2016年10月23日(日)
MVNOによる競争環境変化
モバイル通信通信業界における
12016年 2学期 Aクラス 第2グループ
モバイル通信業界の概要
2
モバイル通信サービスの定義
携帯通信サービス = 携帯通信端末(スマホ等) + 携帯通信手段(SIM
カード)として話をします。
携帯通信端末
スマートフォン、タブレット、
ガラケーのこと。
SIMカードを挿入することで、
通信事業者の電波を使って通
話やインターネットに接続す
る。
SIMカード
電話番号を特定するための固
有のID番号が記録された、携
帯やスマートフォンが通信す
るために必要なICカード。
携帯通信端末に挿入すること
で通話やインターネット接続
が可能になる。
3
携帯通信事業者 契約者数伸び率の推移
MNO(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)に加えて、MVNOが近年シェアを伸
ばしています。
出所:MM総研「国内MVNO市場規模の推移(2016年3月末)」、(一社)電気通信事業者協会
2014年9月値 2015年3月値 2015年9月値 2016年3月値
図1:携帯通信事業者各社の契約者数伸び率の推移 MVNO
(仮想移動体
通信事業者)
4
MVNOとは?(いわゆる“格安スマホ”、“格安SIM”)
3キャリア(MNO)の構築した通信網を借りて、仮想的に自分たちの
通信網を作って携帯通信サービスを行っている事業者のことです。
Mobile Virtual Network Operator
MNO
etc.
MVNO ユーザー
通信
サービス
利用料
通信
サービス(+
端末)
を提供
通信
インフラ
を貸出
通信
インフラ利
用料
5
A社が
MVNO事
業に利用
B社が
MVNO事
業に利用
MNOの通信網の借用方法
MNOから借用する通信網の料金は、電気通信事業者法で規定され、
「MNOの設備投資額 ÷ トラフィック(通信量)」で毎年設定されます。
MNOの通信網 MVNOの通信網通信インフラを貸出
…
6
ユーザあたり通信量の増加
スマホ普及で個人あたりの月間通信量は増加。平均4.31GB/中央値
3.00GBを利用している計算
出所:MM総研「スマートフォン・MVNOの月額利用料とサービス利用実態」
図:スマートフォンの月間モバイル通信量
7
MNO通信網の利用料金の推移
「利用料金 = 設備費用 ÷ 通信量」の分母が爆発的に増加しているた
め、MVNO事業の売上原価であるパケット接続料はどんどん低下
図2:MNO各社のL2パケット接続料 (10Mbpsあたり、月額)
出所:NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク各社公表資料をもとにグループ作成
8
MVNOのビジネスフロー
サービスを直販(主に通販)することで、ユーザーに低料金のモバイル
通信サービスを提供。SIMカードだけでも契約可能。
MVNO
MNOから借用し
た通信サービス
(+モバイル通信
端末)を販売
MNO
無線通信網の構築
と通信サービスの
提供
端末メーカー
モバイル通信端末
の製造と販売
販売代理店 ユーザー
9
MNO・MVNOの料金比較
MNO(大手キャリア)の約1/3と、圧倒的に料金が安い
出所:MM総研「スマートフォン・MVNOの月額利用料とサービス利用実態(2015年12月)」
図:MNOの利用端末種類別月額利用料金と、MVNOの料金の比較(端末代金をのぞく)
MVNO
(通話対応)
スマート
フォン
ガラケー
10
携帯通信サービスは寡占市場(電波には限りがある)
電波(周波数帯)は有限資源なので、数多くの事業者に割り当てること
ができない。よって限られた事業者しか参入できず寡占市場になる。
出所:総務省 電波利用ホームページ、などを元にグループ作成
N-STAR
ガ
ー
ド
バ
ン
ド
固定
利用
(各
地
域)
ガード
バンド
移動通信
全国展開用
周波数帯
ガ
ー
ド
バ
ン
ド
移動通信
全国展開用
周波数帯
ガ
ー
ド
バ
ン
ド
モバイル放送
長波(LF)
航空機用等
中波(MF)
AMラジオ、
船舶・航空
機等
短波(HF)
船舶航空機
無線、短波
放送等
超短波
(VHF)
FM放送、
消防警察無
線等
極超短波
(UHF)
地デジ、携
帯電話等
マイクロ波
(SHF)
衛星放送、
無線LAN等
ミリ波
(EHF)
無線LAN等
300KHz30KHz 3MHz 30MHz 300MHz 3GHz 30GHz 300GHz
2535
MHz
2545
MHz
2575
MHz
2595
MHz
2625
MHz
図:電波長の分類と2.5GHz帯の割当イメージ図
11
政府による競争環境整備
周波数を新たに割り当てることなく、新規参入事業者を増やし、競争
環境を激しくしてサービス料金を下げたい。そこでMVNOに着目
MVNO第1号
参入
総務省が
「MVNO事業
化ガイドライ
ン」策定
「MVNO事業
化ガイドライ
ン」改定
電気通信事業
者法の改正/
SIMロック解
除義務化
b-mobile(日
本通信)が、
2001年に旧
DDIポケットの
PHSのインフラ
を借りる形で
MVNO開始
MNOとMVNO
の接続手続き等
の手引を提示
MVNOの参入障
壁を下げるよう
に改定
MVNOがMNO
から借用する通
信網に係る料金
の透明化を明記
契約したMNO
以外で端末を利
用できないよう
にするSIMロッ
クの解除義務化
2001年 2002年 2007年 2015年
MVNO
増加
12
MVNO事業者数の推移
政府の法規制の緩和・整備が寄与し、参入者数は増加
出所:総務省「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表」
図:1次MVNO事業者数の推移(単位:事業者)
13
MVNOの成長率が鈍化?
圧倒的にサービス料金が安いのに、契約純増数の伸び率が低下傾向?
出所:総務省「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表」
図:モバイル通信の契約数におけるMNO・MVNO別の純増数の推移(単位:万回線)
MNO
MVNO
14
ユーザーのサービス選好構造
ユーザーは、①どんなスマホを使うか? ②どんなSIMカードを使
うか? の組み合わせで契約する事業者を選択している。
通信料金
端
末
の
料
金
(≒
品
質
)
高
低
中
高低 中
MNO(大手キャリア)
MVNO
MNO/
MVNO競合
ホワイト
スペース?
15
スマホ + SIMカードでみた料金比較
MNOは2年契約を前提に、端末代金を値引き。MVNOはiPhone等
のハイブランドスマホを取扱えていないというハンデがある
図:スマホでの平均通信量4.3GBでみたMNO・MVNOの端末+通信料金比較(2年合計額)
データ通信料
通話料金
(5分通話定額)
端末代
(iPhone7 32GB)
その他オプション・
割引等
2年合計額
5000+300円×24ヶ月
(データMパック+SPモード)
1,700円×24ヶ月
(カケホーダイライトプラン)
82,296円
(3,429円×24回分割払い)
-(55,728+10,200)円
(iPhone割引+ドコモチェンジ割)
183,868円
1,520円×24ヶ月
(ライトスタートプラン6GB)
700+830円×24ヶ月
(みおふぉん+誰とでも5分)
72,800円
(Apple Store購入の場合)
-
146,000円
出所:NTTドコモ、IIJホームページよりグループ作成
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MNO(3キャリア)の“囲い込み”施策
2年契約前提でiPhone等ハイブランドスマホを割引くのに加え、2年
後には古いiPhoneを下取りし、また最新機種を実質0円で提供する。
図:NTTドコモのiPhone下取り価格表(~2016年10月31日まで)
出所:NTTドコモ下取りプログラム
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MVNO事業者増えども競争進まず
MVNOサービス契約数における内訳をみると、MNOのグループ会社
が手がけるMVNOの比率が増加、独立系MVNOのシェアは減少。
出所:総務省「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表」
18
政府の更なる競争環境整備
公正取引委員会は、MNOの囲い込みを阻止したい意向。MNOだけで
はなく、Appleをはじめとする端末メーカーも牽制。
図:公正取引委員会「携帯電話市場における競争政策上の課題について」における指摘ポイント
1
2
3
4
5
6
通信と端末料金の
一体化
“2年縛り”の
違約金
SIMロックは
解除
端末の割賦契約の
総額を固定
不当な高い価格
での端末下取り
端末メーカーの
キャリアへの制限
端末価格を通信料金から割引く販売手法──いわゆる
月々サポートや毎月割は私的独占の可能性と指摘
「不当に高い契約解除料によりユーザーを囲い込むこ
とは、競争政策の観点から望ましくない」と問題提起
特定のキャリアでしか利用できないように端末にSIM
ロックをかけている場合は解除を義務付け
割賦契約の総額を固定し実質的に販売代理店の端末販
売価格を拘束する場合には独占禁止法上の問題と指摘
メーカーやキャリアが不当に高い値段で中古端末を購
入、中古端末市場への供給を阻害するのは問題と指摘
端末メーカーがキャリアに対し、下取りした端末の国
内再流通を禁止する等、流通を制限することは問題
19
大手キャリアからみた競争環境整理(6 forces)
MNOの課題:iPhoneの”2年縛り”での”実質0円”販売という勝ちパ
ターンを封じられる見込み。どう利益を確保していくか?
新規参入
 MVNO事業者の大量参入
供給者・流通チャネル
 Apple等端末メーカー
の厳しい販売ノルマ
 MVNOはハイブランド
スマホを扱う規模では
ないので無理してでも
卸してもらえば競争優
位に
既存の競争の激しさ
 大手キャリア同士はサービス
横並びの協調的寡占状態
消費者(顧客)
 iPhone等のハイブラン
ドスマホを使いたいの
で、実質0円のMNOと
契約しがち
 対面販売でないと安心
できないリテラシーの
低いユーザー
代替品の脅威
 iPhone無しのMVNOはさほど脅威でな
い。子会社のMVNOでカバーしている
補完財
 MVNOはL2接続において顧客
❌
◯△
◯△
△
20
MVNOからみた競争環境整理(6 forces)
MVNOの課題:顧客のハイブランド端末志向にどう対応するか?安
さだけではない付加価値を創造し、どう訴求していくか?
新規参入
 後発のMVNO事業者のどんどん参入
供給者・流通チャネル
 Apple等端末メーカー
の厳しい販売ノルマを
クリアできず仕入不可
 MNOのような囲い込み
施策をするだけのマー
ジンはない
既存の競争の激しさ
 低料金を訴求ポイントにした
値下げ合戦
消費者(顧客)
 iPhone等のハイブラン
ドスマホ志向
 認知度の低さ
 対面販売でないと安心
できないリテラシーの
低いユーザー
 低料金は歓迎
代替品の脅威
 MNOの囲い込み施策
補完財
 中古端末業者、リアル店舗との連携
❌
◯
△
❌
❌
❌
212016年 2学期 Aクラス 第2グループ
この環境変化に、どう対応するか?
22
大手キャリアの防御策提案
 高トラフィックを捌ける通信網(太い水道管)を活用する
 高品質な通信網の構築(5Gネットワーク等)
• 顧客が必要としないオーバースペックな回線は売れない。
高品質回線ニーズ喚起のためのサービス開発とセットで考
える必要がある(4K動画のようなリッチコンテンツ等)
 携帯電話以外の移動系通信端末需要喚起
• IoTの時代にスマホ並に普及するデバイスは何か?
23
MVNOの攻撃策提案
「補完財の掘り起こしと提携」、「MVNO同士の統合・連携」
新規参入
 後発のMVNO事業者のどんどん参入
供給者・流通チャネル
 Apple等端末メーカー
の厳しい販売ノルマを
クリアできず仕入不可
 MNOのような囲い込み
施策をするだけのマー
ジンはない
既存の競争の激しさ
 低料金を訴求ポイントにした
値下げ合戦
消費者(顧客)
 iPhone等のハイブラン
ドスマホ志向
 認知度の低さ
 対面販売でないと安心
できないリテラシーの
低いユーザー
 低料金は歓迎
代替品の脅威
 MNOの囲い込み施策
補完財
 中古端末業者、リアル店舗との連携
❌
◯
△
❌
❌
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具体的なMVNOの競争優位性獲得のための施策案
 MVNO事業者間の連携・統廃合
 MVNE化
• MVNOのMVNOになって、水道管にある程度規模の経済を
働かせ、MNOに対するコスト優位性を強化する
 M&A、業務提携
• お互いの水道管を融通できるような強力体制構築
 補完財の強化。業務提携やM&Aなど。ただし少ないMVNO事業
のマージンを削れないため、収益源を複数持てるような連携が必
須
 リアル店舗を有する事業者との連携
 家電量販店、中古携帯ショップなど
 通信サービスとの親和性の高い財を扱う事業者との連携
 Webサービス(アプリベンダー)。LINEや楽天のようにモ
バイルをフックに展開してARPUを上げる
 ECサービス。MVNO契約者にポイント付与など

モバイル通信市場における、MVNO登場による競争環境変化

Editor's Notes

  • #2 我々のグループは、モバイル通信業界の競争環境変化について調べました。 特に近年シェアを伸ばしているMVNOサービスがもたらした競争環境の変化によって起きた課題について、 どのように対応すべきかを各プレイヤーの立場から考えて提案としています。
  • #3 まずはじめに、モバイル通信業界って何やねん、っていうのを説明します。
  • #4 初めにモバイル通信サービスって何ぞや、という話なんですが、 今回の発表では、電話したりネットにつなぐハードウェアである「通信端末」と、インターネットや通話をするための通信手段である「SIMカード」を組み合わせて提供するサービスと定義して、話をさせてもらいます。
  • #5 で、この携帯通信サービスの市場なんですが、 皆さんご存知の通り、ドコモ、au、ソフトバンクという3社が大手プレイヤーです。 ただ近年、MVNO、仮想移動体通信事業者っていうプレイヤーがシェアを伸ばしてきております。 MVNOって何やねん、っていう話ですので、ちょっとこいつの説明をしますね。
  • #6 このMVNOって何やねんという話ですが、MVNOっていうのは、大手キャリアが巨額を投じて基地局を立てたりして構築した通信網をレンタルして、 あたかも自分たちが通信網を持っているかのように、「仮想的に」携帯通信サービスを行う事業者のことを言います。 大手キャリアはMobile Network Operator、「MNO」って専門用語で呼ばれるんですが、それにVirtual、仮想という言葉を併せてMVNOと専門用語で呼ばれています。
  • #7 今お話しした仕組みでMVNOは事業をやっているので、大手キャリアから通信網を借りないとサービスできません。 なので大手キャリアが貸さないと言われたら、商売できません。それに高いレンタル料金をふっかけてきたら、商売が成り立ちません。 なのでこの大手キャリアから借りる通信網の料金は、法律で明確に算定基準が決まっていますし、借りたいとMVNOが言ったら貸さないといけないというルールになっています。 こういったルールは、総務省が決めています。 MNOが毎年設備にかけている投資や維持の費用を、ユーザーが使う通信量で割って料金は計算されます。 「ユーザーがたくさん通信したら、規模の経済でユーザーあたりに請求する通信網のコストが下がるでしょ?そしたらMVNOに卸す通信網の料金も安くしないとおかしいよね」っていう論理です。 通信網の借り方は、図の通りになります。 通信するデータを水に例えると、通信網は水道管になります。大手キャリアは多くの水を運べるような太い水道管を構築していて、実はかなり余裕をもった水道管を作っています。 MVNOは、その水道管の余裕のある部分を、好きな太さで年間契約で借りるわけです。 たくさんのユーザーと契約したい、契約しているMVNOは、当然流れる水(データ)の量が大きくなるので、太い水道管を借りないと通信が混雑して、 ユーザーへのサービスが低下します。ネットが遅くなるわけですね。 どのくらいの太さの水道管を借りて事業をやるかは、MVNO事業者の腕の見せ所です。
  • #8 水道管を借りる料金の算出式で分母になっているユーザの通信量っていうのは、スマホの普及につれて爆発的に増えています。 シンクタンクの調査だと、スマホの場合平均4.31GBほど通信しています。ガラケーの10倍とか、20倍とかになっています。 分母がすごく大きくなっているので、実は水道管のレンタル料はどんどん下がっています。
  • #9 ご覧の図の通り、水道管の料金、専門的に言うとL2パケット接続料金っていうんですけど、 2012年と比較すると、2016年の料金は約1/3以下まで下がっています。MVNOにとっては嬉しい話です。 水道管の太さは、bpsという単位で定義されています。1秒間にどれくらいの量の水(データ)を流せるかという定義です。 現在は10mbpsが1単位で一本、MVNOはこれを何本借りてサービスするかというルールになっています。 MVNOにとってはこれだけ水道管の料金が下がれば、たくさん借りてもサービス原価が安くすむので助かります。
  • #10 これはMVNOのビジネスフローなんですが、 まずMNOから水道管を借りて、ついでにSIMカードも借りてラベルを自分達のブランドに張り替えてます。 そして、端末メーカーからSIMフリーっていうどこの携帯会社のSIMカードでも使える通信端末を仕入れて、端末とSIMカードをユーザーに提供します。 大手キャリアは大きいマージンをとっているので販売代理店を使ってサービスを提供するんですが、 MVNOは大手キャリアから水道管を借りている分マージンが小さいので、販売代理店を使わずWeb等で直販するケースが大半です。 余計なコストを省いて、MNOよりも安い料金でサービスを提供するので「格安スマホ」等と言われます。 「端末は持ってるから、SIMカードだけ売ってよ」という人にはSIMだけ売るので「格安SIM」とも言われます。 最近はビックカメラとかの家電屋さんや、イオンみたいなスーパーのようなリアル店舗で売られていますが、彼らは既存のリアル店舗があるので、 範囲の経済を活かして対面販売ができるため、採算がとれるのだろうと思います。MVNOだけでやってたら、利幅がないのでそこまでできません。
  • #11 どのくらいMVNOが安いかというと、この図の通りです。これはシンクタンクが調査した大手キャリアとMVNOの月額料金の比較データです。アンケート集計値ですね。 大手キャリアと比べると、約1/3、圧倒的に安いです。安すぎです。大手キャリアはぼったくってたのかよ、って思いますよね。 そもそもなんで最近になって、こんなに安いMVNOが出てきたのかって思いません?そこのところをちょっと説明しますね。
  • #12 そもそも携帯通信って電波をつかってやるんですけど、電波というのは限りのある資源です。 テレビやラジオ、警察や消防署の無線や航空機の無線とかも電波を使っていて、棲み分けないと電波が干渉しあってまともに通信できない。 だから限りある電波の一部分、周波数帯っていうので分けられるのですが、UHF帯という部分が携帯通信として使えるところになります。 これは総務省から免許をもらって初めて商売できるものです。商売したい事業者みんなに総務省が電波を割り当ててると、全然電波が足りない。 なので参入事業者を限定しないといけなかったんです。なので寡占市場になる。 でも、みんな勝手バラバラに設備投資すると効率悪いので、産業が立ち上げる時期はこれで合理的なんです。鉄道とか電力とかのインフラはだいたいそうですよね。
  • #13 でもある程度インフラが出来上がって、寡占市場の企業が設備投資を回収し終わると、売上ニアリーイコール儲け、みたいになります。 そうするとボロ儲け、政府はそうならないように監視しますが、まあそこはうまくかわして高利益体質を維持します。 そもそも値段下げなくてもみんな買うから、積極的に下げる理由はないし、スマホ普及でデータ量が増えたから値上げします、というのは筋が通ってしまう。 そうやって家計における携帯料金の負担はどんどん大きくなってきた。政府は景気良くしたいし、家計負担の大きいものは下げてやりたい。 でも電波を新たに割り当てて、参入増やして競争させるほど電波は余っていない。そこで外国を見てみると、MVNOっていう商売をしている事例があった。 政府はこれや!と思って、法規制を緩和したり整備したりして、MVNOの参入障壁をどんどん下げていったので、最近になってMVNOが注目されたんです。
  • #14 こんな感じで、順調に参入企業は増えています。しっかり水道管を借りるガイドラインとかルールがあるので、MVNO事業に参入するのは難しくないんです。 最近はLINEも参入しましたね。楽天とか、DMMとかもMVNOをやっています。
  • #15 参入が増えたので、シェアも伸びてきました。2015年にはじめて、大手キャリアよりもMVNOの方が契約純増数が多くなりました。 でも、今でも携帯通信市場全体における純粋なMVNO事業者のシェアって、5%もないくらいです、そんなもんです、MVNOって。 まだまだ大手キャリアから奪うパイは多いはずなんですが、最近は伸び率が落ちているというか、大手キャリアが巻き返しているような感じです。季節要因はあるかもしれませんが。 MVNOっていうのは一部の携帯に詳しい人が契約するニッチなサービスなのか?キャズムに落ちちゃうのか?って少し心配になります。 でもちょっと考えてみると、わかることがあります。
  • #16 ちょっと細かい話をしてしまったので、最初の定義した携帯通信サービスの定義に立ち返ると、 携帯通信サービスイコール、携帯端末プラスSIMカードです。さっきまで話したMVNOの話は、ほぼSIMカードの部分の話でした。 そもそも我々ユーザーは、端末をどうするか、SIMカードをどうするかという2つの判断で契約する事業者を決めているはずです。意識しているかどうかは別の話ですが。 だから、大手の1/3の通信料金ですよMVNO!って言っても、購買意思決定には至りません。端末をどうするのかという話とセットで、携帯通信サービスは考えないといけないです。 iPhoneを使っている人はどれくらいいますか?多いと思います。かっこいいですからねiPhone。端末メーカーの国内シェアだと、7割くらいがiPhoneらしいです。 実はMVNOはハイエンド・ハイブランドスマホを販売できておらず、ユーザーの選好構造における重要な要素に不利を抱えているんです。
  • #17 このスライドはMNPで端末とSIMセットで契約したときの料金ですけど、そもそもMVNOはiPhoneを仕入れられないという大きなハンデがあります。 Appleが年間何百万台売れとか、販売する端末の4割以上はiPhoneにしろっていうノルマを課していて、未達の場合はすごい金額の違約金を請求されるそうです。 2013年にはアメリカのベライゾンっていう携帯会社が、ノルマ達成できずに140億ドル、1兆6千億円の違約金を払わなければならない事態になったそうです。 まだまだシェアが小さく契約数の少ないMVNOが束になっても、達成できないです。何百万台っていうノルマは。 iPhoneでMVNO使いたいなら、大手キャリアを解約した後に手元に残ったiPhone使うか、それかApple Storeで自分で買ってから来てね、っていうことになります。 ワンストップでiPhoneとSIMを提供できないのは、iPhoneの国内シェアが7割もあるだけに痛いところ。 MVNOにはないiPhoneを利用して、大手キャリアは2年契約を前提にiPhoneを割引きます。いわゆる”2年縛り”です。 そうすると2年総額の料金差は、月額にならすとだいたい1,580円くらいになります。MVNOのほうがまだ安いけど、iPhone割引で差が結構縮みます。 MVNO安いんだけど、くそダサいスマホしかねえじゃん、となると厳しいところ。それでもシェアを伸ばしているから、iPhoneがあればもっと伸びるかというと、ちょっと違うようです。
  • #18 なんでかというと大手キャリアは、MVNOでは取り扱えないiPhoneみたいなハイエンド、ハイブランドスマホを更に利用して、囲い込み施策をしています。 “2年縛り”が終わるタイミングでMVNOに行ってしまわないように、「お持ちのiPhoneを高値で下取りします。そうすれば、最新のiPhone7も実質タダで提供できますよ」とやります。 携帯代金安くしたいけど新しいiPhone欲しい。MVNOだと自分で買わないといけない。けどドコモだと2年頑張ればタダだ。そんな感じで囲い込みます。 大手キャリアの毎月の通信代はiPhone割引用に高くしてんじゃないの、って感じです。まあ、消費者の購買意思決定を難しくさせるうまいやり方です。 端末にいくら払ってるのか、通信料金にいくら払ってるのかをわからなくさせてなんとなく契約を継続させるんですね。 ロシアでは、大手キャリアが販売ノルマ達成できないからみんなiPhoneの取扱をやめました。普通の値段で売ったら高くて全然売れない。本当はめっちゃ高価なんですiPhone。 MVNOが仮にiPhoneを取り扱えるようになっても、大手キャリアみたいにiPhoneを割引できるようなマージンがないから、厳しい勝負になりそうです。 下取りは真似できそうですけど、新しいiPhoneはMVNOで買えないという状況なので効果はあまりないかもしれません。
  • #19 こういう状況もあって、MVNO伸びているといっても最近の内訳を見てみると、MVNOの中でも大手キャリアの子会社のMVNOがシェアを伸ばしている。 赤い部分の純粋な独立系MVNO事業者のシェアは押されてきている。伸びているのは青い部分の「MNOであるMVNO」、 auの子会社のUQモバイルとか、ソフトバンクの子会社のワイモバイルとかですね。実態としては全然競争なんて激化していない感じです。 なので料金も下がらない。ちょっとは下がっているかもしれませんが、総務省が思っていたような競争環境はできあがっていないんです。
  • #20 だからって政府も諦めたわけじゃなくて、公正取引委員会は今年の夏に大手キャリアの囲い込み施策は独禁法違反っぽいからやめろよっていう文書を公表してます。 実は大手キャリアだけではなくて、キツい販売ノルマとかを課しているAppleみたいなメーカーも、優越的地位の濫用っぽいぞって言ってます。 すぐには是正されないかもしれないですけど、長期的には携帯通信市場の競争環境は整備されそうです。 まあなんかSIMカード、通信の品質ではなく、iPhoneみたいなハイブランドスマホが安いから契約する、みたいな競争構造は普通に考えると健全じゃないですよね。 ガラケーを長年使って高い料金払ってるおじいちゃんのお金が、iPhoneの値引きに使われてAppleが肥える太るみたいなのはどうなのかっていうことです。
  • #21 ちょっと長くなったので大手キャリア携帯通信市場の競争要因を整理しますと、こんな感じです。 MVNO参入が増えたけど、消費者はiPhone安く欲しい、Appleはえげつないノルマを課しているだろうけどそれを言い訳に高い通信料金をキープしている、 MVNOは代替品の脅威なんだけど、iPhone取り扱えてないのでそこまで脅威は大きくない。それにグループ子会社のMVNOでカバーできる。 しかもそもそも、MVNOは大手キャリアにとっては通信網を貸すお客さんです。参入が増えればどんどん売上が増える。MVNOは大手キャリアから水道管を借りるしかないわけです。 なので競争激化の要因はあるけどそこまで脅威じゃないので、そこまで競争は進まない構造になっています。 ただし政府が競争を促すべく、いろいろと施策をしてくる可能性は大なので、大手キャリアは囲い込み施策を封じられたらどう利益を守るか、というのが課題になってきます。
  • #22 一方でMVNO視点から整理すると、そもそも政府が参入障壁を下げているので、後続のMVNOがどんどん参入してきて、低価格の訴求だけだとレッドオーシャンです。 それに顧客の多くはiPhone等のハイブランド機種を志向しているし、リアル店舗じゃないとサービスを理解できない、ITリテラシーのないユーザーも特に高齢者層に多い。 Appleなどのハイブランド機種メーカーの過大なノルマはクリアできないので仕入れられないし、MNOの実質0円囲い込み施策は強力。 補完財となるものを探し出したり、他業種との連携とかして付加価値を創出しないと、競争優位性を構築できないという課題があります。
  • #23 ということで、こういったMVNO登場によるモバイル通信市場の競争環境変化にどう対応していけばいいのか? 大手キャリアの防御策、MVNOの攻撃策について考えました。
  • #24 大手キャリアがMVNOに対して優位性を持っているのは太い水道管です。 この太い水道管をどう活かすのかというのは、利益を確保するためのひとつの考え方です。 ただしこれは多少ドミナントロジックであるかもしれないので注意が必要です。
  • #25 MVNOがシェアを伸ばすには、既存の競争を緩和させること、そして補完財のサポートを強化することの2つの考え方があると思います。 まずMNOのシェアを奪うためには、MVNO同士でのレッドオーシャンでの競争を緩和させないといけないと考えられます。 事業者の統廃合で事業者が抱えるユーザー数を増やし、ある程度大手キャリアから借りる水道管料金に規模の経済を働かせてコストダウンを図るということです。 そしてその上で、MVNOとの料金面以外の差別化を図るために、補完財となるモノ・サービスを掘り起こして連携する必要があると考えられます。