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京都府立高等学校人権教育研究会
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Myungsoo Kim
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差別に対処するときには《3種類の二正面作戦》が必要だという話。黒坂愛衣@東北学院さんとの合作。文責は金明秀。
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社会の芸術フォーラム20150918
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多文化主義だとかアイデンティティ・ポリティクスだとかの基礎的な話をしました。ただし、日本には多文化主義という理念そのものが存在しないので、人によっては応用的な内容に感じられるかもしれません。
ヘイトスピーチと反ヘイト運動:3種類の《二正面作戦》という難題
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Myungsoo Kim
東北学院大学のシンポジウム「多文化共生社会の行方―ヘイトスピーチ問題の背景・影響・実践的解決―」 での報告内容。 http://www.tohoku-gakuin.ac.jp/info/top/150225-5.html 反差別を目的とした社会運動が陥りがちな3つの隘路とそれを克服するための3種類の《二正面作戦》について論じた。
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200704senoo
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Process-Based Therapy勉強会の第5回後半,平井 友貴さんによる発表資料です。"Learning Process-Based Therapy"という書籍の第10章前半の内容がまとめられています。 勉強会の概要はこちら。 https://note.com/junkashihara/n/n6e93928a8fcb
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日本社会教育学会のプロジェクト研究「社会教育における方法論の検討」第11回研究会で報告した内容です。 (2015年4月12日報告)
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Akina Noguchi
第1回 探究する学習者の会「インクルーシブ教育を考える」 日 時:平成26年12月27日(土)13:00-17:00 (受付12:30〜) 開催場所:大阪YMCAインターナショナルスクール 参加費:3,000円 内 容: 12:30〜13:00 受付 13:00〜13:05 インストラクション 13:05〜13:35 「学び合い教室内でのインクルーシブ」話題提供者:桔梗友行 13:40〜14:10 「探究を支える教室の探究」 話題提供者:仲里靖雄 14:20〜15:50「多様性を大切にするインクルーシブ教育 ~すべての子どもに学びを~」話題提供者:野口晃菜 16:00〜17:00 参加者交流 話題提供者紹介: 桔梗友行(西宮市立西宮浜小学校) 仲里靖雄(同志社国際学院初等部) 野口晃菜(株式会社LITALICO、筑波大学大学院)
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京都府立高等学校人権教育研究会
1.
金明秀(関西学院大 学) 京都府立高等学校人権教育研究会 2015年5月12日(於:京都府学校給食会) 1
2.
差別について学ぶ/教えることはほんとうに むずかしい。なにせ矛盾することが多すぎ る! 被差別の実態について教えないといけない。 でも慎重に教えないと「私たち普通の人とは 違う特殊な人たちだ」といった差別的な視座 を植え付けてしまったり。
みんなが同じように自由と平等を享有すべき と教えると、異質性を抑圧するような同化強 要も正しいのだと誤解させたり。 2
3.
なぜ差別について学ぶ/教えることがむ ずかしいのか、その理由を理解する。 どう教えればよいのかについて、その原 理を理解する。
まあ、原理がわかったところで、それを 教材として具体化し、授業を実践するの はやはりむずかしいのですが… 3
4.
「社会におけるマジョリティ/マイノリ ティ関係を背景にして生ずる『遠ざけ』 (忌避、排除)および、もしくは『見下 し』(侮蔑、賤視)の意識、態度、表現、 行為、そして、その帰結としての社会的 格差のある生活実態を、社会的差別とい う」福岡安則「差別」 『現代社会学事 典』(弘文堂)
上記と同じ意味で、「差異化」と「序列 化」という用語法も。 4
5.
ある集団に帰属する者を異質だとみなす。そして、 忌避したり、関係を絶ったり、資源を共有するた めの集団や組織から排除したりする――これが差 異化の論理 「女は子どもを生み育てる性であり、企業は男の 世界だ。外で働くのは男にまかせて、女は家庭内 で家事や育児をするべきだ。」
「朝鮮学校に通う生徒は外国人だから、同じ競技 大会に出場するなんておかしい。ましてや、優勝 してウチの県の代表になったからといって応援し ようという気持ちにならない。」 5
6.
人が差異化の差別を“フェアでない”と考える 主たる理由は、異質だからというあいまいな 理由で重要な機会から恣意的に排除すること が、平等(equality)原理を侵害すると感じ るため。 つまり、ある集団のメンバーでさえあれば平 等な資源の分配に浴することができるという 状況下で、正当な根拠なく恣意的に選択され た「差異」によってメンバーシップを剥奪さ れるようなことがあれば、平等原理の適用の 正当性に疑義が生じる 6
7.
ある集団に帰属する者を、「われわれより 劣った者だ」とみなす。そして、「あの人た ちは劣っているのだから不利な扱いを受けて も仕方がない」と考える――これが序列化の 論理 「女は論理的思考能力という点でわれわれ男 性に劣る。大事な仕事を任せられず、昇進が 抑えられても仕方がない。」
「朝鮮人はうそつきでずるがしこい。入居に あたって、日本人の3倍の保証金を納めても らうのは当然だ。」 7
8.
人が序列化の論理を“フェアでない”と考え る主たる理由は、それによって衡平 (equity)原理が侵害されたと感じるため 衡平原理とは、「貢献度に応じて成果を分 配することが公正である」とする考え。
人種や性別など容易には変更しにくい属 性に基づいて、同じ貢献をしても異なる 成果にしかつながらない状況があれば、 それは衡平原理に違反していることに 8
9.
差別を生み出す論理は2種類ある。 2種類の論理それぞれが異なる種類の「正し さ」に反している。
したがって、差別を生み出す2種類の論理は、 それぞれに対処方法が異なる。 …すでに面倒くさいですね。でも、さらに面倒 くさいことに、これらの論理に対処するには、 それぞれ二正面作戦が必要なのです。 9
10.
論理的には、「異質だからという理由で恣 意的に排除するな」「同じ社会のメンバー に多様性が必要」といった抵抗言説 しかし、多文化主義の価値が認められない 同化主義的な社会では理解を得にくい。
「仲良くしよう」(同化主義) 「同じ文明の一員」(普遍主義) 「同じ民主主義国の一員」(共和主義) などの抵抗言説が代替的に動員される。 マイノリティは「いるのにいない」ことに。 10
11.
「いったん社会的マイノリティとしてのカテゴ リーが形成されると、マジョリティの側はそのカ テゴリーの境界の曖昧さにもカテゴリー内の多様 性にも無頓着に差別を行うものである。同時に、 しばしば、そのような存在者は『いる』のに『い ない』ことともされがちである。」 「したがって、社会的差別への対処の方法として は、ある1つの社会的属性を取り出して一括りに して差別するなということと、その属性はその個 人の様々な社会的属性の1つとしてあるのだから、 きちんと認識しろという、二正面作戦が欠かせな いと考えられる。」(いずれも福岡、前掲書) 11
12.
序列化に抵抗するには、さまざまな搾取、 抑圧、不利益を被る潜在的、顕在的な危 険性を訴える しかし、潜在的な不利益はマジョリティ にはわかりにくい(多数派特権は無徴) ため、「われわれ」とはちがって、特別 な保護の必要な「弱者」だという誤認へ 12
13.
容易には変更できない特性にもとづいて さまざまな搾取、抑圧、不利益を被る潜 在的、顕在的な危険性があると訴えるこ とはもちろん必要。 同時に、特別な保護の必要な「弱者」だ からではなく、多数派側が不当に成果を 独占しているのだと説明することが重要。 13
14.
差別を生み出す論理が2種類あるが、そ れぞれに対して二正面作戦が必要、とい うこと。 「二正面作戦✕2次元=四正面作戦? 全面戦争じゃないか!」と思われたかも しれません。
でも、じつはさらに複雑なのです。差別 の論理は2種類でも、それに対抗するた めの公正の原理は3種類あるからです。 14
15.
平等(equality)原理:メンバー全員を平 等に遇するのが正しいという考え方 衡平(equity)原理:
貢献度に応じて成果 を分配することが正しいという考え方 承認(recognition)原理:特別な必要に応 じて相応に配慮することが正しいという 考え方 このそれぞれに二正面作戦が必要です。 複雑なので図示してみましょう。 15
16.
賎視(パシリ) 排除(シカト) 異化(他者化) 同化(見えなくする) 結果の平等 分配の衡平 存在の承認
17.
縦軸は序列化の論理。横軸は差異化の論理。 三角形の頂点はそれぞれ差別の典型的な表 出形態。三角形の各辺はすべて差別。
3つの頂点および3辺から離脱したところ にしか真の公正は存在しない。 黄色い矢印は3種類の公正原理に対応する 二正面作戦。隣接する2辺から離脱する戦 略。 17
18.
「見下し」への対処は、「遠ざけ」にも「同 化」にも陥らないようにしながら、「衡平 equity」をめざす。 「見下し」の例:「朝鮮人は嘘つきでずるが しこい。入居にあたって3倍の保証金を納め てもらうのはあたりまえだ。」
「遠ざけ」方向への失敗例:「在日は、こん なふうに差別される弱者なんです。」 「同化」方向への失敗例:「在日も日本人も、 おなじ人間です。」 18
19.
「遠ざけ」への対処は、「同化」にも「見下 し」にも陥らないようにしながら、「平等 equality」をめざす。 「遠ざけ」の例:「女は子どもを産み育てる 性。そもそも男とは違うんだ。」
「見下し」方向への失敗例:「女性はかわい そうな存在。やさしくしてあげよう。」 「同化」方向への失敗例:「女性も男性も、 おなじ人間です。」 19
20.
「同化」への対処は、「見下し」にも「遠ざ け」にも陥らないようにしながら、「承認 recognition」をめざす。 「同化」の例:「障害者も健常者も、みんな おんなじ。特別あつかいしません。」
「見下し」方向への失敗例:「障害者はかわ いそうな人たちだ。保護が必要。」 「遠ざけ」方向への失敗例:「障害者は、健 常者とは違うので、かれらだけの世界で生き るほうが本人たちにとっても幸せだろう。」 20
21.
差別の背後には差異化と序列化という2つの 論理がある。 差別に対抗するには平等、衡平、承認という 3つの原理がある(それぞれに反する典型的 な差別も3通りある)。
3つの原理を追求するには、それぞれ二正面 作戦が必要。失敗すれば、差別への抵抗それ 自体が別の種類の差別に転化する。 3種類の二正面作戦すべてを視座に含むこと が人権教育の課題。 21
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