プロダクト・マネジャーの仕事
マーケティング部に配属されたあなたへ
2019年9月30日
宗 邦弘
在職中に係わってきた主なブランド
マッキャンエリクソン博報堂 媒体局/マーケティング局 コカ・コーラ/ヴィックス
ワーナー・ランバート 菓子製品事業本部 ホールズ/クロレッツ/メントス
スミス・クライン&フレンチ マーケティング部 コンタック600
アダムス・ブランズ・カナダ マーケティング部 デンティーン
日本ペプシコーラ マーケティング本部 ペプシコーラ/ダイエットペプシ
日本イーライリリー 医薬品営業マーケティング本部 ジェムザール
ブリストルマイヤーズ・ライオン マーケティング部 バファリン/エキセドリン
プロマネって・・・
責任は重く、権限は少ない (実感)
プロマネでいられることがプレステージなのですよ (元上司)
会社の金を使ってイチかバチかのギャンブルができる (元同僚)
店に並べるのは営業の責任、売れなかったらプロマネの責任 (営業マン)
楽観的なプロマネのほうがいい仕事をする (元直属上司)
世の中で一番面白い仕事、たぶん (実感)
プロマネ(ブランド・マネジャー)の誕生
1931年にP&Gのニール・マケロイがブランド・マネジャーの職務規定に関する800語
メモ“Brand Man”を書く
担当製品のユニット別出荷数を十分に把握せよ
成長している既存製品の有効と思われる施策を他の領域にも応用せよ
課題を発見するため過去の広告や販促施策の歴史を調べよ
課題を特定して解決策を考え、かつ費用対効果を明確にせよ
販売計画成功のため最後までセールス担当をサポートせよ
目標達成のため必要とされるすべてを記録しフィールド調査をせよ
すべての顧客接点に全責任を持て
すべての広告費用に全責任を持て
地区マネジャーと地区の販促計画の問題点や改善策ついて議論せよ
プロダクトマネジャー制度誕生の背景
 マーケティング概念の浸透
 製品やサービスは消費者のニーズに合わせるもので、消費者を製品に合わ
せるものではない、という概念が組織中に浸透した
 ブランディングの重要性
 技術の進歩により類似した多くの新製品が誕生することになり、対競合製品
および自社内の他製品との差別化の必要性が増大した
 マス広告・マス流通の発達
 マスメディアと、セルフサービス店であるスーパーマーケットチェーンの隆盛に
より人的販売のウェイトが下がり、一人のプロマネで実行できる領域が広がっ
た(配荷、広告)
 企業の巨大化による権限の委譲
 企業が大きくかつ複雑になり、トップマネージメントが個々の製品や市場を把
握できなくなり、権限の委譲が必要になった
プロダクトマネジャー制の長所と短所
 長所
 担当製品の集中的な管理が可能になり、機会損失を回避したり問題の早期
発見が可能となる
 将来の上級幹部となるための絶好のトレーニングとなる
 トップマネージメントの決断・プライオリティづけを容易にする
 短所
 担当製品にしか関心が持てず、全社的な視野を欠く恐れがある
 他部門に対して指示的になったり、優越感を持つことがある
 プロマネは比較的年齢が若く、実務経験が浅いことが多く、サポート部門が
抱える問題に無頓着なことがある
マーケティングとはなんだろう
 マーケティングとは、消費者、顧客や社会にとって価値のある提供物を
創造・伝達・配布・交換するための活動、一連の制度、プロセスである
(アメリカマーケティング協会)
 マーケティングは、企業というものを、顧客を創造して維持する目的の
ために組織された過程だと考える (T.レビット)
 マーケティングとは、組織をその環境に成功裡に関連づける諸活動で
ある (G.D.ヒューズ)
 マーケティングとは、交換過程を通して、ニーズとウォンツを満たすこと
を意図する人間の活動である (F. コトラー)
 多少古臭いがいまだに J.P.マッカーシーの4P (Product、 Price、
Place、 Promotion)がもっとも分かりやすい
マーケティングの4P
 Product(製品)
 消費者・ユーザーのニーズと合致する製品の設計
 ターゲット消費者・ユーザーの製品受容度の確認
 Place(流通)
 流通市場の選択
 流通戦略の決定
 営業活動の組織的管理
 Price(価格)
 消費者・ユーザーの欲求に合致する価格の設定
 Promotion(販売促進)
 ブランドの認知やイメージの向上による販売量の増大
 広義のPromotionには Sales Promotion、POP、PR、広告、
Personal Selling (人的販売)が含まれる
近代マーケティングの誕生
1908年にフォード・モータースがT型フォードを発売し、1500万台を売り
上げた成功例をもって近代マーケティングの誕生とされる
大量生産、大量消費の生産体制を可能にした最初の例
- ベルトコンベア使用による生産効率化
- 競合の2000ドルに対して850ドルの価格優位性
マーケティング概念の進展・変化(コトラーによる)
1950年代-1970年代 1980年代-2000年代 2000年代以降
少品種大量生産・販売 多品種少量生産・販売 新たな価値創造
製品中心 消費者志向 価値主導
製品開発 企業/製品ポジショニング ミッション・ビジョン
製品を売ること 消費者を満足させること 世界をより良くする
STP(Segmentation,Targeting,Positioning)
3Is(Brand Image,Integrity,Identity)
2014年にコトラーはマーケティング4.0である自己実現マーケティングを提唱
日本におけるマーケティング
1955年に日本生産性本部が石坂泰三(当時東芝社長翌年から経団連会長)
を団長とする「トップマネジメント視察団」を結成し訪米
帰国後マーケティングの導入を発表
「これからの日本にはマーケティングが必要である」
1956年に「マーケティング特別視察団」が訪米し、企業によるマーケティング
への取り組みが始まる
プロダクトマネジャーの責務
 担当製品の売上と利益を最大化するためのプランの作成と実行
 短期的には売上と利益を最適化する
 長期的には売上と利益を最大化する
 Quality、Speed、Valueの最大化
 製品開発の早期開始、早期発売とマーケットへの迅速な浸透
 早期にピークセールス・ピークシェアを最大化する
 製品寿命(プロダクトライフサイクル)の延長を図る
 営業活動のサポート
 顧客・消費者への正確で差別化された製品メッセージ・コピーの開発
 効果的なプロモーション・マテリアルの企画・作成
プロダクト・ライフサイクル
導入期: 新製品であるため認知度は高くなく、需要量も低い
‐市場拡大を狙い啓蒙活動を中心に製品認知を高める
成長期: 認知が上がり需要が急増し、競合の参入が激化する
‐製品特徴や強みを強調しながらブランド力を高める
成熟期: 市場の成熟、競争の激化、価格競争が始まる
‐競合との差別化を図り、ロイヤルティとシェア維持を狙う
‐再活性化、リポジショニングの可能性を探る
衰退期: 製品の陳腐化、市場の縮小、撤退する競合の増加
‐支出を抑えながら既存顧客の確保に集中
プロダクト・ライフサイクルの段階別対応策
売り上げを最大にするためには
売り上げ = 顧客数 X 平均購入単価 X 平均購入点数 X 平均購入頻度
購入単価と購入点数は増やすのが困難なことが多いので
顧客数を増やす、購入頻度を上げる、が重要になる
顧客数 = 既存顧客 + 新規顧客 - 流出顧客 なので
新規顧客を獲得する、流出顧客を防ぐ、および過去の流出顧客を引き戻す
ことに注力する
新規顧客の獲得が容易ではない場合は、購入頻度を上げる、流出顧客を
防ぐ、過去顧客を引き戻すことに力点を置くほうが賢明なことが多い
売り上げを上げるための四要素
1.取扱店数・配荷率を上げる
トレード・プロモーション(対卸店、対小売店)、社内販促(セールス・
トレーニング、セールス・インセンティブ、セールス・コンテスト)
2.ブランド認知率を上げる
広告(含SNS)、POP、デモ販、大陳、サンプリング、イベント
3.試し買い(トライアル)・初回購入率を上げる
サンプリング、クーポン、大陳、特売、POP、デモ販、製品モニター
4.再購買率(リピート)・ロイヤルティを上げる
特売、ボーナス/マルチパック、大陳、消費者プロモーション
売りを上げるためには配荷率と認知率が必要
40 認知率 100
認知はあるが 配荷もなく
配荷がない 認知もない
16% 24% 60
配荷率
配荷があり 配荷はあるが
認知もある 認知されていない
24% 36%
0
ブランド認知の重要性
 ブランド認知がないということは、最初から購入の選択肢から外れる
ことを意味する
 ブランド認知は親しみ・好意・安心感・確信を与える
 企業が長期間その製品を製造・販売し、流通させている
 企業が大量の広告でサポートしている
 たくさんの人がその製品を使っている ‐ 成功ブランド
 ブランド認知率(知名率)は定期的に調査されるべきである
 ブランド認知は二つのファクターから生成される
 経験(購買・使用経験、試供品、店頭での目撃)
 情報(広告、PR、口コミ)
ブランド認知
あるブランドが、ある製品カテゴリーに属していることを、顕在・潜在消費者
が認知・想起すること
 Top of Mind Awareness(トップ・オブ・マインド)
 非助成想起で最初に挙げられたブランド
 想起されるブランドが一つの時は支配ブランドと呼ぶ
 Unaided Awareness 非助成想起(純粋想起)での認知率
 あるカテゴリーでのブランドの自発的想起率
 Aided Awareness 助成想起での認知率
 提示されたブランドを知っている比率
認知や好意を獲得するためのPESO
企業やブランドが、その存在や活動、利点を認知させ、望ましいイメージの
熟成、ユーザーや社会と良い関係を構築する活動手段
Paid Media(有料広告)
TV広告、新聞・雑誌広告、ネット広告、交通広告など
Earned Media(良い評判を獲得するためのPRメディア)
パブリシティ、ニュースリリース、WOM、IRなど
Shared Media(ソーシャル・メディア)
SNS、CGM、個人ブログ、掲示板など
Owned Media(自社メディア)
自社HP、ECサイト、自社刊行物など
広告を用いずに認知を上げるには
認知は情報と経験の二つから築かれる
情報から認知に結び付けるには
店頭(パッケージ、大陳、特売、販促活動、POPなど)
口コミ(購買者、使用者からの情報)
SNS(メーカーサイト、EC、インフルエンサー情報)
経験から認知に結び付けるには
店頭で試食/試飲する、購入する
街頭・店頭などでサンプリング品を試食/試飲
モニターなどの使用/試用/試乗などの経験
ブランド認知を改善するためには
 競合品との差別化をし、覚えやすくする
 お口で溶けて手で溶けない(M&M's)、うまい・やすい・はやい(吉野家)
 スローガンやジングルを用いる
 インテル入ってる、アート引越しセンターへ、お値段以上ニトリ
 シンボルやアイコンを使用する
 KFCのカーネル・サンダース、ナイキのスウォッシュ、アップルのりんご
 パブリシティ(情報源効果)
 ブランドの拡張・社名の強化
 日本の場合は三菱、ヤマハのように社名がブランド化
新規顧客(トライアル)を獲得するために
 製品の存在を知ってもらうことがまず必要(ブランド認知)
 広告、PR、サンプリング、プロモーション、展示会、営業活動
 次に、製品の特徴を知ってもらう
 競合品と比べての差別的優位性を知ってもらう
 消費者が使って分かる製品ベネフィットを知ってもらう
 Feature (特徴)
 Advantage (利点)
 Benefit (便益)
 上記三つを達成することにより製品のポジショニングが明確になる
ポジショニングとは
 ポジショニングとは、製品やサービスが使用者・消費者の意識の中で、
競合と比較されてどのように見られているか、位置付けられているかを
簡潔に記述したもの
 明確な訴求対象(顧客)の定義
 競合する製品カテゴリーの定義
 この製品・サービスを使用・利用することのメリット
 競合との差別化・優位性
 USP(Unique Selling Proposition)
 その優位性は持続可能か
 その優位性を実証・説得させる理由・根拠
メッセージの到達から使用までのフロー
メッセージのデリバリー
到達 認知・記憶 好意・態度変容 試用注目
注目せず
試用せず
非好意・非変容認知・記憶せず
使用中止
評価 再使用
認知・記憶されないと何も始まらない認知・記憶されないと何も始まらない
ロイヤル
ユーザー
差別化されたベネフィットを、記憶されやすいメッセージとして発信するのがプロマネの仕事
AIDMA(アイドマ)の法則
Attention 注目させる
Interest 興味を持たせる
Desire 使って(買って) みようと思わせる
Memory 製品の特徴・名前を記憶させる
Action 行動(使用・購入)をとらせる
電通のAISAS(アイサス)
Attention 注目させる
Interest 興味を持たせる
Search ネットで検索させる
Action 行動(使用・購入)をとらせる
Share SNSなどで共有させる
J6RWH
顧客にメッセージを認知・記憶してもらうためには
メッセージにはインパクト(武器)が必要
確かなエビデンス (論理的および情緒的な証拠) は有力な武器となる
エビデンスは製品のポジショニングを明確にし、認知されやすくする
競合品に対する差別化・優位性が明確になれば、顧客のその製品に対する
知覚・認識・好意が変わる(態度変容)
認識が変わり好意度が上がればトライアル(購入・使用・処方)につながる
繰り返し一貫性のあるメッセージを伝え続けることが重要
聞き手を説得するための EEEFAS
 Experience 個人の経験・実体験
 Expert opinions 専門家やOL・権威の意見、文献
 Examples 具体的な実例
 Facts 客観的事実
 Analogies 類似例・類推・たとえ
 Statistics 統計的事実・数字
リピート/ロイヤルティを向上させるためには
 ブランド価値を高め続ける(品質、安全性、不良品率、コスト、見た目)
 顧客を正当に扱う(メーカーの独りよがりは駄目)
 失敗例:キリンラガーや、コカ・コーラ のテイスト変更
 顧客の満足を測定し、管理する
 “なぜ継続購入しないのか”の理由を探りバリアを取り除く
 スイッチング・コストを創出する
 変更にともなうリスクを明示・確信させる
 ロイヤルティに対する報酬(マイレージ・サービス、ポイントカード)
 会員制クラブ・メンバーシップ(囲い込み)
プロダクト・ライフサイクル
ブランドの再活性化
 使用量を増加させる
 頻度、一回あたりの量、使い易さ、動機づけ、過度の使用によるマイナスイ
メージの解消、コンプライアンスの改善、新しい使用場所
 新しい用途の提案
 リポジショニング(新市場・新ターゲット)
 新しい付加価値をつける
 新技術による既成製品の陳腐化
 パッケージ、コピーの改良、広告量の増大
ブランドを殺すことも時には必要
• ブランドロイヤルティが低く、プロダクト・ポートフォリオ上でDOG(負け犬)
と分類され(低い市場成長率、低いシェア)、会社内に他に投資の対象が
ある場合は、ブランド価値の維持を考えるよりサポートを中止し、市場か
ら撤退する選択肢も考慮すべき
• 過去にある程度のブランド価値を保持していた製品は、ブランド認知もあ
り、サポート中止後も販売が激減する可能性が低く、製造コストも低いこ
とが多いので、利益を搾り出すミルキング戦略が経営的に有効なことが
多い
• 問題点:プロマネを説得するのが難しい
プロマネの心得
 プロマネはその製品に関しては社長のような存在である
 一番必要なものは担当製品に対する愛情 - 自分が製品を信じきってい
なければ誰も説得できない
 マーケティングは科学とアートの両方の面を持っている
– 客観的な調査結果や統計による数量的管理
– 担当プロマネとしての思い入れや直感
 外資系の共通言語は英語ではなく数字とロジックである - 思い入れや
直感も後付けでもロジカルに説明することが必要
 一番面白い仕事だと信じること(2勝8敗でもヒーローになれる)
顧客満足に関する法則・格言
1対5の法則
新規顧客の獲得コストは既存顧客を維持するコストの5倍になる
5対25の法則
顧客の離反率を5%改善できれば、収益率は25%~85%改善する
1人の不満足は66人に伝播する
満足した客は7人にそのことを話す。不満足な客は11人にそのことを
話し、11人がそれぞれ5人に話すと言われる
プロスペクト理論
得られた筈の利益を失った悲しみはより大きい(人は徳より損に敏感)
同じ規模の利得と損失を比較すると損失の方が1.5~2.5倍大きくなる
お疲れ様でした。さいごに・・・
Serve your customers !
プロマネの責務は担当製品の売り上げと利益を最大化することだが、売
り上げや競合のことを考える前に、マーケターはまずどうやって顧客を
満足させるか(ブランド価値を上げ、ブランドロイヤルティを高めるか)を
考えるべきである。

プロダクト・マネジャーの仕事