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福島原発事故:東電、県外進学に賠償返還請求- 毎日新聞http://m ainichi.jp/select/new s/p20141023k0000m 040126000c.htm l 
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福島原発事故:東電、県外進学に賠償返還請求 
毎⽇新聞 2014年10⽉23⽇ 07時30分 
◇「避難終わった」 
東京電⼒福島第1原発事故で、実家が帰還困 
難区域になった⼥性(21)に⽀払われた賠償 
⾦1600万円のうち、福島県外の短⼤に進学 
して転居した以降の精神的賠償など約900万 
円について、東電が返還を求めていることが分 
かった。⼥性側は「帰還できる⾒通しが⽴た 
ず、精神的苦痛は続いている」と反論。具体的 
21歳⼥性に⽀払われた賠償⾦ 
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額の返還を突然求められれば、被災者の⽣活設計に混乱をもたらす恐れがある。【栗⽥慎 
⼀】 
⽂部科学省の原⼦⼒損害賠償紛争審査会の中間指針は、精神的賠償の対象を「⻑期間の 
避難を余儀なくされた者」と規定し、請求を受け付ける東電が判断する。賠償⾦の返還を 
求められたことが明らかになったのは東電社員以外では初めて。精神的賠償の対象は約8 
万⼈いるが、今後も進学、結婚、転勤などで住所を変える被災者に波及する可能性があ 
り、賠償基準の明確化が課題になりそうだ。 
毎⽇新聞の取材に応じた21歳⼥性の家族によると、⼥性は双葉郡居住の⾼校3年だっ 
た2010年12⽉、関東地⽅の3年制看護短⼤に推薦⼊試で合格。11年3⽉の原発事 
故後は家族と県内の避難先を転々とした。進学した同4⽉上旬、短⼤近くのアパートで1 
⼈暮らしを始め、今春卒業して関東の病院に就職した。 
家族が今年6⽉、賠償の相談で東電窓⼝を訪れ、⼥性の進学経緯なども説明すると、9 
⽉上旬に「本来お⽀払いすべき⾦額と異なる」として「精算」を求める⽂書が届いた。東 
電に「進学先は事故前に決まっており、⼊学に伴う転居で避難は終わった」などと説明さ 
れた。 
返還を求められたのは▽11年5⽉以降の⽉10万円(6年1カ⽉分)の精神的賠償計 
730万円▽旧警戒区域からの避難に対する賠償48万円▽家財の財物賠償約128万 
円。財物賠償について⼥性側は、原発事故で家具などを持ち出せず、新たに購⼊したため 
請求したが、「進学に伴う購⼊」などの理由で返還を求められた。 
⼥性の家族は「帰還困難区域は⾃宅に⻑期間戻れない。進学しても経済的に⾃⽴したわ 
けではなく、避難⽣活は終わっていない。東電は⽀払い基準を公にしておらず、納得がい 
かない」と話す。東電福島復興本社広報部は毎⽇新聞の取材に「個々の事例は明らかにで 
きないが、進学だけで判断しているわけではない。今後の賠償は個々の状況も確認しなが 
らやっていく」としている。 
1 / 2 2014/10/23 8:01
福島原発事故:東電、県外進学に賠償返還請求- 毎日新聞http://m ainichi.jp/select/new s/p20141023k0000m 040126000c.htm l 
福島県教育委員会によると、この⼥性のように11年春に卒業した⾼校⽣は避難区域内 
に約1000⼈いた。事故前に避難区域外への転居が決まっていれば、賠償⾦の返還を求 
められる可能性がある。 
⽂科省原⼦⼒損害賠償対策室は「⼀般論では⾃宅に戻れない以上、進学で避難終了には 
ならない」との⾒解。⼀⽅、東電の監督官庁である経済産業省資源エネルギー庁の原⼦⼒ 
損害対応室は「⽀払うかどうかの境界線上の事例」とみて議論が必要だとしている。 
◇賠償範囲、明確化を 
原発事故の賠償問題に詳しい淡路剛久・⽴教⼤名誉教授(⺠法)の話 判断の難しい事 
例だが、仮設住宅や借り上げ住宅で暮らす⼈とは⽣活実態が異なるものの、家族の⼀⼈と 
して避難が続いていることに変わりない。たまたまある時期に県外で暮らす予定だったか 
らといって、精神的苦痛がなくなるとも思えない。東電の個別対応には限界があり、原⼦ 
⼒損害賠償紛争審査会は中間指針を⾒直し、精神的損害などの範囲を現実に即して明確化 
すべき時に来ている。 
◇結婚後に打ち切りも 
⽀払い済みの賠償⾦を巡り、問題が表⾯化した例として、東電が東電社員に対して⾏っ 
た返還請求がある。⽴ち⼊り制限区域外の賃貸住宅に転居した複数の社員に「避難は終了 
した」として精神的賠償などの返還を求め、ある社員への請求額は数百万円に上った。 
賠償⾦⽀払いの打ち切りが問題になった例もある。避難区域に⾃宅のある30代⼥性が 
避難区域外の男性と2011年10⽉に結婚した際、東電は「結婚で⽣活基盤が整った」 
として精神的賠償を打ち切った。⼥性は「精神的苦痛はなくならない」と訴え、国の原⼦ 
⼒損害賠償紛争解決センターによる和解仲介⼿続き(原発ADR)を開始。経済産業省資 
源エネルギー庁が「結婚で打ち切るのはおかしい」と東電への指導に動き、⽀払いが再開 
された。 
毎⽇新聞のニュースサイトに掲載の記事・写真・図表など無断転載を禁⽌します。著作権は毎⽇新聞社またはその情報提 
供者に属します。 
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2 / 2 2014/10/23 8:01

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東電、県外進学に賠償返還請求- 毎日新聞

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  • 2. 福島原発事故:東電、県外進学に賠償返還請求- 毎日新聞http://m ainichi.jp/select/new s/p20141023k0000m 040126000c.htm l 福島県教育委員会によると、この⼥性のように11年春に卒業した⾼校⽣は避難区域内 に約1000⼈いた。事故前に避難区域外への転居が決まっていれば、賠償⾦の返還を求 められる可能性がある。 ⽂科省原⼦⼒損害賠償対策室は「⼀般論では⾃宅に戻れない以上、進学で避難終了には ならない」との⾒解。⼀⽅、東電の監督官庁である経済産業省資源エネルギー庁の原⼦⼒ 損害対応室は「⽀払うかどうかの境界線上の事例」とみて議論が必要だとしている。 ◇賠償範囲、明確化を 原発事故の賠償問題に詳しい淡路剛久・⽴教⼤名誉教授(⺠法)の話 判断の難しい事 例だが、仮設住宅や借り上げ住宅で暮らす⼈とは⽣活実態が異なるものの、家族の⼀⼈と して避難が続いていることに変わりない。たまたまある時期に県外で暮らす予定だったか らといって、精神的苦痛がなくなるとも思えない。東電の個別対応には限界があり、原⼦ ⼒損害賠償紛争審査会は中間指針を⾒直し、精神的損害などの範囲を現実に即して明確化 すべき時に来ている。 ◇結婚後に打ち切りも ⽀払い済みの賠償⾦を巡り、問題が表⾯化した例として、東電が東電社員に対して⾏っ た返還請求がある。⽴ち⼊り制限区域外の賃貸住宅に転居した複数の社員に「避難は終了 した」として精神的賠償などの返還を求め、ある社員への請求額は数百万円に上った。 賠償⾦⽀払いの打ち切りが問題になった例もある。避難区域に⾃宅のある30代⼥性が 避難区域外の男性と2011年10⽉に結婚した際、東電は「結婚で⽣活基盤が整った」 として精神的賠償を打ち切った。⼥性は「精神的苦痛はなくならない」と訴え、国の原⼦ ⼒損害賠償紛争解決センターによる和解仲介⼿続き(原発ADR)を開始。経済産業省資 源エネルギー庁が「結婚で打ち切るのはおかしい」と東電への指導に動き、⽀払いが再開 された。 毎⽇新聞のニュースサイトに掲載の記事・写真・図表など無断転載を禁⽌します。著作権は毎⽇新聞社またはその情報提 供者に属します。 Copyright THE MAINICHI NEWSPAPERS. All rights reserved. 2 / 2 2014/10/23 8:01