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New Product Decisions
Lilien, G.L. & Rangaswamy, A.
Marketing Engineering (2004), Chapter 7
小野滋 (インサイト・ファクトリー)
Marketing Engineering 読書会: 2018/03
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 1 / 1
目次
1. イントロダクション
2. 新製品の意思決定モデル
3. コンジョイント分析による製品設計
4. 新製品売上の予測
5. プリテスト市場予測
6. 要約 [略]
7. ケーススタディ [略]
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 2 / 1
1. イントロダクション
1. イントロダクション
2. 新製品の意思決定モデル
3. コンジョイント分析による製品設計
4. 新製品売上の予測
5. プリテスト市場予測
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 3 / 1
1. イントロダクション
製品はマーケティング・ミクスのもっとも重要な要素である。なお、
ここでいう製品とは、物理的製品だけでなくサービスも含む。
マーケティング・マネージャーの視点からは、製品は 3 つのレベルで
みることができる。
core product: 製品の最も根本的な側面。その購入によって顧客の
欲求・要求が充足されるという側面。 
tangible product: 顧客が実際に購入できる製品という側面。製品
特徴、スタイリング、品質水準、ブランド名、パッケージ名を伴
う。 
augmented product: 製品をより魅力的にするために付与されたサ
ービスや製品特徴の側面。
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 4 / 1
1. イントロダクション
以下では新製品開発 (NPD) に注目する。NPD はいくつかのステージ
に分けて考えることができる。
機会の同定
設計
テスト
市場導入
ライフサイクル管理
それぞれの段階において、次の段階に進むかどうかの go/no-go 意思決
定がなされる。
新製品開発に伴うコストは高く、失敗するリスクも高い。秩序だった
アプローチで進めたほうが、成功の可能性が高くなるといわれている。
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 5 / 1
1. イントロダクション
Exhibit 7.1 新製品開発過程における段階と意思決定の概要
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 6 / 1
2. 新製品の意思決定モデル
1. イントロダクション
2. 新製品の意思決定モデル
2.1 機会同定のモデル
2.2 製品設計のモデル
2.3 新製品予測とテストのモデル
3. コンジョイント分析による製品設計
4. 新製品売上の予測
5. プリテスト市場予測
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 7 / 1
2. 新製品の意思決定モデル
NPD プロセスへの近年の新しいアプローチのなかには、
新しいテクニックもあれば (例, 品質機能展開)
新しい指標もあれば (例, サイクルタイム)
新しい組織メカニズムもある (例, クロスファンクショナルチー
ム)。
さらに、おのおのの段階での意思決定を支援するコンピュータ・モデ
ルが進展している。本節と次節ではこうしたモデルについて紹介する。
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 8 / 1
2.1 機会同定のモデル
1. イントロダクション
2. 新製品の意思決定モデル
2.1 機会同定のモデル
(1) アイデアの生成
(2) アイデアの評価
2.2 製品設計のモデル
2.3 新製品予測とテストのモデル
3. コンジョイント分析による製品設計
4. 新製品売上の予測
5. プリテスト市場予測
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 9 / 1
2.1 機会同定のモデル (1) アイデア生成
NPD における創造性のためには、拡散的思考による多数のアイデアの
生成と、収束的思考による整理・選択の両方が必要である。
こうした過程を支援するソフトウェアとして以下が挙げられる *。
Mindlink. ユーザは
(1) 問題を定義し、
(2) ”wish triggers” と”idea triggers” を使って拡散的思考を行い
(3) ”option triggers” を使ってアイデアを評価・選択する。
IdeaFisher. 入力から連想されることばをトリガーとして提示し、
拡散的思考を助ける。
Inspiration. 創造のプロセスを視覚的に支援する。
*
検索したところ、いずれのソフトも現存する模様。こういうアイデア開発支援ソ
フト、他にも山ほどありそうですね。
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 10 / 1
2.1 機会同定のモデル (2) アイデア評価
AHP(Analytical Hierarchy Process). ユーザは
(1) 製品を評価する基準・下位基準の階層構造をつくり
(2) 階層のそれぞれのレベルにおいて選択肢を一対比較する。
(3) ソフトウェアはそれらの評価に基づき、新製品アイデアの相対的
魅力を算出する。
基準の重要性が変わった時に選択肢の魅力がどう変わるかという
敏感性を視覚的に調べるのに向いている。
GE Portfolio Planning model (6 章). たくさんのアイデアを同時に
スクリーニングするのに向いている。
NewProd モデル。80 変数から選ばれた 30 変数に基づき、製品ア
イデアのビジネス・リスクとリワードを評価し、成功率改善のた
めに必要な組織資源を決定する。R. Cooper の研究に基づく。訓練
されたファシリテータの下で行う。
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 11 / 1
2.1 機会同定のモデル (2) アイデア評価
Exhibit 7.2 AHP による製品領域評価の例 (製薬会社)
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 12 / 1
2.2 製品設計のモデル
1. イントロダクション
2. 新製品の意思決定モデル
2.1 機会同定のモデル
2.2 製品設計のモデル
2.3 新製品予測とテストのモデル
3. コンジョイント分析による製品設計
4. 新製品売上の予測
5. プリテスト市場予測
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 13 / 1
2.2 製品設計のモデル
コンジョイント分析 (3 節)。
BUNDOPT モデル (Green & Kim, 1991)。たくさんの製品特徴のな
かから、提供する特徴の組み合わせを決めるのに向いている †。
†
要するに TURF の拡張版みたいなものです。
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 14 / 1
2.3 新製品予測とテストのモデル
1. イントロダクション
2. 新製品の意思決定モデル
2.1 機会同定のモデル
2.2 製品設計のモデル
2.3 新製品予測とテストのモデル
3. コンジョイント分析による製品設計
4. 新製品売上の予測
5. プリテスト市場予測
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 15 / 1
2.3 新製品予測とテストのモデル
新製品について予測するという状況は、次の 2 つにわけられる。
顧客の初回購入 (受容) に基づく成功を予測する場合。イノベーシ
ョンが非連続的で、顧客が現在の行動をなんらか変更しなければ
ならないかもしれない場合に重要。Bass モデルが挙げられる (4
節)。
顧客の反復購買行動を予測する場合。購入頻度が高い製品で重要。
ASSESSOR モデルが挙げられる (5 節)。
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 16 / 1
3. コンジョイント分析による製品設計
1. イントロダクション
2. 新製品の意思決定モデル
3. コンジョイント分析による製品設計
3.1 イントロダクション
3.2 手続き
3.3 拡張
3.4 コンジョイント分析が適している文脈
4. 新製品売上の予測
5. プリテスト市場予測
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 17 / 1
3.1 イントロダクション
1. イントロダクション
2. 新製品の意思決定モデル
3. コンジョイント分析による製品設計
3.1 イントロダクション
3.2 コンジョイント分析の手続き
3.3 コンジョイント分析の拡張
3.4 コンジョイント分析が適している文脈
4. 新製品売上の予測
5. プリテスト市場予測
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 18 / 1
3.1 イントロダクション
コンジョイント分析では、
製品・サービスを属性の束とみなす。
調査者は、製品 (= 属性の束) を注意深く選ぶ。これをプロファイ
ルという。
調査参加者にこれらの製品を提示し、全体的選好を測定する。測
定には評定や順位付けを用いる。ここで調査参加者は属性の間の
トレードオフを判断することになる。
全体的選好を、それぞれの属性のそれぞれの水準に顧客が割り当
てている効用値 (部分効用) へと分解する。分解された効用値の集
合を「部分効用関数」という。
部分効用関数を用いて、任意の製品への選好を推定する。調査参
加者に提示しなかった製品に対する選好も推定できる。
また、製品コンセプトが市場において得るであろう売上や市場シ
ェアについて量的に予測したり、価格以外の属性について価格で
表現したりすることができる。
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 19 / 1
3.1 イントロダクション
Exhibit 7.3 コンジョイント分析の例 (冷凍ピザ)
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 20 / 1
3.2 コンジョイント分析の手続き
1. イントロダクション
2. 新製品の意思決定モデル
3. コンジョイント分析による製品設計
3.1 イントロダクション
3.2 コンジョイント分析の手続き
3.3 コンジョイント分析の拡張
3.4 コンジョイント分析が適している文脈
4. 新製品売上の予測
5. プリテスト市場予測
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 21 / 1
3.2 コンジョイント分析の手続き
Exhibit 7.4 コンジョイント分析の諸段階
Stage 1. 設計
Step 1.1 当該カテゴリに関連する属性を選ぶ
Step 1.2 それぞれの属性について水準を選ぶ
Step 1.3 評価対象とする製品をつくる
Stage 2. データ収集
Step 2.1 データ収集手続きを設計する
Step 2.2 部分効用関数の算出方法を選ぶ
Stage 3. 製品設計の選択肢の評価
Step 3.1 顧客を部分効用関数に基づいてセグメント
化する
Step 3.2 市場シミュレーションを設計する
Step 3.3 選択ルールを選ぶ
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 22 / 1
3.2 コンジョイント分析の手続き
Step 1.1 当該カテゴリに関連する属性を選ぶ
手法:
ターゲット顧客のフォーカス・グループ
製品開発チームに、どんな特徴・ベネフィットについて考えるべ
きか訊ねる
二次データを使う (例, Consumer Report)
注意点:属性は 6 個程度にしたほうがよい。属性が多すぎると、不可
能ではないせよ、扱いにくくなる。
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 23 / 1
3.2 コンジョイント分析の手続き
Step 1.2 それぞれの属性について水準を選ぶ
手法:まずは製品開発チームに訊ねる。
注意点:
現実味を増すために、実際の製品において観察される水準を選ぶ
のが良い。
課題を単純にするために、水準数はなるべく少なめにするのが良
い。ふつうは 2 個から 5 個くらい。
バイアスを避けるために、水準数は属性間でだいたい同じ数にす
るのが良い。
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 24 / 1
3.2 コンジョイント分析の手続き
Step 1.3 評価対象とする製品をつくる
手法:部分要因計画によって製品数を減らす。通常は属性を直交させ
る。属性間の交互作用に関心がある場合はもっと複雑な計画を用いる
こともある。
注意点:
直交計画の場合、非現実的な製品が生まれることもある。その場
合の対処としては以下が挙げられる。
属性を併合する
非現実的な製品を別の製品で置き換える (少数であれば効用関数の
推定には影響しない)
非現実的な製品が出現しないような直交計画を選ぶ
参加者の負荷を考えると、製品数は最大でも 25 個、できれば 16
個以下にするのがよい。
推定するパラメータの数は、属性数を N、属性 i の水準数を ni と
して
∑N
i (ni − 1) − 1 となる。
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 25 / 1
3.2 コンジョイント分析の手続き
Exhibit 7.5 冷凍ピザ調査で提示する 16 製品
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 26 / 1
3.2 コンジョイント分析の手続き
Step 2.1 データ収集手続きを設計する
手法 ‡:
製品の一対比較。単純だが、参加者の負荷が大きい。
製品の順位づけ。もし必要なら、まず類似した製品群に分類させ
てから、群のなかで順位づけし、群のあいだで順位づけさせる。
部分効用関数への変換には専用のプログラムを使う
(MONANOVA, LIMP など。ただし最小二乗回帰でうまくいくこと
も多い)。
製品を評定尺度上で評価。ないし、恒常和を製品に配分させる。
最小二乗回帰で部分効用関数を推定できる。
注意点:呈示にあたっては写真を使うとよい。課題も面白くなるし。
‡
ここに挙げられているのはいわゆる伝統的コンジョイント課題。市場調査実務で
主流になっている選択型コンジョイント課題 (CBC) が、ここでは触れられず「コン
ジョイント分析の拡張」として扱われているのが、なんというか、味わい深いです
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 27 / 1
3.2 コンジョイント分析の手続き
Exhibit 7.6 一対比較の例
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 28 / 1
3.2 コンジョイント分析の手続き
Step 2.2 部分効用関数の算出方法を選ぶ
参加者の負荷を減らすためのアプローチとして以下がある。
ハイブリッド型コンジョイントモデル (Green 1984)。(1) 属性の水
準そのものについて魅力度を評価させ、(2) 属性の重要性を評価
させ、(3) これらに基づいて、各参加者向けの少数の製品を作っ
て評価を求める。
適応型コンジョイント分析 (Johnson 1987)。コンピュータプログ
ラムで対話的に行う。(1) 属性の重要性を順序付けさせる。(2) 一
対比較によって属性間のトレードオフをより精緻化する。(3) も
っとも情報が得られるような製品を選択し提示する §。
ブリッジング計画 (Green & Srinivasan 1978, 1990)。属性の数が多
い時、個々の参加者には一部の属性からなる製品のみを評価させ、
異なる参加者間で結果を「ブリッジング」する。
§
Johnson さんは Sawtooth 社の創業メンバー。この手法 (ACA) は Sawtooth 社が販
売しています
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 29 / 1
3.2 コンジョイント分析の手続き
評定データの場合、ダミー変数を使った回帰によって、個々の参加者
の部分効用関数を算出できる:
Rij =
K∑
k
Mk∑
m
aikmxjkm + eij
j: 製品を表す添字
Rij: 参加者 i の製品 j への評価
aikm: 参加者 i の、属性 k の水準 m の部分効用
Mk: 属性 k の水準数
K: 属性数
xjkm: ダミー変数。製品 j が属性 k の水準 m を持つときに 1
eij: 誤差項。すべての i, j を通じて平均 0, 分散 σ2 の正規分布に従うと
仮定する
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 30 / 1
3.2 コンジョイント分析の手続き
任意の製品 j の効用を、次のように推定できる。
uij =
K∑
k
Mk∑
m
˜aikmxjkm
˜aikm: aikm の推定値。最低の水準を 0 とし、効用の最大値が 100 になる
ようにリスケールすることが多い。
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 31 / 1
3.2 コンジョイント分析の手続き
Step 3.1 顧客を部分効用関数に基づいてセグメント化する
伝統的なクラスタ分析でもいいし (3 章), もっと洗練されたモデルで
もよい (3.3 節)。
Step 3.2 市場シミュレーションを設計する
新製品と競合からなる市場を定義する。もし水準がまったく同じ競合
製品があったら、どちらかひとつにすること。
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 32 / 1
3.2 コンジョイント分析の手続き
Step 3.3 選択ルールを選ぶ
効用から選択確率を求めることができれば、そこから市場シェアを算
出できる。
mj =
∑I
i wipij
∑J
j
∑I
i wipij
I: 参加者数
J: 製品数
mj: 製品 j の市場シェア
wi: 参加者 i の相対的な購入数量。平均を 1 とする。
pij: 参加者 i が製品 j を選択する確率
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 33 / 1
3.2 コンジョイント分析の手続き
効用を選択確率に変換する主要なルールとして、次の 3 つがある。
最大効用ルール (第一選択ルール)。個々の参加者は効用が最大の
製品を選択すると考える。
効用シェアルール。効用の推定値は基本的には正確だと考え、
pij =
uij
∑
j uij
このルールは、効用を選択確率に変換する際に広く用いられてい
る。ただし理論上は、効用が比率尺度で得られているときにしか
使えない (恒常和法など)。
ロジット選択ルール。効用はランダムに変動すると考え、
pij =
exp(uij)
∑
j exp(uij)
効用シェアルールとロジット選択ルールはともに、無関係な属性から
の独立性 (IIA) を仮定している。この仮定は現実的でないことも多い。
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 34 / 1
3.2 コンジョイント分析の手続き
各ルールの特徴:
最大効用ルールは、高額なカテゴリ、関与が高いカテゴリに適し
ている。極端なシェアが得られやすい。効用の変化に敏感に反応
する。
選好シェアルールは、効用を測定した際のレンジに敏感に反応す
る。製品の効用に定数を足すと結果が変わるが、効用に定数を掛
けても結果は変わらない。
ロジット選択ルールも、効用を測定した際のレンジに敏感に反応
する。製品の効用に定数を足しても結果は変わらないが、効用に
定数を掛けると結果が変わる。
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 35 / 1
3.2 コンジョイント分析の手続き
ルールの選び方:
3つのルールそれぞれで、既存製品だけのシェアを求め、実際の
市場シェアに近いルールを選ぶ。
Alpha ルール (Green & Krieger, 1993)。
pij =
uα
ij
∑
j uα
ij
としてシェア ˆm(α) を求めた時、実際のシェアを mj として、エン
トロピー ∑
j
mj log(
mj
ˆm(α)
)
が最小になる α を選ぶ。
randomized first choice(Orme & Huber, 2000)。ロジット選択ルール
と Alpha ルールをあわせたようなもの。
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 36 / 1
3.3 コンジョイント分析の拡張
1. イントロダクション
2. 新製品の意思決定モデル
3. コンジョイント分析による製品設計
3.1 イントロダクション
3.2 コンジョイント分析の手続き
3.3 コンジョイント分析の拡張
(1) 寄与の測定
(2) 選好に基づく顧客のセグメント化
(3) 選択型コンジョイント分析
3.4 コンジョイント分析が適している文脈
4. 新製品売上の予測
5. プリテスト市場予測
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 37 / 1
3.3 コンジョイント分析の拡張 (1) 寄与の測定
市場シェアを最大化する製品は必ずしも利益を最大化しない。そこで、
ベース製品と、その一個当たり利益を決める (例, 2 ドル)。市場シ
ェアを求める (25%)。積が 100 になるように規準化因子を決める
(2)。
それぞれの属性について、水準をベース製品から変更したときの
コスト増減を決める。
ある製品について、その一個あたり利益 (1 ドル)、市場シェア
(40%)、規準化因子 (2) の積を求め (1x40x2=80)、100 と比べる。
ベース製品は注意深く選ぶこと。
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 38 / 1
(2) 選好に基づく顧客セグメント化
顧客間の異質性を捉える方法として以下が挙げられる。
ポストホックなセグメンテーション。部分効用をクラスタ分析す
る。セグメント数を事前に決める必要がある。
潜在クラス・セグメンテーション。セグメントの数も推定できる。
理論的にはエレガントだが、まだあまり使われていない¶。3 章を
参照。
部分効用の分布を仮定し、その分布のパラメータを推定する‖。
¶
この本が執筆された当時の話だと思います
‖
階層ベイズモデルとかのことを指しているのだと思います
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 39 / 1
(3) 選択型コンジョイント分析
参加者に製品のセットを呈示し、もっとも好きなものを選ばせる。反
応は多項ロジットモデルで分析する。
選択型コンジョイントと伝統的な「フルプロファイル」コンジョイン
トは、同程度の予測力を持つといわれている。また、近年では階層ベ
イズモデルの普及により、選択型コンジョイントでも個人レベルの部
分効用関数が推定できるようになった。
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 40 / 1
(3) 選択型コンジョイント分析
Exhibit 7.7 選択型コンジョイント課題の典型例
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 41 / 1
3.4 コンジョイント分析が適している文脈
1. イントロダクション
2. 新製品の意思決定モデル
3. コンジョイント分析による製品設計
3.1 コンジョイント分析のイントロダクション
3.2 コンジョイント分析の手続き
3.3 コンジョイント分析の拡張
3.4 コンジョイント分析が適している文脈
4. 新製品売上の予測
5. プリテスト市場予測
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 42 / 1
3.4 コンジョイント分析が適している文脈
コンジョイント分析が適しているのは、
製品の設計において、さまざまな属性・ベネフィットのあいだに
トレードオフが生じるとき。
当該カテゴリの製品・サービスを、マネージャーが操作でき、か
つ顧客にも意味があるような属性の束へと分解できるとき。
既存の製品と新製品を、属性の水準の組み合わせとして記述でき
るとき。
製品をことばなり絵なりで現実性をもって示すことができる
とき。
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 43 / 1
4. 新製品売上の予測
1. イントロダクション
2. 新製品の意思決定モデル
3. コンジョイント分析による製品設計
4. 新製品売上の予測
4.1 Bass モデルの概観
4.2 Bass モデルの技術的説明
4.3 Bass モデルの拡張
4.4 Bass モデルについての結論
5. プリテスト市場予測
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 44 / 1
4.1 Bass モデルの概観
1. イントロダクション
2. 新製品の意思決定モデル
3. コンジョイント分析による製品設計
4. 新製品売上の予測
4.1 Bass モデルの概観
4.2 Bass モデルの技術的説明
4.3 Bass モデルの拡張
4.4 Bass モデルについての結論
5. プリテスト市場予測
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 45 / 1
4.1 Bass モデルの概観
Bass モデルは、初回購入の予測モデルとして長い歴史を持っている。
密接な競合がないイノベーション (新製品) の売上予測に適している。
Bass モデルは、以下の 2 つのどちらかを満たす新技術ないし耐久財新
製品について、長期的な売上パターンを予測する。
企業は最近その製品を市場に導入し、数ヶ月分の売上を観察して
いる
企業はその製品をまだ市場に導入していないが、それと類似した
既存の製品については売上の履歴がある
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 46 / 1
4.1 Bass モデルの概観
Exhibit 7.8 売上の推移 (1)
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 47 / 1
4.1 Bass モデルの概観
Exhibit 7.8 売上の推移 (2)
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 48 / 1
4.1 Bass モデルの概観
Exhibit 7.8 売上の推移 (3)
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 49 / 1
4.1 Bass モデルの概観
Exhibit 7.8 売上の推移 (4)
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 50 / 1
4.1 Bass モデルの概観
Exhibit 7.8 売上の推移 (5)
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 51 / 1
4.2 Bass モデルの技術的説明
1. イントロダクション
2. 新製品の意思決定モデル
3. コンジョイント分析による製品設計
4. 新製品売上の予測
4.1 Bass モデルの概観
4.2 Bass モデルの技術的説明
4.3 Bass モデルの拡張
4.4 Bass モデルについての結論
5. プリテスト市場予測
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 52 / 1
4.2 Bass モデルの技術的説明
ターゲット・セグメントの誰かが、時点 t までにイノベーションを受
容する (累積) 確率を F(t) とする。F(t) は非減少の連続関数で、t が大
きくなると 1 に近づく。
F(t) の導関数 f(t) は確率密度関数で、時点 t における受容確率を表す。
時点 t までに受容していない顧客が t においてはじめて受容する尤度
を L(t) とすると、ベイズの規則より
L(t) =
f(t)
1 − F(t)
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 53 / 1
4.2 Bass モデルの技術的説明
Exhibit 7.9 新製品受容確率 (1)
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 54 / 1
4.2 Bass モデルの技術的説明
Exhibit 7.9 新製品受容確率 (2)
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 55 / 1
4.2 Bass モデルの技術的説明
Bass(1969) は次のように提案した。
L(t) = p +
q
¯N
N(t)
N(t): 時点 t までにすでに受容している顧客の人数
¯N: ターゲットセグメントの人数
p: イノベーション係数 (外的影響の係数)
q: 模倣係数 (内的影響の係数)
ここから下式が得られる。
f(t) =
[
p +
q
¯N
N(t)
]
(1 − F(t))
時点 t において受容する人数は
¯Nf(t) = p¯N + (q − p)N(t) −
q
¯N
(N(t))2
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 56 / 1
4.2 Bass モデルの技術的説明
一般化 Bass モデル (Bass, Krishnan, & Jain (1994))
時点 t におけるマーケティング・ミクス変数 (広告とか価格とか) を
x(t) として、
f(t) =
[
p +
q
¯N
N(t)
]
(1 − F(t))x(t)
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 57 / 1
4.2 Bass モデルの技術的説明
Bass モデルの推定方法
線形回帰。t を離散時間、n(t) を t 期の売上, N(t) を t 期までの累
積売上として
n(t) = a + bN(t − 1) + cN2
(t − 1)
¯N =
−b −
√
b2 − 4ac
2c
p =
a
¯N
q = p + b
3 期分のデータがあれば推定できる。
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 58 / 1
4.2 Bass モデルの技術的説明
非線形回帰。
n(t) =
[
p +
q
¯N
N(t − 1)
]
(¯N − N(t − 1))
4 期分のデータがあれば推定できる。いつ市場導入されたかがわ
からなくても大丈夫。
過去製品からの類推。実務的に有用。次の 5 点が類似している製
品を選び、p, q を得る
(1) 環境的文脈
(2) 市場構造
(3) 購入者の行動
(4) マーケティング・ミクス戦略
(5) イノベーションの性質
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 59 / 1
4.2 Bass モデルの技術的説明
Exhibit 7.10 Bass モデルのパラメータ
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 60 / 1
4.2 Bass モデルの技術的説明
Exhibit 7.11 Bass モデルによる販売予測の例
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 61 / 1
4.2 Bass モデルの技術的説明
Exhibit 7.12 Bass モデルによる予測の要約
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 62 / 1
4.3 Bass モデルの拡張
1. イントロダクション
2. 新製品の意思決定モデル
3. コンジョイント分析による製品設計
4. 新製品売上の予測
4.1 Bass モデルの概観
4.2 Bass モデルの技術的説明
4.3 Bass モデルの拡張
4.4 Bass モデルについての結論
5. プリテスト市場予測
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 63 / 1
4.3 Bass モデルの拡張
Bass モデルでは、ポテンシャル ¯N は定数。→ 価格、不確実性、タ
ーゲットセグメントの成長などを考慮する拡張が提案されている
イノベーションを支援するマーケティング戦略の影響が考慮され
ていない。→ 一般化 Bass モデルなど
顧客の決定が二値的。→ <認知-関心-受容-クチコミ>の多段階意
思決定過程をモデルに組み込む
模倣係数 q が一定 → 時間の関数にする
イノベーションは常に正の影響を持つ → 負のクチコミをモデル
に組み込む
リピート勾配が考慮されていない → リピート購入者をモデルに
組み込む
普及におけるインターネットの効果についての研究も進んでい
る。良い製品の受容は速くなると考えられる (クチコミの効果が
絶大だし検索コストが小さいから)。
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 64 / 1
4.4 Bass モデルについての結論
1. イントロダクション
2. 新製品の意思決定モデル
3. コンジョイント分析による製品設計
4. 新製品売上の予測
4.1 Bass モデルの概観
4.2 Bass モデルの技術的説明
4.3 Bass モデルの拡張
4.4 Bass モデルについての結論
5. プリテスト市場予測
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 65 / 1
4.4 Bass モデルについての結論
Bass モデルの限界:
過去データは、成功したイノベーションの普及過程について示し
てくれるが、成功の確率は示してくれない。従って過去データに
よる予測は楽観的になる。失敗の確率については考慮する必要が
あるが、それを推定するのは難しい。
データからのパラメータ推定にはある程度の観察期間が必要。し
かしそれまでのあいだに投資判断が行われてしまう。
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 66 / 1
5. プリテスト市場予測
1. イントロダクション
2. 新製品の意思決定モデル
3. コンジョイント分析による製品設計
4. 新製品売上の予測
5. プリテスト市場予測
5.1 ASSESSOR モデルの概観
5.2 選好モデル
5.3 トライアル-リピート・モデル
5.4 ASSESSOR モデルの妥当性と価値
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 67 / 1
5. プリテスト市場予測
プリテスト市場予測とは、製品、パッケージ、広告コピーが完成し、
価格、チャネル、配荷などのマーケティング・ミクスの要素について
予備的な計画が作られた段階で、実際の市場におけるテストを行わず
に新製品予測を行う手法である。
過去 20 年の間に、数多くのプリテスト予測モデルが発展し、広く用い
られるようになった (主に消費財産業で)。NEWS, TRACKER,
SPRINTER, BASES, ASSESSOR, LTM などなど。Shocker & Hall(1986)
をみよ **。
**
Clancy, Krieg, Wolf(2006) もお勧め。よろしければ拙訳「売上シミュレーション三
国志」をご覧くださいまし
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 68 / 1
5. プリテスト市場予測
ここではそのひとつである ASSESSOR モデル (Silk & Urban 1978;
Urban 1993) について紹介する。
ASSESSOR の目的は次のとおり。
新製品の長期的市場シェアと売上数量を予測する
新製品のシェアの源を予測する (すなわち、競合から奪うのか、
同一企業の別製品とカニバリゼーションを起こすのか)
製品や広告コピーを改善するための診断情報を得る
価格、パッケージデザインなどについての代替案についておおま
かな評価を得る
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 69 / 1
5.1 ASSESSOR モデルの概観
1. イントロダクション
2. 新製品の意思決定モデル
3. コンジョイント分析による製品設計
4. 新製品売上の予測
5. プリテスト市場予測
5.1 ASSESSOR モデルの概観
5.2 選好モデル
5.3 トライアル-リピート・モデル
5.4 ASSESSOR モデルの妥当性と価値
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 70 / 1
5.1 ASSESSOR モデルの概観
ASSESSOR では、まず実験室実験を行う。ショッピングモールにある
会場などで、300 人程度の参加者を集めて行う。ひとり 10 ドルくらい
渡す。参加者の課題は、
調査票に回答する。当該カテゴリでのブランド考慮集合、直近購
入ブランド、主要製品への選好など。
新製品についての CM をみる。5 から 6 本くらい。
模擬店舗で買い物する。棚に製品が価格つきで並んでおり、渡さ
れた現金の範囲内で買い物する。
新製品を買わなかった人には、新製品のサンプルを渡す。
後日、参加者に電話調査を行う。実験室で訊いた設問について再
度聴取。さらに、新製品を再購入する気があるかを聴取。
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 71 / 1
5.1 ASSESSOR モデルの概観
ASSESSOR はふたつのモデルからなる。いずれも実験室実験のデータ
が入力となる。
選好モデル (5.2 節)
トライアル-リピート・モデル (5.3 節)
推定結果がモデル間で近ければ、予測に信頼を置くことができる。
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 72 / 1
5.1 ASSESSOR モデルの概観
Exhibit 7.13 ASESSOR モデル
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 73 / 1
5.1 ASSESSOR モデルの概観
Exhibit 7.14 ASSESSOR のデータ収集手続き
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 74 / 1
5.2 選好モデル
1. イントロダクション
2. 新製品の意思決定モデル
3. コンジョイント分析による製品設計
4. 新製品売上の予測
5. プリテスト市場予測
5.1 ASSESSOR モデルの概観
5.2 選好モデル
5.3 トライアル-リピート・モデル
5.4 ASSESSOR モデルの妥当性と価値
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 75 / 1
5.2 選好モデル
まず、測定された選好 (Exhibit 7.14 の O2) をブランドの選択確率に変
換する。
Lij =
Vb
ij
∑
k∈Ci
Vb
ik
Vij: 参加者 i の、製品 j に対する選好。なんらかの適切な尺度で測定さ
れた値。
Lij: 参加者 i が製品 j を購入する確率の推定値。j が考慮集合に含まれ
ていない時は 0。
Ci: 参加者 i の考慮集合
b: パラメータ。参加者の直近購買における購買有無を目的変数とし
て、データから最尤推定する。通常 1.5 から 3.0 程度。
参加者間で製品使用の速度が著しく異なる場合は、Lij を購入数量で重
みづけする (コンジョイント分析の Step 3.3 における wi)。
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 76 / 1
5.2 選好モデル
次に、新製品の使用後の購入確率を予測する。新製品は考慮集合に入
っていると考え、
L
′
ij =
V
′b
ij
V
′b
in +
∑
k∈Ci
V
′b
ik
V
′
ij: 参加者 i の、製品 j に対する使用後の選好。
n: 新製品を表す添字。
L
′
in: 参加者 i が新製品使用後に新製品を選択する確率。
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 77 / 1
5.2 選好モデル
市場シェアを求める。
M
′
n = En
∑
i
L
′
in
N
M
′
n: 新製品の市場シェア。
En: 新製品を考慮集合に含めている参加者の割合。
N: 参加者数。
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 78 / 1
5.2 選好モデル
他のブランドからの新規獲得やカニバリゼーションについても推定で
きる。
Mj =
∑
i
Lij
N
M
′
j = En
∑
i
L
′
in
N
+ (1 − En)
∑
i
Lij
N
Mj: 新製品上市前の製品 j の市場シェア
M
′
j: 新製品上市後の製品 j の市場シェア。
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 79 / 1
5.2 選好モデル
Exhibit 7.15 ASSESSOR の計算例 (1)
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 80 / 1
5.2 選好モデル
Exhibit 7.15 ASSESSOR の計算例 (2)
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 81 / 1
5.2 選好モデル
Exhibit 7.15 ASSESSOR の計算例 (3)
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 82 / 1
5.3 トライアル-リピート・モデル
1. イントロダクション
2. 新製品の意思決定モデル
3. コンジョイント分析による製品設計
4. 新製品売上の予測
5. プリテスト市場予測
5.1 ASSESSOR モデルの概観
5.2 選好モデル
5.3 トライアル-リピート・モデル
5.4 ASSESSOR モデルの妥当性と価値
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 83 / 1
5.3 トライアル-リピート・モデル
新製品の長期的市場シェアを次のように推定する。
Mn = trw
Mn: 新製品の長期的市場シェア。
t: ターゲットセグメントのうち、いずれ新製品をトライアルするで
あろう累積割合。後述。
r: トライアルした人のうち、その新製品の長期的リピート購買者に
なる人の割合。後述。
w: 相対的な利用率。市場における平均的な利用率を w = 1 とする。
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 84 / 1
5.3 トライアル-リピート・モデル
トライアル率 t について次のように想定する。
t = FKD + CU − (FKD)(CU)
F: ターゲットセグメントにおける、配荷と認知率に制約がないとき
の長期的なトライアル率。模擬店舗における購入率 (Exhibit 7.14
の O4)。
K: 長期的な認知率。マネージャーの判断と広告計画に基づいて決め
る。
D: 長期的な配荷率。マネージャーの判断と、期待される配荷によっ
て決める。
C: サンプル受領率。計画に基づいて決める。
U: サンプル受領者における使用確率。過去経験とマネージャーの判
断によって決める。
FKD は「製品について認知し、店舗に製品があり、トライアルする
人」の割合、CU は「サンプルを受領して使う人」の割合を表す。
選好モデルとは異なり、どこからシェアを取ってくるかについては推
定しない点に注意。
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 85 / 1
5.3 トライアル-リピート・モデル
リピート率 r については、使用後の電話調査から情報を得る (Exhibit
7.14 の O5)。
まず、ブランド・スイッチング行列をつくる。
[
pnn pno
pon poo
]
pnn: 時点 t で新製品を買った人が時点 t + 1 でもその製品を買う確率。
模擬店舗で購入し、利用後調査で次もその製品を買うと答えた人
の割合によって推定。
pno: = 1 − pnn
pon: 時点 t で別の製品を買った人が、時点 t + 1 でその製品を買う確
率。模擬店舗で購入せず、利用後調査で購入すると答えた人の割
合によって推定。
poo: = 1 − pon
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 86 / 1
5.3 トライアル-リピート・モデル
ブランド・スイッチング行列に基づき、この行列がずっと維持される
ならば、「時点 t において新製品を買った人が時点 t においてその新製
品を買う確率」(つまり、リピート率の均衡点) を求める:
r =
pon
1 − pnn + pon
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 87 / 1
5.4 ASSESSOR モデルの妥当性と価値
1. イントロダクション
2. 新製品の意思決定モデル
3. コンジョイント分析による製品設計
4. 新製品売上の予測
5. プリテスト市場予測
5.1 ASSESSOR モデルの概観
5.2 選好モデル
5.3 トライアル-リピート・モデル
5.4 ASSESSOR モデルの妥当性と価値
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 88 / 1
5.4 ASSESSOR モデルの妥当性と価値
プリテスト・マーケット・モデルはいずれも高い成功率を謳っている
が、学術誌に妥当性研究が報告されているモデルは少ない。
しかし ASSESSOR モデルについては妥当性研究が報告されている
(Urban & Katz, 1983):
ASSESSOR モデルによる評価を通過した新製品の成功率は 66% ,
形式的なプリテストモデルを通過した新製品の成功率は 35% 。
ASSESSOR モデルを通過できなかった新製品の成功率は 3.6% し
かない。
市場シェアの実績値と予測値の相関は 0.95。
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 89 / 1
5.4 ASSESSOR モデルの妥当性と価値
というわけで、プリテスト・マーケット・モデルはマーケティング工
学のなかでももっとも成功した分野のひとつである。特にうまくいく
のは次の場合。
カテゴリがきちんと定義されている。
製品についての学習が急速に行われる。
新製品のせいでカテゴリ自体の利用率が変わらない。
おしまい
小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 90 / 1

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Lilien, G.L. & Rangaswamy, A. (2004) Marketing Engineering, Chapter 7

  • 1. New Product Decisions Lilien, G.L. & Rangaswamy, A. Marketing Engineering (2004), Chapter 7 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Marketing Engineering 読書会: 2018/03 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 1 / 1
  • 2. 目次 1. イントロダクション 2. 新製品の意思決定モデル 3. コンジョイント分析による製品設計 4. 新製品売上の予測 5. プリテスト市場予測 6. 要約 [略] 7. ケーススタディ [略] 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 2 / 1
  • 3. 1. イントロダクション 1. イントロダクション 2. 新製品の意思決定モデル 3. コンジョイント分析による製品設計 4. 新製品売上の予測 5. プリテスト市場予測 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 3 / 1
  • 4. 1. イントロダクション 製品はマーケティング・ミクスのもっとも重要な要素である。なお、 ここでいう製品とは、物理的製品だけでなくサービスも含む。 マーケティング・マネージャーの視点からは、製品は 3 つのレベルで みることができる。 core product: 製品の最も根本的な側面。その購入によって顧客の 欲求・要求が充足されるという側面。  tangible product: 顧客が実際に購入できる製品という側面。製品 特徴、スタイリング、品質水準、ブランド名、パッケージ名を伴 う。  augmented product: 製品をより魅力的にするために付与されたサ ービスや製品特徴の側面。 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 4 / 1
  • 5. 1. イントロダクション 以下では新製品開発 (NPD) に注目する。NPD はいくつかのステージ に分けて考えることができる。 機会の同定 設計 テスト 市場導入 ライフサイクル管理 それぞれの段階において、次の段階に進むかどうかの go/no-go 意思決 定がなされる。 新製品開発に伴うコストは高く、失敗するリスクも高い。秩序だった アプローチで進めたほうが、成功の可能性が高くなるといわれている。 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 5 / 1
  • 6. 1. イントロダクション Exhibit 7.1 新製品開発過程における段階と意思決定の概要 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 6 / 1
  • 7. 2. 新製品の意思決定モデル 1. イントロダクション 2. 新製品の意思決定モデル 2.1 機会同定のモデル 2.2 製品設計のモデル 2.3 新製品予測とテストのモデル 3. コンジョイント分析による製品設計 4. 新製品売上の予測 5. プリテスト市場予測 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 7 / 1
  • 8. 2. 新製品の意思決定モデル NPD プロセスへの近年の新しいアプローチのなかには、 新しいテクニックもあれば (例, 品質機能展開) 新しい指標もあれば (例, サイクルタイム) 新しい組織メカニズムもある (例, クロスファンクショナルチー ム)。 さらに、おのおのの段階での意思決定を支援するコンピュータ・モデ ルが進展している。本節と次節ではこうしたモデルについて紹介する。 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 8 / 1
  • 9. 2.1 機会同定のモデル 1. イントロダクション 2. 新製品の意思決定モデル 2.1 機会同定のモデル (1) アイデアの生成 (2) アイデアの評価 2.2 製品設計のモデル 2.3 新製品予測とテストのモデル 3. コンジョイント分析による製品設計 4. 新製品売上の予測 5. プリテスト市場予測 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 9 / 1
  • 10. 2.1 機会同定のモデル (1) アイデア生成 NPD における創造性のためには、拡散的思考による多数のアイデアの 生成と、収束的思考による整理・選択の両方が必要である。 こうした過程を支援するソフトウェアとして以下が挙げられる *。 Mindlink. ユーザは (1) 問題を定義し、 (2) ”wish triggers” と”idea triggers” を使って拡散的思考を行い (3) ”option triggers” を使ってアイデアを評価・選択する。 IdeaFisher. 入力から連想されることばをトリガーとして提示し、 拡散的思考を助ける。 Inspiration. 創造のプロセスを視覚的に支援する。 * 検索したところ、いずれのソフトも現存する模様。こういうアイデア開発支援ソ フト、他にも山ほどありそうですね。 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 10 / 1
  • 11. 2.1 機会同定のモデル (2) アイデア評価 AHP(Analytical Hierarchy Process). ユーザは (1) 製品を評価する基準・下位基準の階層構造をつくり (2) 階層のそれぞれのレベルにおいて選択肢を一対比較する。 (3) ソフトウェアはそれらの評価に基づき、新製品アイデアの相対的 魅力を算出する。 基準の重要性が変わった時に選択肢の魅力がどう変わるかという 敏感性を視覚的に調べるのに向いている。 GE Portfolio Planning model (6 章). たくさんのアイデアを同時に スクリーニングするのに向いている。 NewProd モデル。80 変数から選ばれた 30 変数に基づき、製品ア イデアのビジネス・リスクとリワードを評価し、成功率改善のた めに必要な組織資源を決定する。R. Cooper の研究に基づく。訓練 されたファシリテータの下で行う。 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 11 / 1
  • 12. 2.1 機会同定のモデル (2) アイデア評価 Exhibit 7.2 AHP による製品領域評価の例 (製薬会社) 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 12 / 1
  • 13. 2.2 製品設計のモデル 1. イントロダクション 2. 新製品の意思決定モデル 2.1 機会同定のモデル 2.2 製品設計のモデル 2.3 新製品予測とテストのモデル 3. コンジョイント分析による製品設計 4. 新製品売上の予測 5. プリテスト市場予測 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 13 / 1
  • 14. 2.2 製品設計のモデル コンジョイント分析 (3 節)。 BUNDOPT モデル (Green & Kim, 1991)。たくさんの製品特徴のな かから、提供する特徴の組み合わせを決めるのに向いている †。 † 要するに TURF の拡張版みたいなものです。 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 14 / 1
  • 15. 2.3 新製品予測とテストのモデル 1. イントロダクション 2. 新製品の意思決定モデル 2.1 機会同定のモデル 2.2 製品設計のモデル 2.3 新製品予測とテストのモデル 3. コンジョイント分析による製品設計 4. 新製品売上の予測 5. プリテスト市場予測 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 15 / 1
  • 16. 2.3 新製品予測とテストのモデル 新製品について予測するという状況は、次の 2 つにわけられる。 顧客の初回購入 (受容) に基づく成功を予測する場合。イノベーシ ョンが非連続的で、顧客が現在の行動をなんらか変更しなければ ならないかもしれない場合に重要。Bass モデルが挙げられる (4 節)。 顧客の反復購買行動を予測する場合。購入頻度が高い製品で重要。 ASSESSOR モデルが挙げられる (5 節)。 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 16 / 1
  • 17. 3. コンジョイント分析による製品設計 1. イントロダクション 2. 新製品の意思決定モデル 3. コンジョイント分析による製品設計 3.1 イントロダクション 3.2 手続き 3.3 拡張 3.4 コンジョイント分析が適している文脈 4. 新製品売上の予測 5. プリテスト市場予測 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 17 / 1
  • 18. 3.1 イントロダクション 1. イントロダクション 2. 新製品の意思決定モデル 3. コンジョイント分析による製品設計 3.1 イントロダクション 3.2 コンジョイント分析の手続き 3.3 コンジョイント分析の拡張 3.4 コンジョイント分析が適している文脈 4. 新製品売上の予測 5. プリテスト市場予測 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 18 / 1
  • 19. 3.1 イントロダクション コンジョイント分析では、 製品・サービスを属性の束とみなす。 調査者は、製品 (= 属性の束) を注意深く選ぶ。これをプロファイ ルという。 調査参加者にこれらの製品を提示し、全体的選好を測定する。測 定には評定や順位付けを用いる。ここで調査参加者は属性の間の トレードオフを判断することになる。 全体的選好を、それぞれの属性のそれぞれの水準に顧客が割り当 てている効用値 (部分効用) へと分解する。分解された効用値の集 合を「部分効用関数」という。 部分効用関数を用いて、任意の製品への選好を推定する。調査参 加者に提示しなかった製品に対する選好も推定できる。 また、製品コンセプトが市場において得るであろう売上や市場シ ェアについて量的に予測したり、価格以外の属性について価格で 表現したりすることができる。 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 19 / 1
  • 20. 3.1 イントロダクション Exhibit 7.3 コンジョイント分析の例 (冷凍ピザ) 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 20 / 1
  • 21. 3.2 コンジョイント分析の手続き 1. イントロダクション 2. 新製品の意思決定モデル 3. コンジョイント分析による製品設計 3.1 イントロダクション 3.2 コンジョイント分析の手続き 3.3 コンジョイント分析の拡張 3.4 コンジョイント分析が適している文脈 4. 新製品売上の予測 5. プリテスト市場予測 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 21 / 1
  • 22. 3.2 コンジョイント分析の手続き Exhibit 7.4 コンジョイント分析の諸段階 Stage 1. 設計 Step 1.1 当該カテゴリに関連する属性を選ぶ Step 1.2 それぞれの属性について水準を選ぶ Step 1.3 評価対象とする製品をつくる Stage 2. データ収集 Step 2.1 データ収集手続きを設計する Step 2.2 部分効用関数の算出方法を選ぶ Stage 3. 製品設計の選択肢の評価 Step 3.1 顧客を部分効用関数に基づいてセグメント 化する Step 3.2 市場シミュレーションを設計する Step 3.3 選択ルールを選ぶ 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 22 / 1
  • 23. 3.2 コンジョイント分析の手続き Step 1.1 当該カテゴリに関連する属性を選ぶ 手法: ターゲット顧客のフォーカス・グループ 製品開発チームに、どんな特徴・ベネフィットについて考えるべ きか訊ねる 二次データを使う (例, Consumer Report) 注意点:属性は 6 個程度にしたほうがよい。属性が多すぎると、不可 能ではないせよ、扱いにくくなる。 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 23 / 1
  • 24. 3.2 コンジョイント分析の手続き Step 1.2 それぞれの属性について水準を選ぶ 手法:まずは製品開発チームに訊ねる。 注意点: 現実味を増すために、実際の製品において観察される水準を選ぶ のが良い。 課題を単純にするために、水準数はなるべく少なめにするのが良 い。ふつうは 2 個から 5 個くらい。 バイアスを避けるために、水準数は属性間でだいたい同じ数にす るのが良い。 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 24 / 1
  • 25. 3.2 コンジョイント分析の手続き Step 1.3 評価対象とする製品をつくる 手法:部分要因計画によって製品数を減らす。通常は属性を直交させ る。属性間の交互作用に関心がある場合はもっと複雑な計画を用いる こともある。 注意点: 直交計画の場合、非現実的な製品が生まれることもある。その場 合の対処としては以下が挙げられる。 属性を併合する 非現実的な製品を別の製品で置き換える (少数であれば効用関数の 推定には影響しない) 非現実的な製品が出現しないような直交計画を選ぶ 参加者の負荷を考えると、製品数は最大でも 25 個、できれば 16 個以下にするのがよい。 推定するパラメータの数は、属性数を N、属性 i の水準数を ni と して ∑N i (ni − 1) − 1 となる。 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 25 / 1
  • 26. 3.2 コンジョイント分析の手続き Exhibit 7.5 冷凍ピザ調査で提示する 16 製品 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 26 / 1
  • 27. 3.2 コンジョイント分析の手続き Step 2.1 データ収集手続きを設計する 手法 ‡: 製品の一対比較。単純だが、参加者の負荷が大きい。 製品の順位づけ。もし必要なら、まず類似した製品群に分類させ てから、群のなかで順位づけし、群のあいだで順位づけさせる。 部分効用関数への変換には専用のプログラムを使う (MONANOVA, LIMP など。ただし最小二乗回帰でうまくいくこと も多い)。 製品を評定尺度上で評価。ないし、恒常和を製品に配分させる。 最小二乗回帰で部分効用関数を推定できる。 注意点:呈示にあたっては写真を使うとよい。課題も面白くなるし。 ‡ ここに挙げられているのはいわゆる伝統的コンジョイント課題。市場調査実務で 主流になっている選択型コンジョイント課題 (CBC) が、ここでは触れられず「コン ジョイント分析の拡張」として扱われているのが、なんというか、味わい深いです 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 27 / 1
  • 28. 3.2 コンジョイント分析の手続き Exhibit 7.6 一対比較の例 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 28 / 1
  • 29. 3.2 コンジョイント分析の手続き Step 2.2 部分効用関数の算出方法を選ぶ 参加者の負荷を減らすためのアプローチとして以下がある。 ハイブリッド型コンジョイントモデル (Green 1984)。(1) 属性の水 準そのものについて魅力度を評価させ、(2) 属性の重要性を評価 させ、(3) これらに基づいて、各参加者向けの少数の製品を作っ て評価を求める。 適応型コンジョイント分析 (Johnson 1987)。コンピュータプログ ラムで対話的に行う。(1) 属性の重要性を順序付けさせる。(2) 一 対比較によって属性間のトレードオフをより精緻化する。(3) も っとも情報が得られるような製品を選択し提示する §。 ブリッジング計画 (Green & Srinivasan 1978, 1990)。属性の数が多 い時、個々の参加者には一部の属性からなる製品のみを評価させ、 異なる参加者間で結果を「ブリッジング」する。 § Johnson さんは Sawtooth 社の創業メンバー。この手法 (ACA) は Sawtooth 社が販 売しています 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 29 / 1
  • 30. 3.2 コンジョイント分析の手続き 評定データの場合、ダミー変数を使った回帰によって、個々の参加者 の部分効用関数を算出できる: Rij = K∑ k Mk∑ m aikmxjkm + eij j: 製品を表す添字 Rij: 参加者 i の製品 j への評価 aikm: 参加者 i の、属性 k の水準 m の部分効用 Mk: 属性 k の水準数 K: 属性数 xjkm: ダミー変数。製品 j が属性 k の水準 m を持つときに 1 eij: 誤差項。すべての i, j を通じて平均 0, 分散 σ2 の正規分布に従うと 仮定する 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 30 / 1
  • 31. 3.2 コンジョイント分析の手続き 任意の製品 j の効用を、次のように推定できる。 uij = K∑ k Mk∑ m ˜aikmxjkm ˜aikm: aikm の推定値。最低の水準を 0 とし、効用の最大値が 100 になる ようにリスケールすることが多い。 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 31 / 1
  • 32. 3.2 コンジョイント分析の手続き Step 3.1 顧客を部分効用関数に基づいてセグメント化する 伝統的なクラスタ分析でもいいし (3 章), もっと洗練されたモデルで もよい (3.3 節)。 Step 3.2 市場シミュレーションを設計する 新製品と競合からなる市場を定義する。もし水準がまったく同じ競合 製品があったら、どちらかひとつにすること。 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 32 / 1
  • 33. 3.2 コンジョイント分析の手続き Step 3.3 選択ルールを選ぶ 効用から選択確率を求めることができれば、そこから市場シェアを算 出できる。 mj = ∑I i wipij ∑J j ∑I i wipij I: 参加者数 J: 製品数 mj: 製品 j の市場シェア wi: 参加者 i の相対的な購入数量。平均を 1 とする。 pij: 参加者 i が製品 j を選択する確率 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 33 / 1
  • 34. 3.2 コンジョイント分析の手続き 効用を選択確率に変換する主要なルールとして、次の 3 つがある。 最大効用ルール (第一選択ルール)。個々の参加者は効用が最大の 製品を選択すると考える。 効用シェアルール。効用の推定値は基本的には正確だと考え、 pij = uij ∑ j uij このルールは、効用を選択確率に変換する際に広く用いられてい る。ただし理論上は、効用が比率尺度で得られているときにしか 使えない (恒常和法など)。 ロジット選択ルール。効用はランダムに変動すると考え、 pij = exp(uij) ∑ j exp(uij) 効用シェアルールとロジット選択ルールはともに、無関係な属性から の独立性 (IIA) を仮定している。この仮定は現実的でないことも多い。 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 34 / 1
  • 35. 3.2 コンジョイント分析の手続き 各ルールの特徴: 最大効用ルールは、高額なカテゴリ、関与が高いカテゴリに適し ている。極端なシェアが得られやすい。効用の変化に敏感に反応 する。 選好シェアルールは、効用を測定した際のレンジに敏感に反応す る。製品の効用に定数を足すと結果が変わるが、効用に定数を掛 けても結果は変わらない。 ロジット選択ルールも、効用を測定した際のレンジに敏感に反応 する。製品の効用に定数を足しても結果は変わらないが、効用に 定数を掛けると結果が変わる。 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 35 / 1
  • 36. 3.2 コンジョイント分析の手続き ルールの選び方: 3つのルールそれぞれで、既存製品だけのシェアを求め、実際の 市場シェアに近いルールを選ぶ。 Alpha ルール (Green & Krieger, 1993)。 pij = uα ij ∑ j uα ij としてシェア ˆm(α) を求めた時、実際のシェアを mj として、エン トロピー ∑ j mj log( mj ˆm(α) ) が最小になる α を選ぶ。 randomized first choice(Orme & Huber, 2000)。ロジット選択ルール と Alpha ルールをあわせたようなもの。 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 36 / 1
  • 37. 3.3 コンジョイント分析の拡張 1. イントロダクション 2. 新製品の意思決定モデル 3. コンジョイント分析による製品設計 3.1 イントロダクション 3.2 コンジョイント分析の手続き 3.3 コンジョイント分析の拡張 (1) 寄与の測定 (2) 選好に基づく顧客のセグメント化 (3) 選択型コンジョイント分析 3.4 コンジョイント分析が適している文脈 4. 新製品売上の予測 5. プリテスト市場予測 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 37 / 1
  • 38. 3.3 コンジョイント分析の拡張 (1) 寄与の測定 市場シェアを最大化する製品は必ずしも利益を最大化しない。そこで、 ベース製品と、その一個当たり利益を決める (例, 2 ドル)。市場シ ェアを求める (25%)。積が 100 になるように規準化因子を決める (2)。 それぞれの属性について、水準をベース製品から変更したときの コスト増減を決める。 ある製品について、その一個あたり利益 (1 ドル)、市場シェア (40%)、規準化因子 (2) の積を求め (1x40x2=80)、100 と比べる。 ベース製品は注意深く選ぶこと。 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 38 / 1
  • 39. (2) 選好に基づく顧客セグメント化 顧客間の異質性を捉える方法として以下が挙げられる。 ポストホックなセグメンテーション。部分効用をクラスタ分析す る。セグメント数を事前に決める必要がある。 潜在クラス・セグメンテーション。セグメントの数も推定できる。 理論的にはエレガントだが、まだあまり使われていない¶。3 章を 参照。 部分効用の分布を仮定し、その分布のパラメータを推定する‖。 ¶ この本が執筆された当時の話だと思います ‖ 階層ベイズモデルとかのことを指しているのだと思います 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 39 / 1
  • 41. (3) 選択型コンジョイント分析 Exhibit 7.7 選択型コンジョイント課題の典型例 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 41 / 1
  • 42. 3.4 コンジョイント分析が適している文脈 1. イントロダクション 2. 新製品の意思決定モデル 3. コンジョイント分析による製品設計 3.1 コンジョイント分析のイントロダクション 3.2 コンジョイント分析の手続き 3.3 コンジョイント分析の拡張 3.4 コンジョイント分析が適している文脈 4. 新製品売上の予測 5. プリテスト市場予測 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 42 / 1
  • 44. 4. 新製品売上の予測 1. イントロダクション 2. 新製品の意思決定モデル 3. コンジョイント分析による製品設計 4. 新製品売上の予測 4.1 Bass モデルの概観 4.2 Bass モデルの技術的説明 4.3 Bass モデルの拡張 4.4 Bass モデルについての結論 5. プリテスト市場予測 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 44 / 1
  • 45. 4.1 Bass モデルの概観 1. イントロダクション 2. 新製品の意思決定モデル 3. コンジョイント分析による製品設計 4. 新製品売上の予測 4.1 Bass モデルの概観 4.2 Bass モデルの技術的説明 4.3 Bass モデルの拡張 4.4 Bass モデルについての結論 5. プリテスト市場予測 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 45 / 1
  • 46. 4.1 Bass モデルの概観 Bass モデルは、初回購入の予測モデルとして長い歴史を持っている。 密接な競合がないイノベーション (新製品) の売上予測に適している。 Bass モデルは、以下の 2 つのどちらかを満たす新技術ないし耐久財新 製品について、長期的な売上パターンを予測する。 企業は最近その製品を市場に導入し、数ヶ月分の売上を観察して いる 企業はその製品をまだ市場に導入していないが、それと類似した 既存の製品については売上の履歴がある 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 46 / 1
  • 47. 4.1 Bass モデルの概観 Exhibit 7.8 売上の推移 (1) 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 47 / 1
  • 48. 4.1 Bass モデルの概観 Exhibit 7.8 売上の推移 (2) 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 48 / 1
  • 49. 4.1 Bass モデルの概観 Exhibit 7.8 売上の推移 (3) 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 49 / 1
  • 50. 4.1 Bass モデルの概観 Exhibit 7.8 売上の推移 (4) 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 50 / 1
  • 51. 4.1 Bass モデルの概観 Exhibit 7.8 売上の推移 (5) 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 51 / 1
  • 52. 4.2 Bass モデルの技術的説明 1. イントロダクション 2. 新製品の意思決定モデル 3. コンジョイント分析による製品設計 4. 新製品売上の予測 4.1 Bass モデルの概観 4.2 Bass モデルの技術的説明 4.3 Bass モデルの拡張 4.4 Bass モデルについての結論 5. プリテスト市場予測 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 52 / 1
  • 53. 4.2 Bass モデルの技術的説明 ターゲット・セグメントの誰かが、時点 t までにイノベーションを受 容する (累積) 確率を F(t) とする。F(t) は非減少の連続関数で、t が大 きくなると 1 に近づく。 F(t) の導関数 f(t) は確率密度関数で、時点 t における受容確率を表す。 時点 t までに受容していない顧客が t においてはじめて受容する尤度 を L(t) とすると、ベイズの規則より L(t) = f(t) 1 − F(t) 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 53 / 1
  • 54. 4.2 Bass モデルの技術的説明 Exhibit 7.9 新製品受容確率 (1) 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 54 / 1
  • 55. 4.2 Bass モデルの技術的説明 Exhibit 7.9 新製品受容確率 (2) 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 55 / 1
  • 56. 4.2 Bass モデルの技術的説明 Bass(1969) は次のように提案した。 L(t) = p + q ¯N N(t) N(t): 時点 t までにすでに受容している顧客の人数 ¯N: ターゲットセグメントの人数 p: イノベーション係数 (外的影響の係数) q: 模倣係数 (内的影響の係数) ここから下式が得られる。 f(t) = [ p + q ¯N N(t) ] (1 − F(t)) 時点 t において受容する人数は ¯Nf(t) = p¯N + (q − p)N(t) − q ¯N (N(t))2 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 56 / 1
  • 57. 4.2 Bass モデルの技術的説明 一般化 Bass モデル (Bass, Krishnan, & Jain (1994)) 時点 t におけるマーケティング・ミクス変数 (広告とか価格とか) を x(t) として、 f(t) = [ p + q ¯N N(t) ] (1 − F(t))x(t) 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 57 / 1
  • 58. 4.2 Bass モデルの技術的説明 Bass モデルの推定方法 線形回帰。t を離散時間、n(t) を t 期の売上, N(t) を t 期までの累 積売上として n(t) = a + bN(t − 1) + cN2 (t − 1) ¯N = −b − √ b2 − 4ac 2c p = a ¯N q = p + b 3 期分のデータがあれば推定できる。 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 58 / 1
  • 59. 4.2 Bass モデルの技術的説明 非線形回帰。 n(t) = [ p + q ¯N N(t − 1) ] (¯N − N(t − 1)) 4 期分のデータがあれば推定できる。いつ市場導入されたかがわ からなくても大丈夫。 過去製品からの類推。実務的に有用。次の 5 点が類似している製 品を選び、p, q を得る (1) 環境的文脈 (2) 市場構造 (3) 購入者の行動 (4) マーケティング・ミクス戦略 (5) イノベーションの性質 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 59 / 1
  • 60. 4.2 Bass モデルの技術的説明 Exhibit 7.10 Bass モデルのパラメータ 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 60 / 1
  • 61. 4.2 Bass モデルの技術的説明 Exhibit 7.11 Bass モデルによる販売予測の例 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 61 / 1
  • 62. 4.2 Bass モデルの技術的説明 Exhibit 7.12 Bass モデルによる予測の要約 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 62 / 1
  • 63. 4.3 Bass モデルの拡張 1. イントロダクション 2. 新製品の意思決定モデル 3. コンジョイント分析による製品設計 4. 新製品売上の予測 4.1 Bass モデルの概観 4.2 Bass モデルの技術的説明 4.3 Bass モデルの拡張 4.4 Bass モデルについての結論 5. プリテスト市場予測 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 63 / 1
  • 64. 4.3 Bass モデルの拡張 Bass モデルでは、ポテンシャル ¯N は定数。→ 価格、不確実性、タ ーゲットセグメントの成長などを考慮する拡張が提案されている イノベーションを支援するマーケティング戦略の影響が考慮され ていない。→ 一般化 Bass モデルなど 顧客の決定が二値的。→ <認知-関心-受容-クチコミ>の多段階意 思決定過程をモデルに組み込む 模倣係数 q が一定 → 時間の関数にする イノベーションは常に正の影響を持つ → 負のクチコミをモデル に組み込む リピート勾配が考慮されていない → リピート購入者をモデルに 組み込む 普及におけるインターネットの効果についての研究も進んでい る。良い製品の受容は速くなると考えられる (クチコミの効果が 絶大だし検索コストが小さいから)。 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 64 / 1
  • 65. 4.4 Bass モデルについての結論 1. イントロダクション 2. 新製品の意思決定モデル 3. コンジョイント分析による製品設計 4. 新製品売上の予測 4.1 Bass モデルの概観 4.2 Bass モデルの技術的説明 4.3 Bass モデルの拡張 4.4 Bass モデルについての結論 5. プリテスト市場予測 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 65 / 1
  • 66. 4.4 Bass モデルについての結論 Bass モデルの限界: 過去データは、成功したイノベーションの普及過程について示し てくれるが、成功の確率は示してくれない。従って過去データに よる予測は楽観的になる。失敗の確率については考慮する必要が あるが、それを推定するのは難しい。 データからのパラメータ推定にはある程度の観察期間が必要。し かしそれまでのあいだに投資判断が行われてしまう。 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 66 / 1
  • 67. 5. プリテスト市場予測 1. イントロダクション 2. 新製品の意思決定モデル 3. コンジョイント分析による製品設計 4. 新製品売上の予測 5. プリテスト市場予測 5.1 ASSESSOR モデルの概観 5.2 選好モデル 5.3 トライアル-リピート・モデル 5.4 ASSESSOR モデルの妥当性と価値 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 67 / 1
  • 68. 5. プリテスト市場予測 プリテスト市場予測とは、製品、パッケージ、広告コピーが完成し、 価格、チャネル、配荷などのマーケティング・ミクスの要素について 予備的な計画が作られた段階で、実際の市場におけるテストを行わず に新製品予測を行う手法である。 過去 20 年の間に、数多くのプリテスト予測モデルが発展し、広く用い られるようになった (主に消費財産業で)。NEWS, TRACKER, SPRINTER, BASES, ASSESSOR, LTM などなど。Shocker & Hall(1986) をみよ **。 ** Clancy, Krieg, Wolf(2006) もお勧め。よろしければ拙訳「売上シミュレーション三 国志」をご覧くださいまし 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 68 / 1
  • 69. 5. プリテスト市場予測 ここではそのひとつである ASSESSOR モデル (Silk & Urban 1978; Urban 1993) について紹介する。 ASSESSOR の目的は次のとおり。 新製品の長期的市場シェアと売上数量を予測する 新製品のシェアの源を予測する (すなわち、競合から奪うのか、 同一企業の別製品とカニバリゼーションを起こすのか) 製品や広告コピーを改善するための診断情報を得る 価格、パッケージデザインなどについての代替案についておおま かな評価を得る 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 69 / 1
  • 70. 5.1 ASSESSOR モデルの概観 1. イントロダクション 2. 新製品の意思決定モデル 3. コンジョイント分析による製品設計 4. 新製品売上の予測 5. プリテスト市場予測 5.1 ASSESSOR モデルの概観 5.2 選好モデル 5.3 トライアル-リピート・モデル 5.4 ASSESSOR モデルの妥当性と価値 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 70 / 1
  • 71. 5.1 ASSESSOR モデルの概観 ASSESSOR では、まず実験室実験を行う。ショッピングモールにある 会場などで、300 人程度の参加者を集めて行う。ひとり 10 ドルくらい 渡す。参加者の課題は、 調査票に回答する。当該カテゴリでのブランド考慮集合、直近購 入ブランド、主要製品への選好など。 新製品についての CM をみる。5 から 6 本くらい。 模擬店舗で買い物する。棚に製品が価格つきで並んでおり、渡さ れた現金の範囲内で買い物する。 新製品を買わなかった人には、新製品のサンプルを渡す。 後日、参加者に電話調査を行う。実験室で訊いた設問について再 度聴取。さらに、新製品を再購入する気があるかを聴取。 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 71 / 1
  • 72. 5.1 ASSESSOR モデルの概観 ASSESSOR はふたつのモデルからなる。いずれも実験室実験のデータ が入力となる。 選好モデル (5.2 節) トライアル-リピート・モデル (5.3 節) 推定結果がモデル間で近ければ、予測に信頼を置くことができる。 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 72 / 1
  • 73. 5.1 ASSESSOR モデルの概観 Exhibit 7.13 ASESSOR モデル 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 73 / 1
  • 74. 5.1 ASSESSOR モデルの概観 Exhibit 7.14 ASSESSOR のデータ収集手続き 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 74 / 1
  • 75. 5.2 選好モデル 1. イントロダクション 2. 新製品の意思決定モデル 3. コンジョイント分析による製品設計 4. 新製品売上の予測 5. プリテスト市場予測 5.1 ASSESSOR モデルの概観 5.2 選好モデル 5.3 トライアル-リピート・モデル 5.4 ASSESSOR モデルの妥当性と価値 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 75 / 1
  • 76. 5.2 選好モデル まず、測定された選好 (Exhibit 7.14 の O2) をブランドの選択確率に変 換する。 Lij = Vb ij ∑ k∈Ci Vb ik Vij: 参加者 i の、製品 j に対する選好。なんらかの適切な尺度で測定さ れた値。 Lij: 参加者 i が製品 j を購入する確率の推定値。j が考慮集合に含まれ ていない時は 0。 Ci: 参加者 i の考慮集合 b: パラメータ。参加者の直近購買における購買有無を目的変数とし て、データから最尤推定する。通常 1.5 から 3.0 程度。 参加者間で製品使用の速度が著しく異なる場合は、Lij を購入数量で重 みづけする (コンジョイント分析の Step 3.3 における wi)。 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 76 / 1
  • 77. 5.2 選好モデル 次に、新製品の使用後の購入確率を予測する。新製品は考慮集合に入 っていると考え、 L ′ ij = V ′b ij V ′b in + ∑ k∈Ci V ′b ik V ′ ij: 参加者 i の、製品 j に対する使用後の選好。 n: 新製品を表す添字。 L ′ in: 参加者 i が新製品使用後に新製品を選択する確率。 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 77 / 1
  • 78. 5.2 選好モデル 市場シェアを求める。 M ′ n = En ∑ i L ′ in N M ′ n: 新製品の市場シェア。 En: 新製品を考慮集合に含めている参加者の割合。 N: 参加者数。 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 78 / 1
  • 79. 5.2 選好モデル 他のブランドからの新規獲得やカニバリゼーションについても推定で きる。 Mj = ∑ i Lij N M ′ j = En ∑ i L ′ in N + (1 − En) ∑ i Lij N Mj: 新製品上市前の製品 j の市場シェア M ′ j: 新製品上市後の製品 j の市場シェア。 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 79 / 1
  • 80. 5.2 選好モデル Exhibit 7.15 ASSESSOR の計算例 (1) 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 80 / 1
  • 81. 5.2 選好モデル Exhibit 7.15 ASSESSOR の計算例 (2) 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 81 / 1
  • 82. 5.2 選好モデル Exhibit 7.15 ASSESSOR の計算例 (3) 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 82 / 1
  • 83. 5.3 トライアル-リピート・モデル 1. イントロダクション 2. 新製品の意思決定モデル 3. コンジョイント分析による製品設計 4. 新製品売上の予測 5. プリテスト市場予測 5.1 ASSESSOR モデルの概観 5.2 選好モデル 5.3 トライアル-リピート・モデル 5.4 ASSESSOR モデルの妥当性と価値 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 83 / 1
  • 84. 5.3 トライアル-リピート・モデル 新製品の長期的市場シェアを次のように推定する。 Mn = trw Mn: 新製品の長期的市場シェア。 t: ターゲットセグメントのうち、いずれ新製品をトライアルするで あろう累積割合。後述。 r: トライアルした人のうち、その新製品の長期的リピート購買者に なる人の割合。後述。 w: 相対的な利用率。市場における平均的な利用率を w = 1 とする。 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 84 / 1
  • 85. 5.3 トライアル-リピート・モデル トライアル率 t について次のように想定する。 t = FKD + CU − (FKD)(CU) F: ターゲットセグメントにおける、配荷と認知率に制約がないとき の長期的なトライアル率。模擬店舗における購入率 (Exhibit 7.14 の O4)。 K: 長期的な認知率。マネージャーの判断と広告計画に基づいて決め る。 D: 長期的な配荷率。マネージャーの判断と、期待される配荷によっ て決める。 C: サンプル受領率。計画に基づいて決める。 U: サンプル受領者における使用確率。過去経験とマネージャーの判 断によって決める。 FKD は「製品について認知し、店舗に製品があり、トライアルする 人」の割合、CU は「サンプルを受領して使う人」の割合を表す。 選好モデルとは異なり、どこからシェアを取ってくるかについては推 定しない点に注意。 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 85 / 1
  • 86. 5.3 トライアル-リピート・モデル リピート率 r については、使用後の電話調査から情報を得る (Exhibit 7.14 の O5)。 まず、ブランド・スイッチング行列をつくる。 [ pnn pno pon poo ] pnn: 時点 t で新製品を買った人が時点 t + 1 でもその製品を買う確率。 模擬店舗で購入し、利用後調査で次もその製品を買うと答えた人 の割合によって推定。 pno: = 1 − pnn pon: 時点 t で別の製品を買った人が、時点 t + 1 でその製品を買う確 率。模擬店舗で購入せず、利用後調査で購入すると答えた人の割 合によって推定。 poo: = 1 − pon 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 86 / 1
  • 87. 5.3 トライアル-リピート・モデル ブランド・スイッチング行列に基づき、この行列がずっと維持される ならば、「時点 t において新製品を買った人が時点 t においてその新製 品を買う確率」(つまり、リピート率の均衡点) を求める: r = pon 1 − pnn + pon 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 87 / 1
  • 88. 5.4 ASSESSOR モデルの妥当性と価値 1. イントロダクション 2. 新製品の意思決定モデル 3. コンジョイント分析による製品設計 4. 新製品売上の予測 5. プリテスト市場予測 5.1 ASSESSOR モデルの概観 5.2 選好モデル 5.3 トライアル-リピート・モデル 5.4 ASSESSOR モデルの妥当性と価値 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 88 / 1
  • 89. 5.4 ASSESSOR モデルの妥当性と価値 プリテスト・マーケット・モデルはいずれも高い成功率を謳っている が、学術誌に妥当性研究が報告されているモデルは少ない。 しかし ASSESSOR モデルについては妥当性研究が報告されている (Urban & Katz, 1983): ASSESSOR モデルによる評価を通過した新製品の成功率は 66% , 形式的なプリテストモデルを通過した新製品の成功率は 35% 。 ASSESSOR モデルを通過できなかった新製品の成功率は 3.6% し かない。 市場シェアの実績値と予測値の相関は 0.95。 小野滋 (インサイト・ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 7 ME 読書会: 2018/03 89 / 1