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権利能力なき社団の地位確認請求
- 2. (1)−①かかる訴えは法律上の争訟といえるか？ • 通説的見解ー法律上の争訟とは、 – 当事者間の具体的な権利義務又は法律関係の 存否に関する紛争である(事件性) – 法律の適用によって終局的に解決できる(法律 性) を満たすもの
- 4. (1)−①かかる訴えは法律上の争訟といえるか？ • 自律結果受容論 – 国家から認められた自治に基づく自律権と国家から の独立に基づく自律権を区別 – 訴訟上の請求の前提問題として効力が争われる宗 教団体の自律的決定が関係者間で広く受け入れら れているときは、その自律的決定をそのまま訴訟物 判断の前提として裁判上も肯定 • 「国家からの独立に基づく自律権」の保障 – 任免行為が公共の福祉、公序良俗、近代市民法的 権利概念または法の重要な原則に反するときは、そ の限りで裁判所の審判権が及び、その無効を宣言す ることができる
- 5. (1)−①かかる訴えは法律上の争訟といえるか？ • 竹下説 – 私的団体一般に結社の自由を根拠として認めら れる自律的処分にも実体的・手続的制限がある – それを超えあるいはそれに抵触する場合には、 その限度で司法審査に服する
- 6. (1)−①かかる訴えは法律上の争訟といえるか？ 竹下説 • 実体的制限 a) 公的利益保護のための制限 1. 団体がその構成員に公序良俗・強行法規に違反す る行為を命じもしくは期待し、それに従わないことを 理由に不利益処分を科することの禁止 2. 団体がその構成員に一般法秩序により個人として求 められている公共的機能の遂行を禁止し、それに従 わないことを理由に不利益処分を科することの禁止
- 7. (1)−①かかる訴えは法律上の争訟といえるか？ 竹下説 • 実体的制限 b) 私的利益保護のための制限 1. 裁量権の範囲の逸脱の禁止 2. 処分権の濫用の禁止
- 8. (1)−①かかる訴えは法律上の争訟といえるか？ 竹下説 • 手続き的制限 c) 団体自体の有する手続規定の遵守 d) 処分期間の権限規定の遵守 • 「処分期間の権限は、その処分が、団体の自律権の 行使として尊重されるための、第一の、しかも絶対要 件」で、「その処分をした期間が、内部期繁盛権限を 有したか否かは、常に司法審査に服する」 e) 適正手続原則(条理)による補充 f) 適切な事実認定に起訴を有することの必要
- 9. (1)−①かかる訴えは法律上の争訟といえるか？ • 中野説 – 宗教団体紛争から生じた訴訟でも、具体的な(世 俗的)権利又は法律関係の主張が訴訟物をなす ものにあっては、宗教上の事項が前提問題に 入っていても、本案判決が原則であるべき • 裁判所は、信教の自由を侵してはならないのは当然 • しかし、前述のとおり、ほかの憲法価値もまた信教の 自由と並んで衡量されなければならず、とくに、訴訟物 とされた権利又は法律関係を法の外におくことは、「裁 判を受ける権利」の侵害となりうる
- 10. (1)−①かかる訴えは法律上の争訟といえるか？ • 中野説 – 宗教団体紛争から生じた訴訟でも、具体的な(世俗 的)権利又は法律関係の主張が訴訟物をなすものに あっては、宗教上の事項が前提問題に入っていても、 本案判決が原則であるべき • 本案判決と言っても、宗教団体に自律権があり、その自律 権行使が実体的・手続的要件を備えることが認定できるな らば、自律的処分を有効として判決できる • 要件具備が認定できないならば、その認定できない要件事 実については、裁判所がその認定に立ち入れないために 認定できない場合を含めて、その事実に主張責任・証明責 任を適用して判決すべき
- 11. (1)−①かかる訴えは法律上の争訟といえるか？ • 新堂説(二段階モデル) – まずはじめに、訴訟物自体について、「法律上の 争訟性」が認められるかどうかを審理 – これが肯定できるときに、第二段審理として、処 分の効力の有無の審査を一定の無効原因のみ の審査に限定する
- 14. (1)−①かかる訴えは法律上の争訟といえるか？ • 新堂説(二段階モデル) – そのような法律上の争訟であっても、第二段審理 においては、団体の自律作用を尊重すべき – 懲戒処分もそれに付する手続が • 著しく正義に悖る場合 • その処分が全く事実上の根拠に基づかない場合 • 内部規律に照らしても、なおその処分内容が社会観 念上著しく妥当性を欠くものと認められる場合 を除き懲戒権者の裁量に任すべき
- 15. (1)−①かかる訴えは法律上の争訟といえるか？ • 新堂説(二段階モデル) – 処分の対象たる地位は、多くの場合、市民法的 権利と何らかのつながりを持つことが考えられる – 従って、訴えによってまで地位の回復を図ろうと するようなケースにおいては、ほとんどが法律上 の争訟とみられることになる – その意味では、団体の自治の尊重という点から は、実際上、第二段審理のやり方が重要な役割 を果たす
- 16. (１)－② かかる確認の訴えは「訴えの利益」を 有するといえるか • 多数説は – 確認対象としてどのようなものを選択するのか （確認対象の適否、対象選択の適否） – 解決すべき紛争の成熟性（即時確定の利益） – 解決手段として確認の訴えを選ぶことの適否（方 法選択の適否） で判断
- 17. (１)－② かかる確認の訴えは「訴えの利益」を 有するといえるか • 確認対象としてどのようなものを選択するの か（確認対象の適否、対象選択の適否） – 現在の権利又は法律関係(通説) – 現在の権利・法律関係の個別的な確定が紛争の 抜本的解決をもたらさず、かえって、それらの権 利・法律関係の基礎にある過去の基本的法律関 係を確定することが紛争の直接かつ抜本的な解 決のために適切かつ有効と認められる場合には、 その確認にも確認の利益が認められることがあ る
- 18. (１)－② かかる確認の訴えは「訴えの利益」を 有するといえるか • 確認対象としてどのようなものを選択するの か（確認対象の適否、対象選択の適否） – 将来の権利・法律関係は確認の対象とはならな い（通説） – 有力説は将来の権利・法律関係の確認も適法と される余地があるとする
- 19. (１)－② かかる確認の訴えは「訴えの利益」を 有するといえるか • 確認対象としてどのようなものを選択するの か（確認対象の適否、対象選択の適否） – 単なる事実は確認の対象とならない • 例外……証書真否確認の訴え • 確認対象となるのは争いのある権利・法律関係の存 否に限られる • その前提問題や個々の要素について、あるいは抽象 的な法律問題なども対象とならない
- 20. (１)－② かかる確認の訴えは「訴えの利益」を 有するといえるか • 解決すべき紛争の成熟性（即時確定の利益） – 原告の権利または法的地位に危険または不安 が存在し、この危険または不安を除去するのに、 被告との間で確認判決の既判力によってその法 律関係の存否を確定しておくことが権利保護に とって有効・適切な場合 – 通常、原告の権利や法的地位が被告によって否 認され、或いは相容れない権利主張がなされる 場合に生じる
- 21. (１)－② かかる確認の訴えは「訴えの利益」を 有するといえるか • 即時確定の利益は法律上の利益 – 単に事実上の利益や経済上の利益では足りない • 裁判所は、確認すべき権利・法律関係と原告 の法的地位との間に法的な関連性があるか どうかを判断しなければならない – 現実の必要性、紛争の成熟性が問題
- 22. (１)－② かかる確認の訴えは「訴えの利益」を 有するといえるか • 確認判決に執行力がないことから、給付の訴え が可能な場合には原則として自己の権利の存 在について（積極的）確認の訴えを利用すること は出来ない (確認訴訟の補充性) • 個別具体的な判断を要求されるべきとの考え方 も存在 – 将来の権利法律関係についても、個別の紛争につい て確認対象になりうることから、現に存する紛争の直 接かつ抜本的解決のため最も適切且つ必要かどう か判断する必要が生まれうる – 確認の利益の要件から事実上抜け落ちる可能性
- 24. （２） 本件権利能力なき社団に当事者能力は認められるか • 「財産的独立(構成員の財産からの分離がな されているか)」の必要性が学説上問題 – 必要説・・・民訴法29条にいう社団とは • 人の結合体で、 • その団体の活動から生じた債務の引当に供しうるよう に構成員から独立して管理されている独自の財産を 有するもの をいうとする
- 25. （２） 本件権利能力なき社団に当事者能力は認められるか • 「財産的独立(構成員の財産からの分離がなされてい るか)」の必要性が学説上問題 • 類型的考慮説・・・団体の当事者能力の要件とされて いるのは、 (ア)対内的独立性(構成員の脱退加入の前後での同一性の 維持) (イ)財産的独立性(団体に独自の財産があるか、独自の財 政が維持されているか) (ウ)対外的独立性(代表の定めがあり現に代表者が活動し ていること) (エ)内部組織性（組織運営、財産管理等の規約の存在と総 会等による構成員の意思の反映）
- 26. （２） 本件権利能力なき社団に当事者能力は認められるか • 「財産的独立(構成員の財産からの分離がなさ れているか)」の必要性が学説上問題 • 類型的考慮説・・・団体の当事者能力の要件とさ れているのは、 – 紛争の類型ごとに、社団として認めるための これら4つの要素に差を設ける – 財産的独立性は、団体が金銭支払請求訴訟 の被告となっている場合には当事者能力を認 定する際の不可欠の要件であるが、その他の 場合には他の要件とあいまって能力を認定す るための補助的要件として働くとする
- 27. （２） 本件権利能力なき社団に当事者能力は認められるか • 不要説（総合考慮説） – 団体の固有財産の存在を当事者能力認定のた めの不可欠の要件とするのではなく、諸ファク ターの一つという位置づけとなるとする
- 28. (3) 本件権利能力なき社団に当事者 適格は認められるか • 当事者として誰に訴訟を遂行させ、その権利 関係について本案判決で確定させる必要性 （正当性）があるか、を問う • 当事者の権限からみた場合には、訴訟遂行 権（訴訟追行権）ともいう • 当事者適格を有する者が「正当な当事者」
- 29. (3) 本件権利能力なき社団に当事者 適格は認められるか • 正当な当事者となるのは、原則的には訴訟 対象たる権利・法律関係についての法的利 益の帰属者 – 例外的に、訴訟対象の権利義務の主体でない者 が当事者適格を有することもある • 後順位抵当権者が先順位抵当権不存在確認訴訟を 提起する場合など
- 30. (3) 本件権利能力なき社団に当事者 適格は認められるか • 当事者適格を持つ正当な原告と被告とは法 律上の利害が対立している、確認の利益を 有する者と確認を必要ならしめているもの • 正当な原告＝本案判決によって保護される べき法的利益の帰属主体 • この法的利益をめぐって(正当な被告)に対す る勝訴の本案判決によって法的利益の保護 が実現されるという関係
- 31. (3) 本件権利能力なき社団に当事者 適格は認められるか ①給付の訴え – 自己の給付請求権を主張する者＝正当な原告 – 原告によって義務者とされる者＝正当な被告 ②確認の訴え – 確認の利益を有する者＝正当な原告 – 確認を必要ならしめている者＝正当な被告 ③形成の訴え – 当事者適格を誰に認めるかは、通常明確に定め ている
- 33. (3) 本件権利能力なき社団に当事者 適格は認められるか • 多数の利害関係人および法人への判決効の 拡張を正当化しうる強い利害関係をもつ当事 者間で争われる限り、判決効は法人に拡張さ れ、したがって即時確定の利益が肯定される とする見解も有力に主張 • 批判：強い利害関係を持つものによる訴訟遂 行が常に適切な訴訟追行であるという保証 はなく単純に過ぎる
- 34. (3) 本件権利能力なき社団に当事者 適格は認められるか • 確認の訴えについては訴えの利益に吸収さ れるとするのが原則 – 確認の利益が存在するかは、確認判決をするこ とが当事者間の紛争解決に必要・有効・適切で あるかを判断する必要があるから