足関節捻挫に対するアスレティックリハビリテーション 基礎編

1. 傷害 競技者 愛好家 対 元 復帰 目指
以下 一般社会 復帰 異 関連 幅広
内容 介入 必要 今回 当科 実施 足関節捻挫 対 例
以下 紹介
2. 目標設定
アスリハを行う患者の多くが早期復帰を要望するのに対し，我々は医学的情報や身体機能
評価結果に基づいた予測から医師の協力の下，復帰時期や到達目標を設定し，患者や関係
者へ説明を行う 1)
．その際，身体機能の回復が不十分なままでの早期復帰が再発や新たな
傷害発生に発展する点に関しても言及する．
3. アスリハの流れ
表 1 のように，段階的なプログラムを実践する．特に足関節捻挫のような外傷では，受傷
直後から患部の保護を第一に考え，次の段階へ早く移行できるよう RICE 処置(患部の安
静・冷却・圧迫・挙上)等のセルフケア指導を徹底する．
4. マルアライメント
患部および患部外身体機能の改善，スポーツに必須な体力回復を促すと同時に注目すべき
点としてマルアライメントがある．例として，足関節捻挫患者の踏み込み動作に多く認め
られる，体幹・下肢の不良な関節連結を示す(図１)．患者には早期より理解を促し，動作
の修正やマルアライメントに影響する身体機能の改善・強化を指導することで復帰後の再
発予防にもつなげていく．
5. スポーツ復帰時の注意
復帰期 受傷前 同程度以上 身体機能 改善 確認 後 最初
動作 短時間 低強度 開始 徐 動作
強度 上 競技特異的 動作 必要 応 動作 確認 動
作 確認 際 認 効率的 動作 着目
実際 場面 想定 補装具 装着 行 場合 一方 診

2. 1
療所 実際 時 同等 負荷 環境 限界 患
者本人以外 監督等 指導者 成長期段階 患者 場合 保護者 対 徐
少 練習 部分的 参加 点 加 再発予防 関 注意 説明 協力
体制 整 上 復帰 許可
6. スポーツ復帰後のフォローアップ
足関節捻挫患者は復帰後も後遺症が残存しやすく，再発例も少なくはない．スポーツ活動
復帰後の一定期間，外来通院や再発予防プログラムの指導が必要である．
表 1. 足関節外側側副靭帯新鮮損傷後のリハビリテーションの流れ
段階
保護期 訓練前期 訓練後期 復帰期
期間 受傷後 週 週以降 完全参加 週以降
判定基準 腫脹 疼痛 部分荷重可 全荷重可 不安定性改善
腫張 疼痛 軽減 背屈制限改善
片脚 先立 可
物理療法
常時
低周波電気治療
特 運動後
低周波電気治療
超音波
間欠波
特 運動後
低周波電気治療
超音波
持続波 間欠波
温熱療法
必要 応
訓練後期 継続
運動療法
患部 安静
患部外
筋力強化
患部
関節可動域訓練
筋力強化
求心性筋収縮
等尺性 等張性
立位 訓練
両脚
患部外
保護期 継続
患部
関節可動域訓練
筋力強化
荷重姿勢
遠心性筋収縮
立位 訓練
両脚 片脚
患部外
保護期 継続
患部
筋力強化
等
立位 訓練
片脚
患部外
保護期 継続
動作
等
装具療法
固定
等
免荷
必要 応
固定
等
免荷
必要 応
固定
等
運動時 必要 応
固定
訓練後期 継続
診察にて骨・軟骨病変を否定され，単独靭帯損傷と診断された場合のリハビリテーション
の流れを示す．

3. 2
図 1 スポーツ動作時の荷重姿勢
A B C
A: 理想的なスポーツ動作時の荷重姿勢．この姿勢を基本とし，ストップ・方向転換・ジ
ャンプ等のスポーツ動作も効率的な動作として学習できる．B: Knee-in ・Toe-out．足関節
捻挫後に良く認められるマルアライメント．足部以外にも体幹・股関節・膝関節周囲の機
能低下が影響している． C: Knee-out ・ Toe-in．足関節捻挫時の受傷姿勢でもあり，アス
リハ時に認められる場合には動作修正が必要．
文献
財団法人日本体育協会：公認アスレティックトレーナー専門科目テキスト第 7 巻 ア
スレティックリハビリテーション．文光堂，2007． ＜日本のアスレティックリハビ
リテーションにおける教科書．基礎から各傷害，各競技特性に応じた内容が記載され
ている．＞