千代田テクノルから福島など周辺から放射線が照射される場合のガラスバッチの過小評価問題について
反論(?)と見られる文書が HP 上に公開された。
しかしこの文書はこれまでの放射線防護とその計測についての原則とそれに基づく法律の解釈を捻じ曲
げている。以下具体的に説明したい。技術用語や法律用語の羅列で申し訳ないが、ことは放射線被ばくの測
定にかかわることだから健康、声明、財産、賠償などにかかわる重要な問題。私たち市民もこういう問題を
しっかり勉強しないと、専門家たちに好いようにされてしまうので勉強が必要だ。
●先ず、千代田テクノルの問題の文書を見てみよう。
http://www.c-technol.co.jp/archives/1038
個人の被ばく線量は、放射線被ばくによる個人の確率的影響の程度を表す「実効線量」という量で考える
ことになっています。・・実効線量は実測出来ないため、測定のための「個人線量当量」が ICRU によって
定義されています。・・個人線量計はこの「個人線量当量」が測定できるように設計され、人体に着用した
個人線量計の計測値はγ線がどの方向から入射しても実効線量より低い値を示すことはありません。γ線が
全周囲から照射された場合、その値は実効線量とほぼ一致します。・・つまり、個人線量計の値は個人の被
ばくした実効線量により近い値を示していると言えます。
●ポイントは上記引用の下線を引いたところにある。つまり「個人線量計の計測値は・・実効線量よりも
低い値を示すことはありません。・・個人線量計は実効線量により近い値を示していると言えます。」
●これ一見「より近い値を示している」というので良くなったのか?と誤解しやすい文章だが、実はとん
でもない。この文書の下方にある資料1(実効線量のための測定)というのを見て欲しい。実効線量より常
に大きな値を示す 1cm 線量当量で測れとしっかり書いてあります。実効線量は現実には測れないので、間
違っても被ばくを過小評価しないよう、「常に大きな値を示す」測定方法でなければならないのです。
●千代田テクノルの「γ線が全周囲から照射された場合・・実効線量により近い値を示す」というのは安
全側で評価するのではなく過小評価になる可能性があるギリギリのところだということになります。住民に
対して職業人以上にギリギリの評価でやるというのは許されることだろうか。私はこれは許されないと思い
ます。
●もう一つの問題点があります。こちらの方が問題が大きいかもしれません。反論ページでは何も触れら
れていませんが・・。個人線量計(ガラスバッチ)は身体の正面からの放射線を想定しているので周囲から
放射線が来る場合は30%程度低く検出されるということです。これは当日佐藤氏が説明しました。平田論
文でも明らかです。ということは放射線管理区域の労働者はガラスバッジで 1mSv と表示されるのに、同じ
量を身体の全周から浴びる福島では 0.6mSv となります。何度も言いますが測定器は測定結果に一貫性がな
ければいけません(A 社の秤りと B 社の秤で測定結果が違ってはいけません。同じ秤がある時には 100g、
ある時には 60g と表示されてはいけません。業界用語でトレーサビリティといいます)。ガラスバッジは放
射線管理区域で使うもので、それを福島のような環境では使ってはいけないということです。
テクノルがこの点について反論 HP で何も触れなかったのはこれに対して正面から反論できないからでし
ょう。
●ちなみに先ほどあげた「常に大きな値を示す」「1cm 線量当量」で測ることが電線放射線防止規則第八
条【資料2】でもしっかり書かれています。ていねいに胸に装着する「放射線測定器を用いてこれを測定す
ることが著しく困難な場合には、放射線測定器によつて測定した線量当量率を用いて算出し」と書いてあり
ます。ガラスバッジを無理に使わなくてもよいのです。その場合は「放射線測定器によって測定した線量当
量率」つまりサーベイメータ―などによる周辺線量当量で測って算出しても良いと書いてあります。・・何
故、実効線量ギリギリの(しかも子どもではファントムが標準化されていないので検証もできない)ガラス
バッジを使わなければならないのか。
【資料3】も上記説明と同じ考えが書かれていますので参考に上げました。
●電離放射線障害防止規則は放射線管理区域に立ち入る労働者のための法律です。労働対価を得る労働者
でさえこのように守られているのに、何故住民が無理して過小評価になるかもしれないガラスバッジを使っ
て評価されなければならないのでしょうか。 まさか賠償問題等がからむから低めに評価したいという意図
ではないと信じたいですが・・いかがでしょうか。
【資料1】実効線量のための測定 (09-04-03-17)
http://urx2.nu/gNeR
ATOMICA09-04-03-17
<概要>
実効線量を直接測定することは、研究を目的とした場合を除いて、ほとんど不可能である。そこで外部被
ばくについては、実効線量の代わりに、同一被ばく条件では実効線量より常に大きな値を示す1cm線量当
量が、放射線防護を目的とした測定のために用いられている。また、内部被ばくについては、体内に摂取し
た放射性同位元素の量を測定し、年摂取限度と比較して実効線量を評価する方法が行われる。
【資料2】電離放射線障害防止規則第八条
http://urx2.nu/gNf6
(線量の測定)
第八条 事業者は、放射線業務従事者、緊急作業に従事する労働者及び管理区域に一時的に立ち入る労
働者の管理区域内において受ける外部被ばくによる線量及び内部被ばくによる線量を測定しなければなら
ない。
2 前項の規定による外部被ばくによる線量の測定は、一センチメートル線量当量及び七十マイクロメ
ートル線量当量(中性子線については、一センチメートル線量当量)について行うものとする。ただし、次
項の規定により、同項第三号に掲げる部位に放射線測定器を装着させて行う測定は、七十マイクロメートル
線量当量について行うものとする。
3 第一項の規定による外部被ばくによる線量の測定は、次の各号に掲げる部位に放射線測定器を装着
させて行わなければならない。ただし、放射線測定器を用いてこれを測定することが著しく困難な場合には、
放射線測定器によつて測定した線量当量率を用いて算出し、これが著しく困難な場合には、計算によつてそ
の値を求めることができる。
一 男性又は妊娠する可能性がないと診断された女性にあつては胸部、その他の女性にあつては腹部
二 頭・頸部、胸・上腕部及び腹・大腿部のうち、最も多く放射線にさらされるおそれのある部位(こ
れらの部位のうち最も多く放射線にさらされるおそれのある部位が男性又は妊娠する可能性がないと診断
された女性にあつては胸部・上腕部、その他の女性にあつては腹・大腿部である場合を除く。)
三 最も多く放射線にさらされるおそれのある部位が頭・頸部、胸・上腕部及び腹・大腿部以外の部位
であるときは、当該最も多く放射線にさらされるおそれのある部位(中性子線の場合を除く。)
4 第一項の規定による内部被ばくによる線量の測定は、管理区域のうち放射性物質を吸入摂取し、又
は経口摂取するおそれのある場所に立ち入る者について、三月以内(一月間に受ける実効線量が一・七ミリ
シーベルトを超えるおそれのある女性(妊娠する可能性がないと診断されたものを除く。)及び妊娠中の女
性にあつては一月以内)ごとに一回行うものとする。ただし、その者が誤つて放射性物質を吸入摂取し、又
は経口摂取したときは、当該吸入摂取又は経口摂取の後速やかに行うものとする。
5 第一項の規定による内部被ばくによる線量の測定に当たつては、厚生労働大臣が定める方法によつ
てその値を求めるものとする。
6 放射線業務従事者、緊急作業に従事する労働者及び管理区域に一時的に立ち入る労働者は、第三項
ただし書の場合を除き、管理区域内において、放射線測定器を装着しなければならない。
【資料3】外部被ばく及び内部被ばくの評価法に係る技術的指針 外部被ばく
http://urx2.nu/gNfd
原子力規制委員会
(2) 測定に係る量
場所における線量当量(率)の測定に用いる量
放射線業務従事者等の外部被ばく線量の測定に用いる量
現行の法令等では、放射線業務従事者等の線量限度を定める量については実効線量当量及び組織線量当量
を用いているが、使用施設等に係る基準及び運搬に係る基準を定める量については、1 センチメートル線量
当量を用いている。また、測定に係る量については、場所における線量当量(率)の測定(以下、「場所に係る
測定」という。)に用いる量と放射線業務従事者等の外部被ばく線量の測定(以下、「個人の外部被ばくに係る
測定」という。)に用いる量を区別せず、1 センチメートル線量当量、3 ミリメートル線量当量、70 マイクロ
メートル線量当量(以下、「1 センチメートル線量当量等」という。)を用いている。
・・・・
1.4 実効線量及び等価線量の算定
測定に係る量(実用量)から実効線量及び等価線量を算定するにあたっては、以下のとおりとすることが適
当である。
(1) 外部被ばくによる実効線量
個人の外部被ばくに係る測定(算定を含む)により得られた値である1センチメートル線量当量 (原則とし
て個人線量当量 Hp(10)、ただし、放射線測定器を用いて測定した場合にあっては周辺線量当量 H*(10)) を
もって外部被ばくによる実効線量とみなすことが適当である。

千代田テクノルHp文書批判