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熱傷
パート1:熱傷評価、外来管理
森江祥平
熱傷の定義
「熱,放射線,ならびに化学的,または電気的な接触に起因する,皮膚およびその他の組織の損傷」
熱傷によって生じること
Ⅰ:タンパク質の変性
Ⅱ:表皮バリアの喪失
❶ 重症度を評価する
❷ 入院が必要か判断
❸ 救急外来での対処法
入院管理が必要な熱傷 パート2へ
アプローチ
①重症度評価 〜熱傷面積〜
(%TBSA:total boby surface area)
•成人:9の法則
•小児:5の法則
•局所的な推定には手掌法
⇨(成人の場合)患者の手掌がおおよそ体表面積の1%
②重症度評価
〜深達度〜
深度 外観・性状 組織障害 治癒過程
I度熱傷 紅斑
痛み(+)
表皮のみ 3〜4日
瘢痕(ー)
浅層II度熱
傷(SDB)
紅斑、水疱(水疱底が赤色)
痛み(+)
真皮浅層まで 2週程度
瘢痕(ー)
深層II度熱
傷(DDB)
紅斑、紫斑〜白色、水疱(水疱底が白色)
知覚鈍麻(痛み±)
真皮深層まで 3〜4週程度
瘢痕(+)
Ⅲ度熱傷 黒色、褐色または白色
水疱(ー)、乾燥、羊皮紙様
痛み(ー)
真皮全層、皮下組織 瘢痕(+)
SDB:superficial dermal burn
DDB:deep dermal burn
日本皮膚科学会ガイドライン 創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン 2017年より一部改変
初期に正確に判
断できない場合
もある
写真:Tokino 〈https://commons.m.wikimedia.org/wiki/File:Yakedo1.jpg#mw-jump-to-license〉
入院が必要かどうか?
中等症以上では入院加療を要する パート2へ
•II度熱傷 15〜30% TBSA、Ⅲ度熱傷 2〜10%TBSA
軽症では外来通院で治療可能
Artz CP: The treatment of Burns, 2nd ed., WB Saunders,
Philadelphia,1969.
治療の分かれ目
I度熱傷 疼痛管理
SDB
疼痛管理
ドレッシング材(創傷被覆材)
外用薬
SDB
Ⅲ度熱傷
ドレッシング
デブリードマン
植皮手術
専門科へ紹介
疼痛管理
•受傷早期:流水や湿らせたガーゼや布で覆い冷却する
※氷や氷水は避ける
※広範囲や小児・高齢者では低体温に注意
•受傷後:アセトアミノフェンやNSAIDs内服
ステロイド外用は本邦でよく使用される 処方例)リンデロンV®︎
※創傷治癒遅延や上皮化抑制作用あるため2日程度の使用に留める
UpToDate:Treatment of minor thermal burns(last updated Dec 09,2019)
(日本皮膚科学会ガイドライン 創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン 2017年)
ドレッシング材・外用薬
•湿潤環境形成し、創傷治癒を促す目的で使用
主にⅡ度熱傷で使用される
•ドレッシング材はフォーム材、ファイバー材、コロイド材に大別
形状や滲出液の吸収度で使い分けられている。
•ドレッシング材は銀含有ドレッシング材(銀含有ハイドロファイバー®)が推奨されている。
•外用薬はワセリン軟膏をはじめとした油脂性基材軟膏を基本とし、
創部の状況によって配合薬を選択する。
種類や使い分けについては教科書・資料等で確認ください
水疱の管理
•そのままvs除去
専門家でも意見がわかれるところであり共通の見解はない
•既に破裂した水疱は切除する
•感染徴候がある、長期に水疱形成している場合は除去・洗浄
を行う
UpToDate:Treatment of minor thermal burns(last updated Dec 09,2019)
写真:Chatama
〈https://commons.m.wikimedia.org/wiki/File:Thermal_Injury_in_Chatama%27s_hand.jpg#mw-
jump-to-license〉
まとめ
❶ 熱傷の範囲、深さを評価をする
ただし経時的に変化するためことに注意
❷ 軽症熱傷への対応ができるようになる
パート2 入院が必要な熱傷の管理について
パート1

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熱傷 パート1 評価、外来管理

Editor's Notes

  1. 定義 用は熱による生体の損傷 熱源としては熱い液体をかぶった、ストーブなどに触れたと言ったものが頻度が多く、火災や特殊なものだと電流にりょう電撃傷や薬品による化学熱傷などがある 熱傷によるダメージを受けた皮膚ではタンパク質の変性、また皮膚バリアがなくなることで浸出液の漏出、外部からの感染に弱くなったりするため、それらに対するアプローチが必要になってくる
  2. パート1では見る頻度の多いであろう軽症の熱傷の管理について 入院管理、全身管理が必要な熱傷はパート2へ
  3. 熱傷診療ガイドライン 改訂第2版 一般社団法人 日本熱傷学会
  4. 消炎鎮痛で疼痛の軽減や病変拡大や浮腫を抑える目的 氷や氷水は痛みや火傷の深さが増す可能性ある 室温 12℃くらい 創傷の上皮化が起こると疼痛減る 流水で熱を放散させ組織障害をおさえる 20分くらい
  5. ガーゼのみの感想では創傷治癒が遅れる 交換する手間やコストの問題はある