インターネット上の誹謗中傷対応の基礎

本スライドは，直観的に理解していただくことを 
第一に作成したものです。このため，法律論として
の厳密な正確性を犠牲にした部分がありますので，
ご容赦ください。
また，講演の時には口頭でも相応の説明をしました。
このため，スライドの内容が講演の全てではあり 
ません。この点もご容赦くださいますよう，お願い
いたします。
主な参考文献：
「新版情報化時代の名誉毀損・プライバシー侵害をめぐる
法律と実務」（静岡県弁護士会編，平成22年）
当事務所の実務経験

ちょっと自己紹介
元SEの弁護士（58期）です
•工学修士（情報工学）
•元システムエンジニア
•システム監査技術者
•iOSアプリ「民事利息電卓」

インターネット上の誹謗中傷事件 
に長らく取り組んでいます
•最初の事件は平成22年12月
•相手方はパケットモンスター 
（「2ちゃんねる」の当時の法人）

ぜひアクセスしてください
•事務所Webサイト 
[ http://相談しよう.みんな ]
•個人のFacebookアカウント 
[ アカウント名: 安保和幸 ]
•事務所Facebookページ

はじめに
何が起こっているのか？
•誰かの手による書込みや記事が， 
いつでも・いつまでも， 
容易に検索・閲覧されてしまう

はじめに
何が起こっているのか？
•いわれのない誹謗中傷の書込み
•社会的評価を傷つける報道や意見
•プライバシーに関する情報
•過去の犯罪報道
•これらの情報にリンクする検索結果

はじめに
「忘れられる権利」
•ネット上に残る個人に関する情報の
削除を求める権利
•EU司法裁判所2014年5月13日 
判決
•「忘れられる権利」ガイドライン

はじめに
どうしたいのか？
•書込みは削除したい
•せめて検索されないようにしたい
•書き込んだ者を特定したい
•損害賠償等の請求をしたい

はじめに
何を知っておく必要があるのか？
•書込みがどの程度閲覧されうるのか 
（名誉毀損における公然性）
•手続面
•疎明事項・証明事項
•ネット上での探索の手段

インターネット上の 
誹謗中傷対応の基礎
•書込み等を閲覧しうる人の範囲
WWW（ワールド・ワイド・ウェブ）
SNS（ソーシャル･ネットワーキング･サービス）
検索サイト
•投稿記事の削除による被害回復
•発信者情報開示による加害者の特定
•近時の動きと今後の見通し（私見）
はじめに

書込み等を閲覧しうる人の範囲
3

書込みや記事がある“場所”
•閲覧しうる人の範囲
•各「場所」の特性やしくみ

Webサイト・ブログ
•全世界の誰もが閲覧可能（原則）
•サイトやブログの運営者・管理者 
のみが書き込める
•会員制サイトの場合

ネット掲示板
•全世界の誰もが閲覧可能（原則）
•一般の者が書き込める 
→ 名誉毀損等が起こりやすい
•掲示板がミラーされたり， 
書込みがまとめサイトに 
引用されたり

Facebook
•誰かが書いた書込みが， 
各会員がふだん見ている画面 
（ニュースフィード）に表示される
•書込みの種類や設定， 
会員同士のつながり具合などにより 
表示される会員の範囲が調整される

Facebook
•通常の書込み
•Facebookグループ上の書込み

通常のFacebook上の書込み
•会員のみが閲覧可能なのが通常
•ただし，誰もが閲覧可能な場合あり
MAU 2100万， 
DAU 1400万…

•書込みごとに公開範囲を設定可能

•友達といえども，書込みを必ず 
見ているとは限らない
•タイムラインを見にいくことで， 
書込みがいつでも閲覧可能のことも
•タイムラインを見て友達の人数が 
判明する場合がある

•書込みが拡散するしくみ
いいね！シェア

Facebookグループ上の書込み
•Facebook上に閉じたグループを 
作ることができる
•閲覧しているのはグループの参加者 
（原則）
•グループの「閉じ具合」を設定可能 
→ 公開，非公開または秘密

Twitter
•ツイート（≒ 書込み）は， 
誰もが閲覧可能なのが原則 
（アカウントが「公開」の場合）
•リツイートにより書込みが拡散
•ツイートは検索サイトにより検索も
される

Twitter
•アカウントは「非公開」にもできる
•「公開」でも「非公開」でも， 
フォロワーは書込みを閲覧可能
•「公開」のアカウントについては 
フォロワーの人数が判明する

LINE（個人利用の場合）
•複数人とやりとりをする場合， 
書き込む前にグループを作る
•グループに属している人が閲覧可能
（原則）

!
•全世界の誰もが利用可能（原則）
•検索対象を自動的に探し，登録する
•検索対象が削除されれば，速やかに
検索もされなくなるのが通常
検索サイト

検索サイト
愛知県弁護士会
検索結果
Webサイト 
（検索対象）

•検索結果に抜粋が
付されるスニペット

検索サイト
http://www.aiben.jp/ Webサイト
•アドレス入力による
到達可能性は残る

投稿記事の削除による被害回復
4

どうやって削除を実現するか
•記事の投稿者による削除
•サイトの運営者による削除
•裁判所の命令に基づく削除

記事の投稿者による削除
•掲示板上やメッセージなどで， 
直接願い出てみる
•サイトの運営者を通じ， 
投稿者への連絡を試みる

サイトの運営者による削除
•サイトの運営者に願い出てみる

「忘れられる権利」の実務
•サイトの運営者に願い出てみる
Googleへの削除依頼のページ

•「侵害情報の通知書兼送信防止 
措置依頼書」を提出してみる
プロバイダ責任制限法
テレコムサービス協会書式 
（テレコム書式）

•法務省人権擁護機関（法務局内）に
よる削除要請

問題点
•強制力がない

いずれも削除に応じない場合
•警察へ通報？告訴？
•サイト運営者（原則）を相手取り， 
投稿記事削除の民事裁判手続

投稿記事削除の民事裁判手続
•仮処分申立て
•訴訟提起

仮処分手続で得られる決定
•出てくる決定は「仮に削除せよ。」
という命令
•もっとも，「仮に削除」された記事
が後で復活されることはまずない

管轄
•不法行為地（民訴法5条9号） 
→ 被害者がサイト等を見た場所
•外国の者を相手取る場合も結論は 
同様 
（同法3条の3第8号，5条9号）

海外法人を訴える場合
•外国から資格証明書を取り寄せる
•資格証明書には反訳も付ける
•提出する主張書面などにも 
外国語への翻訳を付ける必要あり 
（原則）

仮処分命令を得るために
•被保全権利は人格権など
•大阪高裁平成17年10月25日判決

表現行為の差止めが認められるために
は，単に当該表現行為によって人格権
が侵害されるというだけでは足りず，
当該表現行為によって，被害者が， 
事後の金銭賠償によっては回復が不可
能か，著しく困難になる程度の重大な
損害を被るおそれのあることが必要と
いうべきである。
大阪高裁平成17年10月25日判決

•誹謗中傷の程度が強いとはいえない
•第三者から見て誰のことか不明
•現実世界の誰のことか不明
•犯罪報道（真実のもの）からまだ 
間がない

•誹謗中傷の程度が強いとはいえない
•第三者から見て誰のことか不明
•現実世界の誰のことか不明
•犯罪報道（真実のもの）からまだ 
間がない
仮処分 
出ない 
かも…

より詳しくは…
名誉毀損・プライバシー 
関係ガイドライン

•裁判所と債権者との面談後， 
審尋期日
•債務者が裁判所へ出てこないことが
明らかな場合，無審尋のことも

仮処分命令を出すと言われたら
•保証金は30万円が多い 
（事案や裁判官の判断による）

仮処分命令が得られたら
•サイトの運営者側が自ら削除をして
くれる場合が多い
•サイトの運営者側に，その定める 
やり方で，仮処分命令が出たことを
伝える必要がある場合あり

削除が実現したら
•完全削除または送信停止による
•大元が削除されれば，いずれ検索も
されなくなる
•ミラーサイトやまとめサイトの対策
を要する場合も

発信者情報開示による加害者の特定
5

投稿者の特定のために
•削除請求と合わせて， 
発信者情報開示を求める手続をする
ことが通例
•サイトに記録された投稿者の 
IPアドレスを手がかりに， 
発信者の特定を目指す

IPアドレスとは？
•PCやスマートフォン，サーバなど
の，インターネット上の住所
243 . 235 . 34 . 60 
【IPアドレスの例】

IPアドレスとは？
•ある時刻に，あるIPアドレスは 
世界に1つしかないのが原則 
→ 投稿者の特定に利用できる

どうやって開示を実現するか
•サイト運営者やプロバイダへの 
願い出
•テレコム書式の利用
•弁護士会照会の利用
•裁判所の命令に基づく開示

発信者情報開示請求の手続
サイト運営者側に発信者情報開示請求
プロバイダ等に発信者情報開示請求
投稿者に損害賠償請求
仮処分
IPアドレスタイムスタンプ
訴訟
氏名住所メールアドレス等

プロバイダ等に発信者情報消去禁止請求
仮処分
仮処分
（ログを消させない）
訴訟

仮処分
仮処分
訴訟

サイト運営者側に投稿記事削除請求
仮処分
仮処分
訴訟

仮処分命令･勝訴判決を得るために
•根拠は 
プロバイダ責任制限法4条1項
•「侵害情報の流通によって開示の 
請求をする者の権利が侵害された 
ことが明らかである」ことが 
要件の1つ（同項1号。明白性）

一段ハードルが上がる
•たとえ名誉毀損が成立しても， 
違法性が阻却される場合がある
•このような場合に当たらないことを
疎明または証明する必要あり

一段ハードルが上がる
•東京高裁平成14年12月25日判決 
（削除事案）との比較

名誉を毀損された被害者が、その発言
につき…社会的評価を低下させる危険
のあることを主張立証すれば、発言の
公共性、目的の公益性、内容の真実性
等の存在は、違法性阻却事由、責任阻
却事由として責任を追及される相手方
が主張立証すべきものである
東京高裁平成14年12月25日判決（削除事案）

違法性が阻却される場合
•公共の利害に関する事実，かつ
•専ら公益を図るという目的，かつ
•事実が真実であること，または 
真実であると信ずるにつき相当 
の理由があること

より詳しくは…
発信者情報開示関係 
ガイドライン

IPアドレスからの情報取得の基礎
•IPアドレスの登録者などに関する 
情報を閲覧できるサービスを利用
whois

その他の情報取得の基礎
•ホスト名からIPアドレスを割り出す
コマンド
•ドメイン名から所有者の名前を 
割り出すサービス 
→ 代行者名が表示されることも 
→ ドメイン名によって使い分ける
nslookup
whois

http://www.aiben.jp/

http://www.aiben.jp/
ホスト名ドメイン名
（ひとまずこのように捉えておく）

仮処分命令を出すと言われたら
•発信者情報開示仮処分の保証金は 
30万円が多い 
（事案や裁判官の判断による）
•発信者情報消去禁止仮処分のほうは
10万円∼20万円程度

仮処分命令･勝訴判決が得られたら
•サイト運営者やプロバイダが 
自ら開示してくれる場合が多い
•サイトの運営者側に，その定める 
やり方で，仮処分命令や判決が出た
ことを伝える必要がある場合あり

もろもろの問題点
•仮処分申立ての管轄
•投稿者のIPアドレスをわかりにくく
するしくみ
•開示される氏名等と真の加害者
•その他のリスク

仮処分申立ての管轄
•普通裁判籍 
→ サイト運営者の住所（≒ 東京） 
→ 外国の場合は民訴法4条5項， 
→ 10条の2等
•投稿削除請求と併合してもダメ 
→ 民事保全法は民訴法7条不準用

投稿者のIPアドレスを 
わかりにくくするしくみ
•プロキシサーバ
•Tor

投稿者のIPアドレスを 
わかりにくくするしくみ
•プロキシサーバ
•Tor
プロバイダ 
わからない 
かも…

開示される氏名等と真の加害者
•共用のPC等を置いている場所
•無線LANの電波をセキュリティ 
なしで外に漏らしている家

開示される氏名等と真の加害者
•共用のPC等を置いている場所
•無線LANの電波をセキュリティ 
なしで外に漏らしている家
加害者 
わからな
いかも…

その他のリスク
•海外のサイト運営者の場合
•プロバイダによっては，訴状などの
資料を投稿者に送付することも
•費用対効果

近時の動きと今後の見通し
6

次々に下される仮処分命令
•TwitterやFacebookに対するもの 
（削除と発信者情報開示）
•Googleの検索結果に対するもの 
（削除。平成26年10月）

どんどん広がるTorの活用
•FacebookのTor正式対応
•FirefoxのTorとの提携
•Torを手軽に利用するための機器

自主的な削除基準の検討も
•Yahoo! Japanが自主的に削除に
応じる新基準について検討開始 
（平成26年11月）

今後の見通し（あくまで私見）
•削除はしやすくなる方向。 
裁判を経なくとも実現しやすく
•発信者情報開示は難しくなる方向。 
投稿者特定に技術的に至りにくく

http:// 相談しよう.みんな
安保和幸法律事務所
やすほ

インターネット上の誹謗中傷対応の基礎

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