基礎攻略講義導入編　憲法入門レジュメです。

1. 担当 高野泰衡
憲法入門
基礎攻略講座
導入編

2. 憲法とは何か…
憲法とは、国家のあり方の基礎を定めた基本法（一般的意味）
↓ところで
「国家」の本質＝「権力」
「権力」とは、他者に対して服従を強制する力
権力は常に濫用のおそれを伴う：「権力は腐敗する。絶対的権力は絶対的に腐敗する」
↓この
権力の濫用は個人の自由や権利を侵害する
↓そこで
個人の自由や権利を守るため ←ここ大事！
権力の濫用に歯止めをかけることが必要
国家権力を制限して、個人の自由・権利を守ることを目的とした国家の基本法
＝近代憲法、立憲的意味の憲法
それが「憲法」！

3. 憲法と法律の違い
「憲法」も「法律」も「法」という点では共通
「憲法」と「法律」は命ずる相手が異なる
・「法律」は「国民」に対して命ずる
・「憲法」は「国家」に対して命ずる
国 家
国 民
「法
律
」を
守
れ
「憲
法
」を
守
れ
「法律」は「憲法」に適合するように
作られなければならない
⇒憲法の最高法規性（憲法98条1項）
いわば「憲法はOS、法律はアプリ」←次元が異なる
＊共通点
＊相違点
＊関係
憲法98条1項 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔
勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。

4. 近代憲法の思想的背景…
古典的立憲主義：国王も従わなければならない高次の法 ←身分の特権の擁護
近代立憲主義 ←個人の自由や権利の保障
自然権思想（ジョン・ロック：1632～1704 英）
①自然権（生命、自由、財産に対する権利）を観念
②契約（合意）による市民政府（市民政府論・社会契約説）
③抵抗権（政府の権力濫用に人民が抵抗する権利）
↓ それを確実なものにするために
↓ 合意を破ったら
近代憲法の根本理念：一人ひとりの個性に最高の価値をおく（個人の尊厳の原理）
←ここめちゃくちゃ大事⇒憲法13条
絶対王政：強固な身分社会・過酷な税・理不尽な刑罰
← 古典的立憲主義の後退
市民
革命

5. 第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、
自由及び幸福追求に対する国民の権利については、
公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上
で、最大の尊重を必要とする。
憲法の根本理念

6. 近代立憲主義から現代立憲主義へ
近代立憲主義
・個人の尊厳の確保
・個人に対する国家権力の介入の排除（自由主義）
・権力からの自由（自由権）
・自由国家、消極国家、夜警国家
現代立憲主義
・個人の尊厳の実質的確保
・個人に対する国家権力の介入の要求（福祉主義）
・権力からの自由（自由権）＋権力による自由（社会権）
・福祉国家、積極国家、社会国家
変
容
資本主義の発展から矛盾の顕在化
・低賃金労働者の発生
・貧富の差の拡大
・富の偏在
⇒個人の尊厳が確保できなくなってきた

7. 憲法の分類
①存在形式に着目した分類
成文憲法：成文の「憲法典」が存在するもの
不文憲法：成文の「憲法典」が存在せず、慣習法や判例という形で存在するもの
②改正の難易度に着目した分類
硬性憲法：憲法の改正が通常の法律より難しく、要件が厳格なもの
軟性憲法：憲法の改正が通常の法律と同様に単純多数決でなるもの
③制定主体に着目した分類
民定憲法：国民によって制定されるもの
欽定憲法：君主によって制定されるもの
協約憲法：君主と国民との合意によって制定されるもの
日本国憲法は？ ：成文憲法 ・硬性憲法 ・民定憲法

8. 憲法の三原則
個人の尊厳
個人の尊重の原理
基本的人権の尊重
国民主権
平 和 主 義
基本的人権の尊重
（前文・第３章・１３条）
国民主権（前文・１条）
平和主義（前文・９条）
政治のあり方を決める
主権は国民にある
人が生まれながらに持つ
権利は最大限尊重される
戦争を放棄し軍隊は持たない
導かれる
手
段
的
前提 前提

9. 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸
国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び
戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を
確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は
国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法
は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平
和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を
維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地
位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権
利を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の
法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする
各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。
日本国憲法前文

10. 憲法を考える際の３つの基本原理
自由主義
民主主義 福祉主義
国家権力の介入を排除して
個人の自由権利を守る
国民自らが参加して
国政を決定する
社会的・経済的弱者の救済
調和の取れた社会の発展
個人の
尊厳
福祉主義が自由主義
を補完する
自由主義が目的、
民主主義は手段
福祉主義も民主
主義的手段で

11. 人権の類型
個人
国家
介
入
自由権
（国家からの自由）
国家権力の介入を排除
個人
国家
参政権
（国家への自由）
国政へ参加
国
政
に
参
加
個人
国家
社会権
（国家による自由）
国家権力の介入を要求
介
入

12. 日本国憲法の人権の分類
消極的権利
（自由権）
精神的自由権
思想良心の自由（１９条）・信教の自由（２０条）
表現の自由（２１条）・学問の自由（２３条）
経済的自由権 職業選択の自由（２２条）
財産権（２９条）
人身の自由
奴隷的拘束の禁止（１８条）
刑事手続き保障（３１条～）
積極的権利
国務請求権
裁判を受ける権利（３２条）
国家賠償請求権（１７条）・刑事補償請求権（40条）
社会権 生存権（２５条）・教育を受ける権利（２６条）
勤労の権利（２７条）・労働基本権（２８条）
能動的自由権
参政権
請願する権利
選挙権（１５条）
請願権（１６条）
包括的基本権 幸福追求権（１３条）・平等権（14条）

13. 人権のテーマ＝人権の問題
①誰の
②どんな権利が
③誰（何）によって
④どう制限されているのか？
⑤その制限の根拠は？
⑥その制限は許されるのか？
⇒人権保障が及ぶか（外国人・法人）？
⇒憲法上保障されているか？
⇒法律、処分、他の私人か？
⇒制限の強弱は？
⇒公共の福祉、パターナリズム、その他
⇒判断の方法（違憲審査基準）は？
⑦訴訟上の問題 ⇒原告適格、主張適格

14. [CASE]
X出版社はA県の知事選に立候補を予定していたBについて、知事としてふさわしくな
いと考え、Bの人格を誹謗するような記事を掲載した週刊誌の出版を準備していた。こ
れを知ったBはこのような週刊誌が発行されれば自分の名誉が著しく侵害されると考え
Y裁判所に出版の差し止めを申し立てた。これに対してY裁判所はXから事情をきくこと
なく出版の差し止めを認める仮処分決定をした。
この場合どのような憲法上の問題があるか？
①誰の
②どんな権利が
③誰（何）によって
④どう制限されているのか？
⑤制限の根拠は？
⑥その制限は許されるのか？
⇒X出版社（法人たる会社にも人権保障は及ぶか）
⇒出版の自由・表現の自由
⇒Y裁判所の仮処分決定
⇒差し止めという強い制限
⇒Bの名誉権との調整（公共の福祉）
⇒厳しい審査基準で判断

15. 人権の重要性と限界＝「公共の福祉」論
人権は重要⇒最大限尊重
しかし、絶対無制限ではない。憲法も「公共の福祉」による限界を規定
では、人権の制約根拠は何か＝「公共の福祉」の意味は？
↓この点
個人の自由・権利こそ最高の価値
＝国家の利益や社会の安全といった抽象的な理由で安易に制限できない
あくまでも他の人権との矛盾衝突を調整するために制限される
＝「公共の福祉」
X出版社の
表現の自由
Bさんの
名誉権
衝突

16. 許される制約か否かの判断基準＝違憲審査基準
「公共の福祉」によって人権が制約されるとしても、必要以上の制約は
許されない ∵人権は最大限尊重
↓そこで
その制約が許されるのか否かの判断基準（違憲審査基準）はどのような
ものかが問題となる
↓
制約が必要以上のもので許されないものならば、それは憲法違反（違憲）
⇒人権の性質や制約の目的・態様などによってさまざまなものがある
★憲法の人権の問題で最も重要なテーマ

17. 統治の基本原理＝権力分立
定義
国家の諸作用を「立法」「行政」「司法」というように「区別」し、
それを「国会」「内閣」「裁判所」という異なる機関に担当させるように「分離」し、
相互に「抑制と均衡」を保たせる制度
趣旨
権力の濫用を防止して、個人の権利・自由を守る
視点
統治の問題も個人の人権保障の観点を忘れないこと！ ←ここ大事
立憲的意味の憲法
人権保障
統治機構
目的
手段
奉仕
（自由主義的意義）

18. 統治機構の基本構造
国会（４１条）
内閣（６５条） 裁判所（７６条１項）
・国民の代表機関
・国政の意思決定機関
・立法権の行使
・二院制
・行政権を行使
・議院内閣制
・司法権の行使
・違憲審査権の行使
・司法権の独立
国民
選挙
地方自治（９２条）
地方分権
・「地方自治の本旨」 ・住民自治
・団体自治

19. 担当 高野泰衡
憲法入門
基礎攻略講座
導入編