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介護保険のトリセツ<SHORT VERSION>
〜~家庭医ならば  知っておきたい基礎知識識〜~

福島県⽴立立医科⼤大学医学部  地域・家庭医療療学講座
                              菅家  智史
本⽇日の内容(50分)
•  介護保険申請〜~利利⽤用までの流流れ



•  主治医意⾒見見書を書くポイント
•  介護認定はどう決められる?
•  介護認定審査会って何してるの?
•  主治医意⾒見見書のどこがポイント?
本⽇日の内容(50分)
•  介護保険申請〜~利利⽤用までの流流れ



•  主治医意⾒見見書を書くポイント
•  介護認定はどう決められる?
•  介護認定審査会って何してるの?
•  主治医意⾒見見書のどこがポイント?
家族になったつもりで考えてみよう  
•  この家族の孫世代に
なったつもりで

•  家族が何を⼼心配するか考
えてみよう
⽥田中正造さん  80歳男性  
•  1年年前に妻と死別
   •  その後⻑⾧長男家族と同居


•  半年年前くらいから
 •  夜中に部屋をガサゴソ
 •  内服薬がたくさん余ってい
  る
80歳男性  
•  3ヶ⽉月前に転倒
   •  右⼤大腿⾻骨頚部⾻骨折
   •  ⼿手術してリハビリ病棟へ
 •  なんとか歩⾏行行はできる


•  病院から「そろそろ…」
 •  本⼈人『やっと帰れるのか!(^^)』
80歳男性    
•  ⾃自宅宅へ退院する⽅方向
   •  どんなことが⼼心配?


•  いろいろ考えてみよう
 •  できるだけ数多く
 •  想像、妄想⼤大歓迎
介護保険サービス
こんな時、助けになります
介護保険制度度の⽬目的
•  介護を「社会」で担う
   •  ⾃自助:⾃自⼰己、家族
   •  公助:介護保険、公的扶助
 •  共助:ボランティア、NPO


•  ⾃自⽴立立し、尊厳を持った⽣生活を⽀支援
 •  ⾝身体的⾃自⽴立立、精神的⾃自⽴立立、⼈人格的⾃自⽴立立
 •  ⾼高齢になっても住み慣れた⾃自宅宅で過ごす
介護保険サービスを受ける条件
•  年年齢
   •  65歳以上  または
   •  40歳〜~64歳で特定の疾病に罹罹患している
  •  脳⾎血管疾患、ALS、パーキンソン病など16種



•  市町村から要介護認定を受けること
•  「ケアプラン」を⽴立立案すること
いろいろな介護保険サービス
•  ⾃自宅宅改修・介護⽤用品レンタル
•  訪問介護  ⾝身体介護、⽣生活援助
•  通所リハビリテーション(デイケア)
•  通所介護(デイサービス)
•  訪問⼊入浴介護
•  訪問リハビリテーション
•  ショートステイ        などなど
介護保険サービスを受けたい
•  そろそろ⾃自宅宅へ退院
と⾔言われても不不安だらけ

•  先⽣生、介護保険サービスを
受けるにはどうしたら
いいんですか?

•  あなたならどう答える?
そんな時、頼りになるのが



地域包括⽀支援センター
地域包括⽀支援センター
•  ⾼高齢者に関することなら何でも相談
   •  介護保険の相談、必要な⼿手続きの紹介
   •  要⽀支援および介護保険⾮非対象者への対策
 •  ⾼高齢者虐待対策  などなど


•  介護保険申請が初めての⽅方にオススメ
 •  必要な申請も
 •  サービス事業所の紹介  など
地域包括⽀支援センター
•  福島市では
19ヶ所

•  住所の地域で
区分される

•  役所に聞くと
分かります
その後の流流れ
            ⾃自治体窓⼝口
              へ申請

                       要介護認定
   認定更更新
                       •  訪問調査
                       •  主治医意⾒見見書作成
                       •  介護認定審査会




   サービスの              認定結果の
     利利⽤用               通知

            ケアプラン
             の作成
本⽇日の内容(50分)
•  介護保険申請〜~利利⽤用までの流流れ
   •  まずは地域包括⽀支援センターへ!


•  主治医意⾒見見書を書くポイント
•  介護認定はどう決められる?
•  介護認定審査会って何してるの?
•  主治医意⾒見見書のどこがポイント?
認定はどう決まるのか?
    要介護認定の申請


   認定調査員
            主治医意⾒見見書
    訪問調査
    ⼀一次判定


     介護認定審査会


   要介護認定結果の通知
介護認定審査会の資料料
5   介 護 認 定 審 査 会 資 料 の 見 方
要介護認定調査員  訪問調査
•  要介護認定申請後に1回訪問
   •  市町村職員または委託を受けた事業者


•  ⽇日常の⽣生活状況を67項⽬目で評価
•  基準はテキストに細かく定められている


•  評価をコンピュータに⼊入⼒力力
•  「介護の⼿手間」を⽰示す時間に変換
•  この時間を元に『⼀一次判定』
介護認定審査会の資料料
5   介 護 認 定 審 査 会 資 料 の 見 方




             ⼀一次判定
              ソフト
あれ?  主治医意⾒見見書は?
認定はどう決まるのか?
    要介護認定の申請


   認定調査員
            主治医意⾒見見書
    訪問調査
    ⼀一次判定


     介護認定審査会


   要介護認定結果の通知
主治医意⾒見見書のポイント
•  40〜~64歳  特定疾病の有無


•  「介護の⼿手間」をどう表現するか


•  要⽀支援2と要介護1  の境界
介護保険サービスを受ける条件
•  年年齢
   •  65歳以上  または
   •  40歳〜~64歳で特定の疾病に罹罹患している
  •  脳⾎血管疾患、ALS、パーキンソン病など16種



•  市町村から要介護認定を受けること
•  「ケアプラン」を⽴立立案すること
厚⽣生労働省省が定める特定の疾病
•  がん末期                •  早⽼老老症
•  関節リウマチ              •  多系統萎縮症
•  筋萎縮性側索索硬化症          •  糖尿尿病性神経障害、糖尿尿病
•  後縦靱帯⾻骨化症               性腎症、糖尿尿病性網膜症
•  ⾻骨折を伴う⾻骨粗鬆症         •  脳⾎血管疾患

•  初⽼老老期における認知症        •  閉塞塞性動脈硬化症
•  進⾏行行性核上性⿇麻痺、⼤大脳⽪皮   •  慢性閉塞塞性肺疾患
   質基底核変性症、パーキン        •  両側の膝関節または股関節
   ソン病                    に著しい変形を伴う変形性
•  脊髄⼩小脳変性症               関節症
•  脊柱管狭窄症              厚⽣生労働省省ホームページより
                       http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/nintei/gaiyo3.html
介護認定審査会
•  資料料
   •  ⼀一次判定結果
   •  訪問調査の特記事項
 •  主治医意⾒見見書


•  資料料で「介護の⼿手間」を審査
 •  ⼀一次判定で評価されない部分を審査
 •  資料料に書いてなければ審査に加味できない
「介護の⼿手間」とは?
•  疾病や障害の重症度度で判定するのではない
•  介護にどれだけ「⼿手間」がかかるか
   •  <例例>⾦金金銭の管理理  全介助<⼀一部介助


•  介護認定審査会
   •  ⼀一次判定に反映されていない「介護の⼿手間」
   •  「資料料」に記載されている事項のみから判断
   •  ⼆二次判定を決定




                       参考:厚⽣生労働省省  介護認定審査員テキスト2009
介護の⼿手間をどう表現するか(例例)
•  認知症があり、不不安が強く、家族が近くにいな
 いと常に家族を呼び続けるため、本⼈人のそばを
 離離れることが難しい

•  主介護者の⻑⾧長男の嫁に対するもの盗られ妄想が
 あり、対応に疲弊している

•  ⾞車車椅⼦子から不不意に⽴立立ち上がり転倒したことがあ
 り、⾞車車椅⼦子使⽤用中も眼を離離すことができない
意⾒見見書を書く(私の)コツ
•  家族同伴で診察できるような⼿手配
   •  ケアマネ・訪問看護スタッフも歓迎します


•  CGA(⾼高齢者総合評価)のチャンス!
•  ADL、IADLを確認
•  状況をエピソードとして把握
•  「困っていること」を聞く(本⼈人・家族)
   →困っていること≒⼿手間がかかること
CGA(⾼高齢者総合評価)
ADL  ⽇日常⽣生活動作   IADL 道具的⽇日常⽣生活動作

D  更更⾐衣         S  買い物
E  ⾷食事摂取        H  家事
A  歩⾏行行         A  ⾦金金銭管理理
T  排泄           F  炊事
H  整容           T  移動⼿手段確保
CGA(⾼高齢者総合評価)


  物忘れ         転倒
      Geriatric
      Gaiants
  尿尿失禁        うつ
⽇日常⽣生活⾃自⽴立立度度(寝たきり度度)

               交通機関を利利⽤用できる。
    独りで        (「SHAFT」の「F」)
J   外出する
           1
               隣隣近所に散歩する程度度
           2
               ほとんどベットから離離れて⽣生活             ⽣生活圏は
    外出     1                               ⾃自宅宅内のみ
A   しない
           2
               ⽇日中寝ていることが多い

               「⾃自⼒力力で」⾞車車いすに移乗できる     「寝たき
           1
B   車いす
           2
               「介助で」⾞車車いすに移乗する
                                        り」


               「⾃自⼒力力で」寝返り
           1
C   寝返り
           2
               寝返りできない



                                     望⽉月亮亮先⽣生のスライドより引⽤用
認知症患者の⽇日常⽣生活⾃自⽴立立度度

Ⅰ     独り暮らし可            (HDS-R≧15点)

    在宅宅・⾒見見守りで                                  訪問、
    だいたいOK        a    家庭「外」で注意が必要           通所サービス
Ⅱ                                             などを検討
    (でも独り暮らしは困
    難)            b   家庭「内」でも注意が必要
                                             短期
    在宅宅介護         a   「⽇日中」を中⼼心に介護が必要     お泊りサービス
Ⅲ   (直接的な⽀支援)が                             などを検討
    必要            b    「夜間」も介護が必要

    常に⽬目を離離すことが                         施設⼊入所・⼊入院
Ⅳ                                         を検討
    できない

      精神科受診が
M
      必要


                                      望⽉月亮亮先⽣生のスライドより引⽤用
要⽀支援2  要介護1  の判定
•  どちらも⼀一次判定は同じカテゴリ


•  認定審査会が判断
•  6ヶ⽉月以内に状態が変化して介護の⼿手間が増⼤大する可
   能性あり
•  認知症⾼高齢者⽣生活⾃自⽴立立度度  Ⅱa~M
•  その他の精神疾患などで予防給付の理理解が困難な状況


•  いずれかに該当すれば要介護1
認定が違うとどう変わる?

        要介護度度が低いと、利利⽤用できるサービ
        スの総量量(⽀支給限度度額)が少ない

        施設サービスでは、要介護度度が上がる
        と1回あたりの利利⽤用料料も上がる
        →同じ利利⽤用回数でも⾃自⼰己負担額異異なる



        <要介護の場合>
        •  ショートステイ
          •  約7,000~12,000円/⽇日
        •  デイケア・デイサービス
          •  約7,000~13,000円/⽇日
        •  訪問介護
           •  30分未満  約2,500円
          •  1時間未満  約4,000円
主治医意⾒見見書のポイント
•  40〜~64歳  特定疾病の有無


•  「介護の⼿手間」をどう表現するか


•  要⽀支援2と要介護1  の境界
本⽇日のまとめ
•  介護保険申請〜~利利⽤用までの流流れ
   •  わからなければ、地域包括⽀支援センターへ


•  主治医意⾒見見書を書くポイント
•  40〜~64歳は特定疾病の確認
•  「介護の⼿手間」を表現する
•  要⽀支援2と要介護1の境界

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