' then
Javaで記述した例
VHDLで記述した例
exit (EXIT_FAILURE);
}
static int
applet_name_compare (const void *x, const voi
{
const char *name = x;
const struct BB_applet *applet = y;
return strcmp (name, applet->name);
}
extern const size_t NUM_APPLETS;
C言語で記述した例
モジュール
・パッケージソフト
・IP (標準製品化された
設計モジュール:
Intellectual Property)
・組込モジュール
※特定用途向けの汎用半導
体は、ASSP(Application
Specific Standard Product)
という。
METI 経済産業省
6
IT化の進展が、我が国の企業活動や経済に
どのような構造変化をもたらしているか
(研究開発、設計、製造、製品開発の事例)
あらゆる企業活動にモジュール製品は浸透している
各分野におけるモジュール化の動向
研究開発
自動車設計
半導体の生産管理
製造業におけるMES
自動車
産業機械
医療機器
情報家電
携帯電話
ゲーム
METI 経済産業省
7
研究開発
設計
業務管理
CAD/CAM(CATIA)・・・ダッソーシステムズ(仏) ←ユーザー(ダッソー社)が自ら開発した航空機設計用ツールが発祥
トヨタ、ホンダ 富士重、三菱自動車、日野など多くの自動車会社や 三菱重工、川崎重工、石川島播磨重工など
の航空機、造船会社などにも採用。
ERPパッケージ(SAP R/3)・・・SAP社(独) ←特定のユーザー向け製品が発祥
各部門ごとに別々に構築されていたシステムを統合し、相互に参照・利用できるようにし、財務会計や人事など
データの一元管理等を行う。
構造シミュレーション(NASTRAN)・・・MSC社(米) ←ユーザー(NASA)が自ら開発したツールが発祥
汎用構造解析プログラムのデファクト。航空宇宙、自動車、造船、機械、建築、土木などの様々な分野の構造解
析に広く利用。
電子回路シミュレーション(SPICE) ←ユーザー(カリフォルニア大バークレー校)が開発したツールが発祥
業界のデファクト。HSPICE、PSpiceなど、SPICEから派生したプログラムが多数存在。
半導体設計ツール・・・シノプシス、ケイデンス、メンター・グラフィクス(米) ←半導体メーカーからスピンアウト
3大メーカー(シノプシス、ケイデンス、メンター・グラフィクス)の製品がほとんど。
大手半導体メーカーであれば、顧客からのデータ受け入れが出来るよう、複数導入しているところが多い。
製造
工作機械用NC・・・ファナック(日) ←ユーザー(工作機械メーカ)と共同開発した製品が発祥
加工手順を記述する一種のプログラム言語(Gコード)をファナックが開発。現在ではオープンな業界標準で
はあるが、Gコードを組み込んだ制御盤はファナック製がほとんど。
半導体生産情報システム(SiView Standard)・・・IBM(米) ← ユーザー(IBM)が自ら開発したツールが発祥
最先端半導体ラインに対応した半導体製造工程管理システム。IBM野洲工場の最先端300mm半導体
製造ラインで使われていたものを全世界に展開。(※200mm半導体製造ではHPが大きなシェア)
我が国のユーザー企業は、ソフトウェアの自前開発を進めるが、開発費用やバージョンアップ費用が増大し、やがてモジュール製品に
切り換える傾向があるのではないか。
これらモジュール製品の多くは、海外ユーザー企業用のソフトウェアをモジュール化して外販したもの。そして、グローバルな多くの企業
からの情報を集めてプラットフォーム化されたもの。
我が国のユーザー企業が開発したソフトウェアでも、モジュール化とグローバル展開により、広く普及する可能性があるのではないか。
■あらゆる企業活動にモジュール製品は浸透している~我が国
発のモジュール製品が普及するチャンスはあるはず
METI 経済産業省
8
■研究開発分野におけるモジュール化の動向
1.現状
現在、研究開発分野では、様々なソフトウェアが利用されており、研究開発にとって必要不
可欠なものになっている。
しかしながら、この分野のメジャーな商用ソフトウェアの多くは海外製品に占められており、
我が国IT企業のプレゼンスは決して大きくない。
(ドミナントな研究開発用ソフトウェアの例)
構造解析:MSC Nastran(米・MSC社)、衝突解析:PAM-CRASH(仏・ESI社)、流体解
析:FLUENT(米・ANSYS社)、計算化学:GAUSSIAN(米・Gaussian社)など
2.研究開発用ツールに関する課題
ツールがプラットフォーム化してしまうと、研究開発の幅がツールの性能に依存してしまう可
能性もあるのではないか。強いツールの開発企業が国内にも存在することは我が国の研究
開発にとって重要ではないか。
ツールの守備範囲を超えた研究をしたい場合、ツールの開発企業に機能追加・改善等を依頼しても、
すぐに対応されない可能性があるのではないか。
ツール開発企業との関係が強い研究者は、次世代製品に搭載される機能について意見を反映しや
すい、商品としてのリリース前から優先的に試験利用できる(ベータバージョン)といった利点がある
のではないか。
例えばモノづくりなどの日本の得意分野のノウハウや理論をツール化し、グローバル展開で
きれば、日本発のモジュール製品が誕生しないだろうか。
研究開発の分野では、ソフトウェアの活用は必須であるが、商用ソフトウェアの多くは海外製と
なっているのが現状。最先端の研究開発はそのツールであるソフトウェアとともに進んでいく可
能性があり、我が国の研究開発能力の強化・確保のためにどう考えるか。日本発の強いツール
が生み出されることは、我が国の研究開発にとって重要ではないか。
METI 経済産業省
9
■自動車設計などにおけるモジュール化の動向
3.モノづくりとCAD
• モノづくりとCADは直結しており、CADの選択に当たっては、モノづくりの現場の声が強く反映される。
• 通常、CADを変更するとモノづくりの工程などの変更が必要であるが、日本ではモノづくりのスタイルが変わらない
よう、CADを大きくカスタマイズすることが多く、その費用は少なくないとの指摘もある。
• グローバルに展開されたCADは、我が国大手自動車メーカーの意見を大幅に取り入れたものとなっており、そのモ
ノづくりのノウハウが反映されている。
1.商用CADへの移行の動き
• 2次元CADの時代は、多くの企業がモノづくりの現場に合わせたCADを内製。
• 90年代後半の海外現地生産の本格化に伴い、海外現地部品サプライヤーとのすり合わせが必要となった。
• 世界中の部品サプライヤーとのスムーズなデータ交換のために、グローバルに販売・展開している商用CADの採
用が進展。
メーカー CAD
トヨタ、ホンダ、三菱 CATIA(仏・ダッソー社)
日産、マツダ I-deas(米・SDRC社)
スズキ、いすゞ Unigraphics(米・UGS社)
SDRCとUGSは、2001年に米EDS社と合併し、EDS社の
PLM Solution部門に。I-deasとUnigraphicsは、将来
Unigraphics NXに統合される予定。
【我が国自動車メーカーの採用CAD】
2.CADのプラットフォーム化
• 同じCAD同士の方がデータ交換は容易であり、自動車メーカーは元請け、孫請け・・・、と裾野まで同じCADを使うこ
とを要請することが多い。
• 流体解析、構造解析、衝突解析などの数値計算ツールの開発企業は、シェアが大きなCADとの連携を第一に考える。
日本の自動車メーカーは、かつては自前のCADを作っていたが、3次元CADの時代になって、多くが海外製
CADへと移行。自動車メーカーが採用したCADは、関連企業でも広く使われることとなり、企業間を超えて自
動車製造のプラットフォームとなっている。また、グローバルなCADサプライヤーには世界の主な企業のモノ
づくりのノウハウが集まることになる。
METI 経済産業省
10
■半導体の生産管理におけるモジュール化の動向
(国際的な動き)
1990年代初頭まで、世界の有力半導体メーカーでは、自前開発の専用MES(Manufacturing Execution
System)を導入・運用するのが通例。
1990年代初めから、4Mb-DRAM、16Mb-DRAMの生産が始まり、半導体プロセス技術に関する複雑性
が急速に増大。従来の生産プロセスの革新が求められるようになってきた。
こうした状況下、MMSTプロジェクトが「オープン・オブジェクト指向型MES」を備えた新しい生産システム
を開発。この新しい生産システムにより、「生産及び生産状況の見える化」と「原価及び原価発生状況の
見える化」が実現されることに。
MMSTプロジェクト(1988~1993年) (Microelectronics Manufacturing Science & Technology)
– 米TI社、SEMATECHを中心としたDARPAや米空軍の財政支援を受けたプロジェクト。
– 米国流のトヨタ生産システムである「リーン生産システム」(=なるべく在庫を持たない生産方式)のアイディアが組み込まれている。
「オープン・オブジェクト指向型MES」は、米国のみならず韓国Samsung等のDRAMメーカーや台湾
TSMC等のファウンドリに直ちに普及。その結果、これらのメーカーの生産システムの効率性が着実に向
上。
(我が国メーカーの対応)
「オープン・オブジェクト指向型MES」には注目しつつも、結局、90年代末まで自社製のクローズドなMES
を開発・運用。この結果、生産管理面においても、国際競争力が失われた可能性を指摘する声もある。
(自社製MESを開発・運用していた理由・・・一橋大・中馬教授の論文から)
– 半導体部門が総合電器メーカーの一部門として存在しており、縦割り組織のため、全社一体としての在庫管理・在庫削減の活動が起こり
にくかった可能性がある。
– キャッシュフロー会計が導入されておらず、仕掛在庫や製品(流通)在庫の積み増しが棚卸資産の増加として認識されており、在庫削減を
もたらす「オープン・オブジェクト指向型MES」への移行インセンティブが働かなかった可能性がある。
その後、多くの国内半導体メーカーは、結局、自社製MESを捨て、MMSTの成果に基づくIBMの 「オープ
ン・オブジェクト指向型MES」である「SiView」を導入。
日本の半導体メーカーの生産管理システムも90年代末まで自前主義が基本。「生産管理の見える化」等の
革新的なアイディアを導入するタイミングが海外に比べて遅れたこと等により、生産管理面でも競争力を失っ
ていた可能性を指摘する声もある。結果として、今や多くの我が国半導体メーカーが米国製システムを導入。
METI 経済産業省
11
■製造業におけるシステム構成のモジュール化の動向
計画層
実行層
制御層
基幹業務システム
MES/生産管理
FA/設備制御
生産計画
需給管理
調達・
コスト原価
販売・
物流システム
急速に進むオープン化で、
ERP分野はSAP等のモジュール製品の利用が
拡大。
MES
統合化のためのMES(Manufacturing Execution
System)の必要性が高まり、
自前・モジュールMESシステムの導入が拡大。
一部の業界ではMESモジュールの導入が拡大。
FA
工作機械
生産計画 生産実績
生産指示 実績収集
A工場
B工場
海外工場
計画層から個別工作機械までの
統合化の推進
ソフトウェア比率の増大
自前ソフトウェアからモジュール
製品の活用へ
製
造
業
だ
け
で
な
く
、
サ
ー
ビ
ス
業
な
ど
で
も
同
様
の
動
き
これまでは、単体の工作機械毎の制御・管理であ
ったが、工作機械のソフトウェア比率が増大する
とともに、工作機械間の制御インタフェースのオー
プン化が進展。
これにより、複数の工作機械の統合的な制御・管
理が普及しつつある。また、実行層の機能に近づ
くシステムも現れ始めているとの指摘もある。
METI 経済産業省
12
■自動車分野におけるモジュール化の動向
各社の競争領域
iTRON他
(ルネサス、
NECエレ 等)
OSEK/VDX
(ボッシュ等)
欧州向けの
デファクト
ミドルウェア、OS
を含む高信頼・
高機能な
基本ソフトウェア
(AUTOSARで開
発中)
現状
OS
ミドルウェア
アプリケーション
機能の拡張 (ハイブリッド、統合制御 等)
各社の競争領域
自動車の製造原価に占める組込システムの割合は急増しており、開発費の削減・信頼性の確保等が課題。欧州ではアーキテクチャ
の重要性が認識され、モジュール化が進行しており、現地自動車企業主導で、社内LANなどの組込システムの仕様の標準化や基盤
ソフトウェアの開発を行うコンソーシアム(AUTOSAR)が活動中。国内でも同様なコンソーシアム(JASPAR)が発足し、次世代基盤
ソフトウェア、開発ツール等の開発が計画されている。
今後
ミドルウェア、OS
を含む高信頼・
高機能な
基本ソフトウェア
(JASPARで開
発予定)
アーキテクチャ
自動車メーカー
電装品メーカー
半導体メーカー、
組込メーカー他
日本国内の
動向
日本国内の
協調領域
EU域内の
協調領域
OSEK/
VDX
自動車用組込みソフトウェアの規模は、制御系、情報系ともに大規模化。(このため、ハイブリッド車の制御ソフトウェアの不具合発
生など信頼性の問題も指摘されている。)
また、アプリケーション層からミドルウェア、OSに至るまで個別システム毎に作り込んでいる現状ではコスト負担の増大が予想され
る。このため、アーキテクチャの重要性が認識され、モジュール化も進みつつある。また、OSやミドルウェア層など基盤となる非競
争領域については、各社が協調して開発する必要性も指摘されている。
信頼性の高いソフトウェアへのニーズの高まりやソフトウェア開発規模の増大に伴う各社協調領域のプラットフォーム化の必要性を
受けて、欧州においては、国際標準化の議論も睨みつつ、ボッシュ(独)等が主導したコンソーシアム(AUTOSAR)にて高信頼な基
盤ソフトウェアを開発中。(ボッシュ、ベクター(独)等欧州のソフトウェアメーカー及びフリースケール(米)、インフィニオン(独)といっ
た欧米半導体企業が参画)
我が国においても、日本企業中心のコンソーシアム(JASPAR)(幹事会員:トヨタ、日産、ホンダ技研、デンソーなど。日立製作所、
富士通、アイシン精機、東芝、イーソル、ルネサス、NECエレなどが会員)において高信頼な基盤ソフトウェア及び開発ツール類を開
発・整備する構想が計画されている。
METI 経済産業省
13
■産業機械におけるモジュール化の動向
我が国工作機械産業は、80年代以降、モジュール化(メカニズム部分とCNC部分)によって世界市場を席巻。
(モジュール化で可能となった点)
1. モジュール間の相互依存性をできるだけ少なくすることで、対処可能な複雑性の範囲が広がること
2. 最終製品を構成する個々のモジュールの開発設計・生産を同時に進めることができること
3. モジュール間の独立性を最適に保てるようなインタフェースが設定され、直面する不確実性への適用がより容易になること
具体的には、工作機械のメカ部分とCNC部分のインタフェースが明確に区分され、徹底的な分業が確立。工作機
械メーカー側は、メカ部分のR&Dに注力でき、より複雑なものに対処可能となった。また、先行した一部のCNC
メーカーの製品は多くの工作機械に広く使われ、ユーザー情報を蓄積して完成度が上がり続けている。
なお、上記の動きの中で、工作機械原価に占めるCNC関連費用比率が30~40%相当にまで上昇している。
最近は、CNC化された工作機械同士が情報システムによってつながれ、MESと一体化する傾向にある。これは、
工作機械自体が一つのモジュールとなることを意味しており、工作機械をつなぐインタフェースやMESの重要性
(付加価値)がより増大していく可能性がある。
我が国工作機械産業は、モジュール化を進めることで世界市場を席巻。特に、CNC(Computerized Numerical-
ly Control/コンピュータ数値制御)については、先行した一部CNCメーカーの製品が多くの工作機械に使われ
ることで、ユーザー情報を蓄積し、完成度が上がり続けている。今後、CNCとMES(Manufacturing Execution
System/生産管理システム)との一体化の進展によって、MESの重要性が増す可能性がある。
MES
CNC CNC CNC
METI 経済産業省
14
■医療機器におけるモジュール化の動向
機器自身のIT化 機器と院内情報システムの融合
医療機器が生み出す付加価値のうち、IT・ソフ
トウェアの占める割合が増大。
画像診断装置では、画像処理技術やCG技術
等が製品の競争力に直結し、製品開発に占め
るソフトウェア開発費の比率が上昇。
ペースメーカー等の治療機器でもITによる動
作コントロールや外部モニタリングを可能とする
通信技術が不可欠になっている。
患者情報のデジタル化の進展に伴い、画像診
断装置等診断機器と電子カルテを中心とする医
療情報システムとの統合が不可欠。システムと
機器をモジュールで販売する企業が増加。
医療機関のIT化が徐々に進展する中、部門
内で最適化していたシステムを、部門を越えて
医療機関内全体で最適化していくことが必要。
海外メーカーの動き
<GE>
今年1月、英国の大手医療機器メーカーIDXを12億ドルで買収。医療機関向けITソリューションを拡充。
<Siemens>
診断装置とともに、画像情報や患者情報などを統合し、ワークフローの改善を提案するITソリューションサービ
スまで併せて販売。そのため、今年5月医療用システムを販売するIngalls社との戦略的提携を発表。
また、昨年は、SAP社やEMC社との医療IT分野での戦略的提携を発表。
<Philips>
昨年6月、PACSシステムをPay-per-view方式で販売するStentor社を2.8億ドルで買収。
今年3月、米国で家族向けemergency responseサービスを提供するLifeline Systems社を7.5億ドルで買収。
METI 経済産業省
15
■情報家電におけるモジュール化の動向
(一般的なコアデバイス外販の事例)
外販によるスケールメリットによって、コアデバイス価格の低下を図ることも、セットの価格競争力の面から考慮
すべきであることは確かであり、コアデバイスを積極的に外販しているが、本当に大切なノウハウについては囲
い込むなどの工夫をしている。
セットメーカーにとってコスト削減は優先課題だが、セット製品のマーケット投入時期を計画通りにするためには
(年1回~2回のモデルチェンジ)、開発期間の短縮化と工程管理は極めて重要。内製デバイスでは開発期間に
自由度がある。
(デジタルテレビの例)
デジタルテレビは、典型的なすり合わせ型の製品と見なされてきたが、半導体自体での収益性を考えると、ス
ケールメリットの確保が重要であり、こうしたデジタルテレビ用の半導体を外販するセットメーカーも現れてきてい
る。(世界トップシェアはSTMicro。他に、ATI、国内企業数社などのプレイヤーが存在。)
こうした半導体には、セット部門の絵づくりのノウハウなどが生かされているが、セット部門の競争力確保の観点
から、一定の配慮はあると言われている。
一方で、絵づくりにこだわる顧客については、組込ソフトウェアを開発し独自の絵づくりを実現できる部分も残す
などの工夫がされていると言われている。
こうしたデジタルテレビのモジュール化の動きは、新興企業のデジタルテレビ市場参入を促し、デジタルテレビ価
格の下落圧力となる。セットメーカーの立場からすると、こうした高付加価値市場を毀損するような動きは望まし
くない、という考え方もあるが、一方で、自ら半導体の外販をしない場合でも、いずれ誰かがこうした半導体を販
売するのであれば、先んじてシェアを取りに行くという考え方もあり得るのではないか。
セットメーカーにとって、コアデバイスはセット製品の差別化、競争力確保上、重要な役割を
果たしている。
セットの競争力の維持のためにも、増大する開発コストを削減、分散する方策が極めて重要。
競争力確保に必要なノウハウを囲い込みつつ、モジュールを設計し外販する事例も出てきて
いる。
METI 経済産業省
16
■携帯電話機におけるモジュール化の動向
1.現状
国内携帯電話機市場には、日本メーカーが11存在し、海外メーカーの参入もあり、非常に激しい競争が行われ
ている。一方、世界市場における国内メーカーのプレゼンスは非常に低い。
(国内市場の特異性)
端末ライフサイクルが極めて短い
端末の高機能化が世界に比べて格段に進んでいる
市場規模に比してメーカーの数が多い
(国内メーカーの国際競争力が弱い理由)
世界ではまだ主流の第2世代での通信方式の違い(日本:PDC、世界の主流:GSM)
国内キャリアへの依存度が高く(販促費の負担など)、海外での市場開拓が充分ではない
国内向けは高機能・高価格指向が中心。世界の主流である単機能・低価格ニーズへの対応が不十分
2.モジュール・プラットフォームをめぐる動き
通信方式規格に係る基本特許については、クアルコムを初めとする海外各社に多くを握られており、その結果、
携帯電話用半導体が海外勢に握られることにつながっている。今後の規格策定への取組強化の必要性が指摘
されている。
他方、携帯電話機の高機能化のために組込システムの開発費は急増しており、こうした中、収益率・競争力の改
善を目指して、国内メーカー間でのコアデバイスや組込システムの基本ソフトウェアの共通化 (プラットフォーム
化)に向けた提携強化の動きがある。(松下とNEC、ドコモ・シャープ・富士通・三菱電機・ルネサス)しかし、必ず
しもグローバルな展開には至っていない。
なお、携帯電話用組込ソフトウェアについて、アプリックスやアクセスなど、単ある受託開発体制から脱却し、開
発プラットフォームを作ることで成功している企業が出てきている。
日本の携帯電話機メーカーは、国内での競争が激しく収益性は低い。また、国内市場への依存度が高く、世
界市場におけるプレゼンスは非常に低い。他方、携帯電話機の高機能化のために組込システムの開発費は
急増しており、収益性悪化の要因の一つとなっている。こうした中、収益率の改善を目指したコアデバイスや
ソフトウェアの共通化の動きも出始めている。
METI 経済産業省
17
■ゲームにおけるモジュール化の動向
1.現状
ゲームソフトは9割がデータで1割が駆動部であり、ビジネスソフトの開発工程と大きく異なる。現状の開発は、テク
ニックを持ったクリエータの能力に大きく依存している。これらの職人芸的なテクニックは、秘伝のノウハウとして同
じチーム内でのみ共有されており、企業間はおろか、企業内でも流通させていない状況。
クリエーターの間では、一般的に、こうしたテクニックを囲い込まないとクリエイティビティが阻害されると考えられて
いる。このため、職人芸的なノウハウを開発ツールに組み込んで大規模な分業により開発することが困難な状況に
ある。
2.ゲームソフト開発に関する課題
次世代ゲーム機の性能向上に伴い、ゲームソフトの開発は急速に大規模化しているが、一般的に現行世代機に
比べて販売本数が伸びない、販売単価も大きくは引き上げられない状況にあり、一部の既存メガタイトルを除き、
採算性を確保することが困難となっている。
ゲームの魅力は企画によるところが大きい。プランナーやディレクターといったゲーム業界以外の人がゲーム企画
に関与できるようになることが重要であるが、開発と職人芸とがタイトに結びついた現状では、職人芸を持たないプ
ランナーやディレクターによる参加が難しい状況にある。
他方、欧米では、例えば特定の駆動エンジンのみを開発してゲーム会社に販売するビジネスモデルの企業が現れ
始めている。なお、欧米ではシューティングゲームの人気が高く、これらのモジュール化されたエンジンは、シュー
ティングゲーム用に開発されたものであり、現時点では、アクションゲームやRPG用のものはほとんどない状況。
開発生産性や収益性の向上、ゲームの企画と開発の分業によるゲームソフトの魅力向上の観点から、職人芸的ノ
ウハウをミドルウェアに組みこみ、業界内の開発プラットフォームとして広く普及させることが重要ではないか。
現在のゲーム開発はテクニックを持ったクリエータの能力に大きく依存している。これらのテクニックは秘伝の
ノウハウとして開発チーム内で囲い込まれており、社内でも流通していないのが現状。ゲーム開発が大規模
化、複雑化している中で、欧米では、ゲームの駆動エンジンのみをモジュールとして開発・販売するビジネス
モデルも現れ始めている。我が国におけるゲーム開発の生産性向上・競争力強化のために、開発環境の整
備が必要ではないか。
METI 経済産業省
18
IT化の進展が、我が国の企業活動や経済に
どのような構造変化をもたらしているか
(エンタープライズ(業務管理)システムの事例)
METI 経済産業省
19
メインフレーム中心の状況から、オープン化が進むことでモジュール化が進展。同時に、ソフトウェアは益々サービス指向へシフト。
ユーザーの多様な情報サービスニーズに迅速・柔軟・効率的に応えるため、海外企業を中心として、ソフトウェア/サービスのモジュー
ル化とその積極活用が加速。
他方で、こうしたグローバルな動きに対して、日本のユーザー企業は自前ソフトウェア開発の傾向が強く、また、IT企業は、開発受託ビ
ジネスが主体であり、モジュール開発の先行投資は充分には行われていない。これらが、日本のユーザー産業とIT産業の抱える次の
ような課題の背景にあるのではないか:
ユーザー産業においては、あるいは「割高」なシステムとなり、ITによる十分な生産性向上効果を実現できていないのではないか。
多くのIT企業が収益性の課題を抱える。また、創造性が発揮しにくい、派遣的な業務が多い、業務量と給与水準の不釣合いと
いった実態から職業の魅力に問題があり、慢性的な人材不足の要因となっているのではないか。
高い品質・信頼性・きめ細かいサービスといった強さを活かしつつ、我が国企業(IT企業・ユーザー企業)は、モジュール化にどう対応すべ
きか?
オープン化オープン化
■ エンタープライズシステムにおけるモジュール化の動向
サーバーOS:オープン化
(ユニックス等)
クライアントOS:マイクロソフト
■オープン化が進みつつあり、モジ
ュールの提供がされているが、自
前開発が主流。
■しかし、ユーザー企業では、自前
ソフトウェア路線が限界を迎え、
海外モジュール製品・サービスの
浸透も進みつつある。
日本の現状
過去(メインフレーム)
■基本的には一社が
ハードからソフトウ
ェアまで提供し、ユ
ーザー企業を囲い
込み
モジュール化モジュール化
の進展の進展
サービス化サービス化
の進展の進展
サービス提供の
プラットフォーム
ユーザー
企業の
多様なニーズ
ユーザー
ノウハウの蓄積
サービスの
モジュール化
モジュール化された
ソフトウェア資産
METI 経済産業省
20
■日本のユーザー企業のモジュール化への動きと課題
モジュール化されたソフトウェア・サービスを受け入れるためには業務プロセスの改革が必要であるが、日本の組織
は、一般に、情報システム部門に対して業務部門(「現場」)が強く、「現場」が業務プロセスを変えることに消極的な
場合が多いため、自前ソフトウェア志向の要因となっている。
また、モジュールを使った場合、①競合他社と情報システム・業務プロセス上の差別化ができなくなり、②データが
ロックインされ、バージョンアップが強制されること等により保守運用費用が高止まる、③複数のモジュールを組み
合わせる際にシステムリスクが大きくなる、といったデメリットも強く意識されている。
他方、コスト削減への全体的取組みの必要性の高まりの中、ITを通じた業務プロセス改革を行っている企業も現れ
始めている。
開発したシステムの外販(外部展開)、あるいはIT企業に知財を帰属させて外部展開を許容する戦略も必要ではな
いか。
事業会社とモジュールメーカーの共同開発
住友商事はSAPと商社向けモジュール(SAP GTM)を共同開発。他の総合商社にも展開。
金融機関向けモジュールの外部展開
三菱東京UFJは、預金・融資・外為など勘定系と情報系システムのモジュール(地銀共同化システム)を地方銀行
に外部展開。
自治体によるアウトソーシング・モジュールの共同利用
自治体でも、モジュールの共同利用を推進するプロジェクトが進行中。
METI 経済産業省
21
IT化(ソフトウェア、半導体への情報の体化)と
プラットフォーム化のメカニズム
オープンイノベーション:
「オープンイノベーションとは内部的なイノベーションを引き起こすとともに、そのイノベーション
を外部的に活用するマーケットを拡大するために、ナレッジのインフローとアウトフローを意図
的に活用すること」であり「このパラダイムは企業が技術革新を行おうとする際に、企業内外
のアイディア・マーケットへのパスの活用を行うことができ、また、活用が望ましい状況を前提
としている」 Henry Chesbrough, Open Innovation: Researching a New Paradigm
インフラ提供側:
オープンイノベーションのインフラ提供事業者にとっては、オープンイノベーションのアーキテ
クチャ設計が、ビジネスモデルのカギとなる。有償、無償に関わらず、製品やサービスの提供
によってユーザー情報を獲得するメカニズムを確立することが重要。
インフラ利用側:
インフラの利用によって開発生産性や利便性が向上。差別化のために、リソースを集中する
領域の設定が重要。
ユーザーノウハウとIT技術の連携及びその成果の外部展開が産業競争力を強化する
モジュール化に伴うメリット・デメリットと課題
METI 経済産業省
22
強いモジュール製品強いモジュール製品
普及拡大に伴う普及拡大に伴う
スケールメリットスケールメリット
グローバルにグローバルに
多数のユーザー多数のユーザー
企業に普及企業に普及
ユーザー側のノウハウユーザー側のノウハウ
製品ニーズ
ユーザーの現場経験
IT技術IT技術
ソフトウェア
半導体設計
強
い
モ
ジ
ュ
ー
ル
製
品
我が国には強いモジュール製品を生み出す土壌あり
グローバル展開は不可欠の戦略
多数のユーザー企業の情報・ノウ
ハウがモジュールメーカーに蓄積
■ ユーザーノウハウとIT技術の連携及びその成果の外部展開
が産業競争力を強化する
(例)
優れたモジュール製品がさらに発展するプロセス
強いモジュール製品を生む
ユーザーノウハウとIT技術の連携
・Qualcomm
(携帯電話用半導体)
・ARM
(半導体設計)
・NASTRAN
(シュミレーションソフト)
・CATIA
(CAD/CAM)
・SAP
(エンタープライズ系ソフト)
グローバルに展開する強いモジュールメーカーが国内にあることはグローバルに展開する強いモジュールメーカーが国内にあることは
ユーザー企業にとってもメリットありユーザー企業にとってもメリットあり
(国内)ユーザー企業(国内)ユーザー企業 (国内)モジュールメーカー(国内)モジュールメーカー
情報
・製品へのユーザー意見反映
・開発段階からの情報入手
METI 経済産業省
23
■ モジュール化に伴うメリット・デメリットと課題
グローバルスタンダードが取れない
• 言語の壁(英語がスタンダード)
• 日本的な緻密なプロセスが海外では受け入れられない
グローバルなマーケティングができていない
多くのモジュールを抱えていても、収益性のあるモジュールが少な
い
モジュール提供者
トップのITへの関与が少ない
• モジュールに業務プロセスを合わせるよう組織を引っ張
るリーダシップが弱い
完璧な機能実現を望む・・・手作り、カスタマイズが増大
• グローバル展開しているERPパッケージの導入でもカス
タマイズが何倍にもなるケースがある
モジュール利用者
複数者(あるいは業
界)でまとまってプ
ラットフォームを構築
するケース
ユーザー企業のソフ
トウェアをモジュール
を製品化して他社に
展開するケース
モジュール専業メー
カーが自社製品を展
開するケース
○非競争領域について不必要にコストをかける必要がなくなる
×非競争領域と競争領域の峻別が困難
○短期的には安価に必要な機能を入手可能
×長期的には当該モジュールの寡占化により保守運用費用が高止ま
る可能性
○多くのノウハウを集めた質の高いモジュールを利用可能
○モジュールが普及すれば、同一モジュールを使う企業間でのデータ
互換性が高まる。
×従来の製品・プロセス等を当該モジュールに合わせることが必要
×自社内への供給を優先するモジュールメーカーから差別的扱いを
受けるおそれ
×ノウハウをモジュール提供者に吸収されるおそれ
○開発コストの回収が可能
○当該モジュールが競争を勝ち抜きシェアを確保すれば高利益率
○(コスト削減により)必要なモジュールの内製化が可能となり、セット
の市場投入時期決定の自由度が増す
×自社セット製品のノウハウ流出のおそれ
×モジュールビジネスの事業規模が本業に比して小さい場合、事業化
に消極的になりがちである
○短期的には安価に必要な機能を入手可能
×長期的には当該モジュールの寡占化により保守運用費用が高止ま
る可能性
○多くのノウハウを集めた質の高いモジュールを利用可能
○モジュールが普及すれば、同一モジュールを使う企業間でのデータ
互換性が高まる。
×従来の製品・プロセス等を当該モジュールに合わせることが必要
○当該モジュールが競争を勝ち抜きシェアを確保すれば高利益率
○モジュールビジネスが本業であり、積極的な事業展開が期待できる
×事業リスクが高い(一定規模の販売量を確保できないと開発コストの
負担が困難になる可能性)
あるIT企業が
あげる課題例
メリット(○)・デメリット(×)
(参考)
METI 経済産業省
24
■ソフトウェア産業を支える人材に関する課題
ソフトウェア産業を支える最も重要な資源である人材について、優秀な人材が集まらない、優秀な
人材が育たない(=企業内教育の問題)といった懸念すべき状況が生じている。
スキル標準
(スキル/キャリア
フレームワーク)
人材像
試験
細分化
断絶
対応不明確
提供側 利用側
人材像
試験
共通人材像
対応明確化
一体化
人材育成プラットフォームの構築
提供側 利用側
スキル標準
(スキル/キャリア
フレームワーク)
・ソフトウェア産業への就職希望
者の減少
・高い離職率
・従業者のスキルの伸び悩み
・新卒学生の能力の不足
・低い収益性
・産業・職種としての魅力の低下
・目指すべき人材像の欠如
・能力に応じた適切な評価/処
遇体系の欠如
・実学教育における産業界と教
育界の連携不足
・モジュール化への対応
・ユーザー業務の熟知
・共通の人材像イメージの確立
・スキル/キャリアフレームワークの
構築
・情報処理技術者試験制度改革
・産学連携の推進
状 況 原因(課題) 対応策
教育界と
の連携
教育界
断絶
ユーザー業務
知識の熟知
METI 経済産業省
25
今後の方向性
ユーザー産業とIT産業の連携・融合の方向性
METI 経済産業省
26
政府の役割:
競争力の強化のためにより有効なIT化戦略の採用を促す環境の醸成
人材育成
自前開発モジュールの外部展開・普及を促進する環境整備(ユーザー企業とIT産業との連携促進 等)
モジュールの同業者間での共同開発を促進する環境整備
技術開発支援、ソフトウェア開発支援
標準化戦略(オープンイノベーション戦略)
(分野に応じて戦略的に使い分け)
研究開発
設計
製品開発
サプライ
チェーン
営業・マー
ケティング
②自前開発と
囲い込み ③自前開発モジュール
の製品化・外部展開
①外部モジュール・
サービスの活用
業務管理
■ ユーザー産業とIT産業の連携・融合の方向性
(優れたIT技術の提供)
ユーザー産業
ユーザーノウハウの切り出し
情報工学
機械、経営、
バイオ、材料、
建築 等
教育機関(大学等)
人材供給の
複線化
人材ニーズの提示
・高度IT人材
・ITに明るい他分野の人材
(ダブルメジャー)
ユーザーノウハウの吸収
モジュール・サービス
の提供
IT産業
競争力のある
モジュール製品
責
任
関
係
の
明
確
化
と
モ
デ
ル
契
約
I
T
ス
キ
ル
の
再
定
義
と
人
材
育
成
制
度
の
見
直
し
プラットフォーム化
生
産
性
・
信
頼
性
向
上
の
た
め
の
研
究
開
発
METI 経済産業省
27
■IT投資効率向上は日本経済全体の生産性を引き上げる
IT投資の効率化
適切な企業経営
ソフトウェアの生産性の向上
収益の拡大
製造業の
競争力の強化・
生産性の向上
IT産業の
生産性の向上
=
日本経済の
生産性の向上
IT産業IT産業
ユーザー産業ユーザー産業
サービス業の
競争力の強化・
生産性の向上
IT産業の競争力強化
半導体、情報家電、携帯電話、情報サービス 等
3分野の戦略的使い分け
①自前開発して囲い込
む分野
②自前開発モジュール
を製品化・外部展開
する分野
③外部モジュールを活
用する分野
IT投資効率の向上
IT化を産業競争力の強化につなげることは、ユーザー産業とIT産業双方の生産性の向上を通じて、日
本経済の生産性の向上を図ることになる。
ユーザー産業とIT産業の連携の強化ユーザー産業とIT産業の連携の強化
(分野に応じたモジュールの活用)
(モジュールのグローバルな展開)

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