日々の業務を通して見える学生
―10年間の経験からー
松 宮 慎 治 (神戸学院大学)
2015.01.10
大学職員フォーラム
於:京都私学会館
10年前の自分
・10年前の私は、大学1年生でした
・高校生活は楽しかったのですが、大学生
活は辛かったです(特に1年次の初め)
・でも、10年たった今、なぜか大学で働い
ています
・今回、働く中で、結局自分の学生時代の
経験が大きく影響していると気づきました
自己紹介
2004年3月:
京都橘高校卒業
2008年3月:
大阪教育大学教育学部教養学科卒業
2008年4月:
神戸学院大学専任職員(現在に至る)
2015年4月:
広島大学大学院教育学研究科(進学予定)
大学生の頃
・大学入学当初、便所飯(トイレで昼食をと
ること)をしていた時期があります
・2004年頃は便所飯という言葉はなかった
と思います
・2008年、大学で働き始めて、初めて
ニュースで便所飯という言葉を見ました。
そのとき、「ああ、俺は便所飯業界のフロ
ンティアだったのか」と思いました
大学の何が辛かったのか
・「何をやってもいいんだよ」と言われるよ
うになる(急にそんな感じになられても、、)
・講義の内容にあまり関心が持てない
・人間関係が表面的に感じられる
・「大学は人生の夏休み」という空気感(大
学を卒業したら、もう秋なの?)
・単位をいかに効率的にとるか、が正義
松宮少年(18歳)に必要だったこと
・やりたいことを自ら模索して、発見する
・知的好奇心を、自ら喚起する。そのため
に動いてみる
・友人に、自ら積極的に関わっていく
※要するに、自ら動くというチャレンジ精神
⇒そんなことは頭ではわかっていた。しか
し、頭で理解することと、実際に行動する
ことの間には高い壁があった
10年前の経験から、現在の思い
・母校の大学は悪くない。自分に力がな
かっただけ。でも、「何かのきっかけがあ
れば違ったかもしれない」と思うこともある
・だから、今の仕事では、あらゆる学生に
きっかけを与える役割を果たしたい
・大学になじめない学生の方が気になる。
しかも、そういう学生は、大化けするし伸
びると確信している
学生との関わり(1)普段の業務
2008年4月-2012年5月:
・学生支援センターにて
学生向け広報誌の作成、学生ボランティ
ア『食堂サポーター』、苦情対応など
2012年6月-現在 :
・教務センターにて
教職課程の学生の支援など
学生との関わり(2)普段の業務外
・東北(石巻/名取)への学生ボランティア
の引率
1泊4日を計3回。 平成23年10月21-24
日、平成24年5月11-14日、12月21-24日。
・学生FDサミットへの参加学生の引率
1泊2日。平成26年8月23-24日。
※宿泊する、同じ釜の飯を食うといった、
学外における非日常体験の共有
学生との関わり(3)現在の関心
・教職課程の担当者として、教員採用試
験合格者を爆発的に伸ばす(数に拘る)
・教員になりたい学生が、確実に教員にな
れるようにする
・そのために、教科や学年を越えて、学生
が自主的に学び合い、切磋琢磨する環境
を整える。できれば他大学の学生とも、、
学生に抱く印象(プラス面)
・学生から学んだことはたくさんある。数え
きれない
・ex.)教職課程を履修する学生の、実習終
了後の後輩への言葉
「子どもたちは、見ています」
「自分より素晴らしい可能性を育てる仕
事です、そう思って実習に臨んでください」
学生に抱く印象(マイナス面)
・チャレンジを恐れる。チャレンジする前に、
自ら実力を規定してしまう
・<出席>を気にする、平等性を気にする
・他人の迷惑行為(ex.うるさい私語、指定
場所以外での喫煙)を罰して欲しがる
学生の多様化を感じる場面など(1)
※以下、他大学の友人に伺いました。まとめると、、
①受け身の姿勢?
②権利意識・消費者意識の膨張?
③コミュニケーションの不全?
④大人しく、保守的?
⑤規範意識の欠如?
⑥保護者との関わり?
⑦学力の不足?
⑧学ぶ意欲or環境の問題?
学生の多様化を感じる場面など(2)
①受け身の姿勢?
・与えてもらうのを待っているのかも★
・やったらなんぼでものびるが、やらずに卒業する
・チャレンジ経験や忍耐強くやり遂げた経験が欠けている
・やる気スイッチを押してもらうことを待っている★
・履修が自分で決定できない
・教職員に指導されないと自分で何もできない
・自分で調べない、なんでも他人に聞く学生
・調べたら分かることでも確認したがる
学生の多様化を感じる場面など(3)
②権利意識・消費者意識の膨張?
・「権利」の主張が強くなっている
・消費者意識が高い★
・単位不足で卒業が延期になった場合、教職員の責
任にする
・教えてくれて当たり前という態度で聞きに来る
学生の多様化を感じる場面など(4)
③コミュニケーションの不全?(1)
・話し下手な学生が増えた。伝えたいことが窓口でうまく伝
えられない
・連絡・報告をしない
・(人間関係において)真正面からぶつからない★
・なかなか連絡がとれない★
・怒られていることになれていない
・友人の意見に流される
・私が私が・・とは主張しないけど正当に評価されないとス
ネる
学生の多様化を感じる場面など(5)
③コミュニケーションの不全?(2)
・窓口付近に来ても自分から話せず、こちらの様子を伺う
ようにウロウロする(特に男子学生)★
・友人関係が希薄?★
・一人ランチを見られたくないのか隠れて食べたり、急いで
食べる学生が見受けられる★
・テイクアウトやお弁当を買って、自分の落ち着く場所でた
べる学生が増えた(先輩談)★
・窓口に頻繁に来る
・窓口で泣く
・感情的な異議申し立てをしてくる
学生の多様化を感じる場面など(6)
④大人しく、保守的?
・ハメを外さない★
・省エネ?(費用対効果を考えている)★
・素直(内面のドロドロがない)
⑤規範意識の欠如?
・期限を守らない★
・理由をつけて行事に出席しない
・大切な書類でも、間違えて修正することに何の抵抗
もない★
・締め切り後に当たり前のように提出物を持ってくる
学生の多様化を感じる場面など(7)
⑥保護者との関わり?
・保護者からの問い合わせが増えた
⑦学力の不足?
・誤字脱字、マニュアルを読まないor理解できない
・文章が書けない学生と書ける学生の二極化が激しい
・文章を書けない、書き方を調べない
・漢字が書けない
・簡単な掛け算、割り算ができない
・理解できていないことが、わかっていない★
・何度説明しても理解ができない
学生の多様化を感じる場面など(8)
⑧学ぶ意欲or環境の問題?
・「じゃあ1/3は欠席していいんですね。何回までいい
んですか?」
・履修要項や掲示等の確認を怠る
・提出しなければならない書類を紛失する
・バイトの優先順位が、説明会やガイダンスよりも上★
・アルバイトの負担が重く、授業中にアルバイトの準備
をしている(教員談)
・授業にしっかり出席し、課題も忘れずに提出するが、
どこか覇気がない(教員談)
・授業が終わるとすぐに帰宅する★
疑問(つぶやき)
・「★」がついているものは、かつての18歳の
自分にもあてはまるものだ
・学生は本当に多様化しているのだろうか
・もしも多様化しているとして、多様化は悪いこ
となのだろうか。大学の良さの一つは、多様性
ではなかっただろうか
・でも苦慮している教職員が多いのも事実
・もしかして、良い多様化と悪い多様化がある
のだろうか。多様化ってなんだろう
問題提起(1)大学の責任はどこ?
大学は、多様な学生を伸ばすための器を保持
できているか?管理思考・懲罰的発想で、学
生を委縮させてはいまいか
・たとえば、大学の制度が、学生を疑う前提で作られて
いないか(ex.証拠書類の提出)
⇒性悪説の中で、若い可能性が伸びるのか?
・たとえば、「社会に出たら、ルールを破ったら罰せら
れる。だからルールは大事だ」と言っていないか(ルー
ルを盲信させてor自ら盲信してはいないか)
⇒必要なのは、ルールの存在理由を考えることや、既
存の価値観を越え、新しいルールを形作る力では?
問題提起(2)面倒なだけかも?
・よく聞く言葉として、次のようなものがあ
る。「大学生に対して、そこまでやらなけれ
ばいけないのか?」
⇒では、信念を持って「やらない」というこ
とを選択できているか?
⇒単に、向き合うことが面倒なだけではな
いのか?
学生と接する時に気にしている3つのこと
①待つこと
(ex.窓口の場面)
・学生がなかなか用件を言えないときがあ
る。非常によくある
・多少じれったくても、言い終わるまで待つ
ことにしている
・先回りして答えたくなる。でもそれはしな
い。自分の力で言い切らせてあげる
学生と接する時に気にしている3つのこと
②問うこと
(ex.窓口の場面)
・「それはこういうことですか?」「なぜそう
思ったのですか?」と問う*
・学生の発言が本心とは限らない。本当は
違うことを思っているかもしれない
・問うことによって、個別の関係性が生ま
れる。学生⇔職員から、Aさん⇔Bさん へ
*池田(2014),大学教務実践研究会第2回大会,講演
学生と接する時に気にしている3つのこと
③こちらから積極的に関わること
(ex.窓口の場面)
・「すいません」と声を掛けられてから対応
することがある。その状態を「負け」と呼ぶ
・「お伺いしましょうか」とこちらからいく
・休み時間になれば、初めからカウンター
に立っておき、学生を待ち構える
積極的に関わることの一例:
学内ポータルで学生に配信したお知らせ(1月6日)
件名:新年のあいさつ+上半期の予定
差出人:教務事務グループ
本文:このお知らせは、教職課程を履修する全学生にお送りし
ています。
あけましておめでとうございます。KAC教務の松宮です。本年も
どうぞよろしくお願いします。
4年次生は卒業までもう少しですね。明日の一括申請の申込み
は忘れないようにお越しください。
新2~4年次生には、今年の履修指導等の日程をお知らせしま
すので、各自ご確認ください。
特に新4年次生対象の「事前・事後指導」は、3日間の集中講義
で実施することを検討していますので、予定をあけておいてくだ
さい。ちょっと大変ですが、大事なことなので頑張りましょう。(以
下略)
※形式的なやりとりに、自分なりの言葉を足すようにしている
こういう関わり方で学生に表現したいこと
・みんなのことは、責任もって面倒を見る
・学生⇔職員という関わり方ではなく、あなた
⇔わたし、という関係性を結びたい
・いつでも見ているしサポートする用意もある
以上は大学職員としてのプロ意識へのこだわ
りがあってのこと。ただし、そのプロ意識の有
無や、職業人としての評価を決めるのは、最
終的には学生だと思っている
今後、大切にしていきたいこと
➢学生の可能性に期待する、ということ
・自分は神ではない。若い可能性を見切ること
など本来できないという謙虚さを大切にする
➢同僚の噂話より、学生の噂話を
➢自らの器を広げる。学生は自分の鏡だから
・学生がどうよくなっていくかということを考え
る。このことは、実は自分たちがどうよくなって
いくかを考えることと同じだと思う
おわりに 「ストラスブール大学の歌」より
学ぶとは誠実を
胸に刻むこと
教えるとは共に
希望を語ること
ルイ・アラゴン
(京都橘高校HP「アラゴンの泉」から)
ところで、原文訳はこうなっている
教えるとは 希望を語ること
学ぶとは 誠実を胸にきざむこと
(大島博光訳)
でも、「アラゴンの泉」では・・・
学ぶとは 誠実を胸に刻むこと
教えるとは 共に希望を語ること
※一文目と二文目が逆になり、「共に」が追加されている
●教えることよりも、学ぶことが先にある
●希望は、一方的にではなく、共に語るも
のである
大阪学院大学(1)、関西国際大学(1)、京都
産業大学(2)、京都橘大学(1)、京都文教大
学(1)、甲南大学(1)、常翔学園(摂南大学)
(2)、園田学園女子大学(2)、東北大学(1)、
名城大学(1)
ご協力いただいた以上10大学13名の友人
のみなさま、ありがとうございました。この
場を借りて御礼申し上げます。

日々の業務を通して見える学生ー10年間の経験からー